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  2. 火星の人【第10号音声版】 #53

今から1年前の2021年2月18日,火星探査機パーサヴィアランスが火星に着陸しました.そのときのニュースレターを振り返りつつ,惑星発見の歴史,火星人がいると信じた天文学者パーシバル・ローウェルについてお話ししていきます.

毎週金曜日朝7時にアート,リベラルアーツと科学技術に関するニュースレター『STEAM NEWS』を発行しています.詳しくは STEAM.fm をご覧下さい.

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Cover photo by ESA & MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/RSSD/INTA/UPM/DASP/IDA, CC BY-SA 3.0

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[音楽]
市ですおはようございますこのポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター
スティームニュースの音声版です スティームニュースでは科学技術工学アート数学に関する話題をお届けしています
スティームニュースはスティームボートの利組員の協力でお送りしています
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改めまして市ですこのエピソードは2022年の2月20日に収録しています
このエピソードではちょうどですね1年前にお届けしたニュースレターを改めて振り返ってみたいと思います
どうぞ最後までお楽しみになってください
2021年2月18日アメリカ航空宇宙局ナサの火星探査機パーサビアランスが火星に着陸しました
2020年7月30日に打ち上げられた探査機で人類にとっては2年ぶりの訪問ということになります
火星探査機の歴史は1960年代に遡りこれまでに50機近くが投入されていてそのうち3分の1ほどが大きな成功を収めています
火星は長い間そして今でも人類を魅了し続けています
一体何が人を火星に引きつけるのか
ご存知の通り火星は地球と同じく太陽の周りを回る惑星です
地球より内側を回る惑星を内惑星、地球より外側を回る惑星を外惑星と呼びます
また地球のように硬い地面を持つ惑星を地球型惑星と呼び木星や土星のようなガスからできた惑星を木星型惑星と呼んで区別します
火星は硬い地面を持つので地球型惑星に区分されます
地上から肉眼で見られる惑星は水星、金星、火星、木星、土星なんですね
非常に稀に天皇星を肉眼で見たという記録があるにはあるんですが
通常はこの5つの惑星になります
これに天皇節が広く信じられていた時代までは太陽と月を加えた7個の天体、これを7惑星と呼んでいました
7つの惑星、他のお星様とは違う運行の仕方をするために特別な扱いを受けていたわけですね
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この7惑星のうち太陽は昼間しかいないですし
月は周りの星を覆い隠してしまうので別枠だったんでしょうね
そうするとこの水星、金星、火星、木星、土星の5つの惑星が残るわけなんですが
その中でも木星は他のいかなる恒星よりも明るく、当然他の4つの惑星よりも明るく動きもゆっくりしていたのですね
それ故に天界の支配者とみなされたようです
木星は古代ギリシャではオオガミゼウス、これはローマの名前はユピテルと呼びます
オオガミゼウスの惑星という風にされました
土星の方はというとですね、ガリレオガリレイが土星の輪を発見するまでは
7惑星の中で最も暗いということもあったと思うんですね、どちらかというと地味な印象でした
土星には濃厚の神クロノス、ローマ名サテュルヌスが割り当てられています
このクロノス、ゼウスのお父さんではあるんですけれども、ゼウスをはじめとするオリュンポス十二神というですね
ギリシャ神話の中での主要な神様の中には入っていません
彗星はどうでしょうか、彗星は太陽にあまりにも近いために日の出直前か日の入り直後の短時間しか見る機会がありません
数字の上ではとりあけあの明るい惑星でもないんですね、ただそうは言っても日の入り直後なんか他の星見えませんから
実際に彗星を見るとかなり明るい印象は受けます すぐに見えなくなってしまうので
忙しい惑星ということで天界のビジネスマン ギリシャの神様ヘルメス
