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2023-05-26 24:58

夢と現実:スティーブ・ジョブズの失敗作たち【第131号音声版】 #134

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1️⃣コンピューターはキューブで,マウスはまんまるでなければならない?

2️⃣IT業界ではサービスの階層を登ることが難しいと言われています

3️⃣CG研究者大村皓一は,アーティストはソフトウェアエンジニアの上に,ソフトウェアエンジニアはハードウェアエンジニアの上に立てと言いました

超新星SN 2023ixf中継サイト(日本時間2023年5月26日より)👉 https://www.virtualtelescope.eu/2023/05/22/the-bright-supernova-sn-2023ixf-in-messier-101-online-observation-25-may-2023/

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ニュースレター「STEAM NEWS」

金谷一朗(いち)

TEDxDejima Studioファウンダー・パイナップルコンピューター代表・長崎大学情報データ科学部教授

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成功するためには、今までの2倍の速度で失敗しなさい。トーマス・J・ワトソン
いちです。おはようございます。このポッドキャストは、僕が毎週メールでお送りしているニュースレター、STEAM NEWSの音声版です。
STEAM NEWSでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
STEAM NEWSは、Steamboat乗組員のご協力でお送りしています。
冒頭でご紹介したのは、IBM初代社長トーマス・J・ワトソンのSTEAMな言葉。
成功するためには、できるだけ多く、できるだけ早く失敗することが重要だと彼は伝えています。
改めまして、いちです。このエピソードは、2023年5月25日に収録しています。
このエピソードでは、STEAM NEWS第131号から、夢と現実、スティーブ・ジョブズの失敗作たちをお届けします。
このエピソードですね、収録の都合で2日連続お届けすることになってしまったのですが、どうぞ今回も25分間最後までお付き合いください。
Apple共同創業者スティーブ・ジョブズは、幾何学に多大な関心を持っていました。
1976年にAppleコンピューターを共同創業したジョブズだったのですが、
1985年に自分が作った会社を追われてしまいます。
そんな中、ジョブズはピクサーという会社を手に入れます。
ピクサーはジョージ・ルーカスが設立したルーカスフィルムのコンピュータ部門でした。
ルーカスはコンピューターを使って映像を作る予定で、このピクサーを設立したのですが、
当時は支給キャッシュが必要だったので、ピクサーを売りに出して、スティーブ・ジョブズが買い取ったということになります。
そして、1986年にスティーブ・ジョブズはピクサーから、ピクサーイメージコンピューターというコンピューターをついに売り出します。
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メールで送りしているニュースレター、スティームニュースではそのピクサーイメージコンピューターの写真を掲載していますが、もし今手元でスマートフォンあるいはコンピューターをお持ちであれば、ピクサーイメージコンピューターで検索してみてください。
真四角のコンピューターが出てきます。本当にね、サイコロ型のコンピューターなんです。
スティーブ・ジョブズはこの後、少なくとも2回サイコロ型のコンピューターを作るんですが、これがその一つ目になります。
先進的なコンピューターだったのですが、このピクサーイメージコンピューターはあまり売れませんでした。
皆さんご存知の通り、ピクサーはその後、アニメーション作品、こちらの映像制作の方に特化していって、大ヒットを飛ばし続けるわけなのですが、
もともとはこういったコンピューターの会社だったんですね。 アップルを追われたスティーブ・ジョブズは、自分自身コンピューターの会社を作るという夢を捨てきれずに、
次のコンピューター会社を立ち上げています。 その名もネクストコンピューター。次のコンピューターですね。
1988年、ネクストコンピューター社はネクストキューブという、また別の先進的なコンピューターを発売します。
こちらもですね、画像検索していただくと見つかると思うのですが、もう完璧なキューブなんですね。サイコロ型のコンピューターです。
このコンピューター、現在のウェブ、ワールドワイドウェブが開発された母体となったコンピューターでもあり、
名機ではあったのですが、これも商業的には売れませんでした。
この頃、もうすでにスティーブ・ジョブズのサイコロ型コンピューター、キューブ型コンピューターへの執念というのは感じ取れるのですが、
その語がまだあるんですね。 1996年にスティーブ・ジョブズはアップルに復帰します。
そして2000年に、今度はアップルからキューブ型のコンピューターを売り出します。
その名はタワーマックG4キューブでした。 名前にキューブが入っている通り、これもキューブ型のマックだったんですね。
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当時のパーソナルコンピューターでは当たり前だった冷却ファンを排するなど、先進的な設計だったのですが、
