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2021-08-30 32:28

第53回 運命の5月29日 「エルサレム」ゴンサロ・M・タヴァレス著

spotify

【今回の紹介本】

■『エルサレム』ゴンサロ・M・タヴァレス 著、木下眞穂訳

ポルトガル最重要作家の代表作!

計算尽くされた展開で引きこまれる、とんでもない傑作。

是非お聴きください!

【番組内で紹介したトピック】

■ 『エルサレム』ゴンサロ・M・タヴァレス 著、木下眞穂訳 河出書房

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309208282/

【9月18日20:00 オンライン開催!ジョン・ウィリアムズ著ストーナー読書会】

 https://peatix.com/event/2518775/dashboard  

【番組へのリクエストや感想はこちらから!】

https://forms.gle/a569tyUhMDDaCXGF8 

【文学ラジオ空飛び猫たちとは】

硬派な文学作品を楽もう!をコンセプトに文学好きの二人がゆる~く文学作品を紹介するラジオ番組です。

案内役の二人は、 東京都内で読書会を主催する「小説が好き!の会」のダイチ

京都の祇園で本の話ができるカフェを運営する「羊をめぐるカフェ」のミエ

文学のプロではない二人ですが、 お互いに好きな作品を東京と京都を繋ぎ、

読書会のようなテイストで、それぞれの視点で紹介していきます!

毎週月曜日朝7時に配信しています。

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#本 #小説 #読書 #読書会 #文学 #海外文学 #ブック

