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  2. 【特別配信】科学という方法を..

STEAM.fmエピソード115は,いつものSTEAM NEWSの記事から離れて,ポッドキャスト独自の内容でお送りしていきます.科学には(1)適切な証拠(2)明確な結論(3)証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程という3点が必要です.もし1点でも欠けていれば科学とは呼べないのです.

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ニュースレター「STEAM NEWS」

金谷一朗(いち)

TEDxDejimaStudioファウンダー・パイナップルコンピューター代表・長崎大学情報データ科学部教授

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人は答えを得たときに成長するのではなく、疑問を持つことができたときに成長する。
外尾悦郎
いちです。おはようございます。このポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター
スティームニュースの音声版です。スティームニュースでは科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
スティームニュースはスティームボート乗り組みのご協力でお届けしています。 冒頭でご紹介したのはスペインバルセロナのサクラダファミリア主任彫刻家
外尾悦郎のスティームな言葉。 答えよりも問いの大切さを伝える言葉でした。
さてsteam.fmエピソード115はいつものスティームニュースの記事から離れて
ポッドキャスト独自の内容でお送りしていきます。 このエピソードは2023年1月27日に収録しています。
今週は春節ということもありまして、スティームニュースの配信はお休みをさせていただきました。
2020年のスティームニュース配信開始以来 年2回のお休みをいただくようにしてきたのですが
今年から2月前後の春節の週と8月のお盆の週をお休みにさせていただきます。
2月と8月は俗に日八と言いまして、特に出版業界や小売業界では売上が落ちる月とされているんですね。
芥川賞そして直樹賞が1月から2月と、そして7月から8月に発表されるのも
書店の売上を確保するためという噂話があるほどなのですが、 僕は単純に年2回のお祭りと思ってお休みにすることにしました。
春節はアジアで一般的なお正月つまりは旧正月で、僕の拠点長崎でも日本では珍しい方だと思うのですが盛大なお祝いをします。
というわけで 今回の内容なのですが
科学という方法について メタな話をしていこうかなと思っています。
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今回も25分間どうぞお付き合いください。 リスナーの皆さんは、あるいはスティームニュースの読者の皆さんは
科学と聞いてどんなイメージを思い浮かべられるでしょうか。 科学にとって大切なこと
科学にとって必要不可欠なこと、これ実はたったの3つなんです。 科学は
適切な証拠 明確な結論
そして証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程の3つから成り立っています。
もう一度言いますね。1つ目、適切な証拠 2つ目
明確な結論 3つ目
証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程 この3点のうち1点でも欠けていたら科学とは呼べないのです。
ここで面白いのは 正解があるかどうかは科学という方法とは関係がないということなんですね。
科学という方法とは答えではなく答えを求める方法ということになります。 もちろんその方法が何かの結論を導く必要はあります。
ただしその結論が正しいかどうかは 証拠を通してのみ検証されます。
これが科学なんです。 科学に深く興味を持っている人は
それじゃあ再現性はどうなるの?とか ちょっと待って
反証可能性はどうなの?とか疑問を持たれるかもしれません。 とても鋭いご指摘です。
一つずつ見ていきたいとおもいます。 再現性
これはですね実は科学において確かに重要な性質の一つなのですが 絶対に譲れない点というわけではないんです。
もちろん スタップ細胞事件ではスタップ細胞を作る実験の
再現性が問題になりましたが まあこの事件再現性以前の問題も多数あったので
再現性だけの問題ではなかったんですね。 科学において再現性とはいついかなるタイミングでも
06:00
いついかなる場所でも たとえ誰が行ったとしても
同じ実験を行えば同じ結果が得られるということを意味します。 これを厳密に解釈すると地球上では成立するんだけれども月面では成立しない現象
というのが再現性がなかったということになってしまうんですね。 実際には地球上では成立するけれども月面では成立しない現象はあるので
厳密な意味での再現性というものは科学では必ずしも求められているわけではありません。 非常に極端な例を持ち出すと例えば
ビッグバンは再現させてみることができません。 では反証可能性の方はどうでしょうか。
科学哲学者カールポパーは反証可能性を科学の基本条件とみなしました。 この反証可能性とは絶対的な真実を認めず
