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作家アーサー・C・クラークが「太陽からの風」で描いた「ソーラー・セイル」.彼は1963年に「畳み方はまだ知られていない」と書きました.しかしその7年後に日本人の三浦教授が畳み方を発明してしまいます.今週はこのミウラ折りと,キリン「氷結」の缶で使われている構造をご紹介していきます.

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いちですおはようございますこのポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター steam ニュースの音声版です
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改めまして1ですこのエピソードは2022年の4月14日に収録していますこのエピソードの オープニングで
缶を開ける音が入っていましたこれ関係があるんですね 今回のエピソードではこの缶のデザインと宇宙開発についてお話をしていきます
作家アーサー c クラークは1963年5月 今から59年前に短編 sf 小説太陽からの風を書きました
太陽からの風はこんなストーリーです 赤道上空22,000マイル
今男たちは 太陽ヨットレースのスタートラインに並んでいた
途方もなく大きな遠径砲は惑星の間を吹く風を受けていっぱいに膨らんでいる エース開始まであと3分
これから地球を2周してその加速で地球から脱出し 太陽の風を背にまともに受けながら月へ向かうレースが始まる
この短編小説のテーマはタイトルにもなっている 太陽からの風つまりは太陽風です
太陽風とは太陽から吹き出している高温の粒子のことで 主成分は電子
氷子 アルファー粒子という
地球上ではあまり単品で見かけない粒子たちです ラーメン店の煮卵のようなものでしょうか
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煮卵単品で注文はしないですよね 地球上では氷子と電子がくっついて水素になっていたり
電子とアルファー粒子がくっついてヘリウムになっていたりして そんな存在で見かけることが多いです
これらの粒子が秒速250から750km/hで 太陽から飛んでくるんですね
この速度は音速の1000倍から2000倍といったところです こう聞くと惑星間ヨットレースもできそうな気がしてきませんか
非常に大きくて軽い方を張ると 原理的には太陽風の圧力を受けてヨットは加速します
地球軌道のあたりだと太陽風はだいたい1から6 ナノパスカルの圧力を持ちます
1ナノパスカルは0.0000001パスカルのことです
少し強い風である風速10mがだいたい60パスカルなので 随分と小さな圧力になってしまいますね
まあとはいえ空気抵抗やら地球の重力やらを考えなくて良いので 宇宙ヨットレース成立しそうです
この太陽風は電気的には中性ではありません つまりプラスだったりマイナスだったりといった静電気を帯びています
下敷きをこすって髪の毛を立たせるやつですね 最近の子供はそんな遊びしてないかもしれないんですけれども
どうなんでしょう ぜひねあの子育て中の
親御さんは教えていただければと思います
一方地球は巨大な磁石なので太陽風は地球のs 極とn 極つまりは北極と南極に吸い寄せられます
太陽風が強く吹いた日にはそれらはオーロラになります オーロラが極地でしか見られないのはこのせいなんですね
でも曲地だけずるいとは思わないでください 地磁気を持たない金星や火星では
大気が太陽風によって徐々に宇宙へ吹き飛ばされているんです つまり地球は地磁気によって守られているということですね
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それだけではないんです強い太陽風が思いっきり地球をヒットすると大変なことが 起こるんです
それを日や不正でくれているのが地球の極地なんです 塞ぎきれなかったらどうなるかという話はこのポッドキャストのエピソード55でお
話ししていますよかったらねまた振り返っていただければと思います エピソード55は電磁波兵器は sf じゃないというタイトルでねお届けしていました
太陽風の存在は1859年イギリスの天文学者リチャードキャリントンによって 予測されました
そして1959年1月 ソ連、現ロシアですね
ソ連の月探査機ルナー1号が初めて太陽風を観測しました アメリカは1962年の近世探査機マリナー2号で太陽風を観測しています
とこれが1963年のアーサー・C・クラークに太陽からの風を描かせるモチベーションとなったことでしょう
短編小説太陽からの風の中で一旦広げた方を再び畳みたいがその方法はまだ発明されていないというシーンが出てきます
引用してみましょう これから先地球を回る軌道の半分近くもの間
この膨大な面積の全部を太陽に対して垂直に立てておかねばならないのだ この先12ないし14時間の間は
頬は役に立たない邪魔者なのだった 再び使えるようになるまで頬をすっかり畳んでしまえればいいのだが
