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2025-10-13 40:58

第206回 謎めく正体不明の作家の大長編『失われたスクラップブック(前編)』エヴァン・ダーラ著

spotify

文学ラジオ第206回の紹介本

 

『失われたスクラップブック』

エヴァン・ダーラ著、木原善彦訳、幻戯書房

https://www.genki-shobou.co.jp/books/978-4-86488-310-8

⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠

パーソナリティ二人で作品の魅力やあらすじ、印象に残った点など、読後の感想を話し合っています。ぜひお聴きください!

 

【今回の内容】

第十一回日本翻訳大賞受賞作/前後編にわけて紹介/鈍器本は大河ドラマを観るような感覚/実質1100ページの小説を読んだ充実感/著者プロフィール/リチャード・パワーズと親交がある正体不明の作家/作品概要/作家の独創性と読みやすさが共存するポスト・ポストモダン作家/ウィリアム・ギャディスの『JR』を読んだときの苦労/ピリオドなしの文章はすぐに慣れる/テーマが響き合う語り手たち/様々な語りのスタイル/後半部分の社会性/前半部分の個々の語りの事例紹介/ラストに感じたタイトルの意味/前半の日常のフィクション感と後半の非日常の現実感/いいところで語り手が切り替わる/空気を読んで会話する語り手たち/会話の空気感がいい/読み方ロードマップ/最初の80ページが大事/次回予告

 

【参考情報】

文学ラジオ番外編第71回「ぼくたちの鈍器本の読み方」

https://open.spotify.com/episode/6k9Q6WsTYfHhNvVQqL9p0l?si=3997666ac25149b2

  

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版元サイトより

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“ポスト・ギャディス”と目され、リチャード・パワーズが正体とも噂された、トマス・ピンチョン以上に謎めく、ポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラ――“読まれざる傑作”として話題となった、ピリオドなしの、無数にして無名の語りで綴られる大長編の奇書がついに本邦初訳で登場!

第11回日本翻訳大賞受賞作。

 

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サマリー

エヴァン・ダーラの大長編『失われたスクラップブック』は、実験的な文体で多様な語り手が交錯する作品であり、第11回日本翻訳大賞を受賞しています。このエピソードでは、作品の魅力や著者の正体についても言及されています。『失われたスクラップブック(前編)』は、孤独、コミュニケーション、政治などのテーマを持つ物語で構成されています。多様な語り手による視点が描かれ、実験的なスタイルで表現される本作は、読み進めるうちにその魅力が引き出される作品です。『失われたスクラップブック(前編)』では、町のさまざまな声や存在が織り交ぜられた物語が展開されています。ストーリーの中で現実とフィクションが交差し、登場人物たちの独特な会話や関係性が魅力的に展開される様子が示されています。本作の特集では、物語の展開や読書のコツについての議論が行われています。

