文学ラジオ 空飛び猫たち
赤い魚の夫婦 現代のメキシコを代表する作家
グアダルーペ・ネッテルが書いた短編集。どの短編にも共通するのは、生き物が出てくるというところ。
登場人物の感情や置かれた立場が生き物と重なり合い、読み手に独特な迫り方をしてくる。
どの作品も短いながらにして完成度が高く、読めばきっと忘れられない作品に出会えると思う。
第8回日本翻訳大賞 最終候補になっているこの作品を今回はご紹介します。
どうもみなさんこんにちは。文学ラジオ 空飛び猫たちです。この番組は、いろんな人に読んでもらいたい、いろんな人と語りたい文学作品を紹介しようコンセプトに、文学と猫が好きな二人がゆるーくトークするラジオ番組です。
お相手は、私小説が好きのカイノダイチと、羊を巡るカフェのミエの二人でお送りします。
文学のプロではない二人ですが、東京と京都をつないでお互いに好きな作品をそれぞれの視点で紹介していく番組です。
番組概要欄に詳細情報を記載しているので、初めてお聞きになる方などそちらを見ていただけるとありがたいです。
今回紹介するのは、グアダルペ・ネッテルさんの赤い魚の夫婦になります。
宇野一美さん役で、現代書館から2021年に出版されています。
今回紹介する本は、個人的にはすごく読みやすくて、しかも単的に言うとものすごく面白くて、
これ短編集なんですけど、それぞれモチーフとして出てくる生き物の使い方がめちゃくちゃ上手いので、海外文学初心者向きな一冊だなと感じております。
いかにも海外文学っていう感じの、しかも短編集で読みやすいですし、
帯にメキシコにすごい才能がいたって、作家の星野豊之さんが書いてるんですけども、まさにそんなすごい才能を感じる本でしたね。
これ本当に帯のままなんですけど、こんなすごい人がいたなんてって感じですね。
で、ちょっとなぜこの本を今日取り上げたかという経緯を話させていただきたいと思います。
まずですね、こちら日本翻訳大賞の最終候補作、5作の中の1冊になってます。
そもそも日本翻訳大賞っていうのは何なのかって言うんですけども、これ年に1回ですね、前年に発表された翻訳本の中から一般読書推薦があり、その後ですね、
名立たる翻訳者の方々が先行委員になっている選定があって選ばれる翻訳者に与えられる賞になります。
今年で8回目になりますね。こちらなんですけど、あまり翻訳本を読まなかったり海外文学読まない人からするとマイナーな賞かもしれないんですけれども、
我々のような海外文学フリークからするとですね、めちゃくちゃ良い賞で、まずですね、これのみ熱された作品のクオリティがどれも高いっていうのが本当嬉しくて、
もうこの機会にいろんな作品を知れるっていうのが素晴らしい賞になってます。
もともと15作ぐらいあったんですけど、今5作まで、4月10日段階で絞られてまして、こののみ熱作品を必ず読めば名作に出会えるという賞になってます。
言ってしまえばこれ年に1回の翻訳本好きの祭典だなと思ってまして、
最終的にはですね、5月の中旬に受賞作が発表される予定となっております。
我々この文学ラジオ空飛ぶ猫たちとしてもですね、これをこれから紹介していくつもりなんですけれども、
どっかのタイミングでこの日本翻訳大賞候補作を課題本としたオンライン読書会もやってみようかなと思っておりますので、ぜひそちらも楽しみにしていただければなと思います。
そうですね。ラジオではこの日本翻訳大賞の最終候補作というのが5作あるんですけども、
これをこれから順番に紹介していきたいなと思っていまして、紹介し終えたら番外編でどの作品が大賞を取るのかというのを大地さんとそれぞれ予想してみるというですね、そういう収穫もしようと思ってます。
昨年も同じことをしたんですけども、昨年の最終候補5作がすべて外れなしで、すごい良かった上に、しかも大賞2作選ばれたんですけど、どっちも当てるというですね、こんなことが起こるんだという予想的中になってしまって、
そういう感動のフィナーレを迎えたので、今年も再現を狙っているというのでやっていきたいなと思っています。
順番にこれから赤い魚の夫婦、パッセンジャー、詩人キムソヨン一文字の事件の順番に紹介していきます。
地上で僕らは魚もあきらめくと、星の時という作品も最終候補にあるんですけども、この2作はすでにラジオで紹介しているので、気になる方はぜひ過去の回を聞いていただけるとありがたいなと思います。
じゃあこの後、今日は赤い魚の夫婦というこの名作について語っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
