落語運営のトーク
はい、シェアする落語の四家です。
4月26日、寸志さんの会からですね、移動しまして、亀江戸梅屋敷、
独演会.comさん主催の笑福亭べ瓶・古今亭文菊 二人会行ってまいりました。
オープニングトークで、べ瓶師匠と文菊師匠。
べ瓶さんはですね、師匠と呼ばないでということを言ってたと思うんですが、
後輩の文菊師匠に師匠と付けるので、あえてここは師匠と付けさせていただきます。
べ瓶師匠、文菊師匠ですね、お二人による立ちで話すトークですね。
予定では15分、終わってみれば35分。
今日、40分くらいあったんじゃないかな。
でも内容は充実していましたね。
あの主催者の方がですね、笑福亭べ瓶さんがずっとですね、
発信し続けているYouTube『落語の東西』
いろんな落語家さんが集まって、
べ瓶さんがインタビューするという企画があるんですが、
結構前からで、3年くらい前からかな、あるんですけど、
これがね、毎回素晴らしい。
特にね、柳亭こみち師匠が出演した回は素晴らしいんで、
みんな見ていただきたいんですが、毎回面白いんです。
昔、昔って言ってもね、そんな昔じゃないです。
3年くらい前なのかな。文菊師匠がご出演されたことがあって、
あの感じでやってみてほしいということを、
独演会.comさんがですね、オーダーしたらしくて、
そういうフリートークですね。非常に濃い話でした。
何というのかな。自分の落語が受け入れられる、受け入れられない。
それをむしろ拒絶される。
非常にお二人ともレアなケースですが、
とてもレアなケースだと思いますが、
とても強烈な体験として自分の落語が拒絶されたっていうですね、
お話があり、その中でですね、
対象的なお二人の落語に対するアプローチ。
ベビシ師匠に言わせると、ベビシ師匠は外へ外へとアプローチしていき、
文菊師匠は自分の内面へとですね、アプローチするみたいなお話をされていまして、
笑いどころはいっぱいあったんですけど、
基本的にはとてもシリアスなトークでした。
文菊師匠がおっしゃっていた、今その笑いが、笑いというかな、
なんだ、刺激と興奮と毒をメインにしたものが多い中で、
自分もそこに一回やってみようかと思ったが、どうも腑に落ちないので、
ふわっとした笑いの方に行くことにしたというようなお話ですね。
刺激と毒によって興奮が巻き起こるんじゃないかなと思うんですけども、
おっしゃることはとてもよくわかりますし、
別の言い方だと、マクナルドのハンバーガーが白いご飯よりおいしいと言っている子供たちに対して、
白いご飯の味を若手もらいたいと思うみたいなね。
そのありようというのはとても素敵だなというふうに僕も思いました。
僕から見ると、落語にとって大事なことは2つしかなくて、寛容と多様ですね。
多様なものに対して寛容にあるべきなので、一番は寛容かなというふうに思うんですけど、
様々存在していないと落語って成り立たないんですよ。
なぜなら独演というか一人会というのはとても少なくて、誰かとやる。寄席だといっぱい出てくる。
いっぱい出てくるんだとすれば、同じものは2ついらなくて、いろんなものが必要になってくるわけです。
だからいろんなものを許容する寛容が必要なんじゃないか。
そうやって寛容のもとに多様のものが存在するということがとても大事じゃないかなというふうに思ったりしました。
パフォーマンスのスタイル
前から思ってたことを改めて思いました。
でもね、面白かったけど時間かかりすぎ。
後の人が大変。
前座が出てきまして、前座が三遊亭東村山さん、初めて聴きましたね。
ネーミングからして分かりますが三遊亭白鳥師匠のお弟子さんです。
最初の方ね、もうあのトークにやられちゃってですね、もごもごしていましたけども、
ちゃんと『やかん』に入って、『やかん』しっかりやってらっしゃった。
自分なりの個性ある入れ言もあったりして、なかなかいい感じだったんですが、
どなたかのオペレーションミスなのかな。
まだサゲてない、オチを言ってないところで出囃子がかかってしまうというトラブルがありました。
そこは次に出てくる笑福亭べ瓶師匠が上手くね、怒ったらあかんでーみたいなことで丸く収めて、
話し入ったわけですけど、まだまくら喋るのね。
それがまた面白いのよ。
もうね、本当にべ瓶師匠の面白い話を言ったら、頭の中にどんぐらいあるのかなっていうふうに思いましたけども、
その面白いまくら、自分がどうやってヤクルトファンになったかみたいな話ね。
から入ったのがもうこれは上方のスタンダードですね。
『時うどん』です。
面白かったね、『時うどん』は。
まあ『時うどん』ってだいたい誰がやっても面白くなると思うんですけど、
もうなんかそのべ瓶師匠のそのオーバーアクトする部分、
非常にその大きく体を使ってやる部分っていうのが、
なんの臭さ暑苦しさがないまま、ただ炸裂するっていうところですね。
やっぱり一番おかしかったのは、橋で目をつくっていうですね。
橋で目をつくのがもうなんかフェンシングみたいなんですよね。
パパパパパみたいな感じでですね、橋で目をつこうとするというシーンがあるんですが、
まあ面白かったです。
で、降りてきて続いて文菊師匠です。
いわゆる1423というやつですね。
最初に出てきた人がトリを取るというパターンで、
