1. セミラジオ ~生き物とサブカル~
  2. 狂気と電波のノベルゲーム「雫」
2023-09-26 1:02:33

狂気と電波のノベルゲーム「雫」

狂気と電波のノベルゲーム「雫」についてお話しました!


・世界を焼き尽くす妄想に没頭する主人公

・開始5分で見られる「仰げば尊しエンド」

・物語の核となる存在、月島瑠璃子

・人間の醜さと美しさを描き切った物語



雫(wiki)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%AB_(%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0)


雫 プレイ動画(YouTube)

https://www.youtube.com/playlist?list=PLEzOmBxfu0tT9SmdSpjNg20ySKKAmhgeR


雫 サウンドトラック(YouTube)

https://www.youtube.com/playlist?list=PLEzOmBxfu0tQwPu0sjCY3CkmeDSicLy83


【雫 おすすめ曲5選】


瑠璃子

https://www.youtube.com/watch?v=7rqZC3Q9hxc


瑞穂

https://www.youtube.com/watch?v=xTH_fhC5LXQ


雫 オープニング

https://www.youtube.com/watch?v=4lEj0BFFTWw


バッドエンド

https://www.youtube.com/watch?v=5Zgvk-Lh2nc


トゥルーエンド

https://www.youtube.com/watch?v=TBV5GaFlFHk



【お便り&お知らせ&グッズ】      

                セミラジオお便りフォーム ⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠

⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠https://forms.gle/e356yHPcm8P2Qy2A8⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠

せみやまのX(ツイッター)

⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠https://twitter.com/semibloger⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠

セミブログ ⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠

⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠https://semiyama.com/⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠

セミラジオのグッズ(ステッカー・Tシャツ)

⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠https://suzuri.jp/semiyama⁠⁠