間違っているかもしれないと認め続ける態度のことです。 おそらくすべての科学者が科学という方法の条件に
反証可能性を含めると思います。 しかし
反証可能性を科学の条件に含めることに関して
反論もあるんです。 例えば万物は原子からできているという仮説は
その証拠を見ることができなかった時代にはほぼ反証不可能だったんです。 だからといってその時代の原子論を科学に含めなくて良いのかとなると
少し乱暴に過ぎるような気もするんです。 実際
原子や分子が実在することを初めて突き止めたのは アルベルト・アインシュタインです。
彼の1905年の研究によって初めて 原子や分子が実在するという証拠を人類はつかんだんです。
それ以前、つまり20世紀の初めまでは 人々には原子論を反証することが事実上無理だったんです。
では19世紀の科学は科学じゃなかったのかというと それも無理があるかなと思うので、僕自身の考え方としては
反証可能性は科学の必要条件ではないというふうに考えています。 というわけで最初の定義に戻りますね。
09:02
科学は 1つ目
適切な証拠 2つ目
明確な結論 3つ目
証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程 この3つから成り立っていると言えます。
この科学の方法を確立したのは 16世紀イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイです。
紀元前4世紀ギリシャの哲学者アリストテレス
13世紀ギリスの哲学者ロジャーベーコンも科学に多大な貢献をしていますが 近代的な意味での科学
先ほどの3点を満たす科学を確立したのはガリレオ・ガリレイです。 そのためガリレオのことを近代科学の父とも呼びます。
ガリレオは実験による明確な証拠と数学という推論過程を積み上げて シンプルな結論を導き出すことを人類史上初めて行いました。
それどころかその方法を他の人々に説明することにも長けていました。 つまり地球上の科学者はすべてガリレオの弟子なんですね。
例えばガリレオは望遠鏡を通して木星を観察し 木星の周りを回っているように見える星
現在のガリレオ衛星を発見しました。 ガリレオ衛星の運動を観察し
数学によってその運動の法則を推論した結果 彼は天動説が正しいという結論に至ります。
適切な証拠はガリレオ衛星の運動 明確な結論は天動説
そして証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程は ガリレオが発見した運動の法則でした。
ガリレオが発見した運動の法則とは星は同じ速度で宇宙を動き続けるというものでした。
ガリレオが発見した運動の法則もまた彼が 海の上を走る船を観察して見つけ出したものです。
ガリレオの法則はヨハネス・ケイプラーによって修正され アイザック・ニュートンによって拡張され
アルベルト・アインシュタインによって再修正されたのですが いずれも科学的方法によってなされました。
科学というのはこのような強固な方法論によって出来上がっているんです。
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ただし科学が強固だからといって 科学がもたらした結果の解釈もまた強固かというとそれは異なります。
数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使うという言葉がありますが
科学にも似たような側面があります。 科学は時としていいように使われることがあります。
その代表的な手法がアナロジーです。 AであるならばBであるという科学の法則がある時に
Aとよく似たA' Bとよく似たB'を持ってきて
A'であるならばB'である なぜならばAであるならばBであるからだと主張するのがアナロジーです。
アナロジーは何も証明しません。
具体例を挙げるならば そうですね優勢学が該当します。
優勢学と言いますが学問とは呼べないのでこれは優勢思想と読むべきでしょうね。
優勢思想とはより良い人間社会を作るために 人間は優れた遺伝子だけを残すべきだという思想です。
そしてしばしば牽引付けのために 科学者ダーウィンの進化論が持ち出されます。
生物は優れた遺伝子だけを残しているのだから 人間も優れた遺伝子だけを残すべきだと
そもそもダーウィンは優れた遺伝子だけが生き残ると言ったわけではありません。
ないのですが仮にもし仮にですよ そう言ったということにしてみましょう。
あるいは 生物は優れた種だけが生き残るという仮説が
正しかったとしても良いです。これも仮にですよ。
この時AであるならばBであるのAは 優れた種でBは生き残るとなります。
生物は優れた種だけ生き残るという仮説 実際にはダーウィンはそんなこと言ってないんですがこれを仮に受け入れたとして
その時にAであるならばBであるという法則を当てはめると優れた種であるならば 生き残るAは優れた種Bは生き残るというふうになります。
15:14
優勢思想ではA'として優れた個体 B'として良い社会を作るを持ってきます。これらを繋げて
生物の世界では優れた種だけが生き残るのだから 人間の世界では優れた個体だけが良い社会を作る
さらには後半を人間の世界では優れた個体だけを生殖させるべき というふうに変化させるこれが優勢思想の考え方なんですね