ですからまあ仲入り前、上方は中トリっていうのかな。
だからここはちょっと長くやっていいところのはずなんですが、
もう結構押してると分かっているのに、べ瓶師匠があんまりコンパクトにやらなかったので、
どうしましょう、どうしましょうとですね、文菊師匠がお話をちょっと困られた後にですね、
文菊師匠の師匠は圓菊師匠ですね。
先代の古今亭圓菊師匠ですけども、
まあこの人がもう弟子に対して理不尽だったっていうのは結構有名な話で、
大変だったみたいなんですけども、
まあそんなことを思い出しつつということで、
『小言幸兵衛』。見事ですね。
やっぱりこのお二人を顔つけしたってのはとてもクレバーな感じで、
どっちもね、すごい笑えるんですけど、
やっぱり文菊師は引きの芸というか、
体を大きく使わない。
その代わりその表情のちょっとしたその顔の筋肉の使い方で
フッって笑いを持っていくっていうところがね、
もう素晴らしかったですね。
やっぱりこのあんまり大きくない会場で聞くと、
こういう落語は本当に気持ちいいですね。
もう顔だけで笑っちゃうところがあって、
そこにいい感じの台詞が付いてくるっていうところが良かったですね。
なんか本当に江戸落語面白いっていう感じがね、
上方落語面白いっていうのを聴いた後に感じられるっていうのは楽しいことですよね。
仲入りを挟みまして、続いてまた文菊師匠ですね。
今度はですね、
キャラクターの調和
『権助提灯』でした。
権助提灯。
ここもね、結構権助はちゃんと田舎者なんですよ。
けどやっぱり元の文菊師匠の品があるんで、
なんかね、あんまり下品な感じにはならない分だけ、
逆にその田舎者を強調していけるっていうところがですね、いいですよね。
だからそれぞれのキャラクター、4人出てきますけども、
キャラクターはそれほど強めに描いてない。
描いてない分、落語全体がすごく調和した感じで気持ちよく聞けるっていうのが、
いいなっていうふうに思いましたね。
で、トリはべ瓶師匠なんですけど、なんと『妾馬』を持ってきました。
べ瓶師匠の八五郎はですね、ひたすら騒がしく明るく、
ただ乱暴者ではない、サービス精神がある感じですね。
なんか常に人を喜ばせようとしている、そんな八五郎です。
そこがね、これは急に人情噺になる落語だと思うんですが、
この人情噺になった時のね、べ瓶師匠のセリフの選び方、組み立て方、
その感情表現が本当に素晴らしくて、
これは立川談志の名言の一つだと思うんですけど、
「幸せの基準を定めよ」っていうところがあるわけですね。
おつる、妹のおつるはお大名の息子になることで、
たぶん幸せなんだと思うんですね。
およとりも生まれて。
で、その八五郎という人物が兄としてきて、
がさつだけども、人を喜ばせる言動を常に取ろうとする。
サービス精神、たぶんその人の気持ちに寄り添おうとするんですよね。
そういう部分に良権が気に入ったと言って、
お前を武士にするよっていう話を持ちかけた時の、
この八五郎のリアクションが素晴らしい。
要するに貧乏長屋で貧乏に生きてるということは、
それはそれで一つの幸せなんだっていうことをね、
しっかりと主張するんですよ。
ここが本当に素敵でしたね。
だからやっぱり目一杯。
そこはそのべ瓶師匠本人の、ご本人の姿ともちょっと重なるのだろうなと思うんですね。
この本当に人に対するサービス精神をしっかり持っている。
サービス精神と言うとちょっと薄くなっちゃうな。
相手の気持ち、相手の立場とか気持ちをしっかり受け止めた上で、
それを受け止めてるっていうことを表に出さないね。
なぜならそれは相手に対して負担になっちゃうから。
そういう心遣い優しさを持っている八五郎の姿っていうのは、
演じているべ瓶師匠と重なってくるところがあるし、
二重にいいなって思ってしまいましたね。
一言で言うと、あの八五郎は好きだし、
あの八五郎を作り上げたべ瓶師匠のことが僕は好きです。
それはこの冒頭で行われたトーク、圓朝に圓朝になったトークの中で、
文菊師匠の気持ちを分析って言うとちょっと冷たい感じになっちゃうんだよな。
すごく気持ちを汲み取るって言うとちょっと心情的なものになると思うんですけど、
非常に理知的に言語化して、文菊師匠はこう思っているのではないか、
こう考えているのではないかっていうことをちゃんと言語化して受け止めて、
その上にその愛情を乗せて、さらに文菊師匠の次の言葉を引き出そうとしているっていうね。
そういう姿、誠実さだと思うんですけども、がものすごく感じられて、
それはちょっとしゃべりが下手くそになってますが、冒頭の対談を、
だから僕は『妾馬』の八五郎の姿を見た時に、冒頭の対談におけるべ瓶師匠の振る舞いを思い出したんですよ。
それはやっぱり落語の一つのありようとして、すごく素敵だなというふうに思います。
非常に全く異なる個性でありながら、通底するものがある、
そしてお互いに尊敬合ってる二人というのをこういう形で楽しめたっていうのはすごく嬉しいことですし、
主催者の方にも感謝申し上げたいなというふうに思います。
落語の深い魅力
もともと嫌いじゃないですけど、好きですけど、
べ瓶師匠のおかげで僕の中で古今亭文菊師匠の存在が大きくなりましたね。
素敵な回でした。
というわけで、シェアする落語の四家でした。
ではまた。