2020-09-18 17:27

第144回 【対談】ベーシックインカムと社会保障制度について語る(前編①)

新型コロナの影響で世界的に注目されてきたベーシックインカムについて日本の年金制度や生活保護制度、社会保険制度等のセーフティネットの話題を交えながら社労士×社労士で語りました。


「お便りのコーナー」から始まった社会保障の深掘り対談


今回の対談では、社会保険労務士・田村がホストとなり、同じく社労士として企業のマネジメント支援を行うオオタワ氏を迎えてトークを展開。「お便りのコーナー」に寄せられたリスナーからの質問がきっかけで、テーマは“ベーシックインカム”へと発展していきました。


お便りの主は、ドイツやアメリカ、アイルランドで進むベーシックインカムの実証実験に関心を寄せ、「この動きに対してどう考えるか?」と問いかけます。そこから始まった対話は、社会保障、雇用、産業構造、政府の在り方といった複数の観点を交えて、示唆に富んだ議論へと広がっていきました。


ベーシックインカムの可能性と課題


まず、現在の社会保障制度のセーフティネットとしての機能について整理した上で、コロナ禍で顕在化した“個人では抗えない不条理”に注目します。これまでの雇用保険や生活保護などの制度ではカバーしきれないケースが増え、「誰もが最低限の生活を保障される」というベーシックインカムの思想には、一考の価値があると指摘します。


しかし一方で、日本の制度的背景(国民皆保険・皆年金)や財源問題、小さな政府への移行の難しさなども踏まえ、すぐに実現可能とは考えていないという立場です。あくまで「非常時における社会の再設計」という文脈で捉えるべきだという、現実的な視点が語られました。


「いつか来る」未来としてのBI


また、産業構造の変化を軸に、ベーシックインカムの導入は「遠い未来の必然」と捉えています。AIやロボットによって人間の仕事が奪われる未来が想定される中、「全ての人が働かなくても生活できる仕組み」は社会の安定に不可欠だとします。


ただし、今の日本にそのタイミングが訪れるかというと懐疑的。少子高齢化が進み、社会保障費が右肩上がりの現在、若者が支える構造の中で“働かない層”を増やすベーシックインカムの導入は、財政的にも制度的にも非常に困難であるとの見方を示しました。


ベーシックインカムのメリットとは?—手続きの簡素化と“小さな政府”構想


両者が一致して評価したのは、ベーシックインカムによる「行政手続きの簡素化」という側面です。現行制度では、雇用保険・生活保護・障害年金などの申請手続きが複雑で、必要な人に給付が届かないケースも多いという問題があります。


その点、ベーシックインカムであれば手続き不要で全国民に一律支給されるため、「取りこぼし」を減らすことができる。また、国家の役割を限定し“民間による自律的経済活動”に委ねていく「小さな政府」モデルとの親和性もあるという意見が出されました。


日本は“大きな政府”から抜け出せるのか?


しかし田村・オオタワ氏はともに、日本が「大きな政府」から「小さな政府」へとシフトできるかどうかには慎重な見方を示します。日本社会は、生活保障や制度への依存度が高く、政治的にも「分配」への期待が根強い。国民の意識や文化的背景も含めた大きな変革がなければ、ベーシックインカムが導入される可能性は低いだろうというのが共通の結論でした。


また、「全国民への一律給付」が本当に公平なのかという疑問や、「本当に困っている人」にピンポイントで届くべき支援とのバランスの難しさについても言及されました。


理想と現実の狭間で。社労士の視点から社会の未来を見据える


「労務トラブルがなく、全員が制度を理解して自立できる社会になれば、専門家の介入も不要になる」という願いを込めて。もちろん、それは理想論ではありますが、制度を整備し、人々が健やかに働ける環境を築くことが、社労士の本質的な使命であるというメッセージが込められていました。


ベーシックインカムというテーマを通じて、社労士の2人が見つめたのは、「制度に依存しない持続可能な社会」のあり方でした。理想と現実の間で揺れる中で、それでも問い続けることに意味がある。私たちの未来は、私たちの言葉と議論からつくられていくのかもしれません。


