吉笑の真打昇進
はい、シェアする落語の四家です。
6月29日日曜日、座・高円寺にて、
立川吉笑真打昇進披露興行6日目昼へ行って参りました。
いやー、めでたいですよね。
立川吉笑さん、自慢じゃないけど、前座の頃から見てます。
非常に早い1年と5ヶ月で二ツ目昇進ということになったんですが、
僕はこれについて文句なし、この人が落語の可能性を広げていくのが楽しみでしょうがないというツイートをして、
それが2010年かな、11年とか12年でしたっけね、だと思うんですが、
いまだにですね、当時そのツイートをした僕のことを褒めてあげたいと思うぐらいです。
しょっちゅう見せびらかしてるんですが、誰にも何の反応もないというですね、
大変不満なんですけども。
まあね、明らかに吉笑師匠はですね、
もう今、落語の新しい世界を切り開く、そして立川流を引っ張るトップランナーとしての真打昇進披露を仕掛けています。
公演スタイルの革新
例えば、よみうりホールとかね、有楽町朝日ホールとか、あの辺のところを使ってバーンと披露目をやる。
何日か続けてやるみたいなことは立川流だとね、よくあると思うんですよ。
それではそれですごい大変なことなんですけど、
吉笑師匠がすごいなと思ったのは、
吉笑師匠は京都出身ですけども、
自分を落語家として育ててくれた高円寺、僕も吉笑師匠が二ツ目になったばっかりの頃、
吉祥師さんと2人で、高円寺の庚申文化会館っていう公民館みたいなところでね、
やってる落語会に時々行きました。その高円寺で10日間やる。
この10日間って意味がどこにあるのかってことですよ。10日っていうのは要は寄席ですよね。
立川流は今、なかなか出ることができない、基本的には出ることができない寄席の興行スタイルに寄せて、
さらにその10日間で土日だけかな、昼夜は。昼夜をやってみたりとかですね、
それぞれの顔つけに意味合いを持たせて、ずらっとスターを並べて、かつ立川流の先輩もずらっと並べて、
素晴らしい顔つけを作ったんですね。
このことは本当にすごいなぁということですね。吉笑さんっていうのはかなり前衛的な落語で、
二ツ目の頃は斬新さが評価されてたんですが、一方でね、古典にもしっかり取り組んだり、先輩方、
例えば三遊寺白鳥師匠とかに学んだりということで、その革新を続けながら伝統も尊重するっていうことをやっている。
ここがすごいですよね。その興行のスタイル、顔つけだけではなくて、
これはもういろんな人が写真載せてますけども、座・高円寺の中に、寄席も造作でこしらえちゃってるんですね。
後ろの方に襖を張って、左三階松を入れて、左右も舞台袖みたいなところをちゃんと作って、
提灯がずらずらずらとぶら下がっていて、そこに過去の会のポスターであるとか、
自分の落語を江戸風の絵にしたものですとか、こういったものを飾って、本当に寄席空間を作ったんですよ。
当然といえば当然なんですけど、偉いなって思ったのは、予選以外の落語をやるスペースで、
普通は山台を組むんですね。山台ってお分かりになりますかね。
簡単に言うと、この毛氈、大体赤い毛氈を使いますが、赤い布がかかった普通の舞台の上にもう一個台を設けるんです。
これで、いわゆるホールの舞台に落語をやるための場所を作り、その上に座布団を置く。これが普通のスタイルです。
それに対して吉笑さんは座・高円寺の舞台そのまま、その上に座布団を置くスタイルにした。これは寄席と一緒なんですね。
ですから漫才の人も出てくる時は靴下で出てくる。落語が当然たびで出てきて座布団に座るというスタイルで、これがやっぱり寄席なんですよ。
出演者の才能
このあたりをちゃんとやってるっていうのがすごいなと。ぶっちゃけお金もかかってるし、ご自身でおっしゃってましたけども、これがもうなくなるのがちょっと寂しいので、
レンタルの機材を使っているから無理だと思って聴いてみたら買い取れると。買い取ろうかなともちょっと思った。
頑張れば払えない額ではないので買い取ろうかなと思ったけども、やっぱりそうだと思うんですけども、保管に倉庫代にすごいかかってしまうので、ちょっと今検討してるというふうに仰ってました。
