前回の話の続編で、『労働問題は社労士、弁護士に任せてたら大丈夫!』と丸投げするのはどうなのか?雇用で悩む経営者の皆様に向けた私達社労士からのメッセージ、アドバイスと共に社労士×社労士で対談しました。
はじめに ― なぜこのテーマを扱うのか
こんにちは。「社労士ラジオ サニーデーフライデー」DJ田村陽太です。今回は、社労士のオオタワさんをゲストに迎え、「職場の労働トラブルは誰が解決するべきか?」をテーマに対談を行いました。未払い残業や不当解雇、ハラスメントなど、ニュースでも取り上げられる労働問題。これらが深刻化すると、労基署や労働局、ユニオン、裁判へと発展することがあります。しかし、そうなる前に解決する道はないのでしょうか?
本記事では、社労士と弁護士の役割の違い、そして「予防」という視点で社労士が果たせる役割を掘り下げ、企業にとって本当に必要な労務体制とは何かを考察します。
社労士、特定社労士、弁護士――それぞれの役割と限界
まず押さえておきたいのが、社労士・特定社労士・弁護士の違いです。社労士は、労働トラブルが表面化する前の「予防と改善」の専門家であり、日常的な就業環境整備や相談対応を行います。一方、トラブルが表面化し、金銭請求や法的主張が伴う場面では、弁護士の出番です。特定社労士はその中間的な役割を担い、労働局や労働委員会でのあっせん・調停に社長の代理人として関わることができます。
しかし田村自身は「トラブルになった時点で企業側の負け」だと強調します。なぜなら、従業員が労基署やユニオンに駆け込むまでには、すでに企業内での信頼関係が崩れているからです。そうなる前に対応できていれば、そもそも紛争には至らなかったのではないか――。それが社労士の本来の価値である「予防力」なのです。
裁判に至る前の段階で“火を消す”ことの重要性
裁判となると、企業側に不利な判決が出るケースが多く、証拠管理の不備や対応の遅れが命取りになります。例えば解雇トラブルでは、試用期間中であっても正当な理由と段階的な改善措置が求められ、それらのプロセスが明確に記録されていないと「解雇無効」とされる可能性が高くなります。
社労士が果たすべき役割は、まさにこうした「火種」が大きくなる前に、適切なアドバイスと制度設計で“火を消す”こと。契約書の整備、就業規則の明文化、管理職の線引き、雇用形態の見直しなど、制度の未整備を放置しない体制づくりが何よりも肝要です。
社長が「任せきり」では意味がない ― 社労士が支えるべき“経営者の姿勢”
印象的だったのは、田村が団体交渉の場に立ち会った経験です。そこでは、ユニオン側から社長本人に「あなたはどう考えているのか」と問い詰められました。どれだけ社労士や弁護士が同席していても、従業員が知りたいのは「社長自身の考えと誠意」です。
社労士は、ただ制度を整えるだけでなく、社長自身が従業員と正面から向き合えるよう支える存在でなければなりません。社労士に丸投げ、弁護士に任せきり、という姿勢では、従業員との信頼関係を築くことはできません。
労働者が本当に求めているのは「待遇」ではなく「信頼」
トラブルの表面上は「未払い残業」や「退職金制度」に見えても、実際には「努力を認めてほしい」「社長に話を聞いてほしい」といった感情が根底にあることも少なくありません。
だからこそ、社労士としては法律の専門知識に加え、現場の空気を読み取る力、感情に寄り添う視点も不可欠です。予防的観点での介入とは、法令遵守だけでなく、「人としての信頼関係」をどう築くかにまで踏み込むことなのです。
社労士に必要な“中立性”と“関係構築力”
最後に重要なのは「中立性」です。社労士は経営者の味方でも、従業員の代弁者でもありません。法人全体の健全な運営のために、両者の間に立って調整する“バランサー”としての立場が求められます。
そのためには、事務員や社長からの片寄った意見に引っ張られず、事実と制度に基づいて冷静に判断する姿勢が欠かせません。また、経営者と従業員の年齢差や力関係による遠慮や誤解をほぐし、信頼ある関係構築をサポートしていく力も重要です。
終わりに ― 社労士は“軍隊”ではない、“外交官”であれ
弁護士が“軍隊”ならば、社労士は“外交官”。いざという時の交渉力や知識も大切ですが、そもそも戦いを避け、安定した職場関係を築くことこそ、私たちの真の役割です。
今回の対談では、労働問題における法的な限界も議論されましたが、結論は明快です。「トラブルになる前に、できることがある」。だからこそ、私たち社労士が企業の日常にもっと入り込み、社長と従業員の間に立って支える必要があるのです。
ポッドキャストを聴いてくださった経営者の方々にも、「問題が起きてから対処する」のではなく、「問題が起きない職場づくり」を一緒に目指したい――そう思わせてくれる、深い対話となりました。
~お知らせ~
サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
人生に前向きでポジティブな方をゲストとしてお呼びし、経営者や従業員として働くリスナーの皆様が明日から明るく過ごせて、心や気持ちがパッと晴れるそんな『働き方を考える』ラジオをお送りします。
話すテーマは社労士業、働き方改革、キャリア、海外駐在、外国人雇用、海外放浪等です。
パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
カバーアート制作:小野寺玲奈
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