~お知らせ~

サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。


人生に前向きでポジティブな方をゲストとしてお呼びし、経営者や従業員として働くリスナーの皆様が明日から明るく過ごせて、心や気持ちがパッと晴れるそんな『働き方を考える』ラジオをお送りします。


話すテーマは社労士業、働き方改革、キャリア、海外駐在、外国人雇用、海外放浪等です。


パーソナリティー:田村陽太

産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。


カバーアート制作:小野寺玲奈


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社労士ラジオ 【サニーデーフライデー】
社労士ラジオ 【サニーデーフライデー】 DJの田村陽太です。
この番組は、社会保険労務士として活動する田村が、 普段の侍業という固いイメージから外れ、
様々な分野で活躍する方や、その道の専門家、 スペシャリストと語るトーク番組です。
本日も素敵なゲストをお呼びしております。 私から簡単にご紹介させていただきます。
会社内の組織マネジメントをご専門とし、 多くの企業の経営の参謀として、
日々コンサルティング業務でご活躍の 社会保険労務士の太田さんです。
太田さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
お願いいたします。
はい。
太田さん、本日はこのコーナーで行きたいと思います。
はい、何でしょう。
お便りのコーナー。
えー、マジ?
リスナーさんからのお便りに答えるというコーナー。 自由にお話しさせていただくコーナーでございます。
おー、お便り来たの?
お便り来ました。お便りいただきました。
マジか。
見上げさせていただきたいと思います。
はい。
ラジオネーム、ビーフパストラ・ミジョコビッチさんからいただきました。
はい。
サブ系の方かね、それは。
50代女性、ムーステルダム帰宅からお便りをいただきました。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
いつも楽しく聞かせていただいています。
教えて!あなたの働き方は、興味深い内容でとても参考になりました。
また、この企画は続けていただけると楽しく聞けそうです。
ありがとうございます。
国際派社労使の田村さんに質問です。
ドイツ経済研究所が8月中旬から今後3年にわたるベーシックインカムの調査研究を本格的にスタートしました。
へー。
この他にも、アメリカでは6月末にロサンゼルスなど11都市で、アイルランドの政府も全国民に一定の現金を給付する実証実験をすると公約しています。
はい。
実際にドイツでは、ユニバーサルベーシックインカムではなく、無条件ベーシックインカムの略称とのことで、実験の原資は国の税金ではなく、14万人以上の民間人の寄付であることに大変興味があります。
へー。
田村さんは、世界がベーシックインカムに向かっている今日この頃に関して何かご意見はありますか?
03:01
また、これらの実証実験などはどうなると思いますか?お考えを教えていただきたいと思います。
こんな感じでお便りいただきました。
はい。ありがとうございます。
今日は、経済論とかにも入りそうなお話ということで、普段は社会保険労務士のお仕事というと、社会保障の話だったり、給付関連、社会保険関連、国の保険制度に関してのテーマが多いんですけども、
国のインカムというと、いろんな経済動向とか、失業のこととかいろいろありますので、そんな幅広いところをお話できたらなと、今日は思っています。
はい。
お話ししていく中で、いろいろこれからいろんな話をしていくと思うんですけども、いろんな統計とか裏付けとかに関してあんまり不十分な点とかも説明であると思いますので、あくまで試験で大沢田理論という感じで。
我々の勝手な考えで。
そうですね、あくまで自分たちの持論ですと。経済学者の方からそれはちょっとおかしいんじゃないですかって言われても、僕らは責任取れませんのでっていう話でやっていきたいなと。
持論と試験ということで。
そうですね。
ご質問のところで、ベーシックインカムについて何かご意見ありますかと、というところの話なんですけども、僕個人的なベーシックインカムに対する思いというかですね、認識をちょっと語りたいというか、しゃべりたいんですけど、