というか、むしろ先進的すぎたせいなのか、このキューブ型コンピューターも売れませんでした。
これキューブ型だから売れなかったというよりは、若干品質の問題もあったように感じます。
僕もですね、発売から少し遅れて、これは職場で使っていた人がもう使わないというので譲ってもらって使っていたことがあるのですが、
たびたびですね、暴走したりとか誤動作したりとかしていたので、これはキューブ型だったからというよりは品質の問題であまり売れなかったのではないかなとは思います。
ただし、このキューブ型設計の精神は 2005年から続くマックミニに生かされているようです。
冷却ファンを持たないこのマックミニシリーズは非常に安定度が高く、僕たちもメディアート作品に組み込むときには第一選択にしています。
本当に何年も電源入れっぱなして動き続けてくれるんですね。
それに僕の実験室でもマックミニレイト2014というもうすぐ9年、もうすぐ9年目になるモデルが現役で動いているんです。
これは主に教育用途に使っているんですが、ちゃんと使えています。
このマックミニレイト2014、発売当初はハズレと言われたモデルなんですが、今でも使えていることを考えるとこれは十分当たりだったんじゃないかなと思います。
というわけで、失敗作3つ続いたけれども、さすがはスティーブ・ジョブズ、失敗から学んで成功に持っていったんじゃないかなと。
これは少し強引な例えかもしれないのですが、僕はそんなふうに解釈をしています。
余談になりますが、マックではなく、Windowsユーザーの間でも自作PCとして、このキューブ型の箱でPCを作るというのがこの時期ブームになりました。
懐かしいです。
スティーブ・ジョブズが気化学にこだわった結果、世に送り出したもう一つの失敗作についてもお届けします。
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スティーブ・ジョブズとデザイナーのジョナサン・アイブが世に送り出した伝説のパーソナルコンピューター、iMacに付属した、別な意味で伝説となったマウスです。
これが1998年に発売されたiMacのマウス、通称ホッケーパックマウスなんですね。
北米ではこのホッケーって人気スポーツですから、このホッケーに使われるパックの形とよく似ているということで、ホッケーパックマウスというふうに呼ばれたのですが、
我々日本人から見るとこれは大福餅あるいはアンコロ餅の形というのがわかりやすいかなと思います。お餅マウスというふうに呼びましょうかね。
初代iMac本体のテイストに合わせて丸みを帯びた可愛らしい形でして、トランスルーセントというふうに半透明のマウスなんですね。
すごく見た目に美しくて親しみが持てる形なのですが、とっても使いにくかったんです。
マウスをお使いの方はちょっと想像してみてください。マウスがまんまる大福餅の形をしていたとしたら、どっちが上かわからなくなっちゃいますよね。
しかもマウスにはボタンがありますから手のひらで押し付けるわけにはいかず、やはりこの指先で持たないといけないんですね。
Appleの場合ボタンは一つですから、どの指をかけても大丈夫ではあるのですが、この指先でこの大福餅をつまんでキュッキュー動かすというのはやはりどうにも難しかったわけですね。
そのためにこの大福餅の形を細長くするという、せっかくのデザインを台無しにするようなマウスカバーすら他社から売り出されていました。
こう考えるとスティーブ・ジョブズの機化学へのこだわりが暴走したシーンとも呼べなくはないじゃないでしょうか。
その後の2000年に発売されたAppleプロマウスはさすがに形を変えてきました。これは細長い円形に変わりました。
ただ転んでもただでは起きないスティーブ・ジョブズということでしょうか。この初代プロマウスで採用されたボタンの見えない設計。
12:01
これ現行のマジックマウスAppleマジックマウスまで引き継がれています。 当時はですねボタンが一個も見えないのでゼロボタンなんて呼べ方もされていました。
というわけで僕もちょっと気になったのでスティーブ・ジョブズの裁判年のオフィスの写真を調べてみたんですね。
彼はAppleプロマウスを使っていました。この時代すでにマジックトラックパッドという製品も発売されていて、デスクトップマックでもトラックパッドを使えたんですが、スティーブ・ジョブズはこのワイヤレスのプロマウスを使っていました。
やはり彼手元にはこういう丸いものがあるべきだという発想を持っていたのかもしれません。
もう一つスティーブ・ジョブズが仕掛けたものの盛大に苔けたものをご紹介します。
今度はハードウェアではなくApple製のソーシャルネットワーキングサービス、SNSです。
ひょっとしたら覚えていらっしゃる方もおられるかもしれません。
Appleは2010年にPINというSNSを発表しました。
Appleは2003年からiTunes Music Storeという音楽のダウンロード販売を手掛けていまして、それと連動するPINは音楽愛好家のためのSNSという位置づけだったんですね。
狙いは悪くなかったように思うんですが、PINは2年足らずで閉鎖を余儀なくされました。
IT業界には長く言われている格言があるんですね。
ひょっとしたらその格言当てはまるかもと思うのでご紹介させてください。
IT業界ではサービスの階層を上に上ることが困難だと言われています。
Googleはネット検索よりも下側、メールサービスであるとかブラウザーであるとか、それにハードウェアを作ることだってできるんです。
今電話作ってますよね。
でもネット検索より上側にあたるSNS作りはできなかったんです。
正確に言うと何回か挑戦はしているのですが、結局諦めてしまいました。
15:00
