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2022-04-11 39:15

第75回 原作と映画で違う味わい「そこのみにて光輝く」佐藤康志著

【今回の紹介本】

■『そこのみにて光輝く』佐藤康志著

今回久々に日本の作家をご紹介。

最近評価が高まり、著作が次々と映画化される佐藤康志の長編を語っています。

是非お聴きください!

【番組内で紹介したトピック】

■『そこのみにて光輝く』佐藤康志著 河出文庫

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309410739/

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#本 #小説 #読書 #読書会 #文学 #海外文学 #ブック

00:03
どうも皆さんこんにちは、文学ラジオ空飛び猫たちです。この番組は、いろんな人に読んでもらいたい、いろんな人と語りたい文学作品を紹介しようコンセプトに、文学と猫が好きな二人がゆるーくトークするラジオ番組です。
お相手は、私小説が好きな岡井のダイチと、羊を巡るカフェのミエの二人でお送りします。
文学のプロではない二人ですが、東京と京都をつないでお互いに好きな作品をそれぞれの視点で紹介していく番組です。
番組概要欄に詳細情報を記載しているので、初めてお聞きになる方などそちらを見ていただけるとありがたいです。
今回紹介するのは、久しぶりに日本人作家になります佐藤康史さんの「そこの身にて光り輝く」になります。
川出文庫から2011年に出版されているもので、単行本はもともと1989年に出版されています。
こちらですが、年始にリスナーの方からリクエストをもらった作家さんでして、
日本人作家だけど海外文化を読むような格好を味わえるということで、ご推薦いただいたという形でしたっけ?
そうですね。それをリスナーの方から教えてもらって、ちょっと調べるとこれは面白そうかなと思って候補に入れたというところですね。
個人的な印象ですけど、三重さんが押しているような印象があって、よしよしと思って今回読ませていただきました。
初めて読む作家さんなんですけど、海外文学を読んでいるような読みごたえがあるというのをリスナーの方に教えてもらったので、
そこにすごく期待してしまったというのがありますね。
後ほど述べるんですけど、佐藤康二さんが村上春樹さんとは同い年というところがあって、生まれが出て。
それも何か通じるものがあるのかもしれないという、そんなちょっと期待を抱きながら推薦したというところなんで。
なるほど。読んでみてこの後具体的に話しますけど、確かにちょっと今の時代から読むと結構やっぱりイメージがしにくい部分が多少あるかもしれないんで、
そこが海外文学を読んでいる感覚とちょっと私はリンクするなぁとは思いました。
なるほど。そこは思ったより読みやすかったんで、いかにも昔の日本人作家がちょっと堅苦しく書いているとか、そういうのとはまた違っていて、
すごくちょっと個性的な作家さんだなと思って読んでましたね。
では、この佐藤靖さんは1949年生まれの方で、村上春樹さんと同い年で、ただ1990年にもう41歳という若さで自殺をされています。
芥川賞に5回候補になったんですけども、受賞できなくて、生前はあまり評価されていなかったようで不遇の作家と調べると言われていたりします。
ただ2007年に佐藤靖作品集というのが発表されてから評価されるようになって、そこから2010年以降、佐藤靖さんの作品がどんどん映画化されるようになりまして、
03:07
今回の「そこの身にて光り輝く海端子情景」など5本の原作が映画化されています。
佐藤靖さんの作品の特徴として、作者が生まれ育った北海道の函館市を舞台に描いているというのが多いです。
私、映画はですね、「そこの身にて光り輝く海端子情景」とオーバーフェンスというのを見たことがあります。
みなさん映画は見てないんですよね?
そうですね、映画は見てないですね。
ちょっと私も見てるんで、原作との違いは後ほどお話しさせていただきたいと思います。
映画の「そこの身にて光り輝く海端子情景」を三保監督という方が撮っていて、
綾野剛が主演。
池巻千鶴とか須田雅紀が出演していて、脇を固めているというような映画でございます。
ちょっと後で詳しく話しますけど、原作と映画で設定に違いがあって、読んでみてすごく面白かったです。
個人的にはこのオーバーフェンスという映画が良くて、
織田桐生と青井優が主演だったんですけど、監督も違う人が撮ってるんですが、
かなり私はオーバーフェンスという映画にハマりましたね。
「君の鳥は歌える」っていうのも結構有名な作品であるんですけど、
佐藤靖さん原作の作品で。
こちらまだ見てないんで、ちょっとこの機会に見てみようかなと思いました。
多分今日収録しているのが日曜の午前中なんですけど、
今日の夜ぐらいなんか見そうだなって感じですね。
僕もどれか映画は見たいですね。やっぱり。
「そこのみて光輝く」やっぱりいいんじゃないですか?
