新型コロナの影響で世界的に注目されてきたベーシックインカムについて日本の年金制度や生活保護制度、社会保険制度等のセーフティネットの話題を交えながら社労士×社労士で語りました。
「お便りのコーナー」から始まった社会保障の深掘り対談
今回の対談では、社会保険労務士・田村がホストとなり、同じく社労士として企業のマネジメント支援を行うオオタワ氏を迎えてトークを展開。「お便りのコーナー」に寄せられたリスナーからの質問がきっかけで、テーマは“ベーシックインカム”へと発展していきました。
お便りの主は、ドイツやアメリカ、アイルランドで進むベーシックインカムの実証実験に関心を寄せ、「この動きに対してどう考えるか?」と問いかけます。そこから始まった対話は、社会保障、雇用、産業構造、政府の在り方といった複数の観点を交えて、示唆に富んだ議論へと広がっていきました。
ベーシックインカムの可能性と課題
まず、現在の社会保障制度のセーフティネットとしての機能について整理した上で、コロナ禍で顕在化した“個人では抗えない不条理”に注目します。これまでの雇用保険や生活保護などの制度ではカバーしきれないケースが増え、「誰もが最低限の生活を保障される」というベーシックインカムの思想には、一考の価値があると指摘します。
しかし一方で、日本の制度的背景(国民皆保険・皆年金)や財源問題、小さな政府への移行の難しさなども踏まえ、すぐに実現可能とは考えていないという立場です。あくまで「非常時における社会の再設計」という文脈で捉えるべきだという、現実的な視点が語られました。
「いつか来る」未来としてのBI
また、産業構造の変化を軸に、ベーシックインカムの導入は「遠い未来の必然」と捉えています。AIやロボットによって人間の仕事が奪われる未来が想定される中、「全ての人が働かなくても生活できる仕組み」は社会の安定に不可欠だとします。
ただし、今の日本にそのタイミングが訪れるかというと懐疑的。少子高齢化が進み、社会保障費が右肩上がりの現在、若者が支える構造の中で“働かない層”を増やすベーシックインカムの導入は、財政的にも制度的にも非常に困難であるとの見方を示しました。
ベーシックインカムのメリットとは?—手続きの簡素化と“小さな政府”構想
両者が一致して評価したのは、ベーシックインカムによる「行政手続きの簡素化」という側面です。現行制度では、雇用保険・生活保護・障害年金などの申請手続きが複雑で、必要な人に給付が届かないケースも多いという問題があります。
その点、ベーシックインカムであれば手続き不要で全国民に一律支給されるため、「取りこぼし」を減らすことができる。また、国家の役割を限定し“民間による自律的経済活動”に委ねていく「小さな政府」モデルとの親和性もあるという意見が出されました。
日本は“大きな政府”から抜け出せるのか?
しかし田村・オオタワ氏はともに、日本が「大きな政府」から「小さな政府」へとシフトできるかどうかには慎重な見方を示します。日本社会は、生活保障や制度への依存度が高く、政治的にも「分配」への期待が根強い。国民の意識や文化的背景も含めた大きな変革がなければ、ベーシックインカムが導入される可能性は低いだろうというのが共通の結論でした。
また、「全国民への一律給付」が本当に公平なのかという疑問や、「本当に困っている人」にピンポイントで届くべき支援とのバランスの難しさについても言及されました。
理想と現実の狭間で。社労士の視点から社会の未来を見据える
「労務トラブルがなく、全員が制度を理解して自立できる社会になれば、専門家の介入も不要になる」という願いを込めて。もちろん、それは理想論ではありますが、制度を整備し、人々が健やかに働ける環境を築くことが、社労士の本質的な使命であるというメッセージが込められていました。
ベーシックインカムというテーマを通じて、社労士の2人が見つめたのは、「制度に依存しない持続可能な社会」のあり方でした。理想と現実の間で揺れる中で、それでも問い続けることに意味がある。私たちの未来は、私たちの言葉と議論からつくられていくのかもしれません。
~お知らせ~
サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
人生に前向きでポジティブな方をゲストとしてお呼びし、経営者や従業員として働くリスナーの皆様が明日から明るく過ごせて、心や気持ちがパッと晴れるそんな『働き方を考える』ラジオをお送りします。
話すテーマは社労士業、働き方改革、キャリア、海外駐在、外国人雇用、海外放浪等です。
パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
カバーアート制作:小野寺玲奈
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