確かに10日間だけでなくなってしまうのは、非常に惜しい舞台装置です。本当に賢いのは、お客さんが入った時には幕が開いてるんですよ。
撮影してSNSにアップしてくださいっていう風に影アナを流すんですね。
後ろに襖があって、左三階松の門があって、造作の左右の袖のところにも左三階松が入っている。非常に余生を舞台上に再現した雰囲気。
それも立川流の寄席ですよね。写真撮らせて、僕も撮らせてもらいましたけども、ばら撒いてくれという形にしてある。
さて皆さん、真打昇進披露興行や襲名披露とかって、だいたい後幕っていうのがありますよね。
で、後幕のかかっていない状態でスタートするっていうのもこれまた寄席っぽいですよね。
大体興行のところから後ろ幕がバーンってかかったりするっていうことが結構あったりしますし、2人で披露目やる時とかいう時もありますんで、これをどう付け替えるかみたいなところもあったりするわけですけども、
今回は座・高円寺、優れた小屋でございますので、上の見えないところに多分後ろ幕がつってあったんだと思います。
で、それが口上の時にスルスルスルっと下に降りてきて、後ろにバンと入る。で、この後ろ幕が丸亀製麺。
丸亀製麺の後ろ幕にですね、この暴れ主のように非常にめでたい造形で、サトリデザインさんですか、うどんをあしらった後ろ幕。
素晴らしいですね。本当に素晴らしいと思いました。で、もう一つ素晴らしいことはですね。
吉笑師匠が出演者もう前座からひとりひとりに関して自分とのつながり、その芸に関する解説的なこと。
ライナーノーツ的なものですかね。レビューというべきかな。これをしっかり書いてるんですよ。この人はこういう人で、自分はこういうふうにお世話になりました。
これが非常に的確な文章。特にね、開口一番がね、立川笑王丸さん。今前座ですけど、8月に二ツ目昇進する。まあこの人もすごい才能だと僕は思っていますが、この人に対するレビューの評価が本当に素晴らしかったですね。
もう膝叩いてその通りって言いそうになりました。そういうパンフレットも用意し、これもほぼリアルタイムで書いてるらしくて、今まだ原稿全部書き終わってないらしいんですよね。
だからその楽屋で各出演者の紹介をずっとこうパソコンで書いてるみたいな、そんなお話もされていました。開口一番は先ほどご紹介した通り、立川笑王丸さん。
この人は絶対すごいことになります。ものすごい才能だと思います。『山号寺号』でしたけども、『山号寺号』をね、最後ちゃんと今回の興行に結びつけて落とす、もう「憎いね」って言いたくなるような工夫が下げまで含めて、
ところどころに出てくる、口調がすごい綺麗。この人はぜひ期待していただきたい。8月の披露目で行きたいんですけど行けないかもな。本当に期待してます。続いて立川志ゑん師匠ですね。
立川志らく一門ですけども、うまくなりましたね。そんなに僕がしょっちゅう見てる方ではないということもあるんですが、あんだけ笑王丸さんが達者にこなしたら、次はやりにくいだろうなと思ったら、その笑王丸さんの『山号寺号』を拾って、自分も『山号寺号』を一つ入れてね。
ちゃんと沸かせて、またね達者なんだ。いい喋りだと思います。ネタは『短命(長命)』でした。続いて立川志ら乃師匠。またこの人がですね、志ゑん師匠をいじるんですね。同じまあ志らく一門ということもありまして。
で、うまい具合に志ゑん師匠をいじった後に吉笑さんとですね、吉笑師匠との話ということで、吉笑師匠に落語を教えてくれと言われて、落語を教わる時には、ネタをもらう時には必ず何かお礼をしなければいけないんですね。
高いもので全然なくてもいいし、そもそも前座がその高いものを用意できませんから、お茶だのお菓子だのお酒だのを持っていくということがあるんですが、本を持ってきたと。
その本がまさにその時、吉笑師匠がカバンの中に入れていて、読んでいる最中の本だった。つまりそれは持ってくる本としては大正解だったというような話をされていて非常に面白かったですね。
またここからネタに入っていくんですけど『ぞろぞろ』うまいですよね。なんかね、吉笑師匠の自由奔放な新作まで含めて、はちゃめちゃな感じをしっかり残しつつ、ちょっとこの枯れた味わいも、御髪がね、ちょっと白いものが混ざってきたというところもあると思いますが、