そうですね。後でまた話しすると思うんですけど、
まだ映画は撮っておきたいなと思います。
なるほど。わかりました。
躊躇してしまうかもしれない。
了解しました。じゃあその話ちょっと楽しみにしておきます。
じゃあ具体的に作品紹介入っていきたいと思います。
今回のそこのみて光輝くなんですが、
まずどういう小説かというと、さっき出版は1989年に出版されたとあるんですけども、
もともと1985年の文芸に掲載された作品であり、
時代設定としては70年から80年代ぐらいのイメージで書かれているんじゃないかなと思います。
この登場人物たちの置かれている立場みたいなところで言うと、
労働者階級って言うとちょっとそれで一括りにはできないかなとはちょっと思っているんですけれども、
高度経済成長期の話ではあると思うので、そこの影の部分というか、
ややこの底辺にいるような人たちがこの登場人物たちに据えられていて、
ここがちょっと現代から見るとちょっとイメージがもしかしたらしにくい部分もあるのかもしれないなとは思います。
確かに今とは違ったまた空気感というと変かもしれないんですけども、
06:02
本当作品の中には独特な地方都市ならではというか閉塞感とか大廃的なところとかありまして、
時代的に社会が経済成長していって、街の形というのもだんだん変わろうとしているんですけども、
その中で主人公の周辺だけは光が当たっていない感じというのがあってですね、
結構その辺がこの作品の暗さというところになっているのかなというのがありますね。
あとはこの作品に影のあるようなところがあるので、
主人公たちの生活にあるのは本当に酒とか煙草とかパチンコ競馬で、
本当に住んでいるところのすぐ近くに闇社会というかですね、暴力というかそういうのもあるし、
そういう人たちが会話というのはやっぱりちょっとぶっきらぼうなところがあったりしてですね、
なかなか普段自分たちが生活している様子とはちょっと違った生活様式というのがありますね。
その映像とか他の作品とかでもこういうのは全然描かれていると思うんで、
イメージはできる部分はあると思うんですけど、
今回私読んでみてちょっと感じたところはあるので、
それはちょっと後でこの辺りについて話させていただきたいと思っています。
ではあらすじを紹介していこうと思います。
北の海、海辺の町で男はバラックに住む女に出会った。
二人が引き受けなければならない試練とは、苦さと痛みの彼方に生の輝きを見つめ続けながら
生き急いだ作家佐藤康氏が残した唯一の長編小説にして代表作。
青春の夢と残酷を結晶させた伝説的名作が20年を経て蘇る。とあります。
なんかこのあらすじいいっすよね。
なんかあれ、伝説的名作が20年を経て蘇るっていうのがいいワードですよね。
じゃあちょっとこれだけだとイメージしかつかめないと思うので、
ゆっくりこの小説がどんなストーリーかっていうのを私の方から話させていただきたいと思います。
こちら二部構成になってまして、第一部がそこのみて光輝く。
第二部が滴る日の雫にもというタイトルがついておりますが、二部構成になっております。
第一部は主人公の辰夫という人物がいるんですけれども、その辰夫がタクチという男にパチンコで出会うところから始まります。
辰夫がタクチがライターがないからライターを貸してくれと言われたことから、二人は話すようになって、その流れでタクチの家で飯をごろぞということになって、ご飯を食べに食事をするためにタクチの家に訪れます。
タクチの家を訪れた辰夫は、このタクチの家はですね、再開発されて高層住宅が立つようになった本宮の町に一軒だけあるみずぼらしいバラックの家でした。
09:02
ここで食事に来た辰夫は、タクチの姉である千夏という女性と出会います。
千夏は家に入った時に、ふらっと下着姿で出てきて、弟のタクチが飯を作ってくれと言うと、チャーハンを作って食べさせてくれました。
辰夫と千夏はこの時、お互い何かを感じ取り、その後二人は会うようになっていきます。
辰夫なんですが、造船会社で働いていました。ただ、今は退職して無職でいる状態です。
造船会社が経営不振で、労働組合が大規模なストライキを起こしていて、早期退職の話が出た時期で、辰夫自体はこの組合活動に誘われたんですけども、
そんなものに関わりたくないということで、関わる気もなく辞めてしまったという状況です。
現在彼は失業保険で暮らす無職、退職金で暮らす無職でございます。