実際にそうする方法を考えついた者は まだ誰もいないのだった
この物語の設定がいつのことかは書かれていません ただ人類が少なくとも地球と月の間を自在に行き来する時代なのでしょう
このペースで行くと22世紀頃かもしれません 太陽からの風が執筆された7年後
東京大学宇宙航空研究所 ゲン・ジャクサ宇宙科学研究所の三浦光良は
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三浦織という紙の畳み方を発明します この三浦織を使えば宇宙空間で大きな頬を広げることもそして畳むこともできるんです
日本の折り紙文化を剃るべしということかもしれません アサシー・クラークは通信衛星、軌道エレベーターなど現実に先駆けて
コンセプトを発表する作家なのですが この折り紙に関して言えば
現実が SF小説を追い越した一例となりました
この三浦織なんですが言葉で説明することは大変難しいので ぜひねニュースレターからリンクしている youtube 動画をご覧になってみてください
一瞬何が起こっているのかわからないかもしれません 僕自身も自分で三浦織手帳というのを作ってみたことがあるんですね
でその時にその便利さに感動したことがあるんです A3のコピー用紙を三浦織りでポケットサイズにしただけなんですが
一方向に引っ張るだけで一気にA3サイズに広がり 同じく一方向に押し込んでいくだけでポケットサイズに戻るんです
あと登山用の地図もわざわざ三浦織りに織り直して使っていました 三浦織りだとこのエッジが分散するので地図が擦り切れて
いざ使おうとした時に地図が真っ二つに裂けちゃうなんてことが起こりにくいんですね 1970年に発表された三浦織りは1995年3月18日に
種ヶ島宇宙センターから打ち上げられた 宇宙実験観測フリーフライヤーによって宇宙で展開実験が行われました
結果はうまくいったようで短編小説 太陽からの風で描かれたアイディア実現への
一歩となりました 宇宙実験観測フリーフライヤーは1996年1月13日
スペースシャトルエンディバーに登場した若田光一宇宙飛行士がロボットアームで回収し 現在は国立科学博物館に展示されています
2014年NASAジェット推進研究所研究員の ブライアントリーズは三浦織りをヒントに新しいソーラーパネルの畳み方を提案しました
イノベーティブな折り紙ってまだまだありそうですね
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ところで皆さんはどのように空き缶を捨てているでしょうか 体積を小さくしようと思ってもなかなか手の力だけではペタンコにできませんよね
僕はのワーキングブーツを履いて足で一気に踏み潰してペタンコにしています このように構造物に上部から力を加えるとどこかで耐えられなくなり
変形します これを座屈と呼ぶのですがこの座屈の仕方について
東京大学の吉村吉丸教授が研究をしていました 吉丸の吉の字は徳川義信の吉
慶応大学の慶の字ですね 吉村は航空機の胴体の変形について研究している中で
吉村パターンという変形パターンを発見します これは別名ダイヤモンドパターンともいい
折り紙で再現することもできます メールで送りしているニュースレッダーの方ではこの吉村パターンの写真も紹介しています
これ当初はですね航空機がどのように壊れていくかの研究だったんですね 航空機ご存知のようにアルミ合金製の円筒ですよね
非常に軽くて丈夫な円筒なんですけれども つまりは
あの間引量とかと似てるんですね構造があってこれを正面からこう圧力をかけていくと つまり足で踏みつぶすような圧力をかけていくとどのように壊れていくのか
例えば新幹線でと500系新幹線なんかもアルミ合金製のチューブですから 似たような構造になるかと思うんですけれども
この航空機まあそれを含めたアルミ製のチューブというのがどういうふうに潰れていく かの研究だったんですね
ところがですね NASAラングレー研究所に出向していた東京大学の三浦光良教授が
1969年にこの パターンが
つまり潰れていく形を最初から作っておくことで かえって円筒形を丈夫にすることに気づくんです
三浦によると彼はこのアイディアに PCC Pシェルという名前をつけたものの
ひとまず放置してしまうんですね。でその代わりに三浦織という折り紙パターンの発明へと進みました。
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そして1970年についに三浦織のアイディアが完成します。
でこの PCC Pシェル 三浦が放置したアイディアの方なんですが彼のブログによると
東洋製缶という缶のメーカーですね。 三浦のブログではT社という風に名前を付せてあるんですけれどもこれは東洋製缶です。
この東洋製缶の技術者が ごめんなさい言えてなかったですね
技術者が1995年に三浦を訪問し PCC Pシェルを缶飲料に応用したデモを見せたそうです。
缶を開けるとパキパキっと変形して楽しいことや捨てる時に綺麗に圧縮されることなどが特徴です。
この飲料缶が2001年のキリン氷結に採用されました。
2019年この缶飲料のデザインダイヤカット缶が特許庁の管轄する立体商標に登録されました。