【音声素材】

番組内でHowling-indicator様の音声素材を使用させていただいております。

⁠⁠⁠https://howlingindicator.net

00:02
皆さん、こんにちは。 自然を愛するウェブエンジニア、セミラジオです。
今日は、狂気と毒電波をテーマにした異色のノベルゲーム 雫についてお話ししたいと思います。
前回配信した、キノカミと戦外狂のエピソードに、結構たくさんお便りやメッセージ、ご感想をいただいてまして、
メッセージをくださった方も、聞いてくださった方も、本当にありがとうございます。
聞いていただけただけですごく嬉しいんですが、ご感想をいただけると本当に励みになります。
今回、本編で非常に危険な題材を扱う関係で、いただいたご感想は、次回以降やお便り会なんかで、
またご紹介させていただければと思います。 ということで、早速本編に行きたいと思います。
今回は、雫というノベルゲームについてお話ししたいんですけども、 これがあらゆる意味で非常に危険な作品でして、
今までセミラジオでご紹介してきた作品の中でも、 トップクラスに過激な内容が含まれるゲームなので、苦手な方もいるんじゃないかと思います。
自分の中でも話すのがすごく難しいなと感じてまして、 何度か話すのやめようかなと思ったんですが、
どうしてもこの雫という作品について話したいという気持ちを抑えることができませんでした。
なので、こういう話苦手だなぁと感じるところがありましたら、 そこで停止ボタンを押していただければと思います。
この雫というゲームは、1996年1月にPC-9800というパソコン用、 そして同じ年の6月にWindows版が発売されたパソコン用のノベルゲームです。
レーティングは18禁。 18歳未満はプレイすることはできない、いわゆるアダルトゲームです。
枠組みとしてはそういうゲームなんですが、 人間の狂気や毒電波といった要素を取り込んだ脚本が驚々しくも素晴らしくて、非常に独自性の高い作品になっています。
ちなみに僕が初めて雫をやったのは高校生の頃でして、 その時点で18歳に達してなかったんですけど、もう時効かなぁと思っています。
03:04
思春期の多感で不安定な時期に触れた作品なので、 自分にとって非常に印象深い作品で、当時かなりの衝撃を受けた記憶があります。
そんな個人的な体験も含めて今回はお話しできればと思っています。
雫の発売は1996年なんですが、 新世紀エヴァンゲリオンテレビ版の放送開始が95年ということで、
雫もエヴァも相当闇が深い作品だったんですが、 90年代ってそういう闇が深い作品がすごく多かったですね。
さらに言うと最近僕が触れているのって90年代のものがすごく多いんですよね。
ときめきメモリアル1、2、ドラマシリーズもそうですし、 星野カービィ3も64DDもどれも90年代に出たり始まったりしたものばかりで、
もうすっかり90sリフレクションなんですよね。 90sリフレクションというのはこの番組でもおなじみの
バンドマン、ポッドキャスターの旬チャールズさんが所属されているバンドの名前なんですけども、
この僕とセミラジオの90年代に心をつかまれている状況を言い当てるのにぴったりの言葉だったので引用させてもらっちゃったんですが、
本当にそういう感じで。なのでこの雫も非常に色濃く90年代を反映したゲームかなと思っています。
まずゲームの詳しいストーリーを紹介する前に、雫がどういう背景で成立したかやゲームシステムについてお話ししたいと思います。
雫はリーフというゲームブランドからリーフビジュアルノベルシリーズとして発売された作品のうち1作目にあたります。
ちなみにリーフビジュアルノベルシリーズ2作目の傷跡は鬼の血を引く者たちの恋と戦いの物語を描き、
3作目のトゥハートは全2作品とは打って変わったライトな雰囲気と魅力的なキャラクターとでリーフをパソコンゲーム業界のトップブランドに押し上げることに貢献しました。
トゥハートはアニメ化やプレステ版の発売など多方面に展開していましたね。
そんなリーフビジュアルノベルシリーズなんですが、システム的にはほぼカマイタチの夜に代表されるサウンドノベルと思っていただいて間違いないかなと思います。
06:08
選択肢を選んで物語を読み進めていくというシンプルなゲームですね。
リーフがこのサウンドノベル的なゲーム性を持った作品をビジュアルノベルとして打ち出す以前のパソコンゲームというのはシステム的にはアドベンチャーゲームが多かったんですよね。
アドベンチャーゲームというのはファミコン探偵クラブみたいな、あるいは逆転裁判の探偵パートのような、話すとか調べるとかいろんなコマンドを駆使して物語を進めていくタイプのゲームジャンルですね。
アドベンチャーゲームがいろんなコマンドを駆使してゲームを進めていくのに対してサウンドノベルやビジュアルノベルは基本選択肢を選ぶ以外のアクションをゲーム中で行うことはなくて、ゲーム性を極限までシンプルにしてその分演出に力を入れたり物語を味わうことに特化したジャンルなんですね。
このリーフの始めたサウンドノベルの様式をビジュアルノベルという形でパソコンゲームに取り込むという試みは後のパソコンゲーム業界にも大きな影響を与えたと言われています。
で、雫の脚本を書いたのは高橋達也さんという方なんですが、この方は後にアニメ業界に転身されて、近年も非常に多くの作品に脚本やシリーズ構成として携わられています。
アイドルマスターのアニメの脚本とかも手がけられているみたいです。 僕はアイマスは詳しくないんですが、アイドルマスターシンデレラガールズというアニメでもシリーズ構成を担当されていたそうです。
雫のキャラクターデザイン、原画は水月透さんという方が担当されてまして、この方は脚本の高橋達也さんと同じ大学の同級生だったということで、お二人は大学の創作サークルで進行を深めていたそうです。
水月透さんは今はイラストレーターとして主にイラストや漫画の制作を行っているんですが、とても可愛らしい絵柄のイラストを描かれる方ですね。
近年の絵は可愛い系の今っぽい絵柄という印象なんですが、雫の頃は相当癖の強いかなり個性的な絵柄でした。
でも作品の内容にすごく合っていて、僕は大好きなんですよね。