一方、千夏の家は子供の頃から侍部族の子と言われ、この地域で差別されてきました。
過去には差別でからかわれたことが原因で、弟のたくじが衝動的にかとなって相手を刺してしまい、刑務所に入ったこともあります。
千夏の一家は父親が寝たきりになっており、母親が介護をしており、その生計は千夏が水商売で稼ぐことで一家の暮らしを支えている、そんな状況でした。
そんな底辺の暮らしをする千夏は、30目前の自分にはもう精神はできないと諦めていたが、辰夫はそんな千夏と一緒になろうとしていきます。
第2話はちょっと時間が経っており、辰夫と千夏は結婚して、すでに3歳の娘がいるという状況になっています。
辰夫は生活に車が必要なことから、千夏の弟のたくじに紹介してもらった松本という男がいるんですけれども、その男から4万円でボロボロの中古車を譲ってもらいます。
この松本という男なんですけれども、たくじとサウナで一度だけ出会ったことがある中で、この松本というのがなかなか気の良い男で、紹介してもらった辰夫はすぐに打ち解けます。
松本は鉱山を経営する会社の取締役をしていて、過去に事故で片目が潰れており、常にサングラスをしているという状況でした。
この中古車の受け渡しをきっかけに、中会社たくじは松本の元で鉱山で働いて一攫千金を当てるということを夢見るようになります。
一方で松本側は辰夫を自分の仕事の相棒として誘うようになってきました。
辰夫は現在水産加工工場というところで働いていて、なんとなくその現状に満足しないということが松本にあっさり見抜かれてしまい、
いろんな葛藤があるんですけれども、最終的には松本と共に鉱山に行って働きたいと思うようになります。
辰夫は松本たくじと共に鉱山に行くことを決意して職場を辞めました。
だけどその後、事件が起きて物語が終わりに向かっていくという流れになっています。
これがざっくりとしたストーリーですね。
12:02
2部構成で、1部と2部でまた話の経緯が違ったりしたんですけども、
ちなみに原作は今のような話だったんですけども、映画の方ですね、
僕実はちょっと調べたら映画が結構原作とは設定が変わっていたりしてですね、
そこでも原作のイメージが自分の中で残ってるんで、それを壊したくないなと思って、
映画が見入れずにいるんですけども、
大地さんは映画と原作を比べてどうでしたでしょう?
映画の印象が強くてそれで原作入っちゃったんで、だいぶあれ違うっていうのがあって、
まず登場人物の設定とかが結構違うんですよね。
そうですよね。
で、出てくるんですよ。名前とかは出てくるんで、
登場人物の人数っていうか、それはあんまり変わらない感じなんですけど、
置かれてる立場とか役割が結構違っていて、
結構こんな感じなんだっていうのはちょっと驚きましたね。
映画のストーリー構成とも結構ちょっと違うんで、
ちょっと映画から入ると面食らうかもしれない。
もしかするとそうですね、映画と原作はやっぱり別物というか、
ベースは同じなんですけど、話はやっぱり違うのかなと思いました。
調べると、タクジの兄貴分の中島という人物が、
原作だとそんな存在感とかないんですけど、
映画だと結構重要人物になっているんですよね。
原作だと二部から登場する松本という人が、
主役級の一人なんですけど、それが映画だとどうなのかっていうのが。
松本の印象はめちゃめちゃ薄いですね、映画だと私は。
出てきて、ああ、あの人だなと思ったんですけど、
中島の印象がすごく強いですね、映画はね。
原作を読んでると、個人的には二部に出てきた松本が結構好きで、
めっちゃかっこいいんですね。
わかるわかる。
映画で篠昌平が演じてるんですけど、
年齢がだいぶ原作より上だと思うんですね。
確かに。
原作だとほとんど30代後半ぐらいの、
ガタイモががっしりしててめっちゃかっこいいイメージだったんですけど、
あれ映画全然違うぞって思ってるんで。
あとあれだな、須田雅樹演じるタクジも、
原作だと結構もうちょっと年いってるイメージで、
須田雅樹が演じたタクジは割と幼い感じが、
映画だとしますね。
原作だとタクジが幼さも残るけど、
でもある程度成長した男っていう印象が持つんですけど、
そこはちょっと乖離があったかなと思います。
結構両方読むと違いが楽しめるんで、
15:02
別物として捉えてもいいのかもしれないですけど、
でも雰囲気感っていうか空気感っていうのは、
映画原作をなるべく壊さないようにしてるような感じは見受けられましたね。
ちなみに映画での良さとかってありました?
