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  2. 松の影 /槇村浩
2024-05-05 02:41

松の影 /槇村浩

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作品名:松の影
著者:槇村浩

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松の影 槇村浩
何百年のその間 村の境に立っている
一本松の松の影 今はだんだん枯れてきて
こうまで儚くなったかと 空を仰いで独り言
この私が生まれたは ちょうど今から数えたら
600年のその昔 あちらの村の庄屋さん
ここへ私を植えたので 何百年のその間
ここにこうしていたのだが 初めは小さい松の影
だんだん大きくなってきて 二つの村の人々が
一日田んぼで働いた 疲れを癒す松の影
今は仲良し友達が 二人三人連れだって
向こうの山や地下の浜 遠足に行く行き帰り
必ずここで休んで こう言ったなら私も
少しはお役に立ちましょう しかし今では意地悪な
きつつき鳥につっつかれ 松はだんだん枯れてきて
もはや死んで終わりそう これまでたびたびここへ来て
休んでいった村の人 少しも私に取り合わぬ
これから私はどうなるか 言って終わって吐息つく
本当に哀れな松の影 大正11年
7月16日 綴る
02:41

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