あともう少しストーリー以外の外掘りについて触れておくと、このゲーム音楽が最高にいいんですよね。
09:04
エンディングのテーマとかキャラクターの曲とか、一生聴き続けようと思っている名曲揃いで概要欄に聴けるリンクを貼っておきますので、ぜひチェックしてみてください。
ゲーム性がシンプルな分、物語を演出し彩る要素としての音楽にはすごく力が入ってるんですよね。
ということで雫の成立した背景、ゲームシステム、音楽についてお話しさせていただきました。
ここからは雫本編のストーリーについて、確信部分も含めてネタバレ全開でお話ししていきたいと思います。
この雫というゲームは、とある学園が舞台になってまして、主人公はその学園に通う長瀬裕介という17歳の少年です。
この長瀬裕介くん、一見おとなしい普通の高校生なんですが、実は内面に結構なものを抱えてるんですよね。
友達もいないわけじゃなくて、学校生活も表面的にはそつなくこなしてるんですが、実は当たり前のように繰り返す日常に飽き飽きして価値を感じられてないんですよ。
そんな彼が思うくだらない世界を、彼の作ったものすごいエネルギーを持った爆弾で破壊し尽くすという妄想に浸ることで、かろうじて精神のバランスを保っている、そういう子なんですね。
主人公長瀬裕介くんの内面を表す導入部の文章をちょっと読ませていただきますね。
細いシャープペンシルの芯をカチカチと伸ばし、意味もなくノートの上を走らせる。やがて芯はポキンと弱々しく折れて、僕の頬をチクリと刺激した。
窓から流れ込む緩やかな風がゆらゆらと朝色のカーテンを揺らし、色のない無精映画のような授業風景をより一層別世界のことのように感じさせている。
西日の差し込む教室で舞い散るチョークの粉を灰一杯に吸い込みながら、濁った瞳の生徒たちがカリカリカリと文字の羅列をノートに書き続けている。
ここ数日の僕は何か不思議などろりとした時間の中を漂っているような気がしていた。
毎日同じ時間が同じ映像で繰り返されているようなそんな奇妙な錯覚を覚えている。繰り返される何の変わり映えもしないくだらない毎日。
12:02
やがていつの頃からか僕はこの退屈な世界から音と色彩が失われてしまっていることに気づく。
それでも僕はそのことには察したる関心もないまま、言い知れぬ熱っぽさを体の中に抱いて、いつものようにノートの落書きに没頭するのだった。
僕は黙々とシャープペンシルの先を走らせ、青い経線が刻まれた真新しい大学ノートに一つの円を描き出した。
いつも描く馴染みのあるあの円だ。そして僕はねっとりとした夢の中へ落ちていく。
円は地球、僕が作った僕だけの地球。ノートの上に細いシャープペンシルで描かれた僕の地球は、
そう哀れにもこれから崩壊する運命にあるその惑星は、現実に僕らが住んでいる地球という惑星の完全なミニチュアだった。
汚れた海や空、ひしめくゴミダメのような街並み、そして主体性のないつまらない奴らによって形成された社会構造も、何もかもがこの世界と同じだった。
世界の崩壊はいつも唐突にやってくる。僕はノートの上に小さな丸印を書き込む。
その丸印は世界を燃やし尽くし壊し尽くす新型爆弾の爆発だった。突然何の前触れもなく爆発が起こる。
大地はひび割れ空がたけりくるい焦熱地獄のような炎が吹き上がる。
指と耳たぶを吹き飛ばされた人々が当てもなく炎の中を逃げ惑う。今この瞬間世界に何が起こっているのかもわからないまま逃げ惑うのだ。
僕の妄想は続く。だが逃げ場なんかありはしない。あるはずがない。地球そのものが地球という世界そのものが壊れてなくなってしまうのだから。
足がもげるほど肺が焼き付くほど逃げ続けても世界の終わりからは絶対に逃れられない。
そして僕は機械的な動きで一つ一つノートに印をつけていく。爆弾が爆発した場所は精算な最後を遂げて崩壊していく。
徐々に自分たちの世界が失われていくさなか人々は他人を蹴落とし我先にと安全な場所を求めて地面を這いずり回った。
僕はわざと一箇所だけを残して世界を炎で埋め尽くした。やがてそこには他人を踏みにじりながらも自分の命を繋ぎ止めた哀れで醜い生き物たちが集まってくるのだった。
奴らは腐りかけた口から有毒ガスを吐きながら虚ろな目で口々に哀願する。
お願いだ。助けてくれ。こんな目にあう理由がわからない。
そして僕はもったいぶるようにゆっくりと右腕を持ち上げ彼らの悲鳴と泣き叫ぶ声を聞きながら無慈悲にも最後の爆弾を描くのだった。
15:08
その瞬間僕は幾千、幾万もの人々の絶叫を耳にしたような気がする。体内に毒々と熱い血液が流れ、それは激しく全身を駆け巡った。
という、ここまでが主人公長瀬くんの妄想なんですね。
長瀬くんがどういう視点や価値観を持った人か感じ取っていただけたんじゃないかなと思います。
さっきも言ったように僕はこの雫を高校生の頃にやってまして、
この長瀬くんのように世界を破壊する妄想にふけることはなかったんですが、
学生時代、学校とか世の中に全然なじめなかったというところがありまして、
なのでこういう世の中に違和感を持った主人公というのが、
当時の自分の心には深く刺さったんですよね。
一時期本当にこの雫のことばかり考えていたと思います。
より正確に言うと、雫とエヴァンゲリオンとデスクリムゾンのことばかり考えている高校生でしたね。
だいぶカオスだったんですけども。
で、雫の主人公の長瀬くんは日々そういう妄想にふけりながら退屈な日常を紛らわせていたんですが、
徐々に彼の中で妄想と日常の比重が逆転していくんですね。
現実が色を失っていくのに反比例して、妄想の世界は生々しくリアリティを伴うものになっていくんです。
長瀬くんは自分自身が徐々に狂気の扉を開きつつあることを自覚していました。
自分の妄想に飲み込まれそうになってたんですね。
このまま行くと完全な狂気に自分が足を踏み入れるという予感があって、
でもそれならそれで悪くないというふうに彼自身は思ってたんですね。
そんな鬱屈とした日々を送っていた長瀬くんの通う学校で、ある日突然事件が起きます。
しかも長瀬くんの所属しているクラスの教室で起こるんですね。
その事件というのは何なのかということなんですが、
授業中、教師が黒板にチョークで文字を書く音だけが響く中、
突然誰かがクスクス笑う声が聞こえてくるんですね。
18:04
これは長瀬くんの妄想ではなくて現実に聞こえていて、
