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こんにちは、パリのアパルトマンからお届けします。フリーランスのSAKIです。このラジオでは、私SAKIがパリ生活やビジネス、読書で学んだことを配信しています。
皆さんお元気でしょうか。 今日のラジオはですね、久しぶりに本の紹介と朗読をしようと思っています。
いつも西加奈子さんをよく紹介しているんですけど、 今日もそうです。
この方の本を読んでいると、紹介したい、朗読したいという気持ちが高まって、このポッドキャストのボタンを押しているという感じですね。
これ、しずくという本で、オムニバスの話が何個か入っているというものになっていて、
私は紙の本をパリに持ってきているんですけども、何かどこかで濡らしたのか、本がシワシワっていうね、
ページがめくりにくいんですけど、大事な本なんで、持っております。
で、この本の、しずくという本の中の短編小説の一つ、
影という内容なんですけども、その小説の紹介をします。
この小説はですね、主人公は女性の方で、30代前半ぐらいかな、だと思います。
で、会社に勤めてたんですけども、あることがあって辞めて、ちょっと昇進旅行みたいな感じで離島に来ていて、その離島での話なんですよ。
で、何があったかと言ったら、会社で働いている時にね、この方は結構サバサバ系として通ってたみたいなんですね、性格的に。
で、周りの人にそう思われてたら、そういう期待に応えるようなサバサバ仕草、サバサバ言動をやる。
周り、みんなから見られている私にあまりにも忠実だという、
こういう感じで日々を過ごしてたんですけども、その社内に別でね、カップルがいたらしいんですよ。地味なカップルがいたらしくて、
橋爪さんとぬくいさんというカップルがいて、で、結婚まで病読みだと。社内でも公認の2人。
で、どんな2人かって言ったら、卒なくOL業務をこなす女の方と、あと地味な人事部の中でもとりわけ地味な存在の男の人っていう、
まあそういう組み合わせで、この本に書いているのは取り立てて付き合うことが羨ましくもない
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ぬくいさん、男性が理由で2人の結婚を応援するのは当然のことのようになっていたと。そういう感じだったそうなんですよ。
で、
まあ、特にその主人公である私はね、女の人の持つ嫉妬や秘密というような少ししめり気のあるような感情から対局にある女だった。
いや、みんなにそう思われていたっていう、そういう感じなんですよ。で、あの、ある日会社の帰りにぬくいさんという男性とね、偶然会って、
で、なんか疲れてる感じに見えて、そもそもこの人が魅力的だとか、そもそも男の人として見たことなどなかったんですけど、
なんかこう、沈むように疲れた表情に惹かれたそうなんですよ。で、なんとなくこう誘いやって居酒屋さんに飲みに行ったんですけどね。
で、彼はそのいろいろ話している時に、橋爪さんという女性の方、彼女の方との結婚が当然のものとされている自分の環境への苛立ちとか、
そういうことをほとんど初めて話す私、主人公である私に結構言ってきたらしいんですよ。
で、その私はね、結局マリッチブルーってことちゃうみたいな感じで茶化すんですけど、ぬくいさんはうーんって考えて言うんですよ。
みんなから自分という人間を決めつけられるのは恐ろしいことですって。
で、あのちっちゃな声で言ったんですよ。そう、で、なんか何故かわからないけど、その主人公の私はその声にあさはかにも惹かれてしまったと。
でも、惹かれたような気分になった。で、まあそれはどうしてかというと、なんかなんか彼は自分に似てるって思ってしまったそうなんですよね。
みんなから自分という人間を決められるということにまずのシンパシーを感じたみたいです。
で、そこからなんか彼との関係を持ったらしくて、3ヶ月ぐらい続いたそうなんですね。
で、週に何回か家に来たみたいな。
で、最終的にその社内に知られてしまったらしいんですよ。
すごいこうみんなから非難を浴びることになってしまって、で、ロッカールームでこうみんなに囲まれてめちゃくちゃね詰められるっていう、そうそうそう、ことがあって、
