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  2. 「時の記念日」によせて〜時刻..

1️⃣7世紀の天智天皇が作らせた「漏刻」は時間を測る機械でした

2️⃣日時計は時刻を計り,水時計は時間を測ります

3️⃣時刻と時間の違いはコンピューター技術に影響しています

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ニュースレター「STEAM NEWS」

金谷一朗(いち)

TEDxDejima Studioファウンダー・パイナップルコンピューター代表・長崎大学情報データ科学部教授

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目次

天智天皇と牢獄
いちです。おはようございます。このポッドキャストは、僕が毎週お送りしているニュースレター、STEAMニュースの音声版です。
STEAMニュースでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
STEAMニュースは、STEAMボード乗組員のご協力でお送りしています。
このエピソードでは、STEAMニュース第132号から、時の記念日に寄せてという話題をお届けします。
改めまして、いちです。このエピソードは、2023年6月1日に収録しています。
6月というのは、祝日がない月なのですが、6月10日はですね、時の記念日というですね、記念日になっています。
その時の記念日にちなんで、時間、そして時刻に関する話題をお届けします。
日本の第38代天皇、天智天皇が、まだ中野大江の王子だった頃の話です。
彼は牢獄という時計を作らせました。
この時計が最初に動いたのは、西暦671年の旧歴でいうと4月25日。
新歴、今の太陽歴でいうと6月10日だったそうで、この6月10日が今の日本の時の記念日となりました。
牢獄というのはどのような時計だったんでしょうか。
牢獄は現代でいうところの水時計です。
そこに小さな穴の開いた器に水を満たして、少しずつ水を漏れさせるんです。
その結果、水面の高さから経過時間を読み取れるというわけですね。
天智天皇が作らせた水時計の設計は残っていないのですが、
中国に残された当時の水時計から数段に渡るより複雑なものだった可能性も指摘されています。
水時計の歴史は古く、またおそらく東洋・西洋で独立に発明されていた可能性もあります。
例えばエジプトのカールナック神殿では、紀元前15から14世紀に水時計が使われていた証拠があります。
カールナック神殿はすごく巨大な神殿で、もし行かれたらものすごくインスピレーションを受けると思います。
本当に素晴らしい神殿です。
ぜひエジプトに行かれたら訪問してみてください。
それはさておきですね、水時計にはこれだけの長い歴史があったということなんですね。
水時計は日時計と違い、曇りの日も夜の間でも使えることから、あるいは時間の流れを可視化できることから、
時々の政治家あるいは異性者にとっては貴重な道具だったんだと僕は感じるわけです。
文明と治水、水の流れをコントロールするということですね。
この治水は切っても切れない関係にありますから、
水の流れを制御する喜びであるとか、達成感であるとか、そういったものも当時の貴族、そしてその時代の技術者にとっては喜びであったのかもしれません。
以上は僕の妄想です。
まあでもこういう妄想も楽しいですよね。
時刻と時間の違い
さてですね、皆さんは時刻と時間の区別をつけられているでしょうか。
時刻と時間を区別して使われているでしょうか。
日時計が測るのが時刻、水時計が測るのが時間なんです。
これね、文字で書くと日時計が測るの、測るは計測の計の方の字ですね。
文弁に10って書く測るの方ですね。
そして水時計が測るの、測るは計測の測の方、算随編の測の方なんですね。
皆さんは時刻と時間、あるいは測ると測る区別されているでしょうか。
というだけでは不親切なのでちゃんと説明しますね。
時刻というのは1日の経過、1日の流れの中の現在地のことなんです。
簡単に言うと、太陽が今どこにありますかという情報のことなんです。
これはもちろん昼間のことですが、昼間太陽がどの位置にいますかということ。
夜であれば、晴れた夜であれば、北極星がどの位置にいますかということ。
これが時刻の意味なんですね。
日本の赤市にお住まいの皆さんは、太陽が真南にいる時、これが日本の12時となります。
赤市市立天文科学館の日時計、こちらはですね、晴れた日には正確な時刻を刻みます。