まずですね、この作者のウアダ・アルペ・ネッテルさんというのは、1973年メキシコシティ生まれ、今もメキシコシティで暮らしているそうです。
メキシコ以外にもフランス、スペイン、アメリカなどで長く暮らしていたという経歴を持つ方ですね。
メキシコの作家さんですけど、思ったのはいい意味で、メキシコらしさがないというか。
ヨーロッパの作家さんの作品を読んでいるような、そんな感覚を持ちましたね。
すごいわかりますね。私、ヨーロッパって言わればどっちかというと、日本とか韓国とかこっちのアジアっぽい、なんか湿気を持っているような印象。
あ、でもメキシコだから乾いてる部分もあるんだけど、なんか独特の湿気を持っているのはちょっと思いましたね。
そうですね。なんか完全にヨーロッパでも完全にメキシコでもなくて、なんか微妙な立ち位置というかですね。
それがね、なんかすごいいい雰囲気のものを描いてるなと感じましたね。
あと、この後描きに書かれていたんですけども、この作者の方が花びらとその他の不穏な物語という短編集を出していて、
それはまた日本語には未翻訳なんですけども、その収録作品の中に盆栽という作品があって、そこは東京が舞台で村上とみどりという人物が出てくるみたいなんですけども、
みどりはノルウェーの森のそのみどりさんを指していると思われて、村上というのはもちろん村上春樹へのオマージュということで、
ちょっとこれ日本語訳してほしいなとすごく読みたいと思いましたね。
ちょっともっとその作品以外ももうガンガン翻訳してもらいたい作家ですね。
あと個人的にはですね、表紙がすごくおしゃれというか綺麗で、
これ沢井翔平さんという方かなの絵なんですけど、結構このなんか独特の絵で雰囲気を出している表紙なので、
あの表紙もめちゃくちゃおしゃれなので、皆さんもネットとか書店とかで見ていただければなと思います。
いろんな色が溶け合ってるような絵なんですけども、
すごくこれが作品の世界観にマッチしていて、中身と外の見た目とこの絵がすごい一致しているなというのを感じましたね。
最初ちょっと赤い魚の夫婦っていうタイトルからするとこの絵はと思ったんだけど、確かに混じり合ってる感じですね。
作品紹介を具体的にいきましょうか。
そうですね。ではまずこのあらすじをウェブサイトから引用して話をしたいと思います。
第3回リベラデル・デュエロ国際短編小説賞受賞。
メキシコの作家が起こる人間とペットにまつわるちょっと不思議な物語。
初めての子の出産を迎えるパリの夫婦と真っ赤な鑑賞魚ベタ。
メキシコシティの不完成な住宅街のおばの家に預けられた少年とゴキブリ。
飼っている別猫と時を同じくして妊娠する女子学生。
不倫関係に陥った二人のバイオリニストと金類。
パリ在住の中国生まれの劇作家と蛇。
メキシコシティパリコペンハーゲンを舞台に夫婦親となること。
社会格差妊娠浮気などを巡る同情人物たちの微細な心の揺れや理性や意識の鎧の下にある悲壮な部分が人間と共にいる生き物を介してラブリーダされる。
赤い魚の夫婦、ゴミ箱の中の戦争、別猫、金類、北京の蛇の5編を収録。
このあらすじある通り生き物がキーになってくるという小説なんですけれども、
ちょっとどういう小説かっていうのをもう少しちょっと端的に説明しますと、
こちらですね5つの短編が収録されている短編集で生き物が印象的な使われ方をしています。
物語のキーにもなってくるし、登場人物と生き物が重なる部分があって読み手に訴えかけてきて、
その結果ですね強烈なイメージを残していくという作品集だなと思っています。
読み終えてこの作品を振り返ると思い出すのはこの生き物たちのことが多くて、
なかなか面白い作りだなと思いました。
赤い魚、ゴキブリ、猫、金類、蛇っていうのがそれぞれ出てくるんですけども、
それぞれ登場人物の感情と絡み合って読み手の中に強く残る巧みな小説だなと思いました。
基本的には描かれている感情っていうのが割と暗い感情が多くて、
でもその感情っていうのは誰もが一度くらいは持ったことがあるだろうなみたいな感情なので、
読んでいるとですね、共感というかちょっと引き込まれてしまうような部分も多少あって、
結構ちょっと怖い小説だなと思いましたね。
うん、そうですよね。
なんかそこはすごく思いました。
登場人物が結構引きこもりがちなところがあって、
あのすごく内静的というかですね、
なんかもう自分の頭の中でちょっと世界を作っちゃうというかですね、
なんかそういったので、
なんか読んでいると本当に、