個人的にはこれでも、原作読んでどう捉えたらいいんだろうみたいなところがあったのが、
主人公の辰夫としなつが惹かれてくる時っていうのが、
原作だと私は掴み切れなくて、
あ、解説読んだらここだったって書いてあるんだけど、
あんまりピンとこなかったんですよ。
もうちょっとその後の原作の解説だと、
辰夫が初めて辰夫の家を訪れて帰る時に、
しなつが追いかけてくるんですよね。
そこでちょっと振り返って話した瞬間が、
その時に辰夫がしなつに惚れたんだみたいなことを書かれてるんですけど、
そこ読んであんまりピンとこなかったんですが、
それはもうちょっと後にやりたいところなんじゃないかなと個人的には思ったんですけど、
映画だとですね、やっぱりこの間とか雰囲気とか表情とか、
言葉じゃなくて伝わる部分が多くて、
あ、この二人は惹かれ合ってるっていうのは表現してくれてたので、
綾野豪と池脇千鶴が。
そこすごい映画で見るといいと思います。
確かに原作ちょっと辰夫というのが若干相手を突き放すような見方をしてるというか、
そういうのでちょっと感じ取りにくい人物かもしれないですね。
明確に描かれないですからね。それはそれですごくいいんですけど、原作のね。
あと原作だとやはりこのストーリー構成もすごく面白いと思っていて、
あとそうですね、ストーリー構成に行くまでの人と人との出会いっていうのがすごくまずは印象的に描かれていて、
そこからストーリーが始まっていくっていう。
これ文庫の開発の解析でも絶賛されていたんですけども、
僕は読んでいて本当にストーリーが始まっていくっていうか、
人と人が出会っていくっていうところの良さと、
そこからストーリーが紡がれていくっていうところがやっぱりいいなって思いました。
それはわかります。
ちょっとさっきあらすじでも話したんだけど、
もともとこのしなつの弟のたくじっていう人物と、
パチンコでたまたま辰夫がライターを貸したところから話が始まっていて、
そういうのって結構日常にあるじゃないですか、ちょっとしたこと。
例えば誰かが落としたものを拾ってあげて渡すとか、
多分それぐらいのレベルのことだと思うんですけど、
そういうのってなんかよくあることで、
そういう何気ない日常に転がってきそうな出会いが、
最終的に辰夫の人生を変えていくっていうところまでなっていって、
そういうことが自然な形で描かれているっていうのが、
この小説すごく面白いところというか、
自分は結構いいなと思ったところでもありますね。
18:01
この結構キープレイヤーになっているのはたくじで、
たくじがめっちゃがさつなんですけど、
たくじがすごい純粋というか人懐っこいというか、
一言喋って気に入った相手がいたら、
その人にすごい親しみを持って接してきて、
そこから人と人がだんだんつながっていくというところが、
確かに面白いなって思いました。
松本と出会うのもたくじを介してなので、
この辺りはうまい作りだなと思いましたね。
あとストーリーの作り方っていうのはうまいんですけど、
私結構気になったのは文体ですね。
文体が結構すごく淡々としてて、
すごく無味乾燥っていうか、
あんまり激しくないっていうか、
穏やかとも違うんだけど、
ハードボルトともまたちょっと違う気がするんだけど、
無味乾燥な印象なんですよ。
でも伝えたいことがスッと入ってくるような感じがして、
すごく無駄がなく鮮明されてるなって感じました。
確かにすごい読みやすいですよね。
確かにスッと入ってくるし、
気持ちよく読んでいけるっていう、
そういう文章で、
物がないのと個性がないのが違ってるなと思っていて、
この書き方は逆にちょっと個性があるなと思って読んでました。
わかります。
このちょっと本当に箱立て舞台で、
ちょっと土石的な、
そんなすごい雰囲気を醸しているのに、
文章は淡々というか読みやすく書かれていて、
すごいなと思って読んでいて、
あとこの小説の中で面白いなと思ったのは、
ちょっと書き方を変えていると心が2箇所あって、
1つが第2部の場面なんですけど、
鉱山に行こうと決意している達夫が千夏と会話をしているんですけども、
その会話の間にボクシング中継の様子が挟まれると、
ボクシングの試合がテレビでやっているんですけど、
会話と会話の間にボクシングの試合の状況が挟まれていくって、
ちょっと変わった書き方をしていたり、
あともう1つは結構終盤の重要なシーンで、
