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将棋や西洋のチェスのルーツは古代インドの「チャトランガ」というゲームだと考えられています.チャトランガ系のゲームの特徴は「運」の要素が無いこと,全ての情報がオープンになっていることなどです.これ,推理小説や数学の問題と似ていますよね?実際,将棋は数学の一分野なのです.

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Photo by Kentaro Toma on Unsplash

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[音楽]
おはようございます、いちです。
このポッドキャストは、僕が毎週お送りしているニュースデータ、スティームニュースの音声版です。
スティームニュースでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
スティームニュースは、スティームボート乗組員の皆様のご協力でお送りしています。
[音楽]
改めまして、いちです。
2022年もスティームニュースをよろしくお願いします。
さて、新年早々ということになると思うんですが、
1月9日から10日にかけて、将棋の第71期王将戦、第一局が開かれます。
対局するのは、渡辺昭三冠と藤井壮太四冠という、現代を代表する騎士のお二人です。
渡辺三冠、藤井四冠とも、中学生で4段になった元スーパー中学生でして、最高位である9段になったのも、
渡辺三冠が21歳7ヶ月、藤井四冠が18歳11ヶ月。
その、なられた時は最年少記録だったんですね。
藤井四冠は、現在でも最年少記録保持者でいらっしゃいます。
しかも、お二人とも現在絶好調なんですよ。
本当にどんな勝負になるのか、ものすごく楽しみなところなんですが、
というわけで、今週は将棋をテーマにお送りしたいと思っています。
最後までどうぞお楽しみください。
現在、我々が知っている将棋は、正式には日本将棋、あるいは本将棋と呼びます。
というのも、将棋には歴史的にも世界的にも多数のバリエーションがあるため、区別する必要があるんですね。
日本でも15から16世紀頃の室町時代までは、小将棋という、小さい将棋と書いて小将棋という、
本将棋とは異なる将棋が指されていたことがわかっています。
小将棋には、現代では失われている象という駒が扱われていました。
将棋のルーツは、古代インドのチャトランガというボードゲームです。
チャトランガは6世紀頃に遡るとみられています。
戦争好きの王に戦争をやめさせるために、皇宗がチャトランガを考案したという説があるんですけれども、
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この話は少し出来過ぎな気もしています。
チャトランガのルールは失われているのですが、盤面は本将棋とよく似ています。
駒は王、これは本将棋の王将と同じです。
それから兵、これは本将棋の夫と同じですね。
そして車、本将棋の飛車と同じ。
そして馬、馬は本将棋にはないんですけれども、チェスのナイトと同じ動きをする駒です。
そして象、これは本将棋の銀と同じ動き。
そして神、下神の神ですね。
本将棋の銀将とよく似てるんですが、前進ができない駒。
この6種類があったんじゃないかという風に言われています。
また本将棋と同じく、2人のプレイヤーが交互に駒を動かしたと考えられています。
盤面は両方のプレイヤーから見てオープンになっています。
つまり隠し事ができないような盤面になっています。
小将棋には持ち駒ルールがなかったんですね。
日本の本将棋の元になった小将棋には持ち駒ルールがなかったことから、
そのさらに元になったチャトランガにも駒の持ち駒ルールというのがなかったんじゃないかという風に考えられています。
そんなチャトランガからは西洋のチェスも生まれています。
チェスが現在のルールになったのは16世紀頃なんですが、将棋とチェスが似ているというのは、ルーツが同じだからなんですね。
チェスには持ち駒ルールがないんですが、本将棋から持ち駒ルールを輸入して作ったクレイジーハウスという、変則チェスというのも存在します。
国連にですね、世界チェスの日というページがあるんですけれども、このページによるとチェスのプレーヤーは世界で6億人いるそうです。
そのうち人気のオンラインチェスサイトチェス.comに登録しているのがおよそ7700万人。
ところがですね、チェス.comではクレイジーハウスもプレイできるんですけれども、なかなか対戦相手が見つからないという書き込みがありました。
というわけでその持ち駒ルールを採用しているチェスであるクレイジーハウスというのはかなりマイナーなゲームのようですね。
本将棋の人口なんですが、こちらは日本将棋連盟によると1200万人いるそうです。