なんかその登場人物の頭の中で世界が溶けていくようなイメージで、
で、それが生物との重なりともピタッとはまっているというですね、
これちょっと説明するとすごくわかりづらいんですけど、
まあなんかその溶けていく感じというのは、
なんか読んでいるとこの感覚を味わえるんじゃないかなと思いますね。
うん、そうですね。
で、ちょっともう完全に印象なんですけど、
赤い魚の夫婦っていう表題作が一番最初に入ってまして、
で、私これ結構好きな韓国の作家のハンガンさんって方がいらっしゃるんですけども、
ハンガンさんの小説を読んでいるような印象を受けました。
まあ夫婦が分かり合えない不和をみたいなのを抱えているんですけど、
なんかそれが、なんていうかどうも言語化できるようなものではない空気の部分で起きていて、
で、かつそれがもう致命的な形になっているという状況が描かれるんですけど、
この、なんか独特の湿気って言っていいのかなんて言っていいのかちょっとうまく言えないんですけど、
この空気感はですね、結構ハンガンさんの小説を読んでいるような印象を私と受けてすごい引き込まれましたね。
確かになんか、どの作品もすごく不穏な気配っていうのがありますよね。
なんかその辺はハンガンさんと通じるものがあるなと思いましたし、
最初からこれはちょっとハッピーエンドとかはならないなっていうのは。
あとちょっと印象の部分だと、個人的にだと思うんですけど、
なぜか目読だとちょっとすんなり読めないところがあったりして、
ちょっと読もうとすると少し時間かかったりしたんですけども、
声に出して読もうとするとスーッと入ってきてですね、
なんかこれ不思議な感覚で、もしかすると翻訳の影響とかですね、
そういうのもあるかもしれないなと思いましたね。
あの文章自体すごくいいなとちょっと思ってまして、すごいいい小説なんですけども、
他の作品とかに比べると、声に出すとより入ってくる感覚というのはちょっと感じました。
それちょっと面白いですね。
私、あんまりそこは引っかからなかったんで、引っかかる人はもしかしたら確かに少し声に出したり。
でも途中からはもうこの文体にも慣れて、目でこれずっと読んでいけたんですけども。
具体的にこの5作について話していきたいなと思うんですけども、
まずですね、我々ちょっと全部紹介するのは難しいと思うので、
2人が一番印象に残って作品を1本ずつ紹介したいと思います。
私はですね、4作目の金類がだいぶ気に入りました。
金類の話をしたいなと思ってるんですけど、
三重さんがあれですね。
そうですね、猫好きというところもあって、
メス猫という作品が収録されているので、
僕はこのメス猫を紹介したいなと思います。
なんかこれ5作、どれも名作というか、すごい良い作品なんですけど、
個人的にはね、私三重さん、北京の蛇って一番最後のやつに行くのかなって思ってました。
これね、構成案書いてるんですけど、
私の方が先に書いたんで、私の方が先に金類で行くって書いてあったと思うんで、
どういう選択するかなってちょっと思ってたんですけど。
そうですね、北京の蛇とメス猫とすごい悩んだんですけど、
そうですね、メス猫の方がちょっと楽しい話ができるかもしれないなと思って。
分かりました。
やっぱりこれは猫好きには結構たまらない小説かなと思っていてですね、
ちょっとあらすじを説明すると、主人公の女性は大学生なんですけども、
大学時代に論文の指導教官が2匹の捨て猫、オスとメスを拾ってきたことから、
その2匹を自分の部屋で飼うようになって、
この主人公と2匹の猫のバランス関係というのがすごく良くて、
1人と2匹というね、これがちょうどマッチして、
猫が来るまではルームメイトというのを募集して、
主人公はその家賃を負担してくれる人というのを常に探していたんですけども、
猫と暮らすようになってからは、
ルームメイトで他人に生活を邪魔されたくないと、
猫と一緒にいたいと思うようになります。
ただですね、そんな生活が一変するという小説であって、
まず先にメス猫の方が妊娠してしまって、
それからですね、主人公の女子学生も実は妊娠してしまうと、
それは一時的になんですけども、
ちょっとスペインのバスクの方から来た男性を3週間だけルームメイトとして留めてあげたんですけども、
ちょっとその一夜を一緒に過ごしてしまうということで、
妊娠に繋がってしまうんですけども、
ここでメス猫の妊娠と自身の妊娠というのが重なって、
さらにこのメス猫が出産するんですけども、
そういうところでですね、ちょっといろいろありまして、
