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2024-11-08 28:26

人と機械の境界【第204号音声版】 #科学系ポッドキャストの日

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#科学系ポッドキャストの日 に参加しました!

11月のトークテーマ「境界」

ホスト「サイエントーク」

参加番組をまとめた特設ページは下記ウェブサイト内に掲載予定

https://scien-talk.com

Spotifyプレイリスト

https://open.spotify.com/playlist/7vFZMgthVrQ1R1ypqaROgE?si=CSWZvy_ZQwa399Xmd4B2pA&pt=5fc79eb007a5eed1cfecb9a5feb92b4b

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STEAM NEWS

 

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いちです。おはようございます。今回のエピソードは、人と機械の境界についてお届けをします。
このポッドキャストは、僕が毎週メールでお送りしているニュースレター、STEAMニュースの音声版です。
STEAMニュースでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
STEAMニュースは、STEAMボート乗組員のご協力で配信しています。
さて、このエピソードですが、2024年11月8日に収録しています。
このエピソードは、科学系ポッドキャストの日、2024年11月の共通テーマ、境界に沿ってお届けをしています。
科学系ポッドキャストの日というのは、毎月10日前後にポッドキャスターたちが共通テーマについて語るというイベントになります。
今回のエピソードは、STEAMニュース第204号から、人と機械の境界についてお届けをしていきます。
1945年4月14日、ドイツ海軍の潜水艦U-1206の艦長、カール・アドルフ・シュリット大尉は、
水深61メートルを潜航中、潜水艦に備え付けられたトイレを利用しました。
ところがこのトイレ、操作方法が大変に複雑で、トイレを流す専門の技師が必要だったと言われています。
シュリット艦長が自分で操作をしたのか、専門の技師を呼んだのか、あるいはまた操作ミスだったのか、故障だったのかは分かっていないのですが、
ともかく使用後のトイレが噴水になってしまいました。
それは単に汚かっただけではなくて、トイレ直下にあった電池を水浸しにし、その結果有毒な塩素ガスを発生させました。
結局、U-1206は水面へと浮上し、敵であるイギリス空軍に発見されてしまいます。
さて、ここで一般論の話をします。
人が機械を使うときには、機械を操作したり、情報を読み取ったりする必要があります。
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人と機械の接点になる部分をユーザーインターフェース、あるいは単にインターフェースと呼びます。
トイレのレバーや湯沸かしポットの蓋とか窓とかもユーザーインターフェースの範疇に入ります。
もちろんコンピューターのキーボードやマウス、スクリーンもユーザーインターフェースです。
機械の側から見て、外部から情報を受け取る部分をインプット、
外部へ何か働きかけをする部分をアウトプットというふうに呼びます。
なんだか機械中心な世界観ですが、今さら逆転もさせられないので、こんなふうな呼び方が定着しています。
身の回りの製品、例えば電子レンジであるとかスマートフォンであるとか、
こういった一般向けの機械はそれなりに使いやすさを考えられていますが、
プロ向けの機械だと使いやすさよりも機能を優先することがまだまだ多いようです。
ドイツの潜水艦Uボートのトイレもその一例になるかなと思います。
また別な例としては、メールでお送りしているニュースレタースティームニュースの方に写真付きをご紹介させていただいているのですが、
フェラーリF1-75というレーシングカーのハンドルですね。
このハンドルもボタンやレバーがいっぱい付いています。
レーシングカーのように内部状態、車の内部状態を直接操作する必要がある機械だと、
内部状態の数だけインプットを用意する必要があるということですね。
もちろんですね、例えば飛行機のように内部状態が多すぎて、コックピットの面積では全てのインプットを並べることができないということもあります。
こういった場合にはモードを切り替えるということを使って、複数の内部状態を一つのインプットに結びつけるといったことも行われてはいるのですが、
それはそれで事故のもと、ヒューマンエラーのもとにもなると言われています。
実際、初期のAirbus A320はそれが原因で事故を起こしています。