作品の全体像
ピリオドなしで、無数の語り手が入れ替わり、立ち替わり、物語る。
実験的な文体にエンタメ性と社会性を備え、第11回日本翻訳大賞受賞作でもある
ポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラの大長編 失われたスクラップブックを紹介します。
どうもみなさんこんにちは、文学ラジオ空飛び猫たちです。
この番組は、いろんな人に読んでもらいたい、いろんな人と語りたい文学作品を紹介しようコンセプトに、
文学と猫が好きな二人がゆるーくトークするポッドキャストです。
パーソナリティは私大地と三枝の二人でお送りします。
文学のフォローではない二人ですが、お互いに好きな作品を時には熱く、時には愉快に、それぞれの視点で紹介していく番組です。
今回紹介するのは、エヴァン・ダーラの失われたスクラップブックです。
木原義彦さん役で、原義書房から2024年に出版された本です。
はい、ついに来ましたね。
失われたスクラップブック。
トンキ本で、なんとか読み切りましたね。
これは今年の第11回日本翻訳大賞受賞作となってます。
2025年の発表だった時ですね。
で、ハリネズミ、モンテカロ食人鬼、森の中の林と2作同時受賞でしたと。
木原義彦さんの翻訳作品は、これまでも何作も紹介してきておりまして、
お仕事ぶりというか、翻訳に対する情熱は、もうひしひしと感じているところだったんですけれども。
私と三枝さん、ようやくね。
ようやくって言う方はどうなのか分からないけど。
6月の、2025年6月にですね、日本翻訳大賞の受賞式があったんですけれども。
木原義彦さんに会わせていただいて。
ありがたいことに、二人ともサインをいただきましたね。
そうですね、かわいいサインなんですね。
かわいいですよね、このサインね。
ということで、サイン本でございます。
今回、失われたスクラップブックなんですけれども、
前後編に分けて紹介していきたいなと思います。
前編はですね、作品の紹介や魅力をメインに紹介していきます。
後編は、ネタバレも含めて、もう感想をがっつり語っていこうかなと思ってますので。
ちょっと2回続きますので、ぜひ2回とも聞いていただけたらなと思います。
エヴァン・ダーラの謎
あ、そうだ。
それと、あと、この配信の何回前かな。
えっと、2、3回ぐらい前にですね。
ドンキボンの読み方っていう番外編を配信しておりまして。
ちょっとドンキボンってなんだとか、
ドンキボンの読み方どうしたらいいんだろうみたいな人は、
もしそちらを聞いていただけるとありがたいかなと思います。
実際に今回実践したところもありますね。
そうですね、今回実際読んでみて、振り返ってみて、
こう読むと読みやすいみたいなんですね。
ちょっと思ったことがあるので、
最後、失われたスクラップブックの読み方ロードマップみたいな話もですね、
前編の最後の方にしたいなと思いますね。
で、ちょっと心構え的なところで、ちょっと何でしょうね、
ドンキボンって長くて重くて大変だよねみたいな人もいると思うんですけど、
なんか私この間ふと思ったんですけど、
これなんか大河ドラマを見るような感覚なのかなと思ってまして、
もしくは異様に長い海外ドラマを挑戦するときに、
ちょっと腰引けるけど読み出したら面白いとか、
見出したら面白いみたいな感じなのかなってちょっと思ってまして、
ちょうど私、今2025年の10月頭ぐらいに収録してるんですけど、
ネットフリックスで今はの牙のアリスっていう、
山崎健人と土屋太岡が主演のドラマが公開されていて、
私それ、これシーズン3になるのかな、
なんですけどシーズン1、シーズン2が結構前に公開されて夢中で見てたんですね。
で、なんですけどシーズン3早く見たいなって思ったんですけど、
結構時間かかるなと思って、
ちょっと躊躇しちゃったんですね。
で、この時にドンキボンを前にした時の感覚見てるなって思って、
多分あのやっぱりあのドラマを一回見出したら止まらなくなったりとかすると思うんで、
ドンキボンとかもですね、ちょっと読み始めると気になる部分まで行ってしまえば加速し始めると思うので、
まあ多分三重さんこの前編の最後で話されることと被るかもしれないですけど、
やっぱり読み出すと、とにかくページをめくると進んでいくっていうのは、
まあちょっと何か当たり前のことを言ってるようで結構大切なことだなと思うので、
今回失われたスクラップブックも途中途中ですね加速する感じはあって、
それはすごく感じましたね。
というところがちょっとなんかざっくり私の感想になっちゃうんですけど、
いろいろちょっと後で話したいとこがあるんですが、内容はめちゃめちゃ面白かったです。
この調べると結構実験的な小説で、
もうかなり独特な書き方がされている小説でもあるとわかるんですけども、
実際読んでみるとやっぱ面白いんですよね。
なんか話ね、どれもこれも聞き込まれるものがあってですね、面白いんですけども、
ただまあやっぱり厚みがすごいと。
550ページぐらいあるんですけど、小説としては2段組なんで実質1100ページの小説なのかなと思いますね。