これはアナロジーであって 万が一生物は優れた種だけが生き残るが正しかったとしても
万が一ですよこれが正しかったとしてもそこから優勢思想を導くことはできません 我々は優勢思想を
倫理的には間違っていても科学的なんだろうなぁと思ってしまうこと たまにはあるかもしれないのですが実際にはアナロジーなのでこれは何も
科学に基づいていないわけですね何も証明していないわけです でここからは若干僕の個人的な感想も入るのですが我々人類ホモサピエンスですね
ホモサピエンスはそもそも 遺伝的多様性が少ないんです
特にアフリカ以外のホモサピエンスはその傾向が顕著です でダーウィンが言ったのはこの遺伝的多様性がなければ種が
環境に適応できずに淘汰されていくという話ですから 僕はホモサピエンスはこれ以上多様性を減らす余裕はないんじゃないかと
想像しています ホモサピエンスの遺伝的多様性をこの優勢思想というのは狭める方向に圧力をかけよう
という考え方ですからこれは人類を生存させるという意味においても間違いではない かと僕は感じるわけです
steam.fm のリスナーの皆さんにそして僕自身にも語りかけなければならないと思っている ことは一見科学的な議論に見えること
これが本当の科学なのかそれとも単なる科学のアナロジーなのかということをいつも 気にしないといけないということです
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科学は 適切な証拠
明確な結論そして証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程の3点から成り立っているものでした
いつもですねこの3点が備わっているかどうか この議論の中にこの3点が備わっているかどうかを気にかけることで
この話は科学に基づいているこの話は ただのアナロジーだということが区別がつくようになると思うんですね
もちろん近代的な科学に関して言えば 再現性
非常に厳密に解釈する必要はないとは思うのですが 再現性
例えばですね違う人が実験をしても同じ結果が得られるかどうかであるとか それから反証可能性ですね
こちらについてもまだ人類が持っている技術では証明も反証もできない ものというものはまだ科学の中にはあるのでしょうが
それでも反証を一切認めないような主張かどうかということは 科学かどうかの分かれ目にはなりますので
そこも気をつけて見ていただくと良いのかなと思います 特にですね20世紀後半から21世紀にかけては
我々がこの科学といってもガリレオガリレイを始めた自然科学というのが広がっていって これが社会科学であるとか人文科学にもこの自然科学の方法論というものが使われるようになってきています
その方法論とはもちろん適切な証拠を集めることを明確な結論を導くこと 証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程を用いることの3点ですね
残念なことにですねマスメディアによく登場する社会科学者 特に誰かを批判したいわけではないので実名は出しませんが
例えば国際政治学者を名乗る方とかでその発言を見ていくと適切な証拠がなかったりであるとか
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証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程がないにもかかわらず 結論を一方的に主張していたりであるとか
反証を認めないような過程を用いていたりとか とても社会科学とは呼べないような議論をされる方を見ることもあります
まあ業界あるあるなのでしょうが 一人ちょっとうさんくさいなぁってなっちゃうとその業界全体がうさんくさいなぁってなってしまうので
これももちろん非科学的な推論にはなってしまうのですが そういう印象をもたらしてしまうというのはその科学コミュニティ全体の損失になるので
そうですねまあ僕もあのきっちり反論 できるときそしてすべき時には
ネットで僕あの最近はあのあんまりツイッター使ってないですが必要な時にはまあ ツイッターであるとか
ブログもあの最近はニュースレターの方を中心に書いているので 日本語ブログは書いていないのですが
まあ発表っていうのはしていこうかなと思っています
このエピソードでは 科学とアナロジーを用いた科学的な何か
というものをご紹介したのですが世の中には 他にですね疑似科学ジャンクサイエンスというものもあります
こちらはですねまあ主にこの適切な証拠に基づかない 例えば捏造された証拠を何かに基づいて結論を導くような
インチキ科学ですねこれもたくさんあります こういったジャンクサイエンスについてもまたニュースレターそしてポッドキャストの中で継承を
ならしていきたいなと思っています 今回のエピソードも最後まで聞いてくださってありがとうございました
このポッドキャストを機械に サイエンスであったりとか
テクノロジーであったりとかアートであったりとかエンジニアリングであったりとか 数学であったりとか
ちょっとでも面白いなぁと思っていただければもう本当に嬉しいです 概要欄にニュースレターへのリンクも貼ってありますのでこちらもよかったら
読んでみてください では素敵な週末をお過ごしください
steam.fmのイチでした
24:58

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