生徒たちが声のする方を見ると、一人の女生徒が椅子から立ち上がってクスクスおかしそうに笑ってるんですよ。
その人は生徒会で役員を務めている太田かな子さんという割とクラスの中心の方にいる子で、
陰キャである長瀬くんとはあまり接点がない人だったんですけども、
何がおかしいのか一人で笑い続けているわけです。
怖いんですよね。
この時点で明らかに尋常じゃない感じがしてるわけです。
みんながどよめいていると太田さんは突如性に対する率直な欲求を口にし始めます。
私も我慢できないの?みたいなことを言うわけです。
その言い方も様子も上記を一視していて、
太田さんが完全に狂気の扉を開いてしまっていることが明らかになるわけです。
そうこうしているうちに太田さんは劇場に駆られて自分の顔をかきむしり始めて、
生々しい爪痕が顔中に刻まれてしまいます。
教師に取り押さえられ連れて行かれる太田さんを見ながら、
長瀬くんはしかし太田さんに不思議な親近感を抱くんですね。
自分がいずれ足を踏み入れるであろう狂気の世界に一足先に踏み込んでしまったのが
太田さんだったのかもしれない。
長瀬くんはそういうふうに考えるわけです。
太田さんの一見は太田さんの異様な様子や彼女が口にした卑猥な内容から
多くの生徒の話題の種になり、憶測を呼ぶことになったんですが、
何日かするとそれも沈静化し忘れられていきました。
そんなある日、長瀬くんは同じ学校の国語教師として勤務している
おじに呼び出されます。
ちなみにこの国語教師のおじさんも親戚なので、
同じ長瀬という名字なんですね。
折り入っての話ということで長瀬くんとおじさんは屋上で話をすることになります。
おじさんの要件というのはやはりというか長瀬くんのクラスで発生した太田かなこさんの一見についてでした。
長瀬くんはおじさんに太田について何か知ってるかと尋問のように聞かれるんですが、
21:01
太田さんは事件が起こるまで長瀬くんにとっては興味の対象外だったわけで、
長瀬くんは当たり障りのないことしか答えることができません。
なんですがなぜかおじさんの方から学校側として太田さんについて色々調べた内容をこと細かく教えてくれるんですね。
それによると当日の太田さんの様子から考えて、
何か麻薬の類をやってたんじゃないかという推測も当然あったんですが、
検査の結果太田さんの体内から薬物らしいものは一切検出されませんでした。
そこで学校側は太田さんがおかしくなったのは何か他に原因があるのではないかと考えたわけです。
そしてその手がかりは太田さんの記していた日記にありました。
太田さんは事件が起こる2週間ほど前から日記を書き始めていたんですが、その内容が奇妙なんですね。
こんな感じです。
2月21日 今夜も学校へ行く
2月22日 今夜も学校へ行く
という感じで、日記というよりはただ学校に行ったことの記録を残すために書いていたような感じだったんですね。
ここ最近の太田さんは毎晩遅くにどこかに出かけていて、
太田さんの両親はそれを心配してたんですが、
この日記から太田さんは毎晩夜の学校に出かけていたということがわかるわけです。
で、太田さんは何のために夜の学校に出かけていたのかなんですが、
事件前日の日記にはこう書いてありました。
3月2日 今日は学校へはいかない
日曜なのに3年の先生が出勤している
作業が夜遅くまでかかりそうだから今日はない
我慢できない
我慢できない
他の子たちは我慢できるの?
私は直接家の方へ行くことにする
と太田さんの最後の日記にはこういうことが書いてあったわけです。
この日記の内容について長瀬くんとおじさんは検討を進めます。
太田さんの日記に書いてある
我慢できないということは何を指しているのか
薬物ではないかという予想もされていたんですが、
結果そうではありませんでした。
そこでもう一つの可能性として
太田さんは彼氏や他の誰かと学校で会っていたのではないか
24:05
という推測が導き出されるわけです。
そしてこの我慢できないというのは
太田さんとその誰かの性行為のことではないかと。
太田さんがある男性と学校で毎晩落ち会って
ホテル代わりにしていた
それだけでも非常に問題なわけですが
日記を見るとさらに危険なことが書いてあるわけです。
他の子たちは我慢できるの?と書いてあるんですね。
この部分、おじさんのセリフから引用するんですが
とある男女が神聖なる学校を毎晩ホテル代わりに使用していた
それだけでも大きな不祥事だ
それがこともあろうに
実は参加者は複数で
行われていたのは乱講パーティーでしたとあっては
まるっきりテレビの二流ワイドショーネタだ
ということなんですね。
おじさんが言うには
学校側も実態をつかむために
教師複数人で見回りをしたんですが
結果、何も発見することはできなかったということで
太田さんの日記にも書いてあったんですが
夜の学校集会に参加しているメンバーたちは
教師の動向をよく観察して
見つからないように立ち回っているようなんですね。
そしてここでようやく
おじさんの本題が切り出されるんですが
教師の動向は警戒されているということで
おじさんは長瀬くんに
お前が調べてくれないか
と頼み込んでくるわけです。
教師以外で学校にいてもおかしくない
生徒が探偵役には
責任なんじゃないかと言うんですね。
結構大胆なことを考えるおじさんなんですけども
で、ここで
おじさんの依頼を受けるか断るかの
二択になるんですが
断るとバッドエンドに直行となります。
このバッドエンドの内容が結構凄まじくて
早くもここで
このゲームの重要な要素の一つである
毒電波が出てきます。
おじさんの依頼を断って数週間後
長瀬くんの通う学校では
卒業式が催され
長瀬くんは在校生として
卒業式に出席することになります。
なんですがこの卒業式の最中に
突如不思議な電波が
出席した人たち全員を襲うんですね。
どうなるかというと
出席した全員がギクシャクと立ち上がって
リモコン人形のように操られて
ごちゃ混ぜな組み合わせで
それぞれの相手と向き合って
27:03
性行為を始めるんですね。
男も女も生徒も教師も父系も関係なく
しっちゃかめっちゃかになりながら
お互いの体を求め合うわけです。
凄まじい状況なんですよね。
長瀬くんも面識のない女性とと
体を重ねることになります。
誰かが悪意を持って