00:03
どうもみなさんこんにちは、文学ラジオ空飛び猫たちです。この番組は、いろんな人に読んでもらいたい、いろんな人と語りたい文学作品を紹介しようコンセプトに、文学と猫が好きな二人がゆるーくトークするラジオ番組です。
お相手は、私小説が好きのカウントアイチド、出陣を巡るカフェのミエの二人でお送りします。文学のことではない二人ですが、東京と京都をつないでお互いに好きな作品をそれぞれの視点で紹介していく番組です。
お互いの紹介に関しては、2021年最初の回で話しているので、そちらをお聞きください。また、このラジオへのご質問やリクエスト、メッセージを随時受付しています。番組概要欄にホームのリンクを貼っていますので、そちらからお寄せください。
ご質問などある程度いただけましたら、返事をすぐ回答したいと思いますので、気軽にお寄せいただけると嬉しいです。
本編入る前にお知らせをさせてください。
ジョン・ウィリアムズのストナーという小説を課題本にした読書会を、9月18日土曜日20時から開催いたします。イベントはpdtexというサイトから申し込んできますが、このですね、収録の8月15日の段階で現在満席となっております。ありがとうございます。
キャンセルの場合は再度お受付いたします。概要欄にリンクを貼っておりますので、参加したいなと思っている方はたまに確認してあげればなと思います。
じゃあ、今日の紹介本なんですが、エルサレムという小説をご紹介いたします。
こちらなんですが、木下真帆さん役で、結構ツイッターなんかでも話題になっていた注目作品ではないかなと思っております。
木下真帆さん役はですね、今まで語学家についての一般論というアクアルーザの小説を以前ご紹介しましたけれども、その時も非常に面白かったですし、ポルトガル語圏の文学ではもうこの人しかいないだろうという翻訳者でございます。
私、他にも何冊か読んでいます。今回はですね、三枝さんチョイスの形になりますね。
今回のエルサレムというタイトルとか、あとこの本の想定が深い青なんですけど、あと本のあらすじ紹介とかでも、すごい怪しい要素しかなくて、これはなかなかやばいんじゃないかというのが、本の紹介のところからすごく漂ってきていて、面白そうと思ったんですよね。
先週は私がチョイスだった時間戦争をちょっとご紹介したんですけれども、それに引き続き今回このエルサレムはまた変わった小説が来たなと。
そうですよね。すごい癖が強い。先週今週とちょっと好き嫌いが分かれそうな連鎖になってしまいましたよね。
これ同日に収録してるんですけど、この記者紹介に苦戦する収録日だったなと今感じております。まだこれから話しますが。じゃあ、書面いっちゃいましょうか。
今回紹介するのはゴンサロウ・M・タバレスさんの書いたエルサレムになります。木下真帆さん役で川出消防神社より今年5月に出版されています。
じゃあ私の方からあらすじを。5月29日、夜明け前。死病を煩うミリアは痛みのあまり通りへ飛び出した。時を同じくして自殺しようと窓から身を乗り出すミリアの元恋人。
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勝負を求め彷徨う精神界の元夫。父親を探す少年と獲物を探す元兵士。彼らの暗い運命は誉高きゲオルグ・ローゼンベルク精神病院の記憶に繋がっていく。
世界約50カ国で翻訳される、現代ポルトガル最重要作家による狂気と怒りと愚かさを残酷に描ききる圧倒的代表作となっておりますが、もうこのあらすじ段階でよくわかんないですよね。
自殺しようとする元恋人とか、勝負を求め彷徨う元夫とか、もうちょっと何なんだろうみたいな。
精神病院の記憶に繋がっていくとかも、あらすじ目のところからそのとおりヤバいんじゃないかと思います。
ただ今回紹介するこのエルサレンは、2005年にポルトガルで出版されているんですけど、向こうの文学賞ですね、ジョゼ・ソラマーゴ文学賞とかですね、たくさんあるんですけども、
そういったのも本当にたくさん受賞していて、この作者の名を一斉に世に知らせた作品であります。代表作みたいなものですかね。
みたいですね。このゴンサロ・M・ダバレスさんはですね、1970年生まれて、作家デビューは2001年となっているみたいですね。
この作品が2004年に書かれたので、30半ばぐらいの作品になりますかね。30半ばってこれ書いてるってやっぱりすごい人ですよね。
大分ぶっ飛んでるなと思いますね。
ちょっと凍りつくなよ。すごいな。
デビューしてから20年、精力的に作品を発表し続けているらしく、
日本ではこれまで2019年に現代企画室から出版されたポルトガル短編小説傑作戦 蘇るルーススの声というのに、このダバレスさんのバルザーシと森という作品が掲載されているそうです。
ダバレスさんの作品は50曲以上で翻訳出版されており、もう21世紀ポルトガル文学を担う作家の一人と、最重要な作家なんでしょうね。
これノーベル文学賞いつか飛んじゃわないかな。そんな気がしますよね。
ジョゼ・サラマーゴがこの人は絶対取るってね、つけてるみたいですからね。
ジョゼ・サラマーゴさんはもうお亡くなりになっているので、あれですよね、自分がその日を見ることはないが彼が偉大な勝負を取ることか、みたいな言葉を残しているらしいですよね。
すごいな。
あとこのダバレスさんの面白いのが、作品をテーマに分けているみたいなんですけども、
例えばテーマというのが王国とか町とか都市とか百科事典とか歌とか研究とか、いろんなテーマがあるみたいなんですけど、
今回紹介するエルサレムはダバレスさんの最初の長編群になるんですけど、テーマで言うと王国になりまして、その4部作ある中の第3作になるみたいです。
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まさかエルサレムが4部作の中の1つだったというのは、ちょっと驚きだったんですけども、
そういうテーマに書かれているというのもこのダバレスさんの特徴になります。
他読んでみたいですよね。すごい気になる。
王国4部作全部読みたいですね。
なんとご翻訳されないかなと思っております。