それまでの淡々と書いている小説とはちょっと違った流れで書いている描写があって、
そこの描写だけ時間の流れを違ったように感じれるようになっていて、
それも面白いなと。そういう変化をつけて書いているのは面白いなと思って読んでましたね。
あとこの小説の魅力の1つはやっぱり登場人物かなと思っていて、
主要人物は本当に限られた何人かというところなんですけども、
やっぱり主人公の達夫の1匹狼なところもすごくたくましく生きているし、
1つちょっと不思議に思ったのは、達夫ってそれまで造船会社で仕事もしていたので、
21:00
ちゃんと生きていく術があったのに、なんでこんな孤独な人間になっていったんだろうというのは不思議に思ったりはしたんですけども、
そんな達夫が出会うタクジというのも憎めないキャラで、
見方とは純粋なんですけど、やっぱり光影があるということですね。
光のところでは本当にかわいい弟分みたいな感じなんですけど、
やっぱり影があるというか、それを生まれ育った環境というか、差別というところにそこがずっと引っかかったキャラでもあって、
何か逃れられない運命の下で生きている感じがして、タクジも見方によっては面白いなと思ってました。
これはもちろんヒロインの千夏という人も、第1部と第2部で読んでいると印象が変わっていましたけども、
千夏というのもヒロインなんですけども、達夫が一匹狼なら千夏も一匹狼みたいなタイプで、
ちょっと突き放した相手を見ているというか、冷めた目で見ているというかですね、
そんな2人が出会って惹かれるというのはすごく良くて、
あとは個人的に好きなのは2部から出てくる松本なんですけど、
この松本がやたらかっこよくて、この松本に関してはめっちゃハードボイルドなんですよね。
片目はちょっと事故で潰れて見えなくなってしまったんですけど、そんな話をしている時に、
でも洞察力とかはやっぱりすごくて、
そんな会話の流れで、片目になってからは他人がよく見えるようになったのさとかですね、
そんなかっこいいセリフがさらっと入っていたり、
あとちょっとこれは村上春樹の小説に出てきそうなセリフだなと思ったところが1箇所あって、
これも結構終盤の場面なんですけど、松本が過去に離婚をしていて、
なんで離婚したのかというのを達夫が聞くんですけど、
それに対して、いいかい、理由なんか話したら1日かかっても足りない。
他人のことはそんなものだろう。俺たちは若かった。いろいろあった。
やあと言って結婚して、じゃあと言って別れた。それだけだよ。
お酒切り取るとめっちゃ村上春樹に出てきそうだなと思って、
でも松本が言うとすごい、どのセリフも良くて、
ちょっとかっこよく書きすぎてるんじゃないかなと思うところもあったんですけど、
好きなキャラでしたね。
松本のセリフとか行動とかには松本の経験みたいなのがすごく感じますよね。
経験してることは描かれてないけど、
彼が経験してきたことが反映されてるっていう人物の作り方をされてるなと思うんで、
かっこいいですよね、ここはね。
そうですよね。ちょっと一人だけ大物感があるというかですね。
うんうん。
本当にボスとかで出てくるんじゃないかって思う。
人が味方になっていく。
私ちょっとこの小説で気になったのは、
この登場人物たちの感情の描き方っていうか、
そこはちょっと結構短いながらすごく上手いなと思ってまして、
24:02
これ一人称ではないんですけど、
基本的には主人公の達夫の感情にフォーカスが当てられているんですけど、
なんとなくこの達夫が持っている、
どこか誰にも分かってもらえないような感覚っていうのが、
なんかあるなと思っていて、
そういうのをかもし出していて、
おそらくそれがこのヒロインの地夏の何かとリンクしたんだろうなとは思います。
感じる部分はあります。
それに関してはちゃんと描かれてないし、
私もですね、上手く言語化できないし、
さらに第二部に入ると地夏があんまり描かれることなく、
達夫の生活の一部になっていて、
達夫は達夫で、第二部ではもう違う鉱山のこととか、
自分の人生のことみたいなところに感情が動かされているようなところは受け取れて、
なかなか結構これは面白いなと思いました。
この一部と二部の違いも含めてなんですけど。
なんか結構気が変わるっていう話が結構この話の中、一部も二部も出てきてて、
分かりやすいってことで言うと、
二部で松本に最初一緒に仕事しないかって誘われるときは、
達夫は断るんですけど、気が変わったらみたいなことになって、