まあ会社を辞めたそうなんですね、その人は。
で、えーと、まあみんなから責められて、なんかペットボトルでロッカーをガンと叩かれて、どうなの?みたいな。
主人公の名前ありましたね、タバタさん。タバタさんがそんな人だと思わなかった、みたいな。
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ことを言われたりして、で、退社して、で、離島に来て、ちょっとこう疲れというかね、いろいろこうぼーっとしながら考えたいなってことで、その後離島に来たんですよ。
日本のどこかの離島に。
で、なんかそのね、どうして社内に知り渡ったのかわからないけれども、
そのタバタ、主人公のタバタさんがね、考えるには、
ある日そのぬくいさんという男性の方とね、会ってる時に自分の部屋にいて、
で、部屋の隅で自分が裸になった時に、そのぬくいさんがあることを言ったんですよ。
それは当たり前の話だけど、女の人はみんな体が違うんだねって言うんですよ。
その一言が驚くほど私を傷つけたと。立ってられないほどの怒りで目も眩みそうになった。
で、もうそのまま帰ってくださいって言って、それが最後になったそうなんですよ。
で、それがどうして私を傷つけたのかって言ったら、
まあその比べられたことが嫌だからとかじゃなくて、その言葉を言う相手って、
何かあとくされがない女だろうとか、軽く受け流してもらえるだろうっていう、そういう仕枠を彼の言葉の奥底から感じ取ってしまったと。
で、人から自分という人間を決められることにあれほど嫌がってた、
その彼がそういう点で私を軽んじてたことにすごく腹が立ったって言ってるんですよ。
で、これ私すごいなと思ってね。
なんかそのカップル同士の傷ついたとか何か事件があったっていうことを、なんでしょうね、
センセーショナルな事件、修羅場とかそういうので表すんじゃなくて、
こういうね、なんか一見パッと何気ないというか言うような言葉が人の決定だになった、
人が傷つく決定だになったっていう言葉を言語化して書いてるっていうね、
この当たり前の話だけど女の人はみんな体が違うんだねって。
これで確かにもし言われたとしたら、
なんか思いますよね、その比べられるっていうのも嫌でしょうし、
軽んじられてるっていうのは、この言葉の端々から感じますよね。
そりゃ嫌やわって思いましたね。
そうですね、で、あの、
彼、私、主人公の私は彼と共通点を感じて、こんなに大事だって思ってるのに、
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相手にとってはすごく軽い存在だったんだっていうことが分かってしまって、すごくショックだったと。
まあね、そうそうそう、それですごくショックだったそうなんですよ。
で、それで彼は急にね、ことの重大さに気づいたんじゃないかと。
なんか軽く思ってたけど、その関係をね。
でも私から驚くほどの愛憎の匂いを感じて、急にこう罪悪感をきっと感じて、
それが女性である彼女に橋詰さんかに気づかれたと。
今まで軽い気持ちだったから、ふんふんって彼女にもさせられないぐらいの感じだったけど、
その罪悪感が一気にズシンときて、それできっと橋詰さんの嗅覚を刺激してバレたんじゃないかみたいな、と主人公は思ってるんですよ。
で、まあそういうことがあって離島に来るんですけどね。
で、その砂浜で何もすることないから座っていたら、女の子がね、声かけてくるんですよ。
三崎っていう子なんですけど、20歳前ぐらいの女の子で、そうそうそう。
で、なんか幽霊みたいな子だなーってその人は思うらしいんですけど、
まああの足元見たら普通に足があるんで、人間なんですけど。
で、いろいろ話しかけてくるんですよ。
あなた何をやってる人なの?って。
で、自分を聞き返したら、私は薬を作ってるの?って三崎は言ってね。
で、なんかいろいろこう、日本では認められてない薬なの?とかいろいろ言ったりとかするんですけど、
なんかこう言ってることが全部嘘臭いんですよね。
で、まあその後すぐにわかるんですけど、三崎は島でも有名な嘘つきだということで、
で、後で小学生の男の子のグループとかが来てね、
なんかねえねえ、あの姉ちゃんか、ねえねえを姉ちゃんっていう意味で多分、なんて言うんですかね、方言だと思うんですけど、