このベーシックインカムっていうのは、新型コロナの影響で、会社で働いてた人が回復されてしまって仕事がなくなっちゃったりとか、まだまだ働いてるけれども仕事が少なくなっちゃったっていう、お給料少なくなったっていう方に関して、いろんな懸念点とか不安がある中で、
先ほど申し上げました、セーフティーネット、社会保障って、どの国も日本ももちろんそうですけども、あると思うんですよ。
例えば、仕事がなくなったら、失業保険、雇用保険が出ますよ、給付出ますよとか、失誤中の怪我が起きたら、労災保険使ってくださいとか、出産とか育児の時には、出産手当金、症状手当金ありますよ、育児休業給付金ありますよとか、年金65歳以上には年金もらえますよとか、
本当に仕事も見つからなくてどうしようもない時には、生活保護制度があったりとか、そういうセーフティー制度っていうのがあると思うんですけど、あくまで個人個人、その人たちがいろんなバックグラウンドで、自分が仕事見つかんないとかいろいろあって、自分の責任でそういうことが起きて、なった時にセーフティーネットっていうのは、こういう保障制度はありますけども、
06:22
新型コロナとかの影響っていうのは、個人個人の問題じゃなくて、企業とか世界全体でもそういう仕事自体が喪失されないとか、そういう自分自身でどうしようもないことが起きた時に対して、それに対してお給料であったりとか、最低限の保障してあげなきゃいけないっていう意味でも、このベーシックインカムっていうのは、ちょっと見直すべきなんじゃないかなっていうのは、私個人的には考えておりまして、
見直すっていうのは、やらないほうがいいんじゃないかってこと?
そうですね、僕自身はやるべきかやらないべきか、ちょっとここは置いときまして、個人的な問題じゃない、自分ではどうしようもない環境時の万が一のこととか、あとはもう産業構造の変化、例えば人口が発達してとか、児童化が進む中で、人の仕事が少なくなっていく時代で、それって自分ではどうしようもないことじゃないですか。
そういう変化に対しても、人がちゃんと生きていけるように、国が給付金とか最低を生きていけるような保障するのが、ベーシックインカムっていう僕は意識でちょっといたんですよ。
それを、このコロナの時に便乗というか、そういう時に話すっていうのは、すごいいい機会なのかなっていうのは個人的には思ってるんですよ。
ちょっとそんな感じで、僕はベーシックインカムについて考えてるんですけども。
太田さん、ベーシックインカムについて、ご自由にどうお考えかお話いただけると。
そうですね。でも、田村が言うように、産業構造の変化によって、いつか必ずやってくる未来ではあるのかなとは思いますね。
ロボットとかAIによって、人間の仕事が少なくなっていくのかなとは思うんですよ。
一次産業も二次産業も、そういったものがどんどんロボットとかAIに置き換わっていって、置き換わらなくても今までよりもかなり少ない人手で生産が可能になると、やっぱり人が余ってくると思うんだよね。
そうなったときに、農業ができる仕組みを作り上げた会社が、そのお金を全部巻き上げていくかとか。
09:09
例えば、今まで鉄を作るにあたって、鉄鉱石や石炭を取ってきて、鉄鉱所で、製鉄所で鉄を作ってきたわけだけども。
こういったものを自動で作ることができるような仕組みを作り上げた人が全ての富を手にするかというと、そうなる可能性もあるかなと思うけれども。
いずれは、ベーシックインカムという形で、全ての人が働かなくても、お金を使う権利が手に入るっていう未来がいつか来るのかなと思うよね。
今の日本でそうなるのかどうかはちょっとわからないですけどね。
確かに、世界がいろんな産業ができ始めて、いろんな下請けさんもいろいろあるんですけれども、そこの会社さんが生み出したテクノロジーというのが、必ずそれの対価として全部入ってくるかといったらそういうわけじゃなくて、いろんな業者が関わっている中で、
それってじゃあ、こんだけいろんなイノベーション作ったのに、なんで僕らはお金入ってこないんだよってところもあるだろうから、そういうのを最低限、ちゃんと保証していくっていう意味でも、こういうベーシックインカムの考え方はすごいいいことだなって思いますよね。
今の日本の構造的には、どちらかというと少子高齢化で、高齢者1人あたりを支える人が、今までは4人で支えていたものが3人になって、いつか2人になっちゃうよ。
社会保障費もどんどんどんどん膨れ上がっていくよと、そのためには若い人が働いて税金を収めて、社会保険料を収めてというのが、もうなんかそのスパイラルから抜けられなくなってるじゃん、どっちかというと今は。
はいはいはい、そうですね。