そうですね。
なので1000ページ超えの本を読んだぐらいの大変さもあれば充実感もあった読書で。
前編ではそんなに語らないと思うんですけども、やっぱ後半の部分が僕すごい好きで、
最初はこういう話か面白いなと思って読んでたんですけど、後半から一気にですね、
こういう展開になるのかというすごいもう本当予想もしなかったちょっと展開が訪れてですね、
そこからもかなりハマって読んでいったので、それをやっぱり味わえる中でやっぱすごい良くて。
そうですね。
この本もし読まれたらですね、読むの大変なんですけど何とかちょっと後半まで行ってもらいたいなと思う作品ではありますね。
そうですね。これ長いけどやっぱこの長さというかこの分量が必要な理由というのがあるので、
それはもう後でちょっとお話ししたいと思いますが、本当すごい作品だなと思いました。
さてじゃあここで著者について紹介したいと思います。
著者のエヴァンダーラさんなんですけれども、謎の人物とされています。
本名年齢ともに不詳とフランス在住かもしれないというところで、
この1995年デビュー作失われたスクラップブックがFC2賞というのに選ばれまして脚光浴びるんですね。
いろんなことが言われてるんですけれども、正体は不明なんですが、
なのでいろんな作家が注目はしてるけれども、一体誰だかわからないっていうところなんですけれども、
リチャード・バワーズさんのところにエヴァンダーラから原稿が送られてきたっていうことがあって、
リチャード・バワーズはエヴァンダーラさんと親交があるらしいというところですね。
だから謎の人物とされております。一旦は。
本書の最後には役者解題っていうので、木原義彦さんが解説を書かれていて、
結構このエヴァンダーラについても手厚く書かれていてですね。
一つが謎の作家でポスト・ギャリスと目されるということで、ウィリアム・ギャリスですね。
JRというすごい大地さんが読んだドンキ本があるんですけど。
そうですね。これも日本翻訳大賞を取っております。
ちなみに木原義彦さんは初の日本翻訳大賞を2回受賞された方となっておりますね。
すごい作家がいるんですけど、ポスト・ギャリスと言われているし、
あとこのポスト・モダンっていうところではピンチョン的という部分もあれば、
ピンチョンよりもギャリスを引き合いに出してたりみたいな。
そうですね。なんですけど、木原義彦さんの役者解題でも話されてるんですけれども、
リチャード・パワーズと作風が似てるんですよね。作風というか知識量かな。
リチャード・パワーズが正体なんではないかっていう噂もあると。
これただの事実しか書いてないので、この役者解題にはですね。
リチャード・パワーズとメールのやられているときに、エヴァン・ダーラについて触れたことがあったらしくて、
エヴァン・ダーラさんとメールのやられているとしていたら、我々の共通の友人のリチャード・パワーズがみたいなところがどっかに
あ、ありましたね。私の共通の友人のリチャード・パワーズがと書かれていたっていう。
これただの事実ベースのあれなんですけど、これから解釈しちゃうとなんか同一人物っぽい感じがすごい私はしちゃったんですけど、
まあちょっとここは謎めいているとこですよね。
そうですね。でもその前のページで、両者、リチャード・パワーズもエヴァン・ダーラも共通点はいくつかあるんですけど、
ただリチャード・パワーズがすごいペースで本を毎回書いてて、そこにこのエヴァン・ダーラの作品を書く余地なんてないんじゃないのっていうですね。
というのも書かれていて。
まあ確かに、リチャード・パワーズってすごいとんでもない長編をいくつも出してるんですけど、その間に別名でわざわざこれだけのエヴァン・ダーラの作品を出すっていうのをちょっと考えられないなっていう、謎は深まるわけですけど。
でも別にちょっとこれはもうあれだけど、別にその発表した瞬間に書いてるわけじゃなくて、書き溜めてたものをさ、別の名前でって、なんかそれはあり得る気がするんだよな。
なんか別に日本でも何だっけ、おついちさんがほら他の名前で小説発表したりもするしさ、そういうこともあり得るんじゃないかなってちょっと私は思っちゃいましたけどね。
というぐらいに留めておきましょうか。 じゃあそんな謎の男、男なのか女性なのかもわからないのか。
そうですよね。 ペンネームからすると男性みたいな名前ですけど、わかんないっていう。
わかんないですよね。性別も不明ですよね。性別の不明なエヴァン・ダーラさんの失われたスクラップブック紹介していきたいと思います。
作品の特徴
じゃあいつも通り版元ホームページの紹介文を読み上げたいと思います。ポストギャディスと目されリチャード・パワーズが正体とも噂されたトマス・ピンチョン以上に謎めくポスト・ポストモダン作家
エヴァン・ダーラ。これあのポストポストモダン作家ってあの言い間違えたわけじゃなくてポストポストモダン作家って言われてるらしいですね。
エヴァン・ダーラさんです。読まざられる傑作として話題になったピリオドなしの無数にして無名の語りで綴られる大長編の起初がついに本邦主役で登場