なおですね、経度の違いから東京は赤市よりも20分早く、長崎は赤市よりも20分遅く時刻が変わります。
長崎は西に開けているので、というか日本の西の端なので、西はもう海しかないので、
東京と比べると夕方が1時間ほど遅いことになります。
これ僕は天然のサマータイムと呼んでいるんですね。
つまりは時刻というのは、太陽の現在地というふうに考えてください。
一方ですね、時間の方なのですが、時間は時刻と時刻の距離、つまりは間のことなんです。
時の間、時の間なので時間なんですね。
キッチンタイマーやストップウォッチで測るのは、この時間の方です。
水時計は古代のストップウォッチで水を流し始めた瞬間がスタートだったわけですね。
このスタートからの経過時間を水時計は可視化しているんですね。
時刻を時間と呼び間違えても、日常生活ではどちらの意味なのか困ることはないです。
まあ文脈からね、読み取ることができるわけですね。
しかし技術者、エンジニアや技術系ジャーナリストは、時間と時刻の区別、時間と時刻の違いを理解すべきだとね、僕は思っています。
技術系ジャーナリストの失敗
実はですね、この時間と時刻を勘違いした技術系、自称技術系ジャーナリストさんの大事故がかつてあったんですね。
詳しくはメールでお送りしているニュースレター、スティームニュースの方にリンクを貼らせていただいているんですが、
そういったこともあるので、少なくとも技術者、エンジニアというのは、時刻と時間というのを言葉の上では混同することはあっても、脳内では自分の心の中ではしっかり区別をしているということをお伝えしたかったんです。
時刻と時間の区別は天文学とコンピューターサイエンスの両方でとても重要なんです。
時刻はもともと天体の運行から決められたものですから、天文学者にとっては時刻の方が使いやすいんです。
一方、昼夜関係ないコンピューターサイエンティストやIT技術者は、ある特定の日時からの経過、時間の方が便利なんです。
例えば、Mac、iPhoneのようなコンピューターのプログラムを書いているプログラマーは、2000年1月1日0時0分からの経過秒数を非常に好みます。
とはいえ、時刻と時間は一対一に対応するから、どっちでもいいんじゃないかと思われるかもしれません。
例えば、2000年1月1日0時0分0秒から24時間経ったら、2000年1月2日でしょうと思われるかもしれません。
それで、あとは何時間経ってもそれを足していけばいいんじゃないの?って思いますよね。
っていうか、思ってください。話の都合上。
ところがですね、話はそう単純ではないんですね。
そして、これがコンピューターサイエンティストやIT技術者の悩みの種でもあるんです。
地球は何秒で1回転するでしょうか?
24時間×60分×60秒なので、86400秒です。
これを1太陽日という風に言います。
原子時計とUTCの利用
実は日にちの日ですね。
1太陽日と言うんですが、なぜ太陽日と言うかはですね、
メールで送りしているニュースレター、スティームニュースのバックナンバー第16号。
満潮と寒潮はどうして起こるのをご覧いただければと思います。
地球は時点の他に太陽の周りを光転もしているので、実際にはね、一周するのは24時間ではないんですね。
とはいえ、見かけ上太陽は24時間で一周するというか、太陽が一周するのを24時間になるように調整したのが太陽日というね、一日の単位なんです。
この太陽が見かけ上一周する時間を24時間で割って、その1時間を60分で割って、その1分を60秒で割ったもの。
この1秒の長さ、これがですね、一般的に使われている1秒だったのですが、つまり1日の長さ、1太陽日の長さを86400で割った長さを1秒と知ったのですが、実はこれ不便なんですね。
なぜかというと、1日の長さを知る必要があるので、1日の長さを測らないといけない。なおかつ1日の長さというのが微妙に変化することがあるんですね。
そのために1秒の長さというのは、原子時計という地球の時点とは関係のない時計を使うことに定められました。
原子時計、これは定義が少しずつ変化はしていて、最新の定義では2019年の定義が使われています。
原子時計を使った1秒の長さというのは、2019年の決議で決められたものを我々は使っています。2019年ですから、そんなに昔のことではないですよね。
原子時計というのは、言ってみれば高級な水時計なんです。それは時間を測りますが、時刻を測るものではありません。
時刻を知るには、時間を積算していく必要があります。時間を積算して初めて時刻がわかるんです。
実際、1977年から原子時計で積算した時刻を国際原子時というふうに呼びます。