落ち着きの味もね、ちょっと入ってきて非常に噺の幅ができて豊かになったなというふうな印象を受けました。
続いてですね、談志一門であり、元立川流ですね。立川談幸師匠です。談幸師匠もですね、やっぱりこの人が落語の標準だなというふうに僕は何度も思ってますが、面白いですよね。
この前、談幸師匠の会行ったんでまくらがそんなに変わってなかったですけど、そんなことはどうでもよくてですね。もうまくらからもう場内大爆笑ですね。小笠原に行った時の話。小笠原で子供に自分の芸が通じなかったという話ですね。もう大爆笑でございました。
で、ここからですよ。左談次師匠無き後、この話はやっぱり談幸師匠だなというところでですね、『町内の若い衆』、もう非のつけどころが全くない馬鹿馬鹿しさ。いいですね。
なんですか、あざらしのような嫁の程よいだらしなさみたいなところですよね。ここがね、非常にいいですよね。僕の好きなセリフは「茶室つくれ」ってやつですけども、このセリフもちょうど程いい感じでね、パンと突き刺さってくる。
そしてあの談幸師匠が作られて左談次師匠がやってたのかな。逆なのかちょっと定かではないんですが、自分の家の前に来ると寒気が来るっていうシーンがありまして、これがね、面白いんですよね。もうね、なんと聴いても面白いですね。素晴らしかったです。
続いて、まんじゅう大帝国です、爆笑問題カーボーイでよく名前を聴きましたけども、拓者な漫才ですね。確か他にも寄席どこかで出られてて、それはなんか生ではなくて、なんかビデオかなんかでyoutubeかなんかで見た記憶がありますけども。
だからいわゆる今のお笑いとしての効率性を重視した、M-1を中心とした効率性重視の漫才と、寄席の緩い漫才のちょうど間ぐらいを上手い具合にくぐり抜ける。
もともと日大落研で、橘家文吾さんの後輩なのかな先輩なのかな。近いところだったと思いますけども、落語のリズムがわかってるっていうところもあるんじゃないかなっていうふうに思いました。
非常に結構な色物というところで、仲入り前はですね、どんとこの人です。瀧川鯉昇師匠。鯉昇師匠は、鯉昇、鯉八、談笑、吉笑でダブル親子会というのを何度かやられていて、もちろん行きたかったけど行けなかった。
それで吉笑さんとのご縁がありますというような話から、また爆笑のまくらもどっかんどっかん仕込んでいって『茶の湯』ですよ。『茶の湯』なんかね、鯉昇師匠がやったら面白いに決まってるんですけど、今日はっきり椋の実って言ってませんでしたね。洗剤って言ってましたね。あと絵の具も使ってましたね。
感謝と期待の工場
もう有害物質です。茶の湯じゃありません。もう有害物質です。有害物質をみんなで飲んじゃうというところで、もうサゲも全然違うし、もう完全な鯉昇ワールドがですね、展開されているというところですね。
ここで仲入りが入って口上ということになって、司会は志ら乃師匠。最初は談幸師匠。談幸師匠もね、吉笑師匠は後で言ってましたけど、前座期間が短かった分だけいろんな師匠に使ってもらえる機会が少なかったと。
その中で談幸師匠は何度も使ってくれたということで感謝してるみたいな話をしてたんですが、その分やっぱり見てたんですね。
こいつ違うなっていうのを。だからその中、自分が見ていて期待したものがこうやってちゃんと花開いたっていうような喜びを感じられる口上でしたね。
鯉昇師匠は相変わらず話が面白すぎる。面白すぎる中でしっかりとね、立川流への祝福と落語界全体への貢献というものの期待をお話しされていたかと思います。
談笑師匠はとにかく談幸師匠と吉笑師匠が大好きなので、ここに一緒に並べることが嬉しいっていうので、弟子に感謝してましたね。
本当に幸せな感じの口上でございましたね。また吉笑師匠が三本締めのところでですね、フェイクをまた入れてきてドカーン受けてましたね。
あと談幸師匠がちょっと口滑らせてましたけども、それはしゃべらないことにいたしましょう。
この口上は写真撮影OKで私も結構写しました。