実際気が変わるんですけど。
そういうのが結構ですね、その瞬間その瞬間で描かれてて、
結構ここがすごくリアルだなと思ってましたね。
読んでて私はこの達夫の気の変わりっていうか、
この感情はどっちに向いていくかっていうのは読んでてすごく面白かったですね。
確かにね、特にこの二部になってからの気が変わるっていう話がいくつか出てきて、
確かにリアルっていうか分かるなって思いましたね。
ただ自分がその気が変わるっていうのと、
作中で達夫が気が変わるっていうのは、
また違った属性のものなんだろうなっていうのも、
なるほど。
僕が思ったのは、達夫という人間がここではないどこかっていう、
それが海であったり山であったり、
そういうのに引き寄せられる人間で、
多分松本はもうそれを見抜いてたと思うんですけども、
達夫の中ではそんな気持ちが、
鉱山に行くとかそんな気持ちはないって思っていなかったり、
望んでいなかったとしても、
引力みたいな、そこに山があるからっていうようなもので動いてしまうというかですね、
心もそっちに向かってしまうような、
ちょっとそんな本能的な、そんな気の変わり方とかしてたんじゃないかなっていうのはちょっと感じましたね。
なるほど。確かにそういうことか。
確かにこの達夫は自分でも望まないけれども動いてしまっている部分っていうのは、
結構度々描かれていて、
一部でいうと、二部も多少あるんですか。
でも一部でいうと、
千夏と出会って千夏のこと大したことではない女だと思ったり、
でもすごく自分の中で千夏のことばっかり考えるようになっちゃったり、
27:00
あと性欲的な波の部分でも、
自分でコントロールできなくてみたいな、
そんなにそこに引っ張られてるあれはなかったと思うんですけど、
でも性欲によって気分が変わるみたいなこともちょっと描かれていたりして、
達夫の気が変わるっていう波っていうのは、
確かにみりさんおっしゃる通り、
自分が望んでない波があるよなっていうのはちょっと読んでて、
それって結構リアルじゃないですか。
我々も。
理屈ではないところで、その波があるっていうのが。
性欲の部分とかでもそういうこともあると思うんですけど、
もっとイメージさせやすいところで言うと、
何かを衝動外してしまうときとか、
本とか私よくありますよね。
そういうこととかあったりすると思うんで、
やっぱり自分でコントロールできない波っていうのが、
うまく描かれている小説だなと思いますね。
ちょっとこの感情の部分で話したいことが、
ちょっとこれはもしかしたら、
この小説の本筋ではない部分だと思うんですけど、
千夏のお母さん、達夫からすると義理の母にあたる人物がいて、
このお母さんが第2部で、第1部では一家4人で住んでるんですけど、
第2部になると寝たきりだった父親が死んでしまって、
千夏は家を出て達夫と暮らしているので、
たくじとそのお母さんは2人暮らしで、
バラックで住んでるんですけど、
この達夫とたくじが県外の、県外っていうか東北か、
東北地方の鉱山に行くことになったので、
家を開けると。
ちょっとそんな家じゃなくて、
郊外のちょっといい家に住んだらどうだという話になって、
千夏と一緒に、千夏とその娘と義理の母と、
3人で住んだらいいんじゃないかみたいな話を持ちかけるんですけど、
この義理の母がですね、
堅くなにそこから動こうとしないんですよ。
この貧しいバラックから。
で、これって結構多分、
この感情がおそらく結構、
現代の我々にはなかなか理解しにくい部分なんじゃないかなと思ってまして、
彼らは言い方あんまり考えないで言うと、
底辺の生活をしていて、
基本的には、
現代社会でもいろんな生活をしてる方がいらっしゃると思っていて、
現実に今格差っていうのはめちゃくちゃ広がってる時代に我々生きてるので、
ちょっとセンシティブな内容になるかもしれないです。
発言になるかもしれないんですけど、
おそらくいろんな状況に置かれてる人がいて、
この達夫じゃないや、
千夏たくじとそのお母さんがいるような家っていうのは読んでいて、
自分に近しいと思う人もいるかもしれないんですよ。
でも、おそらくなんですけど、
格差が広がっていて、
いろんな人の生活は豊かになったけれども格差も広がっていて、
今格差が広がったがゆえに、
他の人たちよりは貧しいと感じていらっしゃる、
生活を送っていらっしゃる方もいると思うんですけど、
