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始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしいいでしょうか。志賀です。
今回のトークではですね、日本語の動詞についてお話ししたいと思います。 まあこの番組を初めてお聞きになる方もいらっしゃると思うので、
ざっくり言っとくとですね、この番組はよくね、言語学の話をするんですよね。
で、過去のトークでもお話ししてるんですけど、僕が言語学にはまったきっかけっていうのが、
動詞なんですよ。で、その話っていうのが、まあ中学の時に国語の授業で、動詞が無断で終わるっていうのを習ったんですよ。
で、その時に3つの衝撃を受けたんですよ。
一つはですね、無断で終わるっていうその事実そのものにびっくりしたんですよね。
いつも平気でペラペラ喋ってる日本語に、 そんな整然としたルールがあったんだっていうことにまずびっくりして。
で、2つ目の衝撃はそのルールを自分が知らなかったっていうことですね。 スポーツでも何でもそうですけど、
ルールがわかって初めて楽しめたり使いこなせたりするものなんですけど、 動詞が無断で終わるっていうのを聞いた時は順番が逆なわけですよね。つまり
普段から使いこなせているものについて後からルールを知るっていうね。 それが2つ目の衝撃でした。
最後の衝撃は、周りがそれほどびっくりしていないっていうことですね。
周りの友達を見ましてみてもですね、いつもの授業と同じようにつまんなそうな顔をしてるっていうことですね。
こんだけの衝撃を僕は受けているのにっていうことですけど、
そんなこんなでですね、 動詞っていうのが一つのきっかけとなって、僕は言語学にはまったと言って
いいんですよ。なので過去のトークでも特に日本語の動詞をテーマにお話ししているっていうのがよくあります。
今回はその日本語の動詞の活用についてね、ちょっとお話ししようと思います。
活用っていうのは、動詞の形が変わることを言うんですよね。
具体的に言えば、国語教育では、未然、連用、終始、連体、仮定、命令ですか、
そういう活用の活用形があるっていうことなんですけど、 そのパターンにいくつか種類があるっていうことですね。
日本語の場合は、大まかに言って2つしかないんですよ。 2パターンしかないっていうことですね。
例外はたった2つしかないっていうことで、 まずその例外の方からお話ししたいと思います。
その例外っていうのは、するとくるです。 これは他の動詞と似たような活用の仕方をせずに、独自のパターンで形を変えていくので、
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変格活用とか言われるものですね。 なので、するの方は作業変格活用。
くるの方は家業変格活用と言ったりします。 左辺、下辺とか言ったりするんですけど、
古典だと、さらにな辺とから辺とかあるんですけど、 現代日本語ではもう落ち着いちゃって、2つしかないっていうことですね。
これは例えば、英語だと不規則動詞って大量に覚えましたよね。
つまり、原形、過去形、過去分詞形で、過去形過去分詞形って規則的なものだと d とか ed つければいいんですけど、
そういうパターンじゃないものですね。 それを英語だと不規則動詞と言ったりするわけですけど、
ああいう大量に不規則動詞があった言語に比べると、 日本語ってするとくるしか不規則はないので、
かなり規則的だということがわかります。 では次にそのメジャーなタイプをちょっと見ていきましょうね。
1つは語弾動詞と言われるものです。 語弾動詞ね。
ネーミングはなんでそうなっているかというのは置いておいてですね、 語弾動詞っていうものはどうやってわかるかというと、
ないっていうのをつけたら、そのないの直前に あっていうのが出てくるのが、
あだの音ですね。あだの音が出てくるのが語弾動詞です。 例えば書く、文字を書くの書くは、書かないで、かっていうのが出てくるので、
これは語弾動詞だなということがわかります。 あるいは、読むとかもそうですね。読まないでまであだの音が出てくるので、
これも語弾動詞ということになります。 一方一弾動詞はですね、
ないをつけても直前にあだの音が出てこないものを言います。 例えば、見るだと見ない、
食べるだと食べないとこういうふうになるので、こういったものは 一弾動詞と言われるものです。