口上が終わりまして、今度は談笑師匠。10分しかないと言いながらどうしようと言いながら『堀の内』ですよ。
これも談笑師匠の得意中の得意のパターンで、どこで切っても大丈夫だし、確実に受けるというですね。
この『堀の内』は本当に面白いですね。
やっぱり僕がすごい好きなのは、旦那の顔に墨で文字を書いちゃうっていうね。ここが本当におかしいです。
さすがに銭湯までは行く時間はなかったですけども、爆笑しっかりと落語で笑わせてくれるっていうのをですね。
しっかり堪能させていただきました。
そしてヒザは豪華ですよね。ねづっち先生でございます。
ねづっち先生は立川流の寄席もね、ちらちら出演されていらっしゃいますよね。
いつもの謎かけステージだったんですが、もういつもの安定の謎かけステージ、まあ面白い。
もう拍手拍手拍手がもう続く謎かけステージですが、お題がね。
こういう時ってだいたいお題で戦う吉祥って出るんですよ。
僕も鯉八師匠の披露目の時かな。披露目じゃないな。鯉八師匠が初めて披露目以外で水色で取り取った時かな。
にお題で瀧川鯉八っていうふうに言ったのを覚えてますけども。
言うんですよ。多分それも考えたんじゃないかと思うんですけど、全くそれが出ずですね。3人とも。
お二人目の方の「うどん」っていうのはね、非常に良いお題でしたけども、1個目と3つ目のお題があまりにもマニアックすぎて、なんかこれで良かったのかなみたいなですね。
空気になったというですね、あんまり納得しないでステージ降りられたようですけども。
で、トリの立川吉笑師匠でございます。
もうね、満を持しての登場ですよ。で、ここまでこれでいろんな話をね。
まだそのさっきの出演者の紹介のちゃんとした印刷物ですよ。まだ原稿書き入れてないとか、そういう話をですね、いろいろとされつつ。
真打昇進披露興行エピソードですね。ちょうど6日目っていうこともありましてされつつですね。
このまくらということはこの話だなって、コトバ警察の話が来たらこの話だなって思ったらやっぱりちゃんときました。
『小人十九』。いやー伝染病の話ですけどね。『小人十九』ですから。
言葉の伝染病の話ですね。あんまり新作で詳しいことは言いたくないんですけど。
これCDにもね、確か『ソーゾーシー』のCDにも入ってまして、僕はすごく好きなネタです。
もうね、のびのびとやってらっしゃってですね。6日目になっていろんなものが慣れてきて、その分ちょっと噛んだみたいなことをね、おっしゃってましたけど、そんなことはどうでもいいです。
お客さんをしっかり楽しませる、そのために作られた話をそのためにやっているという感じがですね。
とても良かったです。で、しっかりサゲを落とした後で、1回幕止めてご挨拶。そこは写真撮影OKコーナーになっておりました。
まあ総じてね、
吉笑師匠の先進性、先駆者としてのアプローチと、落語に対する、落語の文化に対する深い造形、深い尊敬の念。
これがね、本当に感じられるんですよ。なので、それはすなわち、俺がこれから落語界立川流を引っ張っていくぞという意気込みですね。
それが本当に感じられる。だから、まあいろんなアプローチがあると思うんですが、10日間同じ小屋でやる。
さらに寄席小屋と同じような造作でもって、ホールの中に寄席小屋を再現する。10日間だけ再現するというですね。
このアイディアも素晴らしいし、そこにかける着替えというのもですね、本当に吉笑師匠らしい素晴らしいアプローチだなというふうに思いました。
これからしばらく真打昇進披露という形での特別な興行が続いていく。下手するとだいたい1年くらいかかったりしますから、そういうスペシャルなことが続いていくと思うんですが、
また、ご自身のペースと、ソーゾーシーがこれで全員真打ちになったということかな。太福さんの世界は真打ちという言い方をしないかもしれませんけど、
そういうことでですね、よりまた新しいことにチャレンジしていく。よりまた古典もね、いい古典やってらっしゃいますからチャレンジしていくというですね、挑む真打ちとしてご活躍されるんじゃないかなというふうに思います。
どうもシェアする落語の四家でした。ではまた。