ソシュールの言語学
この番組でも何度も取り上げているソシュールという言語学者がいます。
このソシュールによって、現代の言語学は始まったとか、言語学の父と言われたりとかしております。
その功績はいろいろありますけど、例えば、境自体と通自体を区別したりとか、
つまり、今話している言語、体系としての言語というのと、言語の歴史というのを区別したりとか、
あるいは言語の姿勢っていうのを指摘したりとかしております。 言語学のみならず、構造主義という、一つの思想的な流れっていうんですかね。
そういったことにも関わっていて、非常に重要な人物です。 ソシュール以前の言語学っていうのは、
歴史言語学ないし、比較言語学で、インドヨーロッパ語族の様々な言語の共通の祖先、
祖後を再建するというのが、ソシュール以前の言語学の主な仕事でした。
で、さっき言ったようにソシュールは境自体と通自体っていうのを区別して、体系としての言語、今話している境自体としての言語の重要性を説いたんですが、
ただ、ソシュール自身も歴史言語学に非常に大きな貢献をしています。 そのソシュールの歴史言語学における重大な功績というのは、
高音理論として知られています。 高音っていうのは、喉の音と書いて高音です。
さすがにね、10分やそこらではソシュールの高音理論を全てカバーはできないと思うんですけど、
BGMです。始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。12人のイカれる男です。
ソシュール以前の言語学というのは、すなわち歴史言語学で、 インドヨーロッパ語族の言語っていうのは、すごく
遡りやすいというか、古い文献がいっぱいあるんですよね。 いわゆる古典語と言われるラテン語やギリシャ語やサンスクリットというのが
文献が豊富にありますので、1786年に
ウィリアム・ジョーンズという人が、このギリシャ、ラテン、サンスクリットの3つの言語が偶然とは思えないぐらい似ていて、
さらに共通の祖先を持つだろうということを指摘したんですよね。 19世紀の言語学者たちは、
その共通の祖先のインドヨーロッパ祖語を
再現しようと、復元しようと取り組んでおりました。
その歴史言語学が始まった当初っていうのは、 ギリシャ、ラテン、サンスクリットっていうのがやっぱり古い言語なので重要視されていたんですが、
その中でも特にサンスクリットが一番祖母に近いだろうっていうような考え方がありました。
サンスクリットっていうのは母音の数が3つなんですね。 ですので、初めはインドヨーロッパ祖母もサンスクリットと同じ
ア、イ、ウの3母音を持っていただろうと考えられていました。 が、
それはちょっと不都合があって、 ラテン語なんかと同じ5母音ではないかということで今は落ち着いています。
インドヨーロッパ祖母のシーンの方ですが、 結構複雑だなぁと思えるところもあって、
まず破裂音が 3つ
系列というか対立があって、破裂音っていうのは 口のどっかしらでね空気の流れを止めてそれを破裂させるような
発音で、パーとかターとかカーとか こういった音です。日本語だったら
例えばターとダーとかカーとガーっていう風に声音と濁音っていうのが区別されてますよね。 つまり2つ破裂音に対立があるわけですが、
高音理論の意義
それにもう一種類インドヨーロッパ祖母の破裂音には発音の仕方というのがあって、 それが有声有気音というものです。
バーとかダーみたいに 日本語でいう濁音に息の空気の流れが伴うっていうような発音で
バーっていうのが 濁音というか有声音で有声有気音というのはバーというような発音になります。
こういう有声有気音は 現代だと
ヒンディ語にあります。これが有声有気音じゃなくて無声有気音だったら 韓国朝鮮語にあるんですよね。
これは日本語で有声音に息の流れが伴うような音で パーに対してパーっていうような音です。
というわけでインドヨーロッパ祖母の破裂音には
声音と濁音、 もっと専門的に言うと無声音と有声音に加えて有声有気音というのがあったと考えられています。
さらに複雑なのは南高外の音、カキクケコウとかガギグゲゴウっていう k とか g で書かれるような音も
3系列あるんですね。 このカーとかガーっていうのも破裂音なので、さっき言ったように無声音と有声音と
有声有気音と3つ系列があるんですが、それに加えてまた3つの対立があるんですね。
1個はノーマルのカーみたいな音で、2つ目は唇の丸めを伴うような コワーというような音。
シークワーサーのコワーですね。 3つ目は専門的には高外化した音でキャーみたいな音です。
カーとコワーとキャーっていうのが区別されていました。 いましたというかそういうふうに考えられていて、そういうふうに考えると
インドヨーロッパ語俗の様々な言語の 整合性の取れた説明というのができるんですね。
さてここからソシュールの高音理論の話になります。 冒頭お話ししたように高音というのは
喉の音で、 慣例としてHで書かれます。
このHの高音と言われる音も 3つあったと考えられているんですね。
このHの音は 普通に考えればハヒフヘホの音だというふうに考えられるんですが
ただ具体的な音声っていうのはよくわかっていないところがあります。 少なくともソシュールがこの高音というのを
想定したときは 具体的なシーンの音色っていうのはわかっていなくて
インドヨーロッパ語俗の言語、あらゆる言語がありますが 祖語の高音、Hの音にあたるものは
どの言語にもその痕跡はなかったんですね。 祖語の高音まで遡れるような証拠っていうのがある意味では現代話されている
インドヨーロッパ語俗の言語にはなかったんですが、 ではなぜソシュールがその高音というのを想定したかというと
その高音によって 母音の音色が変わっていたんだっていうふうに
考えたんですね。 ものすごく平ったくお話しすると
母音と高音が、つまりHみたいな音が組み合わさることで 例えばアーという母音ができたり
オーという母音ができたり、そういう母音の音色を変える 喉の奥の方の高音と言われるものが
かつては祖語にはあって、ただ現代話されている言語 さらにはラテンギリシャサンスクリットといった古典語にも
その証拠はなくて ただ母音の音色の
その交代というかね 違いを説明するためにソシュールは高音というのがあったんだと
主張したんですね。 で後にヒッタイト語というのが発見されて
ヒッタイト語にはソシュールの指摘したその高音の痕跡っていうのが あったんですね
ヒッタイト語っていうのはラテンギリシャサンスクリットの古典語よりさらに古いインドヨーロッパ語族の言語で
そのヒッタイト語に高音というのがあって でそれらの高音というのが
まさにソシュールが予測した位置に現れてるんですね なのでソシュールはその高音っていうのを予言していたというか
ただ過去の言語について予言するっていうのもちょっとおかしいですが 理論的な説明のために
想定されたその高音しかもそれが3つあるわけですけど H みたいな音が
実際に存在していたということが明らかになりました この高音理論っていうのは歴史言語学にとって非常に重要な
発見で そういった意味でもソシュールは偉大な言語学者なんですね
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう 番組フォローも忘れずよろしくお願い致します
お相手はシガ15でした またねー