本将棋の他に持ち駒ルールを持つボードゲームは先ほどのクレイジーハウスなんかを除けばないので、国外から見ると驚きのルールというふうに言えるかもしれません。
実際ですね、太平洋戦争の直後、日本が負けた直後ですね、GHQが本将棋の持ち駒ルールを捕虜虐待じゃないかということで、
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本将棋そのものを禁止しようとしたんですね。
これ将棋ファンの間では有名な話なんですが、伝説の騎士がいらっしゃいまして、実力制第4代名人、増田光蔵先生という方がいらっしゃって、
彼がGHQに直談判してるんですね。
何と言ったかというと、チェスは捕虜を殺害している。これこそが捕虜虐待であると。
将棋は適材適所の働き場所を与えている。常に駒が生きていて、それぞれの能力を尊重しようとする民主主義の正しい思想であると。
なかなか言えないことですよね。これでGHQも将棋禁止を撤回したというふうに言われています。
増田光蔵先生なんですが、次々と新しい将棋の手を考え出したことでも知られ、
将棋というゲームに寿命があるなら、その寿命を300年に縮めた男とも呼ばれています。
将棋の寿命、一体どのぐらいなんでしょうか。実はこのポッドキャストの中でも後半で考察してみたいと思っています。
本将棋やチェスのことを数学者は「二人令和有言確定完全情報ゲーム」と呼びます。
二人令和有言確定完全情報ゲームです。長い名前ですね。分解してみたいと思います。
「二人」というのはプレイヤーが二人であることを示しています。「令和」というのは昭和平成令和の「令和」ではなくて、
「ゼロ」という意味の「令」に「和」。「はし算の結果」という意味の「和」ですね。これで「令和」というふうに呼びます。
片方のプレイヤーが得をすると、もう片方のプレイヤーが同じだけ損をするという意味で、
二人の利得つまり勝ち具合を足すといつも「令」になるから「令和」というふうに呼びます。
これは「ゼロサム」とも言いますね。「有言」というのはゲームが有言の手数で終了することを意味しています。
「確定」これはサイコロのような乱数要素がないことを意味しています。
そして「完全情報」なんですが、これは全ての情報が両方のプレイヤーに公開されていることを意味します。
例えばババ抜きは相手に手札を見せないので、不完全情報ゲームということになります。
二人「令和」「有言」「確定」「完全情報ゲーム」の他の例としては「オセロゲーム」
これ英語名はリバーシですが、オセロゲームがあります。
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現在のオセロの直接の起源は日本の長谷川五郎による1970年頃の発明とされているのですが、
19世紀のロンドンに元となるアイディアがあったとする説もあります。
それはともかくですね、この二人「令和」「有言」「確定」「完全情報ゲーム」は理論上は完全な先読み、つまり完全解析が可能なんですね。
オセロに関して言えば、20世紀後半からすでに生身の人間がコンピューターに勝つことはほぼ不可能になっています。
人間が一手を刺すとコンピューターが次に可能な手、つまり二手目を全て探索して、それに対して人間が刺せる全ての手、三手目をこれまたコンピューターが全て探索してということを瞬時に行って、
コンピューターが常に一番有利になるような手を出してくるんですね。
20世紀の終わり、1990年代半ば頃だったと思うんですけど、当時高々16ビット程度のパソコンでコンピューターオセロをやるとですね、中盤ぐらいですかね。
あと何手であなたの負けですなんて宣言されてだいぶへこみました。
2019年には逆に人間が負けることが難しい最弱オセロというものまで登場しています。
ただですね、通常のオセロのマスってのは8×8あるんですけれども、8×8のオセロというのはまだ完全解析はされていないそうなので、原理的には人間にもチャンスがあるそうです。
1996年、IBMが開発したチェス専用コンピューター「ディープブルー」が最強の人間チェスプレーヤー「ガルリ・カスパロフ」と対戦しました。
カスパロフは3勝1敗2引き分けでディープブルーに勝利したのですが、ともかく一局はコンピューターが人類代表を破ったということはショッキングな事件でした。
ゲームを数学の問題と捉えて研究する学問をゲーム理論と呼びます。
ゲーム理論の確立にはその才能の異次元さから、火星人とも呼ばれた数学者ジョン・フォン・ノイマンや、映画「ビューティフルマインド」のモデルになったジョン・ナッシュラの貢献が大きな役割を果たしました。
コンピューターチェスもゲーム理論の一分野に数えられています。
チェスには持ちゴマルールがないため、終盤戦の完全解析が本章技よりも実施しやすく、残り7コマ以下の盤面は全て解析されデータベース化されています。
これでは人間は勝てませんよね。
またチェスの序盤も過去の人間の指し手が巨大なデータベースになっており、コンピューターチェスはこの序盤データベースから良さそうな手を選んで指してきます。