第11回日本翻訳大賞受賞作となってますね。 じゃあここからも早速この作品の特徴
入っていきたいと思うんですけど、あの版元ホームページの説明でピリオドなしの無数にして無名の語りで綴られるという
なんかその時点でだいぶなんかねもう個性的な気がするんですけども、これも
ピリオドなしって何なんだってことなんですけど、このあたりもですね木原義彦さんの役者界大で触れられているのでちょっとそこを
触れつつですねこの特徴を行きたいなと思うんですけども まずあのポストポストモダンショー作家ですね
そこのところで役者界大ではポストモダン小説から次の世代へというふうに書かれていて
やっぱりピンチョンを始めそのポストモダン小説っていうのがアメリカで60年代以降ですね
もうどんどん出てきて、でやっぱりあのなかなか今までいないような作風の小説がどんどん生まれていって、そこの系譜を
ヴァンダーラも引き継いでいるんですけども、特徴としては難解ではなくてエンタメ的と形容して良い物語となっていると
で、作家の独創性と読みやすさが共存していると 読みやすさ、リーダビリティですね
ここは結構個人的には重要なところかなと思っていますね やっぱりあの実験的な小説ではもちろん
ストーリーの特徴
ありますし、すごく斬新だと思いますし、でも難しいだけではないんですよね
やっぱりこの面白さ、読みやすさもそうですし、独創性もすごいあると思いますし
この物語って言っていいのかな、そこにすごく入っていけるような、そういった小説なのかなと思っていて
なのでポストポストモダンというところで、なんか難解そうと思うかもしれないですけど、実はその難解というよりかは
とっちきやすい部分を持っている そうですよね、この読みやすさっていうのは、なんか本当に言い方ですけど超びっくりしてまして
やっぱりこういう本ってかなり読みにくい印象がすごいあって、引き合いに出されているウリアムギャデスさんですね
これ私JRしか読んだことないんで、ちょっとわからないですけど、JRは正直読みにくかったですね
あんなに長いのに読みにくいっていうので、苦労したというか、なんで苦労してまで読んでるんだって話あるかもしれないですけど
苦労しましたね、でもJRの話でいくつか何回かしたことあるかもしれないんですけど
JRは主人公JR少年がめちゃくちゃ面白いんで、どっちかというと演劇的な感じで私は読んでて
ほぼ会話劇、会話なんですね、ほぼほぼ、なんで演劇みたいな感じ、劇局みたいな感じの見方をしていて
そうするとね、結構入ってきやすいんですけど、ただ劇局と違って誰が何言ってるか、誰がどのセリフ言ってるかわかんないんで
っていう読みにくさがすごいあって、結構苦労した記憶がありますと
で、ちょっと正直そういう印象を持って、何か無数の語りとかだったし、これはと思ったんですけど
実験的な無数の語りなんですけれども、読みやすいのは何か誰が今どの話をしていても気にならなくなるんですよね、読んでるうちに
だからそのあたりは慣れの問題で慣れてくるとすごい読みやすいっていう感じでしたね
そうですね、ここも完璧に話を理解しようとすると一気に難しくなると思うんですよね
誰がこの話を、何の話してるのかってわかんなくなることあると思うんですけども、ちょっとそこをあんまり気にせずにどんどん読み進めていくと
誰が話してるのかってあんまり気にせずに面白く読んでいけるのかなと思いますし、あとは特徴としてはピリオドなしで文章が続いていくというので
510ページあるんですけども、ピリオドなしで、日本語だと句点ですね、最後に文の終わりに丸がつくと思うんですけども
その丸がないと、じゃあ代わりにどうなってるかというと一文字空白ができていると、ここが丸がないっていうのが不思議な感覚なんですけども
でもこれはそんなに気にならなかったですね、個人的には。なんか読んでるともうすぐ慣れて、なんか一文字空白が丸みたいなものなので
そんなにピリオドなし、丸なしっていうのはそんなに個人的には気にせずに読んでいきましたし
あと無数の語りっていうところをですね、ここもテーマの響き合う連作短編のようだということもですね
役者会で述べられていて、その中で特にこの作品の持っているものとしてダーラがこの作品の縦糸として何度も繰り返すのは
孤独とコミュニケーション、不可思の個人と政治、反復と前進という問題だというふうにですね
書かれていて、まさにそうかなと、あのいろんな人物が出てくるんですけども結構その孤独とか
コミュニケーションというところ、そこは一つのキーワードかなと思いましたし
あと政治というところもすごくこの作品の中で入ってきてましたし、反復と前進というのも結構ね
クラシック音楽がこの作品の中で、ベートーベンの話もあればラベルですね、ボレロっていう曲で知られているんですけど
ボレロなんかも、あのすごく反復をして前進していくような曲なんですけども、そういうなんかその曲とこの
なんか小説がマッチしているようなんですね、なんかそんなところも感じましたし
このちょっと孤独とコミュニケーションとか、不可思と個人と政治っていうところは結構感じました。反復と前進っていうのは結構