ローマ名はメルクリウスという名前になっています そして金星ですね、金星も彗星と同じくない惑星なので日の出前か日の入り後のわずかな時間しか
見られません ただし彗星よりは太陽との距離があるためにしばらくは天に滞在します
また太陽と月に次ぐ明るさを持ちます 日の出前なら明けの明星、日の入り後なら宵の明星と呼ばれています
金星は文字通り金色に輝くためだと思うんですけれども 愛と美と聖の女神アプロディーテ
これはローマ名ウェヌスであったりとかベヌスというふうに呼ばれますね アプロディーテもアフロディーテというふうに呼ぶこともあります
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愛と美と聖の女神アプロディーテの惑星とされています 金星はですねこのエピソードの主人公火星と同じぐらい人類を魅了してきました
これまでに送り込まれた探査機の数も約40機と火星に匹敵する数になっています さて火星です火星は外惑星なので太陽の
上り沈み日の出日の入りとは無関係に独立して見ることができます 火星を際立たせているのはその色なんですね金星金色というふうに申し上げたんです
けれども火星は日のように赤く輝いています 明るさもまあ金星の次で結構明るいです
その赤さがですね街を想像させるのか古代ギリシャ人は戦争の神様軍神アレス ローマの名前ではマルス
こちらを割り当てました今でも赤い惑星レッドプラネットといえば火星のことを指します
16世紀デンマークの天文学者で月面のクレーターにも名前を残すティコプラーエは 聖地に火星を観測した人でした
ティコの弟子であったヨハネスケプラーはこの観測結果からついに地動説を訴えるに なるのですが
ティコ自身は天動説を信じていました ティコの観測によってティコの意思とは反対に惑星は天界の神々の地位から地球と
同じ 太陽を巡る星という地位へと引っ張り出されたことになります
ケプラーはティコの観測結果から火星が楕円軌道を描くこと そして地球と火星の距離が近づいたり離れたりすることを予測可能な形で示しました
なお惑星の運行法則を完全に解明したのはほぼ同時代の人でケプラーの良き理解者であった ガリレオガリレイ
後のアイザックニュートンさらに後のアルベルトアインシュタインの仕事です ティコは優れた観測者であったようで1572年に偶然現れた超新星通称ティコの超新星の観測もしています
彼の観測が画期的だったのはその超新星が月や他の惑星よりも遠くにあるということを見つけ たんですね
これは惑星から向こう側の世界が普遍という当時の世界観に相入れないものでした 天道説を信じていたとはいえ合理的な思考力もティコは持っていたということになります
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残念なことにですねティコはアローコとかおしっこを我慢しすぎて亡くなったと言われて いるんですね
1601年にフラハで開かれた遠赤で同席した貴族に気を使ってトイレに立つことを我慢したことが 原因と言われています
ティコは望遠鏡を使わなかった最後の天文学者とも言われています 望遠鏡を初めて使った天文学者はもちろんガリレオガリレイで人類で初めて望遠鏡を火星に向け
たのもガリレオガリレイでした 望遠鏡を使って火星を詳しく調べた人物がいます
19世紀アメリカの天文学者パーシバルローウェルです 彼はアリゾナ州フラッグスタッフ市の火星が丘にローウェル天文台を建設して
火星の観測を行いました このローウェル天文台は2011年に米国史タイムによって世界の重要施設100選に選ばれています
1896年に火星が丘に設置されたローウェルの望遠鏡は 61センチメートル屈折式という現代から見ても十分な性能を持つものでした
例えば1972年に日本の日打天文台に設置された65センチ屈折式は当時東洋一と言われたそうです
もしローウェルが潜入艦に囚われていなければ彼は精緻かつ正確な火星地図を残したに違いないんですね
そうなんです 少し問題があったんです
ここで精緻なことと正確なことは意味が異なるということをですね思い出していただきたいんですね
どれだけ精緻に書き込まれた地図であってもそれが現実を反映していなければ 正確とは言えないんです
ローウェルが書いた地図はまさにこれで 大変精緻な地図ではあったんですが正確ではなかったんです
ニュースレターでお送りしているsteamニュースの第10号こちら web デバッグナンバーが読めますので見ていただくとローウェルが描いた火星の地図がですね