独電波でみんなの体を操って
強制的に性行をさせてるんですね。
交われというその誰かの声が聞こえます。
そしてどこか遠くから
歌が聞こえてくるんですね。
いつの間にか卒業式の会場で
体を重ね合う全員が
仰げば尊しを歌わされてるんですよ。
仰げば尊し
今かかってるこの曲ですね。
卒業式の定番曲なんですけども
フリー音源があったので流してみました。
この仰げば尊しを合唱しながら
いつ終わるとも知れない
狂乱の宴は続いていく
という風にこのバッドエンドは
閉じていきます。
ちなみにこのバッドエンドは
ゲーム開始後5分くらいで到達できます。
このゲームが尋常じゃないということは
初めてすぐにわかるようになってるわけです。
このエンドを迎えることで
この学校には
極電波で他人の体を異のままに操る
得体の知れない存在がいる
ということが明かされるわけです。
ということでおじさんの依頼を断ると
仰げば尊しエンドに直行なので
ゲームを進めるために
ともかく依頼を引き受けることになります。
このゲームメインヒロインが3人いまして
それぞれのヒロインとのルート
そしてエンディングが用意されています。
3人中2人は事件に関する重要な情報を持っている
情報提供者として登場します。
1人目は新城沙織という
バレー部に所属する活発な女の子で
公式の人気投票ではこの新城さんが1位でした。
新城さんは部活帰りの夜遅くに
学校で怪しい人影を見たということで
そのことについて永瀬くんに話してくれます。
2人目は藍原瑞穂という
30:02
小柄な生徒会員に所属する女の子で
この子は物語の冒頭で狂気の扉を開いた
太田さんの親友なんですね。
新城さんは自分の見た人影の正体をつかむため
藍原さんは親友であり
今は市内の病院に入院中の
太田さんの回復の糸口をつかむため
それぞれの動機を持って
永瀬くんの調査への動向を希望します。
雫はマルチルート、マルチエンドなので
ゲーム中は新城さんのルート
藍原さんのルートも選べるんですが
実は物語の核心に最も近いのは
第3のヒロインである
月島瑠璃子さんのルートです。
今回は瑠璃子さんのルートについてご紹介しながら
物語の核に迫っていきたいと思います。
屋上でおじさんの依頼を受けた後で
しばらく物思いにふけていた永瀬くんだったんですが
後ろを振り向くと一人の女性とが立っていました。
驚く永瀬くんだったんですが
この女性とが月島瑠璃子さんなんですね。
瑠璃子さんは永瀬くん曰く
学年全体で見ても群を抜くほどの美少女で
永瀬くんは去年瑠璃子さんと同じクラスだったんですが
一度も会話したことがありませんでした。
いつも本を読んでいる大人しい女の子で
近寄りがたい存在という雰囲気があったんですが
その頃の瑠璃子さんと屋上であった瑠璃子さんは
纏う雰囲気が大きく変化していました。
月島さんいつからそこにいたのと永瀬くんが聞くと
去年って言うんですね。
去年からだよ永瀬雄介くんと
斜め上の回答が返ってくるんですけど
永瀬くんは自分の名前を瑠璃子さんが覚えてくれていた
ということでちょっと嬉しくなっちゃったりしています。
去年って1年前の去年?
そう、去年の今もここにいたと思うよ。
雨が降ってなければね。
瑠璃子さんはそう言ってクスクスと笑います。
そのクスクス笑いはあの日の太田さんに似ていました。
そして続けて
晴れた日はよく届くから
と言って白い両手を太陽にかざします。
そして
ラジオと同じなの
とまた謎めいたことを言います。
何が?と聞く永瀬くんに
33:00
晴れた日はよく聞こえるのに
ザーザーと雨の降る日は雑音ばかりがザーザー聞こえるでしょ?
どっちも同じザーザーだけど
ラジオのザーザーは雨音のザーザーじゃないよね。
雨粒がラジオの電波の粒を吸い込んで
一緒に下水を流れていくから
うまくお家まで届かないの。
だから雨の日はマンホールの蓋を開けて地下に潜れば
よく聞こえると思うの。
と畳みかけます。
永瀬くんは戸惑って
月島さん、それって何の話?
と聞くんですが
るりこさんは
電波の話だよ。と返します。
電波?
うん。
私、ここで毎日電波を集めてるの。
普通の電波を集めるときは金属のアンテナを使うけど
でも私の電波は金属のアンテナじゃ集められないから
体を使うの。
私がアンテナになるの。
とさらに解釈が難しい電波の話をしてきます。
屋上で永瀬くんと向き合っている月島るりこさんは
以前の月島さんとは違い
狂気の扉を開いていました。
しかし太田さんのように
完全に扉の向こう側に行ってしまい
日常生活を送れないほどではない
そういう危うい存在になってたんですね。
ビジュアル的にはハイライトが入っていない
どろりとした虚ろな目が印象的です。
続けてるりこさんは
永瀬くんには電波の才能がある
という謎めいた言葉を残し
一旦そこで別れることになります。
永瀬くんはバレー部の新城さんや
生徒会の愛原さんに会って
それぞれ情報収集を行ってから
導かれるように再び
夕方の屋上を目指します。
ちなみに生徒会に訪れた際には
月島るりこさんのお兄さんであり
前生徒会長の月島拓也さんと
すれ違ったりもしています。
月島さんは温厚で生徒の尋問も厚い
頼れるお兄さんという感じの人です。
で、永瀬くんは重い扉を開いて
屋上に出ます。
そこには予感通り
るりこさんが待っていました。
夕日の中で改めて
るりこさんと対面するんですが
そのシーンのテキスト
情景描写が美しくて大好きなので
ちょっと引用しますね。
彼女は最初からじっとこっちを見ていた
まるで僕の来訪を初めから知っていたかのように
吹き上げる冷たい風が
彼女の細い髪と
36:01
衣服の裾をなびかせている。
そして、そしてやっぱり
るりこさんは口元だけの微笑みで
僕を迎えた。
夕焼け空
灼熱の陽光炉からすくい上げたような太陽が
コンクリートの床の上に
僕たちの影をくっきりと映し出している。
照射角の低い日差しが落とす二人の影は
互いの足元から長く伸びて
やがてその先端は溶け合うように重なり合った。
陽光炉の中の金属が
飴色になって溶け落ちるような赤
火花の赤
閃光花火の赤
綺麗で鈍い赤
この空の色はるりこさんに似ている。
道場のようなあどけなさと
どろいとした狂気の二面性を持つ
そんなるりこさんに
というテキストに続いて
るりこさんは