ちょっとね繰り返してしまうところも、いろんなものが繰り返されたりするんですけど
こうなかなか前進っていうところがね結構難しいなってちょっと読んでて、読み終えた感じだと私はちょっと思ってますけど
語りの多様性
まあでもそのですねテーマはすごくいろいろ感じますし、まあちょっと後にも出ると思うんですけどやっぱこれ普通にその一つ一つのなんかエピソードが面白いというか
読ませるんですよね。何気ない日常だったりとかちょっと劇的なことが起きる瞬間とかもあるんですけど
エピソードが結構面白いんで、これそれだけでも全然なんか読んでてすごく引き込まれる部分が多かったですね
そうですよね。あとねそのちょっと面白いなと思ったのが、矢原由貴さんが書かれている
変化するスタイルっていうので、まあ語りのスタイルがいくつもあってですね、なんかワンパターンではないんですよね
いろんな語りが出てくるんですけど、時と場合によっては今までとはちょっと違った表現の仕方で
その語りがあって、例えばですけどラジオから流れてくる放送みたいなものだったらですね
結構あのスペースをたくさん空けてなんかね、すごくあのもうなんかその間を作って一文一文が書かれていて
それでそのテンポ感っていうんですかね、そのキャッチする側のがなんかすごいですね
こういう間で多分話がされてるんだろうなと想像できるような書かれ方がしていたり、あとなんかインタビュー形式のところだったらですね
質問、なんかインタビュアーの質問は空白で、その答える側はですね
記者会見の場面なんですけど、記者会見で話している人のなんかこういうこと聞かれてこういうこと答えてるんだなーって
想像できるようなですね、今まで見たことがないようなこれも形だったんですけども
その表現がされていたりっていうすごくいろいろなその語りが語りのスタイルがあるという
けっこうこの語りは本当すごいあって、えーとなんていうのかな、あ、でこれは日本語訳だからできていることだと思うんですけど
一人称が変わるんですよね、あのおそらく原文だと愛だけだと思うんですけど
それが私は俺がとかになったりするんで、正直するにはけっこう助けられました
そうですね、日本翻訳者賞の受賞式でもね、言われてますが、原文で読むと全倍なんですごく難しそう
日本語だとね、本当にそこが誰がその話してるのかっていうのがちょっとわかりやすくなって助かるっていう
僕とか俺とかね、本当に集中して読んでないと本当に誰が話してるのかってね
ちょっとわかんなくなることが多いんで、そこはこの小説のすごく切り替わりがなんかシームレスなんですけども
そこもねちょっと面白いところで、最後の特徴なんですけども
無数無名の一人称の声の波というところですね、これも役者会談に書かれていて
これ小説の終盤なんですけども、ある一つの出来事に焦点が当てられて
さまざまな語り手がそれに対して声を上げていくというですね、まさに声の波を感じるような書き方がされているんですけども
あそこがちょっとどういうことかっていうと、結構後半部分に関しては社会性のある話になっていて
企業の環境汚染問題、そこがクローズアップされていて
それに対するその街の人々の反応ですね、なんかその街の発展とか生活を支えてきた大企業ですね
その信頼できる地域が誇る大企業っていうのがあるんですけど
そこが環境問題汚染問題というのを起こしてしまって、っていうのでですね
荒れていくと
そうですね
結構これが日本だとみなまた病っていうのもありましたし
ここ10年の話だと3.11、放射能の問題とかありましたし
金髪の問題ですね、そういったところと結構重なるような内容かなと思ってましたし
それはどう書くかっていうときに、無数の無名の一人称の声の波で書いてるっていうところも作品の特徴かなと
詳しくはその辺のことは後編の方でストーリーでちょっとお話ししたいと思いますね
一体どういうことがこの小説の中で起きているのかっていうのはね
そうですね
なのでこの小説って結構後半の方はですね、物語性みたいなものを感じれると思うんですけど
社会的テーマの探求
前半部分、最初の300ページぐらいですかね
は本当に個別バラバラの話がされていて、それはそれで面白いんですけども
なのでなかなか一冊を通じてこういう話ですよ、前半はっていうのがちょっと説明しづらいところもありまして
といえばというところでは一番最初出てくるのは学生なんですけども
なんですよね、ちょっと進路進学というところに行き詰まってというか
ちょっとこの先、何ていうのかな、なんかちょっと下に構えているような学生でこの世の中に対して
それがね、カウンセラーと面談するんですけど、結構そこがね面白おかしくそのやりとりが書かれていたりと思ったらまた
語り手が切り替わって男が話を聞くんですけども、そこはすごい話聞く人がその語り手がベートベンに関する論文を書いて
アマチュアなんですけども、研究者というよりかは、でその論文がなんか雑誌に掲載されてってやったんだよみたいな話をしてると思ったら
息子の話になって、その息子が結構いいドラムセットが欲しいと言い出して