そういう人たちってきっとですね、
豊かな方にいきたいって思うと思うんですよ。
基本的には。
そういう引力が働いてると思うんですけど、
30:03
ここで描かれてる義理の母の感情っていうのは、
おそらく同じ立場からもなかなか理解されないなと思っているのは、
この義理の母は動こうとしないんですよね。
その生活から。
これってちょっと私もなかなか理解が追いつかないというか、
なんでなんだろうってすごく思っちゃう部分で、
おそらくこの70年とか80年代、
急に経済成長していって、
豊かになり始めた日本っていうところで、
うまく言えないんですけど、
この自分の立場、
自分の場所っていうのを大切にしたいっていう思いがすごく強い。
それは誇りなのかもしれないし、
このお母さんにとっての。
多分この感覚っていうのは、
自分が生まれ育った場所だから、
自分が生活した場所だから、
動きたくないんだ、大切にしたいんだ、
またちょっと違う文脈な気がして、
ちょっとね、
多分この現代の日本に生きる我々には、
もしかしたら理解ができない部分なのかもしれないと思います。
理解ができないから、理解しないままでいいっていうあれじゃなくて、
そういうのをちょっと意識して読むと、
ちょっとこの状況の見え方とかが変わってくるんじゃないかなと思います。
多分普通に読んだらさらっと流した部分なんですよ、ここ。
なんか、我々が今。
そうですね、僕もちょっとね、
さらっと流して読んでいたんで。
なんか打ち合わせで、
俺が急にここに対してこだわり出すっていう、
わけでわかんない状況に打ち合わせがありましたけど。
でも確かに、
何でその土地から動かないんだっていう、
おそらくこうなんじゃないかっていうのって、
僕個人的にはもう絶対わかんないなって思いましたね。
その当事者、その人じゃないと、
それが何か理由があってなのかどうかさえも、
わからないっていう感じです。
なんで私が引っかかっちゃったのもあれなんですけど、
多分なんか重要な気はするんですよね、
この作品を持つ雰囲気に寄与してるっていうか。
そうですね、確かにね、
その当時って経済成長もしていて、
物の考え方というか、
今の自分たちはやっぱりちょっと資本主義の世界で生きてるんで、
将来を考えたり、合理的な方で考えたりとかっていう、
それを基準に物事を理解しようとしているところって、
ちょっとあるのかなと思っていて、
でもそういったところでは、
お母さんの考え方とかっていうのは多分違うまた、
価値観というかわかんないですけど、
絶対あるんだろうなっていうところまで、
そこまではちょっとそうかもしれないって思ったりはしますね。
俺もこれ一族したけど、
ちょっと深掘りきれてはないかなとは思ってますが、
ラストでちょっとね、
そこをまだ増えられていて、
ギリのお母さんのことはちょっと増えられていて、
やっぱりこのそこもすごく大切な要素なんだなっていうのは、
ちょっと感じ取ってたので、
ちょっとこの話をしたのは、
多分20代ぐらいの読者、
33:01
20代ぐらいの人にはもしかしたら、
このギリのお母さんっていうのは全く理解できないっていう、
処理をされて終わっちゃいそうだなって、
ちょっと読む人によってはいるんじゃないかなと思ったので、
ちょっとこのことを話してもらったっていう感じですかね。
最後にですね、
この2文の終わり方がですね、
本当にこの物語のすべてのラストを描いているとは、
やっぱりちょっと思わなくてですね、
僕が思ったのは、
本当はこの後第3部っていうのがですね、
なんかあったかもしれないなというのはですね、
ちょっと想像してしまってですね、
鉱山に行った話なのか、
もうちょっとその先なのかっていうところは、
あたりかなとは思うんですけども、
そうですね。
そこで思ったのが、
さっきの話とつながるかどうかなんですけど、
辰夫にしても千夏にしても、
物語の始まりはお互い孤独な人間で、
なんか本当にその半顔がちょっと描いてそうなんですね。
なんかそのちょっと社会の影の中で生きているような人たちが出会って、
第3部、もしかしたらそこからさらに続いていくとなるとですね、
今度はその辰夫とか千夏の子どもたちが、
もしかすると主役になっていって、
そういう人たちはもしかするともう社会の一人として、
むしろその社会を作っていくんじゃないかなと、
結構やっぱりたくましい人たちなんで、
なんかそこまで想像してですね、