ねえねえ三崎と喋ったらあかんでみたいなことを言うんですよね。
あいつは嘘つきやみたいな。誰も相手にせんから観光客に話しかけてるんじゃみたいな感じで言うんですよ。
で、その三崎はね、まあいろいろ話す中で、どこに泊まってるの?って。
で、どこどこに泊まってるよ?って言ったら、あそこは幽霊が出るのよって。あそこの町なの?って言うんですよ。
で、私はね、ため息をついて、あなたは嘘つきさせん方が、嘘つかん方がいいよって。
なんかあなたを嫌いにさせたいの?とか言うんですけど、
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三崎は本当よってもう一回言うんですよ。いろいろこう嘘をつくんですけど、まあそれも言って、
で、私はね、まあそこでもうちょっと嫌になってね、こう帰るんですよ。
で、まあ宿に帰ってご飯とか食べてて、で、そのご飯食べてる時にね、ちっちゃい旅館だから、
おかみさんが料理を出してくれるんですけど、
そうそう、その人はすごい感じのいいおかみさんでね。
で、なんか、えっと、
まあ長男って言ったらこの人の息子さんなんかなーとか思うんですけど、
こうじっと観察してて、なんか、なんでしょうね、悲しい顔がない、ないのかとか、
なんか暗い影がないのかみたいな感じで見てるんですけど、
こうすごく感じのいいおかみさんで、気遣いもあるし、なんか喋りすぎないしみたいな感じで、
こう、まあまた三崎の嘘かみたいな感じで、主人公の人は思うんですけど、
そうそうそう、でまたあの、別の日にもね、その三崎と会って、
で、いろんな嘘をつきずつ、また最後には、あの宿で幽霊出た?とか聞いてくるんですよ。
で、主人公はまた嘘ついてるみたいな感じで、そうそう、言うんですけど、
で、まああの、何日か泊まってるんですよ、その宿に、そう、
で、まあ、おかみさんがね、その三崎のことを、ある日言ってくるんですね。
で、あの、
安子さん、まあ安子さんって言うんですけど、おかみさんは、安子さんが三崎ちゃん時を喋っとったでしょ?って言うんですよ。
で、またかって、またあの喋らん方がいいよってみんなに言われるみたいに、この人に言われるんかな?みたいな。
でもなんかなんとなく、その安子さんには三崎のことを悪く言ってほしくなかったって、みんなのように、なんか彼女を非難してほしくなかったって、そう。
で、まあちょっとその続きから、読んでいくんですけどね。
で、でも私の危惧とは裏腹に、彼女は続けて言った。
何をみんなに言われたか知らんけど、あの子のことを誤解したらんとってね、ええ子なんよ。
私は驚いて安子さんを見た。 その時初めて安子さんの目の奥にある拭うことのできない炎暗い闇を見たような気がした。
三崎が言ったことは本当だったのだ。 そう思った。
誤解してません。 いい子だと思います。
私がそう言うと、安子さんは安心したように話し始めた。
安子さんの長男は5年前に海で亡くなった。 未成年で酒を飲むのはこの島では当たり前のことだった。
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そして飲む場所は決まって、私がいつも帰ってくるあの浜辺なのだと言った。 安子さんの長男は酒を飲み、みんなに煽られ、そのまま海に入って死んだ。
三崎ちゃんは死んだうちの子の彼女だったんよ。 その言葉を聞いた時、
心臓を誰かに掴まれたような気がした。 キリキリと音を立て、
それはそのまま潰れてしまいそうだった。 みんなには隠し寄ったけどね、うちは知っとった。
こっそり夜追ってる二人を何度か見たことあるんよ。 私も何も言わんかったけど、
そんな夜先にあんな事故があって、 私ら悲しいよってやりきれんで、三崎ちゃんの存在なんてすっかり忘れとったんよ。
葬式も来んかったからね。 でもほら、十五やそこらの恋って忘れんじゃろ?
よほど辛かったんやろうね。 そっから三崎ちゃんなんやありもせん嘘つくようになって、
人玉を見ただの、海の色がおかしいだの。 最初は可愛いもんやったけど、
だんだん島の人が相手せんようになったら、 今度は観光に来る人らになんやかんや言うようになったん。
あんたも何か言われたやろ?