この状況でさ、働かないってなるとさ、社会保障費がまかなえなくなると思うんだよね。
だから今は全然まだ、日本の人口の構造とか経済の状態を見ると、日本ではまだまだ先の話なのかなとは思いますけどね。
確かにね、日本は国民会保険でね、皆さんの何かしらの保険制度に入って、年金の積み立てもしなきゃいけないっていう制度で、アメリカとかいったらもうそんなん自己責任っていう形でね、保険は自分で民間に入ってっていう形でされてる方も多いですけども、
それをね、将来の人たちに積み立てた分に関して、今働いてる人たちがなんとかしてその分を稼ぐんだっていう話になったときに、このベーシックインカム支給することによって、そういう働く人たちがちゃんとそういうふうに創出されるのかとか維持されるのかっていうのは、結構難しい議論なのかなっていうのはありますよね。
12:21
そうですね。
ちょっと説明を省いてましたけど、ベーシックインカムとはということでですね、ウィキペディアさんからちょっと言葉を抜き取らせていただきますと、ベーシックインカムとは、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策のことですと。
新型コロナの影響でスペインかどこか、スペインで本当に新型コロナで低所得になってしまった方に対して給付金を支給すると。現にまだ手続きが進んでないからっていうニュースをいろいろやってると思うんですけども、本来このベーシックインカムっていうのはすべての国民に対して最低限の生活を送るのを給付するっていうことになるので、
全国民に対してベーシックインカムを支給するってなった場合、どこから財源が出るんですかって言ったら、もちろん税金だったりとか、そういうところから出るので、そういうところは本当にまかない気出るのかなっていうところは、各国の施策で多分変わってくるとは思うんですよね。
はい。
仕事を探してる人。仕事を探す意欲がない人は、失業しててもこの保険もらえないじゃないですか。
はい。
そうなった場合、実際に本当に失業保険をもらいたいっていう方も、頑張ってるけれども給付がもらえなくなってしまった、給付ニースが終わってしまったっていう方とか、生活保護とか、実際本当に仕事をどんだけ探しても見つからない状態で失業保険も切れちゃって生活保護を申請したいって言っても、窓口のほうで給付が通らないとか。
はい。
なんですかね、セーフティネット社会保障の方がいろんな受け取れないっていう状況の中で、手続とかいろんな煩雑な状況っていうのがあるから、給付すべきところに給付できないっていうところがあるけれども、こういうベーシックインカムをすれば、社会保障とかセーフティネットの手続きっていうのを一切することなく、給付金だけ支給する、全国民支給するってことで、
15:10
今までそういう社会保障で必要だった手続きっていうのが小さくなるので、よりもっと国がそこまで携わることじゃなくて、もっともっと民間で、いろんなサービスとか、いろんな経済活動を動かすという意味でも小さな政府を目指せるということで、ちょっと話長くなりましたけど、ベーシックインカムはそういうところに役立ちますよっていうのが言われてますと。
はい。
そういうのもあるんだろうなっていうのはありますけどもね。
はい。
果たして日本が今まで小さな政府というよりかは、こうやってセーフティネットの保障とかをいろいろと幅広くやってきてる中で、急にそういう政府に変えていけるのかどうかっていうのは非常に難しいところなのかなっていうのは思いますよね。
そうだね。なかなか難しいし、どっちかというと大きな政府だよね、日本は。
そうですね。
はい。
そうなんですよ。
国民としても国に保障をずっと求めてる感じがするかなという感じがするよね。
そうですね。特にこのコロナの時期でそういうところがやっぱり議論もいろいろされたじゃないですか、やっぱり本当に低消毒の方に対して、本当に大変な人に対して給付を出すのか、全国民に対して給付するのかっていうところに関しての考え方っていうのもいろいろと議論されましたけども、そういうのは難しいことだなっていうのはありますよね。
そうですね。はい。
いかがでしたでしょうか。次回もこのお話の続編をお送りいたします。魅力的なお話たっぷりです。お楽しみに。
シャローシラジオサニーデイフライデイ、DJの田村陽太でした。
それでは次回もリスナーの皆様のお耳にかかれることを楽しみにしております。
今日も気をつけて、いってらっしゃい。
17:27

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