でまだドラムやったことがないんですよ、その息子が。まずはちょっとね、まあ安くでお試しでこっちからどうって言うけども
いやもうこのメーカーのじゃないとダメなんだって息子がもうめっちゃ拗ねて、急にそんな話を知らす人が現れたり
というのもあればですね、大統領選挙についてのこんなのは茶番だみたいな話になっていったりして
そんな大統領選挙茶番だみたいな話を読んでると思ったら急にですね、選挙について、やっぱり選挙って投票しない人がすごく多くて
本の中では沈黙させられた多数派みたいなんですね、なんか言い方をしてるんですけど
そこに対してなんか働きかけをしようとする人の話で、なんかでその人が何したかっていうと個別訪問
一軒一軒訪ねていって、でなんて言うんですかね、その選挙しましょうというよりかはなんか話は聞きますよみたいな感じで
回っていくんですけど、いやなんでそんな発想になるんだろうかっていうですね、すごく面白いところなんですけども
訪問してる話であるところ行くとお父さんと息子が住んでる家に行って、なんか家にあげてもらえて話聞いてくれるのかなと思ったら
いきなり捕まえられて警察に呼ばれるみたいな話があったりっていう、なんかそんなちょっと変わったことしてる女性の話かなと思ったら
急にですね、おじいちゃんの話になって、その人の、これもしかするとその人のって言ったんですけど、ちょっと途中で語りって変わっている可能性もあるんですけども
なんかのウェールズ系かな、なんかそのヨーロッパの方でにルーツがあって、そのおじいちゃんが、でアメリカに来てアメリカで町を作って
でアメリカで初めて学校が、学校を作ったとかですね、なんかその先進的なことをしたけどもちょっと評価上手くいかなくてみたいな
そんなおじいちゃんがいて、そんな人が旅の音楽家みたいな、放浪の音楽家みたいなことをすることになってっていうですね
そこの、なんて言うんですかね、その一族の話も結構面白くて、引き込まれるところがあってですね、そうやって話がどんどん切り替わっていくんですけども
そしたらね、なんか急になんかラジオの放送ですかね、その80ページぐらいから、この謎の放送が始まって
誰が語ってて誰が聞いてるのか、そこさえよくわかんなくなるような、で一応なんか登場人物が森の中で迷子になるんですけども、呼んでる側もちょっと迷子になるようなですね
物語の展開
そんなことがあったりっていうですね、で他にもエピソードいっぱいあるんですけども、そんな感じでなんかあっち行ったりこっち行ったりみたいな、急に話がコロッと変わったりみたいなんですね
そんなのが前半部分結構ね、繰り返されるっていう、で後半に突入していくという
で、今の話があっていろいろあれだけど、そんな感じでいろいろ話が展開していくんですけど、端的にですね、ちょっと私はこの本で結構すごいなって思ったのは、ちょっと後半になってからなんですけど
そういうことなのかな、ちょっとこれあるんですけど、タイトルのこの失われたスクラップブックっていう言葉の意味っていうのが、個人的にはラストあたりで読んでる時に、今無数の声があったとかあると思うんですけど
このスクラップブックってなんかこういろんな写真とかをスクラップして、新聞記事とかバーって貼ってくるようなイメージがあると思うんですけど
失われたってあるんで、もう無くなってしまったものっていう意味だと思うんですけど、この町の人たちの声、存在なんていうのかな、っていうのが最終的には無くなってしまう感じで
でも確かにこの人たちの声、存在はあったっていうのが、この本を通してわかるみたいな、そういうイメージがあって、それになんかこのちょっと後半読んでるとき、この失われたスクラップブックってこういう意味かもってちょっと気づき始めて
それでちょっとこう結構震えたんですけど、そうやって読んでいくと結構この無数の声っていうのがなんか一つ一つやっぱりこう意味というか、いや意味がなくてもなんかすごく存在感があるっていうか
そういうのがちょっと思えてきて、作りとしてやっぱすごいなって思ったんですよね、で結局これいわゆる主人公みたいのはいないわけですよ
本当、スクラップブックって感じで、その一個一個のエピソードで、その時その時で一輪称になってる人はいるんですけど、でもこの明確になんかこう主人公がいるわけではなくて、ただただ寄せ集めた声が浮かび上がってくるっていう感じ
寄せ集めた話が浮かび上がってくるみたいな感じなので、そのあたりがすごくこのタイトルの意味も含めてすごく面白い小説だったなって思いますね
僕はやっぱり今まで話してきたのはちょっと前半のところですけど、前半から後半にかけて変化していくので、すごい面白いなと思いましたね
なんかあの話自体と前半というか、結構こんなのあり得ないだろうみたいな話がやっぱりいくつかあってですね
状況としては日常の状況で、日常の中だけど現実よりちょっとフィクションを感じるな、それが前半なんですが
後半はなんかちょっとその非現実的な状況で、汚染問題、環境問題っていうのが起きて、でもここで描かれていることは結構現実かなとやっぱり思えて
