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始まりました、志賀十五の壺。みなさんいかがお過ごしでしょうか。ベラトリックスレストレンジです。
受動態とか受け身分っていう現象は、どんな言語にもあるものだと思います。
どんな言語にもって言うと、あれかな、多くの言語にあるものだと思います。
日本語にもあるものですよね。 この本は多くの人に読まれている。
こういう受動態っていうのは、 普通、元の能動態っていうのが想定されて、
そこから派生されたものっていうふうに考えられると思います。 さっきの文で言うと、多くの人が
この本を読んでいる。 ある意味これが元の文で、
まず動詞の形が変わりますよね。 読むから読まれる、
れる、られるっていうのが付くのが日本語の受動態です。 で、動詞の形が変わるだけではなくて、
受動態っていうのは典型的には、 目的語であったものが主語になるというような操作
ということができます。 なので、この本を読んでいる、このをが付いていた目的語が、この本が
こういうふうに主語に書き上げされているわけですよね。 で、もともとあった主語っていうのは、多くの人にっていうふうににっていうのが付いて、
あるいはによってみたいに、 主語でも目的語でもなくなって、
ある意味格落ちするわけです。 なんならこの元の主語っていうのは、
受動態では出てこなくても別にいいんですね。 ある意味オプションとして存在するということになります。
この本は読まれているでも、文として成立はしているということです。 まあ英語も同様ですよね。英語も
もともと他動詞だったものが、目的語が主語になって、 もともと主語だったものが
倍で表されて。 で、動詞の形は
b 動詞プラス過去分詞形というふうに、 やはり動詞の方もプラスアルファで何か変化があるということになっています。
日本語の受動態はよく言われることですけど、 他動詞じゃなくて自動詞にも適用されるという特徴があって、
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雨に降られたとか、 あるいは
隣の人に足を踏まれたみたいに、踏まれたっていう動詞の形は受動態なんだけど、 足をっていうふうに目的語が出ているように見える。
そういうちょっと変わった受動態っていうのも存在します。 この辺の日本語の受動態については関連エピソードがございますので、
概要欄の url から聞いていただけたらと思います。
この受動態っていうのはさっき言ったように、他動詞の目的語が 主語になる、つまりある意味目立つ形、主役になる文であるってことなんですよね。
そうなると、 目的語っていうのは動作の影響を受ける人あるいはものということなので、
その動作の結果に注目する構文ということができるかもしれません。 人や物に何が起こったか、その結果に注目するということは、
受動態は完了や過去と連続しているとも言えるんですね。 実際、
インドイラン語派って言われるインドヨーロッパ語族の東の方の言語では、 受動態が過去形に発展していったんですね。
具体的にはヒンディ語とかがそういった言語で、 どういうことかというと、日本語風に考えると、
太郎が花子に殴られる。 もともとこういう受動態だったのが、
太郎に注目する、太郎の結果に注目するということで、 だんだん完了や過去を表すようになっていったんですね。
そうなると殴られるっていうのが受動態ではなく、 過去形へと解釈されていって、
現代のヒンディ語では、 花子に太郎が殴られるというのが、
受動態ではなく過去形と解釈されて、 花子に太郎が殴ったみたいな言い方をして、
殴った人、主語にはにっていうのがついて、 殴られた人、目的語にはがっていうのがついてる、
みたいな構造になってるんですね。 で、これは過去形の時だけで、
現在形の時は、 花子が太郎を殴るというふうに、
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主語にが、目的語にをっていうのがついてるんですけど、 これが過去形になるとずれて、さっき言ったように主語には
に、目的語にはがっていうのがつくっていうふうに、 現在形では主語を表していたが、が、
過去形では目的語に使われているということになります。 こういうのを専門的には分裂の覚醒といって、
このあたりの話は関連エピソードがまたあるので、 聞いていただけたらと思います。
日本語風に考えてにだとちょっとわかりづらいかもしれないので、 によってみたいなので考えると、
ヒンディー語の過去形は、 花子によって太郎が殴った。
過去形はこういう言い方になって、 によってっていうのは、
他動詞の主語、それも、 過去の文の他動詞の主語を表す専用のマーク、
ということになります。 こういうのをまた専門的な話ですけど、
能覚というふうに言うんですね。
こういうふうにヒンディー語をはじめとする、 インドイラン語派の言語では、
受動体が、 完了とか過去の方にこう進化していったわけなんですけど、
別の形でも受動体と完了っていうのは連続していって、 これ英語はそうでもないんですけど、
同じインドヨーロッパ語族のもっと西の方のゲルマン系の言語とか、 ロマンス系の言語では、
完了形と受動体が似たような形になるんですね。 英語だと、
完了形っていうのは、 ハブプラス過去分詞形ですけど、
ヨーロッパのドイツ語、オランダ語とか、 あるいはイタリア語とかフランス語みたいなロマンス系の言語では、
b 動詞プラス過去分詞形、 英語だと受動体の表現ですよね。これが完了を表すことがあるんですね。
英語にも化石的には残っていて、シーズゴンみたいな言い方をすると、 受け身ではなくて完了の意味になって、特に自動詞ですね。
移動や変化を表す動詞は b 動詞プラス過去分詞形で完了を表します。 こういうふうに形の面では受動体っていうのと完了っていうのが
連続しているっていうことができるんですね。 このハブを使った完了と b 動詞を使った完了については、
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またまた関連エピソードがあるので、そちらも合わせて聞いていただけたらと思います。 実はこのあたりの話は日本語の
古文の話も関わってるんですね。 というわけで今回のお話は何ですかね、受動体と完了の連続性みたいなお話でした。
今回は関連エピソードが結構あるので、 この後ぜひ合わせて聞いていただけたらと思います。
それではまた次回お会いいたしましょう。 お相手は滋賀十五でした。