載っています1895年のローウェルの火星マップ載っています非常に精緻に書かれています
ローウェルは望遠鏡を通して火星の雲河を見ました 河川ではなくて雲河です
そしてローウェルはこの雲河が火星人によって建設されたものだと主張しました その後の観測によってそして火星探査機による調査によって徹底的に
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ローベルの見た雲河は存在しないことが示されています しかしローベルは生涯
雲河が見えると主張し続けました ローベルが潜入感を持って火星を観察したのは明らかなんですがなぜその潜入感を持った
かについてはいくつかの説があるようです 最有力なのは1877年
イタリア人天文学者ジョバンニスキアパレッリが火星にアミメ状の長い線があることを見つけたことです
彼はこれを溝を意味するイタリア語カナーリと呼んだんですがこれが英訳された時にキャナルズ つまり雲河になってしまいました
ローベルはこの英訳をローモ読んだようなんですねまた時代的にもローベルの活躍 した19世紀後半というのは世界的な雲河の建設期にも当たっています
火星の雲河の教訓は僕のような街は天文館の間でも繰り返し語られています 何かを見たいと思って物事を見るなという
教訓です 古代ローマの天才ユリウスカエサルはかつて人間ならば誰にでも現実のすべてが見えるわけではない
多くの人たちは見たいと欲する現実しか見ていないと語ったそうなんですが カエサル
彼は対極的なものの見方について語ったと思うんですねところがこういった観測にも 現れてしまう人間の差がというのがどうもあるようです
ローベルによる火星の雲河は火星観測によって否定されていますが火星に液体の 水があることあるいはあったこと
火星に生命がいることあるいはいたことは否定されていません それどころか火星の水火星の生命を示唆する状況証拠がなくはないんですね
それを調べるために探査機パーサビアランスは火星表面に降り立ったわけです では一体どんな状況証拠がこれまでに見つかっているのか少しご紹介してみたいと思います
火星探査機オプチュニティによって火星の岩石からまんまるな石鉄鉱ヘマタイトが見つかっています 石鉄鉱がまんまるになるのは液体の水が存在した証拠とみなされています
別の火星探査機スピリットは真鉄鉱ダータイトを発見しています これは針状の鉄鉱石ですね
真鉄鉱は液体の水が存在する環境でだけ作られるため これは火星に液体の水が存在した有力な証拠とみられています
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水そのものに関して言えば2001マーズオデッセイによる調査で氷の存在が確認されているため かつてあるいは現在も液体として存在したかどうかというところが残る争点になっています
火星上空を回る探査機マーズグローバルサーベイヤーは2006年に火星表面に液体が流れたと考えられる痕跡を撮影しています
同じ場所を撮影した1999年の写真には痕跡が写っていないため それ以降のどこかで液体が流れたものと考えられています
マーズグローバルサーベイヤーの後から火星上空に到達した探査機 マーズリコネッセンスオービターは上空から火星に石膏があることを発見しました
これは後でオポチュニティによって地上からも確認されています 石膏は内部に水分子を含むためこれもかつて火星に液体の水があった証拠ではないかと考えられています
火星には薄いながら大気が存在します 気圧は地球の100分の1程度
主成分は二酸化炭素で微量の窒素アルゴンが含まれています そして大気全体の1億分の1ほどの分量ですがメタンガスが含まれていることもわかっています
メタンは生物由来であることもあるため現在詳しく調べられています 最後にもう一つ状況証拠をご紹介したいと思います
こちらはまだ議論の余地があるんですが南極で見つかった火星起源の隕石アランヒルズ840012
生命の痕跡があると言われているんですね この隕石はおよそ1700万年前火星に別な隕石がぶつかった反動で火星から弾き飛ばされおよそ
13000年前に地球に落ちたものと考えられています この隕石の電子顕微鏡写真に細菌のようなものの化石が映っていたんです
こちらも僕のニュースレターの中で写真をご紹介しています 火星の細菌のようなものなんですが直径が20から100ナノメートル程度
地球で見られる細菌がまあ典型的には120から200ナノメートルの大きさなのでまあ1サイズ 小さめとなっているんですねこのサイズでは生命活動は無理だろうという意見もあるので
まだ決定談にはなっていません
