前回の話の続きで、ベーシックインカム導入論に関する話題で、給料や収入と異なる指標でもって人を評価する社会、評価することが良しとされる社会にしていくための、人間の三大欲求に触れながら実務家社労士と語りました。
生活保障と働く意欲――「最低限の収入」で人は変わるのか?
前回に引き続き、田村(社会保険労務士)とオオタワ氏(同じく社労士)によるベーシックインカム(BI)に関する対談の後編。今回は特に、「お金以外の報酬」や「人間の本質的な欲求」といったテーマにまで踏み込みながら、BIの持つ意義と課題をさらに深掘りしました。
話題の発端は、ある番組で紹介された、ギターを奏でる生活保護受給者の青年のエピソード。通りすがりの人から声をかけられ、食事に誘われたり、会話を通じてつながりが生まれたり。そんな「お金に換算されない報酬」があるのではないか?という田村の問いかけから対談が再び動き始めます。
ベーシックインカムが最低限の生活を保障するならば、その分「評価」や「承認」は金銭以外の形でも与えられる社会であるべきなのでは?そんな議論は、現代の価値観に一石を投じるものでした。
会社はいらない?「評価」と「貢献」の新しいあり方
話題はやがて「企業と個人の関係性」へ。田村は、ベーシックインカム導入後の社会では、企業が人を“雇う”という形が前提ではなくなり、むしろ「人が社会や他者にどう貢献するか」をベースに経済や評価の構造が変化していくのではと語ります。
オオタワ氏はこの見立てに一定の理解を示しつつも、「イノベーションが生まれにくくなるリスク」も指摘。国主導で富を再分配する社会では、企業の創造性や競争心が弱まり、結果的に面白みのない社会になりうるという危惧も語られました。
その一方で、「ちょい足し」のような控えめなBI導入であれば、従来の労働市場と並存可能ではないか、という視点も。あくまでBIは“補助”であり、努力によってよりよい生活を手に入れたい人の選択肢を狭めない形が望ましいというバランス論が展開されました。
「あなたの最低限」はいくらですか?個人化される“基準”の必要性
また田村は、国が「最低限の生活費はこれくらい」と決めてBIを一律支給する制度設計にも疑問を呈します。なぜなら、人によって「最低限」と感じる基準は違うから。
たとえば、「ドミトリーでも構わない」という人もいれば、「個室でないと生活できない」と考える人もいる。であれば、「最低限」という価値基準すら個人の選択や価値観を反映できるように、もっと多様な意見が政策に反映されるべきだ――そんな主張が印象的でした。
BIを導入する前に、「あなたにとって“幸せ”とは何か?」「生活の中で何を守りたいのか?」といった、もっとパーソナルな問いに向き合う機会が、今の社会にこそ必要なのではないかと語られます。
人間の欲求は「お金」だけじゃない――三つの本質的動機とは?
終盤では、オオタワさんが「人間の欲求は3つに整理できる」と紹介した理論(アルダーファのERG理論)に注目が集まりました。それは以下の3つ。
生存欲求(=お金や生活の安定)
承認欲求(=他者からの評価)
成長欲求(=自分自身の可能性を広げたいという思い)
これらの欲求のどれが満たされていないのかを見極めず、「全部お金で解決しようとする」現代の会社経営や人事マネジメントの危うさに、オオタワさんは警鐘を鳴らします。
そして社労士の役割として、単に「給料を上げましょう」という提案だけでなく、「あなたは今、何を大切にしていますか?」という本人の価値観に寄り添う支援が求められているのでは、と力強く語られました。
“誰かの幸せ”を知るには、利害のない関係性が必要だ
最後に二人は、「人が本当に大切にしているものは、利害関係のない相手にしか話せないこともある」という点にも共感。仕事や上下関係がある場所では、欲求や悩みを素直に語るのが難しい。それをどうにか越えていくためには、「ただの友人」や「利害関係のない社外の存在」と話せる場が必要ではないか、という意見も飛び出しました。
ベーシックインカムは、単なる「所得再分配」の仕組みにとどまらず、人が自分の価値や欲求に向き合う契機になる制度なのかもしれません。
~お知らせ~
サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
人生に前向きでポジティブな方をゲストとしてお呼びし、経営者や従業員として働くリスナーの皆様が明日から明るく過ごせて、心や気持ちがパッと晴れるそんな『働き方を考える』ラジオをお送りします。
話すテーマは社労士業、働き方改革、キャリア、海外駐在、外国人雇用、海外放浪等です。
パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
カバーアート制作:小野寺玲奈
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