私、電波で長瀬くんを呼んだんだよ
という話をします。
それを受けて
でもやっぱり僕には
るりこさんの言う電波を感じることはできないんだよ
と正直に言う長瀬くんに対して
るりこさんは
すぐだよ
きっとそのうち君にも分かるようになるから
と言うと
彼女はそっとその細い両腕で
長瀬くんの頭を抱きかかえます。
突然のことに長瀬くんは驚くんですが
そうすると長瀬くんの頭の中に
イメージが流れ込んでくるんですね。
そこにはうずくまり泣いている
るりこさんの姿がありました。
それはるりこさんが心を壊し
狂気の扉を開く原因になった
過去の記憶でした。
るりこさんの衣服は乱れ
乱暴されたような
痛々しい雰囲気があります。
遠くで誰か
男の声が聞こえます。
ごめんよ
るりこ
るりこ
僕は
こんなにお前を愛しているのに
なのに
なのにどうして
いけないことなのかい
誰かを好きになって
その愛を貫くことに
近畿なんてあるのかい
さらに男の声は続きます。
るりこ
愛している
るりこ
愛している
壊れた機械のように
声は続きます。
るりこさんの不思議な力を介して
長瀬くんは
るりこさんの過去の記憶に
触れたわけです。
いつの間にか日はすっかり暮れて
満月が光光と照らす夜になっています。
長瀬くんは
るりこさんに
誰が君を傷つけたの
と聞くんですが
るりこさんは
うっすらと笑みを浮かべるだけで
答えてはくれません。
長瀬くんが質問を変えて
どうして僕なの
39:01
と聞きます。
僕たち去年は同じクラスだったけど
学年が上がってからは
お互い
何の接点もなかったよね。
いや、去年だって
君は僕のことなんて
全然知らないと思ってた。
電波のメッセージ
どうして僕に送ったの?
僕じゃなきゃいけない理由でもあったの?
と、るりこさんは
どうして自分を電波で呼んだのか
問いかけるわけです。
それに対してるりこさんは
長瀬ちゃんが
私を呼んだの
と言うんですね。
毎日毎日
助けてって
私を呼んでたから
消えちゃう
消えちゃうって
子供みたいに泣いてたよ
それが電波になって
私に伝わってきたの
るりこさんは
そう言うんですね。
変わり映えのしない毎日の中で
現実から色が失われ
自分が消えていきそうに感じていた
長瀬くん
彼の思う
くだらない人々を
爆弾で焼き尽くす
恐ろしい妄想にふけていた
長瀬くんだったんですが
るりこさんは
そんな長瀬くんのことを
消えちゃう消えちゃうって
子供みたいに泣いてたよ
と表現したわけです。
すさまじい破壊衝動や
ネガティブな気持ちの奥底に
悲しみがある
子供みたいに泣きじゃくりたい
感情がある
というのは
人間のある一面を
これ以上ないくらい
的確に言い当てた表現だなと
今回改めて
雫をプレイしてみて
思いました。
これをシナリオや
テキストに落とし込めるというのは
脚本の高橋さんが
かつて長瀬くんと
重なる時期を過ごしつつ
そんな自分をうまく客観視して
現実と折り合いをつけて
歩んでこられた
ということだと思うんですよね。
そうじゃないと
このシナリオは書けないと思っています。
で、一定数
長瀬くんみたいな人って
いるんですよ。
表面上は大人しい
目立たない感じなんですけど
世の中に対して
ネガティブな感情を抱いてて
でもそれを打開するための
具体的な手段が見つからなくて
もがいてる
という子が一定数いると思います。
僕もそうでした。
なので、高校生の頃に
雫に出会えて
自分と近しいところのある長瀬くんは
ものすごく共感できる主人公でしたし
シナリオを書いた高橋達也さんが
そういう目線を持った大人だったということも
僕はすごく嬉しかったですね。
誰とも共有できないと思っていた
自分の人格の根っこの部分にある感情が
42:02
作品に落とし込まれていたら
それは自分に向けて作ってくれたんだ
って思えるんですよね。
当然、雫は僕個人のために
作られた作品ではないわけですけど
そういうふうに感じられたんです。
作品を作るということが
メッセージを送るということでも
あるなと感じました。
高校時代の自分に
そのメッセージは
しっかり刺さったと思います。
雫のおかげで
当時の自分が抱えていた感情は
ある程度普遍的なものなんだと
感じることができたんです。
ちなみに雫に大きく影響を与えた作品がありまして
それは
信仰宗教思い出教という
バンドマン、作家の大月賢治が書いた小説なんです。
信仰宗教思い出教の主人公も
世の中に対して
ネガティブな感情を抱き
心の中で他人を
くだらない人々と考えています。
で、この作品の中には
幽竜恵魔鬼呪術という
人の精神を破壊する超能力が出てきます。
これは雫の独伝派を思わせるものです。
大月賢治の作品に影響を受けたということは
雫の脚本を書いた高橋達也さんが
講演されていたことでもありまして
なので僕は
逆に雫をきっかけに
大月賢治の小説や
彼の作り出す独特な世界観にハマって
CDやエッセイやらを買い漁ったりしました。
今でも大月賢治の作った曲は大好きで
よく聴いてますね。
そういう大月賢治作品のエッセンスを
うまくパソコンゲームに落とし込んだのが
雫だと思います。
で、雫のストーリーに戻るんですが
長瀬くんもルリコさんも
お互いに悲しみを抱えて
だからこそお互いに気づき
惹かれ合ったわけです。
そして長瀬くんは
おじさんからの依頼である
夜の学校の調査に乗り出し
ルリコさんもそれに同行します。
バレー部の新城さんの情報に従って
体育館のあたりを調べていると
怪しい人影を見つけます。
その姿を追っていくと
人影はある部屋のあたりで姿を消しました。
その部屋は生徒会室でした。
長瀬くんが生徒会室の窓から
中を覗くと
そこには日常を逸脱した光景が広がっていました。
全裸の女の子が複数人
床の上に這いつくばって
自らの手で自分の体をまさぐっている。
45:02
そして一人の男子生徒が
椅子に座って頬杖をついて
薄笑いを浮かべてそれを見ている。
そういう光景が生徒会室で展開されていたんです。
床で全裸でのたうっている女の子たちは
日中生徒会役員の相原さんに話を聞きに行った時に
顔を見かけたやはり生徒会役員の子たちでした。
そして椅子に座って冷ややかな目をしている男子生徒は
前生徒会長であり
ルリコさんのお兄さんでもある月島さんでした。
彼を中心に生徒会室の中では