この主人公の女子学生が複雑な感情を抱くようになったりします。
さらにですね、メス猫が次は母親としての姿ですね、
母猫としてのその姿にちょっと感情が満たされていくような様子もあったりしてですね、
そこでちょっと主人公が気づくのが、
猫っていうのは決して行き当たりばったりで生きているんじゃなくて、
何をするにしても猫が選んで生きているんじゃないかと、
そんなことに気づいてちょっと清々しい気分になるというかですね、
ただその主人公が大学の学部が終わって、
次の大学院というところで進学をしようと、
その大学院に行くための引っ越しをしていくんですけども、
その引っ越しの直前にある出来事が起きるというですね、
そんな小説ですね、本当に猫の妊娠と人間の妊娠が、
タイミングとしてもちょうど重なっていくというところとか、
なかなか設定として面白いなと思いますし、
小説としてすごいよくできているというのは本当に思ってですね、
それがもちろんそれぞれの妊娠がシンクロしているというところ、
そこでの感情の曲線ですね、やっぱりそのショックを受けたりですね、
望んでいない妊娠だったのでショックを受けたり、
いろいろな出来事があって悲しんだり、
ちょっと母親の猫の姿を見て何かちょっと満たされるものがあったりというですね、
結構主人公の感情の曲線というのが読んでいて感じられているんですね。
しかもラストが何とも言えないラストで、
僕は個人的にはこの小説が全て思いましたね。
比較的この5作の中ではちょっと深刻な状況もあったりするんですけど、
割と語り口はポップだなとは思いました。
なんか結構この主人公の女の子の変なところでやたら真剣っていうか、
真面目な感じとかもよくいい感じに出てて、
生命に対して結構ちゃんと向き合おうとしているような印象を持ったんで、
すごくいい小説だなと思いましたね。
そうですね。すごいいい小説だなと思っていて、
ただですね、個人的に一点だけ読んでいて、
こういう気持ちになることあるんだろうかと思うような箇所がちょっとあってですね、
それは作品だと92ページなんですけども、
この主人公の女性が、メス猫が出産をして母猫になるというですね、
その猫がゴロゴロと喉を鳴らして、何て言うんだか、懐いてくるというところで、
ちょっと主人公の感情としてイラッとして床に叩き落としたというところがあってですね、
で、もちろんこれその背景にはちょっと主人公の中ではショックな出来事がその前にあったりして、
それを踏まえてのですね、そういう猫にちょっとイラッとしてしまうという出来事があったんですけども、
これももしかするとやっぱり当事者にならないとわからないことかもしれないんですけども、
でもこの主人公がその時喪失感というのをすごく持っていたんですけども、
その喪失感を持っている主人公に猫がすり寄ってきてイラッとしてしまうというですね、
だからこんな気分になることってあるんだというのはですね、
なかなかそこがそういう気持ちっていうのがちょっとわからなかったので。
まあ複雑な感情が操作されるんでしょうね。
そうですよね。
でも本当にこういう全てが全て、すんなりと共感できるかというと、
基本的にどの話もですね、今回完成度がめちゃめちゃ高いんですけど、
この小説はですね、自分の体に金が寄生するんですよ。
それに対しての感情の持ち方っていうのがすごい作品なんで、
そのあたりちょっとうまく話せたらいいなと思いますが、
じゃあちょっとあらすじからいきます。
主人公は女性で、名前は出てこなかったと思うんですけど、
寄婚女性で、この夫婦は音楽家の夫婦です。
彼女は35歳を今迎えています。
ある夏ですね、コペンハーゲンであるセミナーの講師をすることになります。
彼女はそのセミナーの講師をするために、夫から離れて6週間コペンハーゲンで過ごします。
その時にですね、同じく講師として来ていた男、ラバルという男がいるんですけれども、
その男と恋に落ちます。
彼も寄婚者でした。
彼らはですね、セミナーが終わった後、それぞれの家庭に戻っていくんですが、
メールなどで連絡を取り合うようになってしまいます。
そして再びバンクーバーで会ってしまって、その後ですね、頻繁に会うようになり、
やがて主人公の夫の母から、他の男との恋をやめてほしいという言われ方をするぐらい、
主人公の女性は、ちょっと夢を映すというか、現実から無双するようになっていて、
なんですが、そのシュート目からの言葉で理性を取り戻すという形になっていきます。
なんですけど、それでラバルと会うのをやめるんですが、