これね、中学の国語教育だと、紙一弾と下一弾って分けるんですけど、 つまり、見るっていうのが
紙一弾動詞で、食べるっていうのが下一弾なんですけど、 これは別に分ける義理はないですね。分けても特に意味はないので、
一弾動詞でひとまとめにしちゃってもいいと思います。 日本語母語話者にとってですね、こういう語弾動詞とか一弾動詞とか知ったところで
特に意味はないんですよね。というのが、 母語話者っていうのは天才なので、そういうルールを知らなくても、
正しい形しか口から出てこないので、どうでもいいんですよね、そういうことは。 ただ、日本語学習者にとっては大変ですよ、これは。
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なので、 これはどちらかというとね、その日本語が母語じゃない人がどういうふうに
一弾動詞と 語弾動詞を見分けているかっていうね。
特にその学習する初期の段階においてですね、 どういうふうに見分けるかということですね。先ほどないをつけて、あだんが出てくれば語弾動詞だって言ったのは、
あれは母語話者向けの説明です。 なので、日本語母語話者がね、どういうふうに考えているかというか、教えられているかというとですね、
まず一弾動詞っていうのは必ず るで終わります。
見るとか食べるもそうだし、 ドアを開ける閉めるとかそういうものも一弾動詞です。
逆に、るで終わらなかったら絶対語弾動詞なんですよ。 先ほど言った書くとか読むとかもそうだし、歩く、
燃やす、なんでもいいですけど、 るで終わらなかったらもう自動的に語弾動詞です。
ただ、 るで終わる語弾動詞っていうのもあるんですよね。これが面倒なところなんですよ。
例えば、ひげをそるのそるとかは、るで終わってますけど、これは語弾動詞です。
ここでさらにね、ルールがあって、
るの直前が、い弾とかえ弾の音ではなかったら語弾動詞なんですよ。
なので、そるの場合は、るの直前は、そで、お弾なので、これはもう語弾動詞で決まり。
つまり、一弾動詞っていうのは、必ずるで終わって、かつ直前が、い弾かえ弾かということになります。
これで話はつきそうなんですけど、そうでもないんですよ。ここがね、難しいところで、
例えば、切るっていう動詞があったとして、動音異義語と言っていいと思うんですけど、服を着るだと、これは着ないなので、
これ一弾動詞なんですよ。ただ、ハサミで切るの方は、切らないになるので、
同じ切るでも、一弾動詞の場合と語弾動詞の場合があります。
ただ、切るの場合は、服の方は、切るで低い高いっていうアクセントなのに対して、
ハサミで切るの方は、切るだから高い低いっていうね、こういうアクセントになっているので、一応アクセントで区別されます。
なので、るで終わって、直前がいだから、い弾だからと言って、必ず一弾動詞になるとは限らない。
紙を切るっていうね、この切るはその特徴に当てはまるんですけど、
語弾動詞なんですよね。 さらにめんどくさいのは、焦るっていうものですね。
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この焦るっていうのは、るで終わっている。かつるの直前がa弾なので、これは一弾動詞だろうと思うんですけど、
確かに一弾動詞の焦るっていうのもあります。色が焦るっていうものですね。これは、
色が焦ないとかなので、a弾が出てこないので、やはり一弾動詞なんですが、
焦るっていうのは、急に話しかけられて焦るっていう場合の焦るは、
焦らないってa弾が出てくるので、これ語弾動詞っていうことになるんですよ。 この焦るの場合は、先ほどの
切ると切るはアクセントで区別があったんですけど、 焦るはね、アクセントでも区別ができないので、完全な動音異義語ということになります。
これはめんどくさいと思いますね。 さて、今までのお話をまとめますとね、
日本語の動詞は基本的に2つのパターンしかない。 例外は、するとくるしかないっていうことですね。
1つは語弾動詞、1つは一弾動詞と。
一弾動詞っていうのは、必ずるで終わって直前の音が、 異弾かa弾かどちらかしかないっていうことです。
ただ、るで終わっているし、直前が異弾かa弾なのに、語弾動詞のもの。
紙を切るとか、 急に話しかけられて焦るとか、
こういった語弾動詞も存在するっていうことですね。 というわけで今回はここまでということで、
また次回お会いしましょう。ごきげんよう。