悪魔崇拝のサバトのような
狂乱が繰り広げられていたわけです。
長瀬くんのおじさんが危惧していた通り
やはり夜の学校集会は行われていたんですね。
で、もう確信を言っちゃいますと
ルリコさんのお兄さんが首謀者で
毒電波という不思議な力を使って
女の子たちを操って
自分のおもちゃにしているわけです。
月島さんが自分の電波について
演説をするシーンがあるんですが
ちょっと引用したいと思います。
僕はこの電波の話をするのが大好きでね。
まあ、いわゆる自慢話で恐縮だけど
相原さんは毒電波って知ってる?
毒電波とは空から降り注いで
人を狂わせたりおかしな行動を取らせたりする
言葉通り毒のような電波のことさ。
目には見えないし知らないうちに脳内に侵入するから
防ぎようがないんだ。
もともと人間の意思とか感情とかは
電気信号の集まりだろ?
毒電波はそれを歪め汚染してしまうんだ。
面白いとは思わないかい?
人の心が外から歪められてしまうなんて。
でも、そんな毒電波を
もし仮に自分の意思で操ることができるとしたら
とても面白いとは思わないかい?
他人の脳を離れたところから直接操作できるんだよ。
リモートコントロールみたいにね。
それが僕にはできるんだ。
ということで、授業中に発狂した太田さんも
その原因となったのは
月島さんの毒電波だったわけです。
このあたりの描写は徹底していて
容赦ない感じがあります。
月島さんも非常にサディスティックに
女の子たちに振る舞うので
本当に恐ろしいキャラクター描写だなと思いました。
で、調査への同行を断った
新城さん、愛原さんも独自に
調査のために夜の学校に残っていたところを
月島さんに見つかって捕まってしまっています。
そして月島さんに毒電波で操られて
48:02
その欲望の犠牲にされてしまっています。
新城さんも愛原さんも
キャラクター描写がしっかりされていて
本当にいい子だなと感じられる存在なので
このあたりは本当に読み進めるのが
辛いところです。
で、長瀬くんは新城さん、愛原さんを助けるために
生徒会室に飛び込むんですね。
現実と一定の距離を置いていた長瀬くんが
心をか弱した人たちを守ろうとして
行動を起こすわけです。
一歩踏み出すんですよね。
このシーンは涙が出ますね。
しかし長瀬くんは
月島さんの毒電波の力で体の自由を奪われ
手も足も出なくされてしまいます。
そして毒電波で精神を破壊される寸前まで行くんですが
その時生徒会室に現れたのが
ルリコさんでした。
ルリコさんの姿を見た月島さんは
ルリコ、どうしてここに
とうろたえ、頭を抱えてうずくまってしまいます。
長瀬くんは新城さん、愛原さんに
二人とも後で必ず助けに来るからと言って
ルリコさんの手を引いて走り出します。
一旦身を隠すために体育倉庫まで逃げてきた長瀬くんとルリコさんだったんですが
長瀬くんは月島さんの電波の要因で
肉体の本能を刺激され
ルリコさんと無理やりにでも繋がりたい
という衝動に駆られます。
長瀬くんは肉体の衝動と
ルリコさんを傷つけたくないという感情の間で葛藤するんですが
再び長瀬くんの頭の中にイメージが流れ込んできます。
それは月島さんとルリコさん兄弟の過去の記憶でした。
ルリコさんたちの両親は
幼い頃交通事故で亡くなってしまい
二人はずっと寄り添って生きてきました。
二人は叔父夫婦に引き取られたんですが
夫婦の仲は二人を引き取ったことで嫌悪となり
離婚してしまいます。
月島兄弟の叔父は総合病院に勤める医師なんですが
離婚をきっかけに女性関係に奔放になり
毎晩家に女性を連れ込むようになりました。
性行為はあけっぴろげに行われ
幼い月島さんとルリコさんは耳を押さえて
夜が明けるのを待ちました。
そのことが月島さんの性的コンプレックスとなり
今回の事件を起こすに至ったわけです。
そして月島さんは大切な妹だったルリコさんを
いつしか女性として意識するようになっていきました。
そして夏のある日
狂気の扉を開いた月島さんは
ルリコさんを力づくで襲ってしまいます。
51:03
ルリコさんもまた狂気の扉を開き
屋上で電波を集めるようになりました。
再びルリコさんの過去に触れた長瀬くんは
より一層ルリコさんを愛しく感じるようになり
ルリコさんもまた長瀬くんを求めます。
そして二人は結ばれるわけですが
そうすることでルリコさんの電波が長瀬くんに流れ込み
長瀬くんは電波の力に目覚めることになります。
屋上でルリコさんが言っていた
長瀬くんには電波の才能があるというのは
ここに繋がるわけです。
戦う力を手に入れた長瀬くんは
生徒会室に取って返して再び月島さんと対峙します。
電波を使える者同士の戦いになるわけですが
月島さんの力は強大で
長瀬くんは再び月島さんの電波で精神を破壊されそうになります。
そして長瀬くんの意識は闇に沈んでいきます。
闇の中にはルリコさんがいて
長瀬くんはルリコさんと対話します。
ルリコさんを悲しみと苦しみから救いたい
月島さんよりも強い力が欲しい
そう願う長瀬くんに
闇の中のルリコさんは
あるよと言います。
このくだりちょっと引用します。
あるよ
いつものあの力があるじゃない
長瀬ちゃんが隠し持ってる
あれ?
あれって何?
僕が持ってるって?
僕が尋ねると
ルリコさんは暗い色のない瞳で僕を見つめて
くすりと微笑んだ
はい、これ
ルリコさんはそう言って
すっと横を指さした
そこには鈍く光る不思議な金属の塊があった
大きな黒い弾丸のような形をしている
僕の中でそれが大爆発した
固められていた厚い塊のようなものが
その殻を破って弾け飛んだ
核爆発のようだった
そうだ
これは僕の妄想に登場する
新型の爆弾だ
世界を燃やし尽くし破壊し尽くす
あの爆弾だ
僕の中に隠された力
熱くねっとりとした殺戮の衝動
ここで長瀬くんの意識は戻り
シーンは内的世界から
生徒会室に切り替わります
そこには長瀬くんを信じられないという目で見つめる
月島さんの姿がありました
いつの間にか長瀬くんの周囲には
月島さんを圧倒するほどの
高密度の電波が集まってたんですね
そして電波の塊はゆっくりと
月島さんに向けて
なだれ込んでいきました
許容量をはるかに超えた電波を浴びせられて
月島さんは絶叫します
そしてまた電波を通して
54:01
長瀬くんと月島さんは精神的につながり