このようにプロ向けのユーザーインターフェースでもあまりにも使いにくいものになると、深刻な事故につながります。
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別の実例をご紹介します。
アメリカのペンシルベニア州にあるスリーマイル島原子力発電所は、1979年3月28日に大規模な放射能漏れ事故を起こしました。
この事故の原因の一つとされているのがユーザーインターフェースの設計の悪さでした。
スリーマイル島原子力発電所は原子炉の事故に備えて、一時冷却用安全弁、PORVが設置されていました。
この安全弁は原子炉の圧力が高くなりすぎた時に内部の水蒸気を逃がす弁です。
一方、安全弁を開けっぱなしにしておくと、冷却水がすべて抜けてしまい、原子炉がメルトダウンしてしまいます。
そのため、安全弁の動作状態を表すランプが原子力発電所の制御室に設置されていました。
安全弁の動作状態を表すランプには、オンの時、安全弁オープンというふうなラベルが貼られていました。
ランプがついていたら、ランプがオンだったら、安全弁が開いている。オープンしている。
というふうに普通は読むと思うのです。
ということは、ランプが消えていたら、安全弁が閉じているだろうというふうに、普通は想像します。
実際、3マイルト原子力発電所の運転員もそのように理解していました。
しかし、そのランプの本当の意味はこうだったのです。
ランプがオンの時は、機械が安全弁を開けようとしている。
ランプ点灯時は、機械が安全弁を開けようとしているということは、
ランプ消灯時は機械が安全弁を開けようとはしていないという意味。
つまり、安全弁は開きっぱなしかもしれないし、勝手に閉じているかもしれないのです。
事故当時、ランプは消えていました。
そこで運転員は、安全弁が閉じているものと思い、冷却水が過剰になることを恐れ、冷却水の注入を止めました。
しかし、実際には安全弁は開いており、残された冷却水の大部分が蒸発してしまったのでした。
その結果、スリーマイルド原子力発電所は、メルトダウンを起こしました。
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なお、スリーマイルド原子力発電所の操作盤全体の設計について、
Google Designというサイトが、アメリカ史上最も恐ろしいデザインの失敗から学ぶ教訓という記事でまとめています。
これはランプの問題だけではなくて、あまりにもインプットが多すぎる、あまりにもアウトプットが多すぎるというデザインの失敗ではないかということを訴えています。
実際にこのランプだけではなくて、このスリーマイルド原子力発電所の事故の時には、警告灯が一斉に点き始めて、
まるでクリスマスツリーのようだったというふうに言われています。
警告灯の意味が間違って解釈されていた上に、クリスマスツリーのように警告灯が点いたのであれば、
プロといえどパニックになってしまうのではないでしょうか。
実際スリーマイルド原子力発電所の事故は、その後運転員が入れ替わって、引き継ぎチームが来てようやく収まったということです。
こういった複雑な機械、これをどういうふうに人間がインプットし、機械からアウトプットを受け取るのかというのは非常に難しい問題で、
これが究極形というものはまだないようです。
人と機械の境界にはまだまだ研究が必要ということになります。
というわけでSteamFM、今回のエピソードは科学系ポッドキャストの日、2024年11月のテーマに沿って、
境界、SteamFMでは人と機械の境界についてお送りをしました。
境界というと、日本語では境界なんですが、英語にするとおそらく3つぐらい意味があると思うんですね。
一つはボーダー、国と国の境目であったりとか、合格と不合格の境目であったりとか、
仕切るものという意味の境界、ボーダー。
それからバウンダリーという意味もあると思います。
これは特に数学関係の方がよく使う言葉かなと思うんですが、
上と下を決める、右と左を決めるというふうに領域を定めるもの、バウンダリー、これも日本語では境界と言います。
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そして今回ご紹介させていただいたインターフェース、これも境界というふうに言います。
これは物理学や化学の方だと水面と空気の境目、境界、こういったところもインターフェースというふうに呼びます。
概要欄の方に化学系ポッドキャストの日プレイリストへのリンクを貼っていますので、
ぜひ他の化学系ポッドキャストの日企画のポッドキャストも聞いてみてください。
境界について面白いエピソードがたくさん並んでいます。
というわけで今回のエピソードはこの辺にしておきましょう。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
SteamFMのイチでした。
ご視聴ありがとうございました。
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