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本章技の場合は盤の他に持ちゴマを載せるコマ台が用意されています。
しかしコマ台の上をお互いに見ることができますから、チェスと同じく2人令和有言確定完全情報ゲームなんですね。
つまり理論上はコンピューターが最終手まで先読みを行います。
ただし理論上はああということです。
本章技の場合チェスに比べても可能な指し手の組み合わせが非常に多く、最終盤にならないとコンピューターでも最後まで読み切ることは難しいんですね。
そのため2005年頃までのコンピューター章技では無駄な探索をしないようにいかにチューニングするかに設計者は心血を注いでいました。
流れが変わったのは日本人の科学者、ケミスト、ホキ・クニヒトさん。
彼が開発したコンピューター章技ボナンザが登場してからです。
ホキさんなんと章技の素人であることを人認しています。
彼はですね、章技もチェスも同じなんじゃないと思ってコンピューターチェスを応用して開発してみたそうなんですね。
コンピューターチェスは序盤に大量の寄付データを使うのですが、ボナンザも章技の寄付データベースを利用しました。
またチェスに比べて指し手の組み合わせが大きくなるにも関わらず、チェスと同じように指し手の全幅探索、つまり無駄な探索だろうとなんだろうと全部やっちゃうとしたんですね。
全幅探索を最終手まで続けるのが完全解析なんですが、ボナンザもさすがにそこまではしていません。
2005年6月ホキはボナンザVer.1.0を公開します。
これにすぐに反応したのがプロ騎士の渡辺昭で、10秒章技だと10回に1,2回はやれると当時話しています。
2006年5月には競合コンピューター章技が現れ、第16回世界コンピューター章技選手権大会に、ノートパソコン1台とUSB扇風機だけという超軽装備で初出場、初優勝を勝ち取っています。
ボナンザ以降、徐々にコンピューター章技は章技AIと呼び換えられるようになったんですね。
これ、他のトレンドとは逆なんですよ。
AIって呼ばれてたものがだんだんAIと呼ばれなくなっていくというのはよくあることなんですけれども、
例えば画像認識とかですね、文字認識とか、かつてはAIと呼ばれていたものが顔認識システム、文字認識システム、OCRとかいうふうに呼ばれ方変わっていくんですけれども、
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コンピューター章技の場合はタイミング的にディープラーニングが流行り始めたタイミングでもあったのか、章技AIというふうには逆に呼ばれるようになってきました。
人間がコンピューターに勝てなくなった時をそのゲームの寿命とするならば、オセロの寿命が100年、チェスの寿命が500年余りということになるんじゃないかなと思います。
あるいはゲーム理論が整備され、コンピューターが生まれた1950年頃を出発点とすると、オセロの人間トッププレイヤーが生き延びたのが40年、チェスのそれが50年ぐらいだったのかもしれません。
ゲーム中に現れる局面の数を比較すると、オセロがおよそ10の60乗、チェスが10の120乗、章技が10の226乗と言われています。
コンピューターの読みがオセロからチェスの10年の間で10の60乗倍増えているので、ということは章技のトッププレイヤーの寿命が尽きるのが、
オセロ終了から28年後になります。
これは2018年頃なんですけども、確かに章技ファンの肌感覚としてもトップのプロの騎士が、章技エアに勝てなくなってきたのが2017年、2018年頃だったんじゃないかなという気がしています。
という意味で、肌感覚としては合っているんじゃないかなと思います。
とはいえですね、人間対人間の繰り広げるゲームはまだまだ熱いです。
今週末から始まる王将戦は、ボナンザVer.1.0の時代から章技AIを熟知する渡辺昭と、時に章技AIの歴史にも名を刻んだと言われる藤井壮太の戦いになります。
どんな戦いになるのか、今から楽しみです。
というわけで、2022年第1回目のSteamニュース、それから納制版Podcastでは、章技の話題をお届けしてみました。
前半でね、増田光三先生が章技を禁止しようとするGHQに対して、GHQは理由として持ちゴマルールというのが保留役体に当たるというふうに言ったわけなんですけれども、
そうじゃなくて、持ちゴマというのは人材の有効活用で、それに比べるとチェスっていうのは保留を捕まえたら活用せずに殺してるじゃないかと。
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なんだったら、クイーンという女性を盾にしてキングが男性が逃げるというのは、これはいいのかということをだいぶ言ったそうなんですね。
これも本当伝説なので、本当かどうかっていうのはだいぶ尾ひれはついていると思うんですけれども、
そんなふうに、日本以外では持ちゴマルールを持っているボードゲームがないので、かなり得意に見えたことは見えたと思うんですね。