靖子さんはいつの間にか自分のグラスにビールをついで、 飲み始めていた。
旦那さんの存在を滞在中感じることはなかったし、 家族と言えるのはあの老人だけだろう。
靖子さんはずっとこの話を誰かにしたかったのではないだろうかと私は思った。 言われました、いろいろ。
私はそう言ったが、長男の幽霊の話はしなかった。
そうやろ? 島の人らはほとんど、あの子は頭がおかしいと思っとる。
特に子供らは。 そりゃね、好きな人を失う女の気持ちなんて、小さい男の子らにはわからんよね。
靖子さんはそこで静かな目をした。 もしかしたら旦那さんも海で亡くしたのではないだろうかと思った。
でも聞かなかった。 わからんよね。
靖子さんはもう一度そう言った。 その夜、夢を見た。
私の部屋を高校生ぐらいの男の子が窓から覗いている。 暗くて顔は見えないが、彼の体が濡れているのはわかる。
雨が降ったのかなどと、のんきに考えてみたが、 雨音はせず、私は
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ああ、やっと幽霊が出た、と思った。 思ったら急に怖くなった。
体中を稲妻のような俯瞰が走り、 心臓の音がどこか遠くの方で聞こえた。
そしてまた、耳の奥がじーんと痛み出した。 目をつむりたかったが、それもできず、
私は泣き出しそうな気持ちで何かを言わなければと思った。 そして
ぬくいさん と言った自分の一言で目が覚めた。
泣いていた。 その時、ポンと音がして
耳から空気が抜けた。 あれだけしようとしてできなかった耳抜きが、こんな状況でできたことに驚き、
少し笑い、そしてまた泣いた。 こんなに泣いたのは、小さな頃以来だった。
帰りの船は夕方出航する予定だった。 私は三崎に会えないものかと、それまでずっと
いつもの浜にいることにした。 私が腰を下ろしてすぐ、まるで待っていたかのように三崎が現れた。
挨拶もそこそこに私の隣に座り、いつものホラー話を始めた。 今度、ある人が気球に乗せてくれるからフランスに行くつもりだ。
結婚話があるが、私は家にたくさんのオオトカゲを飼っていて、 旦那になる人がそれを怖がるから破断になりそうだ。
私はいつになく熱心にその嘘を聞いた。 そして三崎に言われる前にこう言った。
幽霊、出たわよ。 三崎はピタリと話すのを止め、私をじっと見た。
私はそれ以上は言わなかった。 そう、三崎は鳥のように澄んだ声でそう言い、
じっとしていられないというふうに立ち上がり、その場をうろうろし始めた。 嬉しそうにも、とても悲しそうにも見える不思議な表情をしていた。
あんまり乱暴に歩くものだから、時々砂が私にかかる。 それを払いながら、私は三崎の影を見た。
ぐにゃぐにゃと隆起する砂に合わせ、それは糸も簡単に形を変えた。 荒れた海に入ったら、それに合わせた荒々しい影になるだろうし、静かな道を歩いていたら、夜のように静かな影になるだろう。
でも思った。 それもどれも自分の影だ。
あの日、会社を辞める日、 オフィスの床に見た消え入りそうな頼りない影も、
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今回港で見たこっくりと濃い影も、 みな私の影なのだ。
それを作ることができるのは私しかいないし、どの影だって結局は私のものなのだ。 三崎の嘘は嘘をつく三崎にしかつくことはできないし、
みんなの前で自分を演じていた私も私にしかできない。 嘘をつこうが、自分を作ろうが、それをするのは全て自分なのだ。
ありのままの私なんて知らない。 今この地面に足をつけているこの足こそが私のものだし、
他の何者にだって変わることはできない。 変わりたいと思っている自分がいるだけだ。
あれだけおしゃべりだった三崎は、私のことになどお構いなしで海を見たり目をつむったりしている。
本当に本当に死んだ彼のことが好きだったのだろう。 三崎を見て思った。
ぬくいさんを失って苦しかった自分や、みんなの視線に怯えてぬくいさんへの恋心を捨てた自分、
そのどれも同じ自分なのだったら、 私はぬくいさんのことを心から愛していた自分を思い出にしよう。
短くても、ああ私は彼のことをどれほど好きだったか。 そう、三崎はまたそう言った。
今度ははっきりと泣いていた。 私はそれを見ないようにし、海へ視線を投げた。
海はとても平らな色をしていた。 でも今度はその色は私を決して憂鬱にはさせなかった。
以上になります。 これちょっと私今読みながら鳥肌が立ってたんですけど
いい本ですよね
みなさんはこの小説を読んでどう思われましたでしょうか
じゃあえっとまあ今日はこの辺でそろそろお開きということで また次回のラジオでお会いしましょう
また朗読とかもね本の紹介とかまたしたいと思ってます
はいそれでは皆さん今日も素敵な1日をお過ごしください それでは