もしも地球がその回転をずっと変えてこなかったら、そして原子時計の設計がより慎重になされていたなら、コンピューターサイエンティストもIT技術者も悩む必要はなかったんですね。
しかし、現実には太陽の運行による1日の長さと国際原子時で測る1日の長さは微妙に異なります。
太陽が真南に来る時刻が数年に1秒の割合でずれてしまうんです。
そこで、時間を積み重ねた国際原子時にさらにウルウビョーを加えてズレを解消した、経定世界時UTCというものが考えられました。
日本標準時JSTはこの経定世界時UTCにぴったり9時間を足したものと定義されています。
時刻サーバーの利用の問題点
皆さんがワードで文章を書いた時を想像してみてください。
ワード文章を保存します。
ファイルに保存したときに、OSはそのファイルにタイムスタンプという時刻情報を付けます。
ファイルが新しいのか古いのか、そのタイムスタンプ皆さんご覧になりますよね。
その時刻はコンピューターの時計に基づいて付けられています。
コンピューターは非時計ではなく水時計なので、ある決められた時刻からの経過秒数を内部に持っています。
もし皆さんがMacをお使いならば、その経過秒数というのは2000年1月1日0時0分からの経過秒数です。
もしLinuxをお使いの方がいらっしゃれば、1970年1月1日0時0分からの経過秒数です。
そして皆さんがもしWindowsをお使いならば、1601年1月1日0時0分からの経過秒数を使っています。
しかし先ほど申し上げた通り、UTCは国際原始時にUrubioを追加したものです。
Urubioというのはいつ挿入されるか事前には分かっていないのですが、これは話し合いで決められるわけです。
そこでインターネットに接続されたコンピューターは時刻サーバー、これは専門用語ではNTPサーバーと呼ぶのですが、
このネットにつながった時刻サーバーから正しい時刻を取得しています。
時間は自分で数えているのですが、時刻とのずれを補正するために時刻サーバーから正しい時刻を取得しています。
ただいきなりUrubioを挿入してしまうと、場合によってはコンピューターが
時刻の基準と扱い方
なんで23時59分59秒の次が0時0分0秒やないねん。
なんで23時59分59秒と次の0時0分0秒の間が2秒あんねんという風になってしまうんですね。
Urubioというのは23時59分59秒の次に23時59分60秒を挿入することで実現されているんですが、
これがコンピューターにとってはとても例外的なことなので、場合によってはうまく扱えないこともあるんですね。
そこでですね、例えばGoogleが提供している時刻サーバーでは20時間かけてゆっくりとUrubioを挿入するという処置をとっています。
つまりですね1秒の長さが少しずつ長くなっていくというようなこともしています。
一方のGPS衛星ですね。皆さんGPS使っていますよね。
こちらもですね、GPS衛星に搭載されている原子時計。
こちらを用いて皆さんの位置というものを計測するために使われているわけなのですが、
こちらはですね、このUrubioを挿入するとめんどくさいので1980年以降はUrubioを挿入していません。
つまりGPS衛星は国際原子時のまま使っているということになります。
UTC協定世界時とはズレが生じています。
GPSを使っているスマホですね。iPhoneとかAndroidとかでは内部に2つの時刻を持っているということになります。
GPS向けの国際原子時、そして今の現在時刻を知るための協定世界時、そしてそれに区時間を足した日本標準時という2つの時計を持っているということになります。
僕自身はプロのコンピューターサイエンティストであり、IT技術者ではあるのですが、一方でアマチュア天文学者、学者というとちょっと言い過ぎかもしれません。
アマチュア天文愛好家ではあるので、どっちかに統一できたらいいなと思っているのですが、
僕の中では両方、秒台のズレしかないのですが、両方の時刻というものが生きています。
それでも時差に比べたら小さな問題かもしれません。
時刻と時間の関係
エジプト時刻と日本の時刻、7時間差があるので、1秒のズレというのは許容範囲かもしれません。
というわけで来たる6月10日、時の記念日にちなんで、時刻、そして時間の話題をお届けしました。
今回のエピソードも最後まで聞いてくださってありがとうございました。
また次のエピソードで皆様とお会いできることを楽しみにしています。
steam.fmの一でした。
24:58

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