この小説の中の日常はフィクション感があって、非日常になると現実感が出てくるみたいなんですね
そういった感覚が自分の中にはあって、あそこは読んでてすごい面白いなと思ったところでしたね
特に前半の中にもやっぱり緊迫しているところがいくつかあって、ちょっと火事が起きてどうなるのかとか
車運転してる人が目の前からまた車が来て、うわーってなってとかですね
あとこれは身の危険ではないんですけど、ずっとラベルの話をしたいしたいって言ってる人がやっとできるのかみたいな
で、このちょうどいいところで話が切り替わってしまうんですよね
ラベルの話したいしたいって言ってる人も早くすればいいのにって思うんですけど、なんかもう何かとつけてなかなか語らずに
やっと今から語りますよみたいなところで、次の人の話になっちゃうみたいなですね
そうですよね、中断させられる感が
いいところで結末わかんないみたいな
そんなところがいくつもあるんですけど
これはあのあれですね、イタロウカルビーノの海の夜一人の旅人を私は思い出しましたね
あそこまでね、すごい作り込まれた感じじゃないんだけど、一個一個のエピソードの
なんか気象転結の気象をぐらいまだ見せてくれるんだけどみたいな感じで
転結はわかんねえのかみたいな感じの話が続けますね
そうですね、たまにキリのいいところで終わったりすることもあるんですけど
語り手の魅力
あとですね、登場人物たちと会話がすごい心地いいっていうところもあってですね
すごい好きなところで、この語り手が結構空気を読んで会話をしているところがあって
ここに絶妙の間合いみたいなものがあってですね
例えばですけど、もうほんと一番最初のページですね
これは学生とカウンセラーの面談のシーンなんですけど
はい、そうです。はい、もちろん。では、医学に関してはどうですか?
あのですね、はい、そうです。それも当然。では、邦学は?もちろん。では、倫学は?そちらの方面は?
それも大いに。では、それもとても。ひょっとして言うまでもなく。みたいなですね
すごい含みを持たせた言い方をお互いしていた学生もカウンセラーも
読んでいるとこういうことなのかなって分かるっちゃね、分かるんですけども
つまりその学生があらゆる分野に精通しているのかな、読み取れるような
それをなんかダイレクトに言うんじゃなくて、もちろんとかそれも大いにとか言うまでもなくみたいなですね
そんな言い方でそれが表現されているんですけども
なんかね、その辺のこの会話のいいね、なんかすごいユーマーもあるし
なんか空気を読んだこのやり取りみたいなものがあって
結構ね、いろんなこの登場人物たちがそんな空気を読んでいる人たちが多くて
そこがね好きなところですね
そうですね、この会話の空気感結構いいですよね
私も344ページで、アーチっていう人物と一年生私って人なんですけど
これ車を運転しているシーンで、車に乗って2人で移動しているシーンなんですけど
多分これ助手席と運転席での会話だと思うんですけど
下の下段の方ですね
悪いね、さっきは思い出して
さっきは思い出して話をするだけで少し吐き気がしちゃって
いいよと私は言ったって
俺は昔からびっくりするくらい自己共感力が高いんだ
言ってる意味わかんないだろうけど
あーと私は言った
私も時々同じことを考えるよ
へーとアーチは言った
言ってる意味わかんないだろうけど
私たちは2人とも笑ったって
あるんですけど
なんかこの言ってる意味わかんないだろうけどっていうのを
なんか言われて繰り返してる感じとか
なんか結構普通に会話であるなと思って
結構この辺のリアルな使い方とか
空気感とかすごいいいなーってちょっと思って読んでましたね
そもそもちょっとこのアーチとのシーン
エピソードは字の分も結構良くて
なんかねすごく
私の好きななんだろう
なんて言ってんだろ文体だったなと思って
引き込まれて読んでました
このアーチっていう人は
なんかすごいねなんか
親しげな感じというか
慣れ慣れしい人なんですけど
ヒッチハイクしてる人で
語り手は運転手で
アーチを拾ってあげた人で
もう出会ったばっかりなんですけど
やたらこう慣れ慣れしい会話をアーチがしてくるっていう
なんかその中で結構その
描写としてどこだっけな
えっとねあれなんだよね
何分車に追い抜かれるところが
あのえっと
バックミラーに何分ぶりにヘッドライトが映ったみたいな
やがてそれがテールライトに変わるっていう
追い抜かれたんだなってちょっと見せる
見させるシーンとかあったりして
結構この辺の何ていうか描き方がすごく
なんかいいなと思って
それとそのこのね
あの2人の会話の感じがなんかあっていて
すごくこのちょうど真ん中くらいかな
にあるエピソードなんですけど
このはだいぶ私ここはなんかすごく
印象に残りましたね
やっぱりこの語りの魅力で
登場人物たちの関係性
あの
読んでるとですね
最初はこの人話し手なのかなと思って
読んでたら
突然その人が聞き役になって
また別の人物が話し手になるとかですね
なんかそういうコロコロ変わっていくところとか
でまたそうすると