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火星探査機パーサビアランスは今次のような研究目標に向かって活動しています 一つ目過去に微生物が生息できた環境があったかを特定する
2つ目過去に微生物が生きていた証拠を探す 3つ目火星表面のサンプルを収集し保存する
これは後で地球に送り返すかもしれません そして4つ目
火星の大気から酸素を生産してみるこれはうまくいけば人間が住めるようになるかもしれない ためですね
なおサンプルリターンは早くとも2031年の予定なんだそうです あと10年ぐらい後ということで昨日長い話なんですが
それまでにも様々な発見というのはきっとあると思うのでまたこのポッドキャスト ご紹介していきたいと思います
ところでですねあの火星っていうのは地形がすごく複雑なんですね そしてなんと太陽系最大の火山が火星にあります
これは地球にある火山地上の火山どころか海底火山も 凌ぐ大きさなんですね
ハワイのマウナロア山標高4169m なんですがこちら海底から続いているためにその体積が
75,000立方キロメートルという地球最大の山になるんですけれども マウナロア山ですね重すぎて一部がマントルに沈んでるらしくてその分も含めると
標高1万7000m に達するそうなんですけれども 火星の火山太陽系最大の火山なんですがこちらはですね
周囲の地表からの標高がおよそ2万7000m 体積もマウナロア山の100倍以上ということなんですね
この巨大すぎる火山 ギリシャ神話から名を借りてオリンポス山と呼ばれています
オリンポス山そうなんですオオガミゼウスが暮らしていた山ですね 神々の棲む山という意味でオリンポス山が
火星にあったということになります パーシバルロウェルは天文学者カールセーガンから最悪の図面屋と
まあ厳しく罵られているんですが一方でセーガンは彼の後に続くすべての子供に夢を与えたとも評価もしています
2001年宇宙の旅で知られる sf 作家アーサー c クラークは 一体どうしたらあんなものが見えたんだろうとマロウェルを批判したんですがその一方で
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数世代の sf 作家たちが危機として発展させた神話の基礎をほとんど独力で築き上げた というふうに持ち上げてもいます
ロウェルの影響を受けた作品といえばやはり hg ウェルズの宇宙戦争が挙げられると思います 本作品はスティーブンスピルバーグ監督トムクルーズ主演で映画化もされています
またレイブラッドベリーの火星年代記も火星を舞台にした名作でこちらはテレビドラマ化されて います
ブラッドベリーの友人でもあった作家イザックアシモフの火星人の方法 足も不二
強い影響を受けた新井本子の星へ行く船もまあこういったロウェルの影響によって生まれた 作品たちと呼んでもいいかもしれません
もう一つロウェルの鉱石をご紹介しておきます1930年ロウェル天文台で太陽系第9惑星を 探していた天文学者
クライドトンボウが 冥王星を発見しました
このエピソードで申し上げた通り肉眼で見られる惑星は基本的には土星まで まあ偶然天王星が見えちゃうことはあるそうなんですけれども
海王星冥王星というのは望遠鏡でしか見ることができません 天王星は1781年にギリスの天文学者ウィリアムハーシェルによって発見されました
海王星は天王星の予期せぬ軌道の変化から存在を予測された最初の天体となりました 天王星が未知の惑星の重力の影響を受けていると考えられたわけなんですね
計算によって求められたその惑星の位置に海王星は発見されました そんな海王星なんですが実は1612年と1613年に2回偶然にもガリレオが覗いた望遠鏡の視野の中に入っていました
この海王星ですがなんとまた未知の惑星による軌道の変化を受けている可能性が 指摘されたんです
その未知の惑星は惑星Xと呼ばれ 当のローウェルたちによって位置が推測されました
ローウェルの存命中には残念ながら惑星Xを見つけられませんでしたがローウェルの死後14年経ってローウェルの作った望遠鏡でついに惑星Xが見つかったんですね
これが冥王星です このエピソードでは火星を巡るストーリーをお届けしました
ではまた次のエピソードでお会いできることを楽しみにしています 聞いてくださってありがとうございました
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いちでした
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