前回の話の続きで、働きやすい職場にするための大規模なオフィスレイアウト改善が難しい中小企業が、身近に実践できる職場改善のコツを若手実務家社労士と語りました。
業務内容に合わせた“レイアウトの使い分け”を
オフィスレイアウトといえば、一度設計したら固定化されがちですが、本当に大切なのは「どんな仕事に、どんな空間が合うか」を考えることです。
たとえば、給与計算や社会保険手続きなど、ルーティン業務で連携が多い場合は、コミュニケーションが取りやすい島型(対向型)レイアウトのほうが効率的。一方で、助成金申請やセミナー資料作成のような、集中力が求められる作業では、ブース型や背面型レイアウトのほうが向いています。
従業員が今どんな業務に取り組んでいるのかを会社が正しく把握し、それに応じたレイアウトを一人ひとりに提供していく──これが、これからの職場設計に求められる視点です。
話しかけOK?NG? “可視化”で解決する配慮のズレ
職場では、静かに集中したい人と、会話を通じてアイデアを得る人が混在しています。そういった「働き方の温度差」にどう対応するか。
一つの提案として挙がったのが、「話しかけてOK/NGカード」の活用。たとえば「今は集中中なので話しかけないでください」というカードを首から下げたり、「今はOKですよ」という札を見える位置に置くことで、無用な中断を避けられるのではないかというアイディアです。
ただし、ずっとNGカードを出し続けていると「協調性がない」と捉えられるリスクも。ルールを決めて適度な利用を促すことも大切です。
固定席だけじゃない、“選べる働き方”を職場に
「オフィスのレイアウトは固定であるべき」という考えを手放し、日ごとの業務に応じて席や空間を選べる職場づくりも重要です。
たとえば通常業務は島型の固定席で行い、集中が必要な日は休憩室や会議室を“作業部屋”として使う。そうした柔軟性が、集中力や効率を高め、納期に対するストレスも軽減されます。
ただしそのためには、誰が何を抱えていて、いつまでに何を終わらせるのかをチーム内で共有することが不可欠。自席を離れることの「理由」や「背景」を見える化し、互いに配慮し合う土壌づくりも合わせて必要です。
労働法から見る、職場環境整備の“基本ルール”
オフィス設計は単なる効率化やデザイン性だけでなく、法的な基準も存在します。たとえば労働安全衛生規則では、「一人あたり10立方メートル以上の空間を確保すること」が義務づけられています。
また、オフィスの明るさ(照度)にも基準があり、細かい作業を行う場合は300ルクス以上、通常作業は150ルクス以上が必要とされています。これは家庭のダイニング照明や百貨店の売り場の明るさと同程度とされています。
さらに、個人情報を扱う場面では「番号法」により、マイナンバーを扱う作業スペースをブースで仕切ることも推奨されています。感染症対策を含め、プライバシーと安全を両立できるブース型レイアウトが、今後さらに広がっていく可能性もあります。
“全員が納得できるレイアウト”を目指して
レイアウトを考えるうえでの最終的なゴールは、「誰もが納得できる空間」をつくることです。全員に完璧な環境を提供するのは難しいですが、プライバシー、動線、視認性、利便性──それぞれの観点で“トータルでバランスが取れている”と感じてもらえる職場は、きっと良い組織風土をつくっていくでしょう。
人は「他人に迷惑をかけたくない」「自分だけ得してるように見られたくない」と思うもの。だからこそ、職場の物理的な配置からくる“無言のストレス”をできる限り減らす工夫が必要です。
配置の不公平(ファックス機・お菓子台・コピー機の近さなど)や、よく話しかけられる人への偏りなども定期的なシャッフルやヒアリングでバランスを取る。小さな配慮が、大きな信頼と成果につながります。
空間は“働く人を語る”──あなたの会社のレイアウトは、誰のためのものですか?
「オフィスのレイアウト」は、単に机の配置を考えることではありません。それは、社員一人ひとりの働き方を認め、尊重するための“環境整備”です。
固定席と柔軟性のバランス、業務内容に応じたゾーニング、個人情報や感染症対策への配慮など──空間に込められた配慮は、職場の文化そのものを形づくります。
サニーデーフライデーでは、引き続き「働きやすさ」をテーマに、現場のリアルな声をお届けしていきます。読者の皆さんからのご意見・エピソードもぜひお寄せください。
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サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
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パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
カバーアート制作:小野寺玲奈
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