なぜ持ちゴマルール、もちろん日本でも章技の時代ですから、室町時代途中までは持ちゴマルールなかったわけなんですね。
なぜ持ちゴマルールが生じたのかというのも、導入した人がその理由を書いてないのでわからないし、
もちろん誰が導入したかというのもわからないんですけれども、想像はできます。
チェスは持ちゴマルールないんですけれども、代わりに前半に、例えばポーンが2つ動けるであるとか、
ポーンというのは、章技では負に相当するコマなんですけれども、2マス動けるであるとか、
キャスリングと言って、王とキャッスルが1回で入れ替えられるとか、ちょっと特殊なルールがやっぱりあるんですね。
チェスのそういった特殊ルールを無しにする、あるいは章技の持ちゴマルールを無しにすると何が起こるかというと、
ゲームがめちゃくちゃ長くなるんですよ。勝負つかなくなるんですよ。
一説によると、持ちゴマルールであるとか、チェスのキャスリング、あるいはポーンが2つ進めるというルールは、
ゲームの時間を短縮するためなんじゃないかというふうに言われています。
ひょっとしたら、章技でいうと、なりですね。
敵陣に入ると、フがトッキンになったりとか、飛車が龍になったり、角が馬になったり。
チェスの場合だと、ポーンというフが好きなコマ、キング以外の好きなコマになれるんですね。
普通クイーンになるんですけれども、これも一種のなりなんですけれども、
これもひょっとしたらゲームの時間を短縮するためのルールだったのかもしれないです。
ただ、チェスの文化圏では持ちゴマというのはどうも納得いかないんですかね。
そのクレイジーハウスというゲーム、変則チェスがあまり普及していないこと。
一つには、章技のコマというのは、向きで敵味方を区別するのに対して、
チェスのコマというのは、色で、白と黒で敵味方を区別しますので、
コンピューターだったらいいんですけども、チェスボードでやろうとすると、2セットいるんですね。
白黒ともう1セット白黒が必要で、持ちゴマとして使うためにね。
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黒を、例えば白のプレイヤーが黒のコマを取ったとしたら、
そのコマを盤面に戻そうと思えば、色を白にしないといけないので、
だからもう1セットいるわけですよ。
そういう面倒くささっていうのもあるのかもしれないんですけども、
ただコマをね、色で塗り分けてるっていうのは、
ひょっとしたらやはり敵と味方っていうのは、区別しようっていう意識が、
どこかにあるのかもしれないです。
それに対して章技っていうのは、最初から言ったら、寝返るの前提じゃないですか。
向き変えたら自分にはまかってくるわけですから、
そこをひょっとしたら、なんか文化的な差異があるのかもしれないし、
逆かもしれないです。
章技はコマを向き変えたら寝返るんだから、
それ当たり前でしょみたいなことが起こってたのかもしれない。
でも、以後だとね、白と黒ですからね。
章技だけ見てどうこういうわけにもいかないですし、そこはね、わかんないです。
江戸時代なんかだと、章技もちろん人気のゲームですけれども、
位の高い人になると、以後の方を好んでいたようなことを聞きますので、
そこらへん、ぼちゃらかと言うと、章技は庶民のあるいは下級武士の遊びのようなね、
もあったかもしれないんですけれども、
ま、でも徳川家康もね、家康公も章技指してますから、
それもちょっと言い過ぎかもしれないですね。
つまりよくわからないということです。
話はその増田光蔵先生に戻るんですけれども、
彼は新しい手を次々考え出したので、
新しい手に対してね、毎年日本章技連盟が増田光蔵賞というのを出しているんですけれども、
なんとコンピューター章技が考え出した手に増田光蔵賞が与えられていたりとかですね。
彼が新しい手を考えたことで序盤の寄付というのが非常にバリエーションが増えていって、
それがボナンザが強くなる原因にもなったわけで、
章技の寿命を縮めた男というのは、穴勝ち間違ってはいないんじゃないかなと僕は思います。
そんなことをお話ししているうちにですね、エンディングの時間になってしまいました。
そうなんです。このポッドキャスト番組なんですけれども、エンディングの時間を決めたんです。
今回からシーズン3ということで番組若干リニューアルさせていただいたんですけれども、
何を一番大きく変更させていただいたかというと、番組の尺を25分というふうに決めさせていただいたんですね。
というわけで、次回またこのポッドキャストでお目にかかれますことを楽しみにしております。
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一でした。
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24:58

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