そんな折、彼女の性器に菌が生え始めます。
時を同じくして、ラバルからも連絡があり、
自分の性器に菌が生えているので、菌を気をつけてほしいという連絡が入ります。
その菌をですね、この主人公の女性は、このラバルとの絆、二人の絆だと思い、
めちゃくちゃ痒いんですけど、治療せずにですね、愛おしく育て始めていきます。
菌が生え始めて、そこから割とすぐ話は終わっていくんですが、
その菌が生え始めてからラストまでの文章のミスがめちゃめちゃ濃くて、
逆にこれ長編ではできない短編の良さみたいなのがものすごく出てて、
めちゃくちゃいい小説だなと思いました。
で、これ今の話を聞くと気持ち悪いなって思うと思うんですけど、
実際私もなんだこれはっていう気持ちも芽生えたりはしたんですが、
この菌をですね、愛情とか恋とかと重ねて表現する発想とか、
その時の言葉とか表現の仕方がすごく上手くて、かなり納得感を持って読み終えました。
これはなんかこの話だけ端的に聞くとめちゃくちゃ気持ち悪いような話に聞こえると思うんですけど、
実際ちょっと気持ち悪い部分もあるんですけど、表現とか完成度の意味では、
これめちゃめちゃレベルの高い短編だと思ったので、
これはぜひ皆さんに読んでもらいたいなと思いました。
なんかこれもすごい話ですよね。
うん。
なんかもう生き物というかもう菌になってるっていう。
うんうんうん。
いやいやこれも僕もすごい前半が結構もう不倫なんですけど、
燃えるような恋愛の話があってからの後半の展開がもうなかなかのものだなって思いまして、
菌っていうのになんかしがみつくことで、
逆に愛というものがもう自分の中で永遠に閉じ込めることができてしまったのじゃないかっていうですね、
それがちょっと切なかったり救いでもあるのかなと思ったりして、
いい小説だなと思いましたね。
これはなんかこの発想もすごいし、
イメージの部分でもすごいんですけど、
結構この本当ラストが発生してから5ページぐらいだったのかな?
うん。
分かるんですよ、残り。
あーそうですね。
その5ページがなんかすごいんだよね。
うんうんうん。
確かに僕ね結構そう、ラスト数ページは線貼ってるところが何箇所かあって、
でもねすごい良いこと書いてあるなって思ったところちょっと2つだけいきたいなと思うんですけど、
1つがですね115ページで、菌はフィリップラバルとフィリップラバルに私を一層強く結びつけたっていう一文があって、
これを読んで思ったのは人間の理性とかそういったのを全部無視していて、
生物的な結び合わせが運命になっていくというかですね、
この不倫している2人ともすごい地位とか社会的なステータスの高い人たちだと思うんですけども、
菌っていうのが現れてからはそういった人間的なところっていうのがよりもですね、
もっとその生物的なところの何か一致する運命みたいな、そういうのが感じられて読んでて面白いなって思いましたね。
ラストね、すごくいい。菌を引き合い出しながら、ラストの116ページのところで、
菌っていうのは感情とよく似てると。で、この菌っていうのはこの世界に150万種の菌が存在すると言われているが、
そのうち研究されているのは10万種に過ぎないと。感情とよく似てると思った。書いてあって、
実に様々なしばしば共存する感情が愛と定義される。恋心は多くの場合、やはり思いがけない形で群発的に芽生える。
ある日、ほとんど気づかないほど、かすかな難しさを感じたかと思うと、翌日には根を張り、紛れもないものとなる。
これ、まあ感情と似てるなっていうのはすごい、なんていうか、表現として上手いし、
あと私も痺れたのは119ページの終わりのあたりなんですけど、
寄生生物というのは、元来不満を抱えた生き物なのだ。どんなに栄養を与えられ、世話されても充足しない。
隠れてしか生きられないのに往々にして、一方でそれが欲求不満の種となる。既に寂しい生き物だ。書いたって。
うわーって思いましたね、ここね。
僕もね、どっちも伏線張ってますね。
ここヤバいですよね。金を引き合い出しながらも感情を説明するのが上手すぎて、
ちょっともう、なかなか痺れましたね。
確かに。
ちょっとこれ皆さん、金名作なんで、読んで痺れてもらいたいと思います。
じゃあちょっとこんなところにしておきますか。
うん、そうですね。
ちょっと他、紹介してない3作をさらにと話していきたいと思います。
まずですね、赤い魚の夫婦という表題作なんですけども、これは赤い2匹の魚を飼っている夫婦の話で、魚と夫婦がそれぞれ重なってくるというところがまたあったりするんですけども、