1. ストーリーとしての思想哲学
  2. #53 植物の設計思想
2024-01-21 06:50

#53 植物の設計思想

植物というオブジェクトの根底にあるゲームルールの話です。

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ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。今回は植物の世界の話です。
まず最初、半分笑い話くらいのつもりで聞いてもらったらいいんですけど、ユウカリってありますよね?
オーストラリアでコアラが食べているユウカリです。 ユウカリはめちゃくちゃえげつない生態をしていて
山火事を誘発して凶豪する植物を全部焼却処分して、自分だけ生き残る戦略を取ります。
いや厳密に言えば植物は意志を持っているわけじゃないので、環境適応の結果、結果的にそのような生態に見えるというだけですけど
まあそういう厳密さは今回の主題ではないので置いておいて、ユウカリはね
テルペンという因果性の物質を放出しています。 テルペンは青くって遠くから見ると山が青く見えることもあるほどです。
さらにユウカリの樹皮は非常に燃えやすくって、雷や静電気などの火種があるとテルペンと相まってバチバチに燃えます。
ヤマカジによってもちろんユウカリ自身も燃えるのだけど、ユウカリの種は火に強いので、周囲を焼け野原にした後に地面からゆうゆうと発芽します。
セルフ焼肌農業ってわけですね。
なんか個人的にめっちゃこのなんか設計思想みたいなのが好きで、面白くないですか?
例えるんであれば、なんか人間社会とかで、周囲にお店がひしめきあっている激戦区で、勝つにはどうしたらいいか?っていう問いを立てて、
で、それに対する答えとして、周囲のお店に全部放火して、全焼させれば勝てるみたいな、こういう倫理観ゼロの甲斐を出してるみたいな、
思いついてもそれはやんないでしょうみたいな挙動が普通にあり得てしまうのが、生物とか進化の面白いところですよね。
はい。
しかしながら、実は山火事や火を味方につける植物は、それほど珍しくありません。
例えばジャイアントセコイアっていう、高さ80メートルとかになる世界最大級の木は、それだけ高いと雷がしばしば落ちるんですね。
雷が落ちると火が起きるわけですが、ジャイアントセコイアはものすごい分厚い樹皮を持っていること、樹液が難燃性であることなどから、相対的に強豪となる周囲の植物より火に強いです。
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そうすると結果的に、高いから雷が落ちやすい、雷が落ちやすくてダメージを受けがちというデミリットがある一方で、
雷のおかげで山火事を起こして、周りの植物を焼き払えるというメリットを享受できています。
先ほどのゆうかりと似てますね。
ジャイアントセコイアがなぜこのような環境適応がなされたかっていうと、植物には根っこを狭く深く伸ばす種と浅く広く伸ばす種とかあります。
ジャイアントセコイアは浅く広く伸ばすタイプなんですが、周囲には他の植物も根っこを伸ばしているので、地面の中、地中の空間で根っこが強豪してしまいます。
この強豪を火事で焼き払うことで、適者生存することができたというわけです。
ここから言えるのは、植物の世界って実はめちゃくちゃ競争の激しい過酷な世界だってことです。
今、根っこを張り巡らす地中の空間という話をしましたが、基本的に植物の競争というのは空間の奪い合いなんです。
植物というオブジェクトの設計思想として、一定以上の空間を占有したら勝ちっていうゲームルールがあるということです。
熱帯雨林がわかりやすいのでイメージしてほしいんですが、あの薄そうとした熱帯雨林にはね、高い木、中くらいの木、低い木、草があるんです。
で、植物は日光によって光合成するから、できるだけ広い空間を占有することで、日光、つまり食べ物を確保しようとしています。
まず高さのある木、高い木があって、そのでっかい木がわさーってすごい枝葉を広げて、高い位置で空間を占有するから、ここでもその熱帯雨林の空間に存在する、つまり上空から降り注ぐ日光はかなり独占されます。
地面に降り注ぐ日光は、高い木によってまず最初かなりカットされる。
次に、中くらいの木がやや低い位置でわさーって枝葉を広げて、中くらいの高さにある空間を占有して日光を確保して、またカットしてしまいます。
その次の低い木も同様です。低い位置で枝葉を広げて、低い位置にある空間を占有して日光を確保します。
このように空間を奪い合うという競争によって日光は遮られ、地表まで届く日光は5%程度になります。
だから熱帯雨林ってめちゃくちゃ暗いんですよ。日光の5%しか届かないから。
そしてその5%程度の日光をめぐって、地表にはびっしりと草が生えるという構造が熱帯雨林です。
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はい。植物というオブジェクトに設計思想というものがあるのだとすれば、空間占有率を高めるというゲームルールで結構過酷に戦っているという話でした。
というわけで今回はここまでです。次回もよろしくお願いします。
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