Microsoftはオフィス製品よりも上側にあるネット検索について、今では多少巻き返しているものの非常に長い間苦戦しています。
もちろんオフィス製品の下側はOSであるとか、マイクロソフト自身非常に苦労はしていますが、ハードウェア制作に関しても現在ではうまくいっているところですね。
そしてApple、ソフトウェアもハードウェアも非常に上手に作ることができるんだけれども、
ネットワークサービスに関して言うと、初期のドットマックのことは一旦置いておくにしても、あまり褒められたものではないわけですよね。
ましてさらにその上の階層、SNSを作るというのは非常にハードルが高かったのかもしれません。
ここらへんどういうふうに説明がつくのか僕にはよくわかりません。ひょっとしたら企業文化のようなものがあるのかもしれません。
この言い伝えはいつも僕にCG研究者の大村光一先生の話を思い出させるんですね。
大村先生というのは映画ゴルゴ13のCGパートを制作された方です。
ゴルゴ13ってCG映画になってたっけと思われた方がいらっしゃるかもしれません。
なんと1983年、世界に先駆けて劇場版ゴルゴ13の中でCGパートが使われたんですね。
このCGパートを制作されたのが大村先生でした。そして彼はこういうふうに伝えています。
CGを作るためにはアーティスト、ソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニアからなるチームが必要だと。
そしてアーティストはソフトウェアエンジニアの上に、ソフトウェアエンジニアはハードウェアエンジニアの上に立たなければならない。
その代わり、ソフトウェアエンジニアはハードウェアエンジニアを納得させるテクノロジーの強度が必要。
アーティストはすべてのエンジニアを納得させるアートの強度が必要だと、彼はこういうふうに伝えてくれたんですね。
18:00
自分自身をアーティストとも呼んだスティーブ・ジョブスは、高い強度でソフトウェアの設計もハードウェアの設計も主導しました。
彼にとっては、コンピューターはキューブでなくちゃいけなくて、マウスはお持ちでなければならなかったんでしょう。
それらは確かに失敗ではあったのですが、その強いこだわりがあって、かつ失敗から学習したからこそ、
マッキントッシュ、iMac、iPod、iPhone、iPadと世界を次々に変えていったハードウェア、
そしてiTunesミュージックストアのような、あるいはアップストアのような、やはり世界を変えたサービスを生み出していけたんだというふうに僕は感じます。
最後にですね、もう一つだけジョブスのこだわりをご紹介します。
実はジョブスがいた頃のAppleコンピューターは、コンピューターの中身が綺麗なんです。
これすごいことですよ。
僕自身Appleコンピューターにあやかって対抗して、パイナップルコンピューターというコンピューターを製造・販売をしているのですが、こちらはですね、やはり中身こだわっています。
削除をするとですね、こだわりすぎて、このアンコロ持ち型のマウスと同じ失敗もしているんですね。
どっちが上だか下だかわからないっていうふうに、まんまるだとそうなっちゃうじゃないですか。
僕も完全左右対称、上下対称のコンピューター基板を設計して製造に回したところ、上下間違えられたということがありました。
本当ね、失敗から学ばないといけませんね。
というわけで、Apple共同創業者スティーブ・ジョブズに関する失敗の話題をお届けしました。
さて、番組後半ではですね、気になる科学ニュースをお届けしたいと思うのですが、今週はですね、ぜひお知らせしたいニュースがあります。
天体ニュースなんですけれどもね。
オーグマザの北斗七星のすぐそばに、超新星が現れたというニュースが飛び込んできました。
21:00
このポッドキャストをお届けする2023年5月26日の日本時間ですね。
日本時間の午前7時から、イタリアの天文台からオンライン中継があるそうですので、
ぜひご覧になってみてください。 僕も中継で見てみようと思います。
この時間ですとね、オーグマザ見えないですから、もう中継で見ざるを得ないのですが、
残念なことに夜間もですね、まだ明るさが肉眼で見るには足りなくて、望遠鏡を使わないと見えないので、
まだあの超新星といっても昼間も見えるというような明るさでは全然ないんですが、
でも星がね最後爆発する直前なので、 滅多に見る機会がないので、
まあネット中継で見られるということも貴重な機会ではないかなと思います。
気になってですね、超新星ってどのぐらいの頻度で見つかっているのかなぁと思って調べてみたんですね。
現在では観測システムがものすごく良くなっていて、なんと年間500個ぐらい見つかっているそうなんです。
なんかこれありがたみ薄れちゃうかなぁとも思いがちなのですが、
超新星爆発というのは一つの銀河で数えると50年に1回ぐらいしか起こらないそうなんですね。
星はもちろんのこと星の数ほどあるわけですよ。天文学的な数の星がある中で、それが銀河1個の中で50年に1回しか起こらないという非常に稀な現象なので、
それがリアルタイム中継で見られるという機会は、なんだかんだ言ってしょっちゅうはないと思うので、ぜひこの機会に見ていただければと僕も思います。
今回発見された超新星ですね、SN2023IXFというふうに命名されているのですが、
発見者がですね、日本人板垣光一さんという方です。 すごいですね、彼はですね著名な超新星ハンターなんだそうです。
夢のある話ですよね。
というわけで、このエピソードも最後まで聞いてくださってありがとうございました。
また次のエピソードでお会いしましょう。steam.fm 1でした。
24:58

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