戦略の基礎概念
ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。
前回、盤面という言葉がキーワードだという話をしました。
では、戦略的に盤面を整えるとはどういうことか?
相手の盤面を積ませるとはどういうことでしょうか?
前回の将棋の話をもうちょっと解像度を上げて言い換えると
最初から相手が積んでいる盤面を作るっていうのは
相手の取れる挙動を限定するということなんですよ。
相手だって戦いもしないで負けましたっていうのは嫌だと思います。
できればどんな戦いでも、敗色濃厚であっても
やれるだけやってみたいと思うのが人情です。
でも戦ったら往存してしまうなら、もし敗色濃厚の場合
取れる選択肢は実質的に降伏することだけになります。
ゲームで例えると、友達と将棋をするとします。
自分は駒20枚、友達は駒100枚です。
多分ゲームにならないと思うけど、負けても損をしないなら
遊んでみてもいいかもしれません。
でも負けたら10万円払うっていう条件だったら誰もやらないでしょう。
これは実質的に、そもそも戦わないという選択肢だけしか
選べないというふうに、盤面によって自分の挙動が限定されているわけですね。
同じことを別の言い方でもう一度言います。
相手の行動を制限して自分は制限されない。
これは僕が思うに表現なんですよ。
戦略とは、とある状況を表現することによって
相手の挙動を制限するって言ってもいいです。
もうちょっと具体的に言うと、例えば戦争であれば
ハンニバルが丘と丘との間の逸路、狭くなっているところの道を抑えて
細い道に入ると、敵の軍隊は細長く展開せざるを得ないじゃないですか。
だから待ち伏せした上で、敵の軍団が細長く伸びたところを
取り囲んで攻撃したとか、これは完全に盤面を整えて
相手を詰ませているよね。
こういう地理的な戦略的優位性は分かりやすいと思います。
資生学におけるチョークポイントも同じだけど、
ここを抑えれば勝てるっていう地理的な空間がある場合は、
その重要拠点を占拠してしまうということが強い戦略になります。
もしかしたらゲームという言葉は不謹慎かもしれないんだけど、
圧倒的に分かりやすいと思うので、ゲームという言葉をあえて使っていきます。
戦争でもビジネスでも、すべてをゲームと捉えると
戦略という概念への解像度が高まります。
というのもあらゆるゲームには必ずゲームルールがあり、
勝ちパターンがあるからです。
戦争というか、それ以前のただの暴力にさえ
ゲームルールと勝ちパターンがあります。
どのようなタイプの暴力であっても、
自分の攻撃は届くが、相手の攻撃は自分に届かないという
条件を表現するのが勝ちパターンです。
人類の歴史を俯瞰してみると、
リーチが長い武器がメインウェポンになっていることが分かると思います。
石を投げる銅石とか、めちゃくちゃ長い槍を集団で持つとか、
弓はもうリーチが長い武器ですよね。
時代が下ると鉄砲が出てきて、機関銃が出てきます。
今はミサイルや飛行機からの空爆もあります。
これも設計思想としてはリーチが長い武器であり、
自分の攻撃は届くが、相手の攻撃は自分に届かないという条件を表現するための手段です。
あとは海戦。
海での戦いだと、早く走る船を作るというのもありました。
船に備えつけている大砲をお互いに撃ち合った時、
早く走る船って一方的に攻撃できるんですよ。
大砲には射程距離があるから、
射程距離ギリギリのところにいて、
ちょっと近づいて大砲を撃ったら、すぐ射程距離外のところに逃げちゃえば、
理論上こっちの弾は届くが、あっちの弾は届かないので当たらないという盤面を常に表現できます。
当たり前だけど、遅い船は早い船に追いつけないわけだから、
この盤面を覆すことは基本的にできません。
これも船が早く動くということで、
自筆的にリーチが長い武器を表現しているわけだから、
やはり同様の設計思想であり、勝ちパターンであることがわかると思います。
この後はビジネスという角度から、戦略という概念について眺めてみたいんだけど、
その前に、戦略とはイメージとすると、
ゲームの勝利条件を満たすのに役立つ重要な何かを独占することだと言えると思います。
今の暴力と戦争の例だったら、
リーチが長い武器を独占することが強い戦略だし、
ビジネスなら特許とか典型的だと思うんだけど、
みんなが必要とする技術を特許を取って、
抑えて独占してしまうこともやはり強い戦略です。
よく戦略戦略と言いますけど、
戦略っていうのは、ゲームルールと独占する箇所の2つに分解できると考えられます。
単純化して言うと、戦略イコール、
ゲームルールプラス独占する箇所です。
というのも、どこの箇所を独占したら強いかって、
ゲームによって異なりますから、
だから常に現在プレイしなければいけないゲームは、
どのようなゲームルールなのかを把握して、
その上でどこの箇所を独占したら強いかを特定することが戦略であるというわけですね。
現代社会への適用
というわけで、次回はこの概念を現代の社会に適用させるとどのように見えるかという話をしていきます。
次回に続きます。