このポッドキャストのオープニングでお届けしたこの缶を開ける音、缶が少し潰れる音、実はこれキリン氷結の音だったんですね。
で、あの正直に白状しますね。このエピソードそのキリン氷結を飲みながら収録しています。
結構いい気分です。
キリン氷結はアルミ製ダイヤカット缶なのですが、スチール製のダイヤカット缶も製品化されています。
こちらはですね、同じ厚みの缶で作ると、その従来品の3倍の強度を持つそうで、強度が必要なコーヒー缶の他に
改めて宇宙開発へ逆輸出されつつあるそうです。
宇宙開発の現場から生まれた吉村パターン、それを元にした PCCPシェル、これは三浦が考えた形状ですね。
それが飲料缶、キリン氷結の缶であるとか、キリン氷結はこれ立体商標に登録されてますから他社は同じジャンルでは出せないんですけれども
コーヒー缶とかにも使われていて非常に強度が高いということで、宇宙開発にもこの
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PCCPシェルの構造が使われそうになっているというお話なんですね。
最後にもっと勉強したい人向けに、キーワードであるとか、それから少し余談になるかもしれません。
あのちょっとしたお話をね、お伝えしておこうと思います。 一つ目は折り紙についてなんですが、
日本の折り紙研究のトップランナー、これ筑波大学の三谷淳教授が「折り紙ノート」というね、記事をネットで公開されています。
初心者にも大変優しく書かれているので一読おすすめします。 ネットで検索してみてください。
「折り紙ノート三谷淳」です。
二つ目は太陽風について、これは少し余談になるのかもしれません。 太陽から風が吹いているということはですね、地球上の風というのは地球を一周して戻ってくるので、
地球から何かが失われているということはないんですが、太陽から風が吹いてくるということは、太陽から湧き出しているわけで、
ということは太陽はいつか蒸発してしまうはずなんですよね。 太陽から湧き出して、全方位に風が吹いていて、
それが地球にも降り注いでいるということは、 太陽から湧き出しているから太陽はどんどん失っていってるはずなんです。
太陽風を送り出すことによって、太陽は1秒間に約130から190万トンを失っていると考えられています。
これは1億5000万年ごとに地球1個分の重さを失うことに相当します。 まあしかしですね、太陽が誕生して以来、
太陽風によって失われた分量というのは、約0.01%に過ぎないと見積もられています。 つまり太陽の0.01%しかまだ失っていないということなんですね。
なので太陽風は吹き続けていても、太陽が太陽風を送り続けていても、 まだまだ大丈夫ということですね。
そして3つ目、最後の余談になるんですけれども、 太陽風はどこまで届くのかという話題です。
太陽と地球との距離を1天文単位あるいは1AUと呼びます。 太陽風はだいたい50から160天文単位の場所で
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完全に速度を失っていると考えられています。 この太陽風がもう速度を失って
この他の 宇宙の物質の中に溶け込むっていうんですかね。
もう周りの物質と区別がつかなくなる場所、そこをヘリオポーズと呼びます。
このヘリオポーズって太陽からの一定の距離を経た面に、 球面になっているんですけれども、この球面を
太陽系の圏、太陽系圏あるいは太陽圏と呼んで、その外側と内側を区別する境目の面になっていると考えます。
この面までが太陽系ということにね、太陽の影響圏ということになろうかと思います。
2012年8月25日、NASAの惑星探査機ボイジャー1号が
人間が作った機械として初めてというか、地球由来の物質として初めてヘリオポーズを抜けて
太陽圏圏外へと旅立ちました。 2018年11月5日には後を追うボイジャー2号がヘリオポーズを超えて圏外へと
旅立ってきました。 ボイジャー2号なんですが2025年頃までは地球と更新を続ける見込みです。
このヘリオポーズを抜けた世界、これ英語ではインターステラスペースと呼ぶんですが、日本語だと星間空間ですね。
星の間の空間と呼ぶんですが、この太陽の影響圏を脱して
他の恒星たちの影響下にもない本当の宇宙
星間宇宙インターステラスペースなんですね。 なんかちょっと胸が熱くなりませんか
そんなインターステラーからボイジャー2号は地球に細々と電波を送ってきてくれています。
ボイジャーはねもちろん太陽風を受けることも太陽からの光で発電することもできませんから
あの原子力電池をね持ってるんです。自分で電池を持っていてそこで発電して信号を送ってきてくれているんですけれども
それももうあと数年で届かなくなってしまいます。 というわけで僕はボイジャー2号に
氷結で乾杯を送りたいと思います。 今日も聞いてくださってありがとうございました。
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どうぞ素敵な一日をお過ごしください。イチでした。
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