1. ストーリーとしての思想哲学【思想染色】
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2024-01-28 07:55

#54 進化心理学/行動遺伝学1 地獄の釜の蓋を開く

進化心理学と行動遺伝学という身も蓋もない系の学問があるので紹介します。

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ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。
今回は、進化心理学と行動遺伝学という学問を紹介します。
進化心理学や行動遺伝学は、めちゃくちゃ扱いが難しい学問だと思います。
なぜなら、生物、特に人間の心を遺伝子によって説明しようとする、
つまり、心をまるで物のように扱って、
人間を機械であるかのように扱う、こういう性質がどうしてもあるからです。
それ自体は単なる科学的手法だから別にいいんだけど、
下手にはまるとね、
人間が遺伝子というプログラムによって動かされているだけの
人形だとしか思えなくなる恐れが結構あります。
それに、遺伝子の話をすると、どうしても生まれ育ちっていったセンシティブなところにも
踏み込んでいくことになるから、
そもそも倫理的に受け入れづらい部分もあるかと思います。
そのような、ある意味冷徹な科学の話ではあるんですけど、
だからこそ、倫理とか道徳的な価値観をエポケーして聞いてみてほしいです。
まずですね、この進化心理学と行動遺伝学は別の学問ですけど、
いろいろ本とか論文を読んでも、この2つは結構同時に語られがちです。
したがって、両者は完全に切り離して考えるものではなく、
ある程度密接不可分なものと捉えた方が分かりがいいと思うんですが、
その上でまずは進化心理学について紹介します。
進化心理学とはですね、進化生物学と心理学とを結びつけて、
心の進化に焦点を当てる学問です。
心の進化ってなんだって思うかもしれませんが、
そもそも感情というものは、生物進化の過程で獲得した一つの形質にすぎません。
人は感情によって進化したという本から引用しながらどういうことか説明しますね。
例えば、生物は食べ物を求めて行動しますが、
食べ物が見つかった時には嬉しいと感じます。
これは生存に有利な出来事が起こった時にホルモンが分泌されて、
脳の報酬系が刺激されて快感を得る。
その結果脳の学習が促進されて、
わすます採取や飼料、食べ物集めに励むから、
このような形質を持った個体は淘汰されずに、環境適応しやすくなるわけです。
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同じ理屈で、恐怖っていうのも、
捕食者から一目散に逃げることを推奨するという形質です。
そもそもの話、進化っていうのは別に、
良くなるとか強くなるって意味じゃなくて、
様々な形質が目的とか方向性を持たずにランダムに発生して、
環境適応に有利な形質を持った個体が結果的に生き残って繁殖するって意味なんですよ。
だから、当然進化の過程で恐怖を感じづらい個体っていうのも発生するんだけど、
そういう個体はあんまり真剣に捕食者から逃げないから淘汰されやすいです。
結果的に恐怖を感じやすい個体の方が生き残るので、
我々は恐怖を感じるという形質を今に至るまで保存していると。
このような形で心を説明していこうとするものです。
前提としてですね、僕たちの心と脳の構造は、
飼料採取生活を行っていた頃にほぼ完成しています。
人間は農業をしますけど、
実は農業をちゃんとやるようになったのなんてせいぜい1万年前ですし、
その程度の時間では進化っていうのは起こりません。
だから、農業が始まる前の人類を想定しつつ、
人間の心の仕組みを解明しようっていう文化人類学や進化生物学、
心理学などが混ざったような人類学的な奥の深い学問なわけです。
で、生物進化が起こる数十万年とかのスパンで、
いかに環境適応したのかっていう観点から見ると、
何よりも淘汰されないっていうのが大事になります。
生物はすべて生存競争を行っていますから、
淘汰の圧力って書く淘汰圧が常にかかります。
淘汰圧とは、生存に適しない形質を保存した個体を居なくさせる圧力のこと、
生存に適しない個体群を全滅させる圧力のことで、
恐怖を感じにくい個体が天敵に捕食されて全滅するとか、
特定の病気に耐性のない個体が疫病で全滅するとかいったことです。
もう一つ、性淘汰っていうのもあります。
セクシュアルの性に関する淘汰と書いて性淘汰。
端的なのは、孔雀の羽があんなに派手なのは繁殖のためですけど、
羽が地味な孔雀は繁殖できないから性淘汰されることになるといったことです。
したがって、淘汰されないためにはどうしたらいいかというと、
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一つ目には生存しやすい形質を持つこと、
二つ目には繁殖に成功しやすい形質を持つことです。
このことを根拠に、これは僕の意見ですが、三大欲求ってあるじゃないですか。
食欲、性欲、睡眠欲、あれはレイヤーが合ってないと思います。
生物の本能にビルトインされている根源的欲求は自己保存欲求です。
その内訳として、生存欲求と遺伝子複製欲求の二つが、
これが究極の二つの欲求として、二大欲求として置かれるべきだと思いますね。
話を元に戻して、今までは本能という最も古い根源的なトリガーの話をしてきました。
でも人間の心っていうのは、実際のところもっと複雑で、
恐怖のような原始的で単純な感情から、承認欲求とか周知心とか、
さらには行儀が良く純社会的か、あるいは反社会的かといったものまで無数の広がりがあります。
そして人間という種族にビルトインされている心という形質がありつつ、
それにはある程度の個体差があります。
個々人にはそれぞれ心理的特徴というものがあり、またそれには強弱があります。
身体的特徴だけでなく、人の様々な心理的特徴も遺伝をすることがわかっているから、
ここも研究のポイントとなってくるわけです。
ここでキリがいいので一旦切って次回に続きます。
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