長瀬くんは月島さんの内面世界に降りていきます
次に映し出されるのは
どこまでも続く闇の中
ベッドの上で膝を抱えてうずくまる
幼い月島さんの姿でした
精神医学にはインナーチャイルドという考え方がありまして
どれだけ年を重ねた人でも
心の中に子供の頃と変わらない
幼い自分が同居している
心が悲鳴をあげるときは
心の中の幼い自分が泣いている
そういう考え方なんですけども
この闇の中でベッドの上で膝を抱える
幼い月島さんの姿は
インナーチャイルドをビジュアル化したものだと思います
ずっと寄り添って生きてきた
自分の半身ともいえるルリコさんを
自分の心の弱さから傷つけてしまった月島さんは
それ以来ルリコさんに向き合うことができなくなっていました
そのことが彼を果てしのない性の欲望
狂気に駆り立てることになったんですね
ここで物語は2通りの結末に分岐することになります
一つはトゥルーエンド
これは当初ルリコさんルートの
唯一のエンディングとして用意されていたもので
脚本の高橋さんが物語としての雫の結末は
これしかないと考えていたエンディングです
もう一つはハッピーエンド
マルチエンドが可能なノベルゲームの仕組みを使って
もう一つの可能性として提示したものです
まずトゥルーエンドからお話ししたいと思います
闇の中で膝を抱える幼い月島さんに
長瀬くんは断固とした態度を取ります
月島さん何もかもあなたが悪いんだ
あなたのその弱い心のせいで
どれだけルリコさんが苦しいんだと思ってるんだ
そう言って長瀬くんが幼い月島さんを突き飛ばすと
闇の中で幼い月島さんの姿は
ガラス細工のように砕け散ります
それは現実世界での
月島さんの精神の崩壊を意味していました
最後にそうつぶやいた月島さんに
ルリコさんは
その後どうなったかなんですが
月島さんとルリコさんは
二人の叔父が勤める総合病院に入院することになりました
月島さんだけでなくルリコさんもです
どういうことかというと
ルリコさんは自分の半身である月島さんを見捨てることができず
57:02
電波で自らの精神を破壊して
月島さんの精神世界へ旅立っていったわけです
暗く冷たい闇の中でポツンとあるベッドの上で
子供の頃と同じように兄弟で寄り添い合っている
二人のイメージが描写されます
お見舞いに行った長瀬くんの耳に
遠くルリコさんの声が聞こえたような日がしました
ごめんね長瀬ちゃん今でも大好きだよ
全てが終わった後で長瀬くんは一人
学校の屋上に上がります
かつてルリコさんと言葉を交わした屋上です
ルリコさんと出会うことで世界は色づき
生きるモチベーションを取り戻した長瀬くんだったんですが
きっかけを作ってくれたルリコさんは
彼を残して行ってしまいました
トゥルーエンド最後の下りを引用します
青い青いペルシアンブルーの空
流れゆく雲は永遠にその形を定めず
遥か彼方へと漂っていく
一つの雲が二つになり
また別の雲と混ざり合う
僕はいつまでも飽きることなくそれを眺め続けていた
ゆっくりと過ぎ去る時間の中で僕は声を出さずに
空を見上げながら涙の雫を落とすのだった
そういう風にトゥルーエンドは終わっていきます
インサンで救いもない結末なんですが
この登場人物とザグミならこうなるしかない
という終わり方ですごく納得感はあります
ハッピーエンドの方は闇の中で一人
膝を抱える月島さんに長瀬くんは
この人も被害者なんだと手を差し伸べ寄り添えます
心を開いた月島さんはルリコさんを涙を流しながら抱きしめ
ルリコさんも月島さんを許します
長瀬くんは月島さん兄弟と関係者から
事件の忌まわしい記憶そして自分に関する記憶を消し
全てを優しく終わらせていくことを選びます
ルリコさんの自分に関する記憶も消してしまうんですね
でもみんながこれから前を向いて歩んでいくためには
こうするのがいいんだと長瀬くんは自分に言い聞かせるんですね
事件が終わってしばらくして長瀬くんが屋上に上がってぼーっとしていると
長瀬ちゃん電波届いた?という声がします
振り向くとそこにはルリコさんが立っていました
ルリコさん僕のこと覚えてるの?と戸惑う長瀬くんに対して
ルリコさんは忘れないよだって長瀬ちゃんだものと言います
屋上で2人は抱きしめ合い長瀬くんはルリコさんに悟られないように
涙の雫を落とすのでした
ルリコさんルートのハッピーエンドはそういう風に終わっていきます
1:00:00
雫ではこういう感じでゲームならではのマルチエンドという手法を採用したわけですが
いいものだなぁと思いましたね
ルリコルートの場合ハッピーエンドだけだとちょっとぬるいと見る向きもあると思いますし
かといってトゥルーエンドだけではあまりにも救いがなさすぎるので
いいバランスじゃないかなと思います
思春期に自意識が大きくなりすぎると
世界や他人に対してネガティブな感情を抱くことがあると思っていて
それは度合いのさこそあれ
割と多くの人がそうなんじゃないかなと自分では思っています
雫は人の心理のそういう部分をしっかり描いていて
思春期に雫に出会えたことで
自分は一人じゃないと思いましたし
雫に救われたところは大きかったと思います
雫は人間の最も醜い部分と
ついになって浮かび上がる美しい部分の両方を描ききった作品だと思っています
鬱芸という言葉があるんですが
雫は単にそういう陰鬱な展開が続く老悪的な作品ではなくて
人間の心の一番深いところに向き合って
それを描いた作品だと思っています
今回1996年に発売した雫のオリジナル版についてお話ししたんですが
雫にはリメイク版もありまして
ただこちらは規制などにより表現が縮小しているところもあるので
おすすめはしていません
オリジナル版の方はソフトがあまり流通してないんですが
YouTubeチャンネルでオリジナル版雫のプレイ動画を貼っている方がいたので
概要欄にプレイリストを貼っておきますので
ご興味があればチェックしてみてください
かなり個人的なお話もいろいろしてしまったんですが
ここまで聞いていただきありがとうございました
セミラジオではお便りを募集しています
概要欄のフォームやXのハッシュタグセミラジオでご感想いただけると嬉しいです
今日は狂気と毒電波をテーマにした異色のノベルゲーム
雫についてお話しさせていただきました
ご視聴ありがとうございました
01:02:33

コメント

スクロール