1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2021-09-28 10:06

#366 『風立ちぬ』の言語学 from Radiotalk

関連トーク
312 体言止めが、歴史を変える。
https://radiotalk.jp/talk/563222

参考文献
『日本語の文法を考える』 (大野晋、岩波新書)

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育 #ジブリ #アニメ
00:02
始まりました。志賀十五の壺。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。志賀十五です。
こないだ、こないだっつってもずいぶん前ですかね。
金曜ロードショーでジブリの風立ちぬっていう映画やってましたね。
まあすごいいい映画で、やっぱりユミいいなと思いました。
この風立ちぬっていうタイトルは、文語っていうか、いわゆる古文の言い方ですよね。
立ちぬっていうのは、動詞立つの連用形に、官僚の助動詞のぬっていうのがついてて、
まあ風が立っちゃったという意味になってるわけですよね。
この立つっていうのは、自動詞ですね。風が立つっていう意味なんですけど、
実は古文において、他動詞も立つっていう形だったんですね。
現代語だと、自動詞立つに対して、他動詞は立てるですよね。
看板を立てるっていう言い方をするので、現代語だと自動詞と他動詞で違う形なんですけど、
文語というか古文においては、両方立つという形でした。
ただ、これは一見同じ形に見えるんですけど、
修飾形が同じだけで、活用は違うんですね。
というのが、自動詞の方の立つ、風立ちぬの方の立つは、四段動詞と言われるもので、
だからなんだろうな、古文で習った風に言うと、
未然形から順に立ち、つうつう、立ててっていう風に出てくるんですね。
立たず立ちたり立つ立つとき立てば立てとこういう風になってるわけなんですけど、
一方、他動詞の方の立つは下二段活用なんですね。
これも未然形から順に立ててつうつるつれてよとなっております。
だから立てず立てたり立つ立つるとき立つれば立てよとこういう風になってるわけなんですね。
なんか懐かしいですよね。こういう動詞の活用とか、あるいは助動詞の変化形とかね、
必死に暗唱した覚えが皆さんあるんじゃないでしょうか。
なので風立ちぬっていうのは自動詞なので、現代語にすると風が立ったということなんですけど、
もしこれを風を立てたっていう意味で言うんだったら、風立てずっていう風になるんですね。
03:04
官僚の助動詞はぬっていうのは自動詞についてつっていうのは他動詞につくっていう、
使い分けがあるので立てつっていう風になるんですね。それは置いといてですね。
今日のトークは、なぜ古文において自動詞も他動詞も立つという形だったのに、活用は違うんですけどね。
四段動詞と下二段動詞という活用の違いこそあれ、同じ立つという形だったのに、
現代語では自動詞立つ、他動詞立てるとなってしまったのかということをお話ししていこうと思います。
立つみたいに活用の種類が動詞の自他の区別、自動詞他動詞の区別に関わっているっていうのは他にもあって、
面白いのは逆のパターンもあるんですね。
つまりさっきの例で言うと、四段動詞の立つは自動詞、下二段動詞の立つは他動詞だったんですけど、
切るっていう動詞は逆で、四段動詞の切るの方が他動詞で、下二段動詞の方の切るは自動詞なんですね。
これは今の切れるにつながっているということになっています。
まあいずれにせよ立つにせよ切るにせよ同じ形だったものが、今では立つ立てるとか切る切れるっていう風に終始形は違う形になってしまっているんですよね。
この原因のまず直接的なものは、連体形が終始形になってしまったということなんですね。
このことについては関連トークがあるので、詳しい話はそこでお話ししているので、詳細欄にリンクを貼っているので聞いてほしいんですけど、
ひとまず、連体形が終始形として使われるっていうような変化がありました。
これは四段動詞は関係なくて、立つっていうのは終始形も連体形も立つなので見た目の変化はなかったんですけど、
問題は下二段動詞の方で、終始形立つに対して連体形は立つるなんですね。
こっちの立つるの方が終始形として使われ始めちゃったんですね。
次に起こった変化として、この立つるっていう連体形が立てるっていう形に変わってしまいました。
同時に依然形というか仮定形も立つれから立てれに変わってしまったんですね。
これはなんでかというと、一節によると連用形で動詞っていうのはよく使われるので、つまり立てっていう形でよく使われるんですね。
06:06
その後に続く助動詞がいっぱいあったりするので、さっきの立つとか立たりとか、
なので最も多く品質するこの連用形の音に合わせるのが、記憶の負担が軽くなるということで、立つる立つれっていう音が立てる立てれに変わって現代に至っているということなんですね。
これはですね、国語史上かなり大きな事件で、一般に二段動詞の一段化と言われるものです。
二段動詞っていうのは、うっていう音と、しも二段だったりですけど、うっていう音とえっていう音が出てくるので、しも二段って言ってたんですけど、
今立つる立つればっていう音が立てる立てればに変わってしまったので、そうなるとつっていうう段の音は出てこなくなって、全部え段の音しか出てこないんですね。
そうなると、これは一段活用、一段動詞ということになります。
だからまあ活用の種類が減ってしまったっていうことなんですね。
いくつ活用形があったんだっけな。
9つあったのかな。
4段活用、紙1、紙2、しも1、しも2、下辺、左辺、な辺、ら辺、だから9つあったんですけど、
現代語では基本的に2つですね。
2つの活用形しかありません。
5段活用と1段活用しかなくなっちゃってて、不規則動詞としてするとくるっていう、いわゆる左辺と下辺があるわけなんですけど、
まあ活用の種類が淘汰されてしまってるっていうことですね。
今言ったように現代語では、するとくるっていうこの2つの動詞を除いて、5段動詞か1段動詞しかありません。
日本語教育ではグループ1の動詞、グループ2の動詞っていう言い方をするんですね。
冒頭言ってた、自動詞の立つっていうのは、立たないっていうふうにないを付けたとき、あだの音が出てくるので、これは5段動詞で、
一方、他動詞の立てるは立てないで、ないを付けたときあだの音が出てこないので、これは1段動詞ということになります。
現代日本語の動詞は、この5段動詞か1段動詞のどちらかに当てはまるっていうことになってるんですね。
この活用の型がさらに一つになっていくかというと、これはどうですかね、そういった気配は多少あるといえばあるんですね。
例えば1段動詞の立てるっていうのは、命令形は立てろですよね。
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これはね、和者によっては立てれっていう言い方をする人もいるんじゃないかなと思います。
この立てれみたいな命令形は、どっちかというと5段動詞の方の命令形で、5段動詞の命令形っていうのは立てですよね。
これはどういうことかっていうと、仮定形と命令形が立てばと立てで同じ形を使っていると。
そのルールが1段動詞の方にも適用されて立てればと同じ形の命令形ということで立てれとかいう人もいるんじゃないかなと思います。
これはもしかしたら5段動詞と1段動詞がさらに一つの活用形になっている兆しかもしれません。
というわけで最後まで聞いてくださってありがとうございました。
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お相手はしがじゅうごでした。ではまた。
10:06

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