今までと読んでいたのは全然違うまた
ドラマがそこにはあるっていうですね
なんかそんなのがもう連続で
これでもかっていうくらい出てくるので
すごく面白いんですけども
ただ一つこの小説
この引き際というか
ここでやめておこうかなっていうね
区切りをつけるのがすごい難しい
難しいよねわかるわかる
うんすごいわかる
なんかやめれないし
どこでやめていいかわからない
でまた
じゃあちょっと途中から読もうかなと
途中までやっててまた読み直そうかなってやった時に
あれ今まで何の話読んでたのかって
なかなか思い出せないっていうですね
そういうのはすごくある小説で
その辺の苦労はありつつ
でもすごく面白いっていう
そうですね
最後に読み方ロードマップっていうのがですね
そうですね
話したいなと
しのわれたスクラップブック
読むのちょっと大変だと思うんですけども
でも全然読んでいける本だなと思ってまして
興味ねもし持たれたら
これはなかなか面白いっていうね
読んでいけると思うんですけども
ただ今から振り返るとですね
結構何分割かできるかなと思って
でちょっとここで
もうそういう前提知識みたいなもの
入れずに読みたい方はですね
このロードマップのところは
飛ばしてもらいたいなと思うんですけども
ちょっと読む上の一つの参考として
まず最初の80ページですねポイントは
この最初の80ページが
連作短編読んでるような感覚で
いろんな語り手が
いろんな話をしていくので
それが数ページとか10ページとか
一つの物語の中にあるんですけど
それを一つ一つ丁寧に読んでいくのが
大事かなと
本当最初のそういう意味ではやっぱり
最初の30ページもそうだし
この本に関しては80ページかな
思ってます
そこがすごい面白いところでもあるんで
80から200まで
100ページ近くですね
その後はもう楽で一気読みできるんですよね
なるほど
これもね
ある仕掛けがあって
200ページまでは一気に読んでいけるんで
そうなると残り
350ページくらいになってくると
またその後250ページぐらいまでは
結構勢いで読めるんでしょうね
200ページまで読んで
250ページぐらいまでも勢いで読んでいけるんで
250からまた始まるみたいな感覚で
250から300ページ
頭ぐらいまでは再び連作短編に入ったのかなと
なんで連作短編2本目みたいな感じの感覚で
250からの数十ページは読んでいって
300ページ始めから
300ページ
385ページまでなんですけども
ちょっと長い短編ぐらいの感じですかね
そうっすよね
数ページとかよりかはもうちょっと長い話が入ってて
でもここもですね
面白いそれぞれの話になっているので
物語を楽しんで読んでいけるかなと思います
ここからですね
ラスト100数十ページが
本の特徴と読み方
後半パートかなと思うんですけども
385ページ以降が
その企業環境問題汚染問題
っていうところにクローズアップした話になっていて
一気にクライマックスを迎えていくので
後半パートのところはですね
一つの物語性みたいなものがあるので
そこはですね読みやすいかなと思いますね
そうですね
そういうふうにちょっとそのランページの時点で
ちょっとした区切りがあるんだ
80ページまで行けばなんとかなるんだみたいなですね
そういうのはですねちょっと意識してもらえると
分厚い本なんですけども
小さな目標が先にあって
読んでいけないのかなと思います
あとはちょっと個人的には
読んでる時には
付箋でどこまで読んでたかっていうのを止めると
次読むとき入っていきやすかったなと
なるほど
なんかしおりとか
スピンも本についてるんですけども
よりかは付箋で途中どこまで読んでたか
これをピンポイントで止めて
なるほど
私はそれやらなかったですね
ドンキ本の読み方でも話しましたけど
開いてどこまで読んだか分からなかったから
一番最初から読むっていう
もう愚直にそれをやりました
そうですか
戻ってばっかりにならなかったですか
なったけど
まあでも分からなかったから
もういいやって感じですね
これ絶対もう一回読んでるなと思いながら読みました
そうですよね
僕も最初はスピンでやってたんですけども
もう本当にこれさっき読んでた話やな
ばっかりやったんで
途中から付箋でしました
やっぱ移動のタイミングとかで読んでると
どうしても中断しなきゃいけないので
どうしても分からなくなるのやだなと思ったら
そのページは最後まで読むっていう
はいはいはい
ことをちょっと強引にやりましたね
そういうとこもありますね
それも一つですよね
番組の告知とお知らせ
じゃあこのところで後編も
エヴァンダーラの失われたスクラップブック
紹介していきたいと思いますので
このままこの本を紹介していきますので
よろしくお願いいたします
じゃあ番組の最後になりますが
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ではまた来週
ありがとうございました
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