実際になんかそういうものかもしれないというのはちょっと思ってですね、
これは今の社会もやっぱりそこを作っていった人たちとか、
実はですね、始まりの段階では果たしてマジョリティの側というかですね、
だったのだろうかと。
もしかすると結構孤独な立場の人たちが、
今の社会とかですね、
作っていったりしてるんじゃないかとか、
なんかちょっと頭の中で勝手にそんなこと思ったりしましたね。
最後どんな人に読んでもらいたいか、
感想を交えてお話しして閉めたいと思います。
じゃあ私の方から。
久々の日本の小説の紹介となったんですが、
やはり我々の現代の日本からするとちょっとイメージしにくい部分があって、
例えばこれがすごい日本の古典作品とか、
江戸時代に書かれたものとかと比べると、
また全然話が違ってくるんですけど、
この今、傷つきであるはずの日本っていうところから見ると、
ちょっとイメージしにくい部分があって、
少し海外文学のような、
また違った世界に今回踏み入れてしまったなみたいな感覚を持ちました。
だからちょっと海外文学のようなって言われるときに、
ちょっと納得感はあったなと思います。
主人公の辰夫なんですけど、
無口な男で、
それと同じくらいですね、この作品自体が、
多くのことを語らない作品だったなと。
文章なんですけど、見せてくる作品だったなと思いました。
だからこそ結構印象に残る部分っていうのが多くあって、
うまいなと思いましたね。
解説にあったんですが、
いろんなことがうまくいかなくて、
寂しくてたまらなくなる夜を知っている人なら、
そのことがよくわかるはずという言葉があって、
36:02
この小説に対して、
その言葉がすごく納得感のある言葉でした。
ある種埋めることのできない寂しさとか、
どうしてもちょっと孤独なことを感じてしまう人には、
結構刺さる話なんじゃないかなと思いますので、
お勧めしたいと思います。
確かにね、
寂しい気持ちのときにはいいかもしれないですね、
この小説は。
僕は結構この物語に慕って読んでいて、
世界観ですね、
閉塞感もあったり、
退廃的なところもあったりという、
それが好みでした。
辰夫にしても千夏にしても、
孤独なんですけど、
たくましく生きていて、
そういう人たちが出会って敷かれていくっていう、
そういう話自体もすごく好きな部類のもので、
あとちょっと思ったのは、
この地方都市にも見え隠れする闇、
ちょっとした闇っていうのがやっぱり、
この小説の中にも出てきたりはするんですけど、
そういうのがですね、
それを文学として形作ってしまうっていうところがですね、
この作者のすごいところだなと思いました。
解説でも中上賢治さんと比較されて、
書かれたりはしていたんですけども、
恵まれないというかですね、
ちょっと置いてけぼりにされたというか、
光が当たらないとか、
そういったものを文学としてやっぱり表現するっていうところに、
価値があるんだなって思ってもいましたね。
あと文章もやっぱり良かったですし、
ハードボイルドなところっていうのが、
特に2部になって松本という人物が出てきて、
やっぱり海外小説のちょっと雰囲気というのにも、
なんか近い部分っていうのは、
やっぱりあったんじゃないかなというのは思いましたね。
やっぱりこの続きを読みたいと思ったんですけども、
作者の他の作品とかもやっぱり気になったので、
これから読んでいきたいなと思いました。
さっき大地さんが寂しいときに読むと刺さるんじゃないかと、
ありましたけども、
僕もやっぱりそうで、
なんか知らないんですけど、
海とか山とか行って一人になりたいなと思ったときとかですね、
そんなときにこの小説を読むとまたいいんじゃないかなというのも感じました。
じゃあそのところにして、
本日はそこどめて光り輝く紹介させていただきました。
次回こそして終わりたいと思います。
次回はですね、
グアダ・アルペ・ネッテルの
赤い魚の譜という小説をご紹介したいと思います。
こちらですね、
先日発表されました日本翁役大将の最終候補、
5作で残っているメキシコの作家の小説でございます。
お楽しみに。
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ではまた来週。
ありがとうございました。
39:15

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