じゃあ具体的に今回紹介させていただきたいと思っております。
ちょっとまず今回はですね、この小説の魅力ってなんだろうみたいな話をちょっと先にさせてもらった上で、どんな小説か話していきたいなと思っております。
私がですね、まずこれ読んで感じた魅力というかすごさなんですけど、構成ですね。構成が本当すごいですね。
それは展開っていう言い方もできるんですけど、でも構成なんだろうなと思います。
すごく考えられて作られている構成で、
時間軸とか話のポイントとかが結構並べるだけ見るとめちゃめちゃバラバラなんですよ。
時間は過去に話に急に飛んだり、現在の話が急に展開したりとか、
で全然なんかこいつ誰だよみたいな登場人物が出てきたりとかするんですけど、
でもそれがですね、もう何ていうか過不足なくちゃんとまとまっていくし、
それだけでも鳥肌が渡したったんで、ここは本当構成がすごい小説でございます。
内容はですね、かなりダークですね。
救いようがあんまりないですし、たまに救いのない小説作品、映画とかも含めて出会うんですけど、
久しぶりにここまでちょっと救いのない作品出会ったなと思いました。
でもそれでいてもですね、なんか独領後に残るのがやるせなさとか絶望感ではなくて、
この登場人物たちの運命のようなものを感じる作品で、
もう何ていうかもう語彙がないんですけど、すげえしかないっていう。
なかなか小説をうまく語れないなって思っているんですけど、
ちょっとでも伝わればいいなと思って今話してますが、
そういうダークなんですけど独領後にを感じるのが、
他の救いようのない作品から感じるものではないものが残って、
すごい小説だったなと思ってますね。
確かに僕も同じことを思いましたね。
ああ、ですよね。
こんだけ暗い小説なのに、読み終わった後の絶望感っていうのがあんまりそこまで感じないっていうのは、
しかもすごいスラスラ読めますしね。
なんか非常に重たい小説にあらすじとか読むと思えてくるんですけど、
読むと意外とそうではなくて、なんかあっさり書かれていたりするので、
ほんと1日で読めるくらいかなというくらいほんとスラスラ読めますね。
文章量はそこまで多くないですね。
私もほぼ1日で読んじゃいましたけど、途中止まんなかったって思うけど。
あとこの小説で面白いところが、
精神病院が舞台となっているというのが一つあると思ってまして、
09:01
精神病院というと、映画でカラッコの巣の上でというジャック・ニコルソンが主演をしていた、
ちょっと古い映画になるんですけど、というのがあって、
それは精神病院舞台の映画で、結構リアリティのある映画だったと思うんですけども、
今回のエルサレムはドキュメンタリーとかルポルタージュではないので、
精神病院の内情というのはそこまで詳しくは書かれていないんですよね。
あくまでも小説の中の一つの舞台として、トリガーになっていると思うんですけども。
なので、カッコの巣の上でのような重さというのは感じなかったですし、
そこまで構えて読む必要はないのかなと個人的には思います。
精神病院でのシーンというのは、全体のボリュームから比べると結構少ないですよね。
精神病院の中のシーンというのは。
あらすじだけ読むとそこ結構多いのかなと思ったけど、あんまりなかったですね。
そうですね。その辺はすごい大変な話が来るのかなと最初は身構えて読んでいたんですけど、
そこまででもなかったなと思うんですね。
ただ違う意味で、この後話していくんですけど、
違う意味で思う一つはあるんですけども、
あともう一つ小説に出てきて面白いものが、
ケオドールという学者さん、お医者さんでもあるんですけども、
この人が研究している恐怖の歴史という理論もすごく面白くて、
これもこの後また触れていきたいと思うんですけども、
結構恐怖の歴史を人生かけて研究しているっていう、
それがどういう理論なのかというのも作中に出てきていて、
結構この辺も小説を読んでいると興味深いところかなと思います。
そうですね。このテオドールというのが主人公ミリアの元夫、結婚相手になるんですけど、
結構このテオドールさんが第二の主人公みたいな感じですよね。
結構この人のパートが多い小説ですよね。
ではこのエルサレムがどういう小説かというのをちょっと説明していきたいなと思います。
まず本当に一言で言い表すとすると、5月29日の夜明けが軸になっていて、
登場人物たちが各々の目的によって夜明けに向かって動き出すという小説になっています。
ただこの小説の面白いところが、登場人物というのが主要な人何人かいるんですけども、
ことごとくみんな狂っていて、
まず主人公のミリアというのが元々精神病院にいた女性なんですけど、
このミリアがしょっちゅう目を外すというか、ちょっと気候ですかね。
夜中に、5月29日の明け方ですね、お腹が痛くて、教会を求めて外に出て、
もう一人の主人公、そしてミリアの元夫のテオドールという学者ですね、
恐怖の歴史を研究していて、著名人ではあるんですけど、毎春宿がよいというのをしていて、
12:00
5月29日の夜明け前に、好みの祖父に声をかけて、これからやろうと。
このなかなかの狂った。
テオドール結構ぶっ飛んでますよね。
そうですよね。
やばいですね。
研究内容もぶっ飛んでるんですけど、意外と日常生活もぶっ飛んでるんじゃないかと思って。
小説最初に出てくるエルンストという人物がいるんですけど、
この人も元々精神病院にいた人で、
ミリアとは繋がりがあって、
5月29日の日方、ミリアから電話がかかってくるんですけど、
このエルンストもその時ちょうど自殺をしようとしていたというところで、
なんで自殺しようとしていたかというのは、小説の方で明かされていくんですけども、
自殺しようとしていた人がいたりとか。
あとはヒンネルという機関兵ですね。
このヒンネルというのはちょっと屈折した人物で、
目の周りに大きなクマがあって、結構外見が怖いというか、
見た目から近所の子供たちに殺し屋というあだ名をつけられている。
ちょっとバカにされていると自分では思っていて、
そういう屈折したものを持っていて、
不安が溜まっていくと自分の力を見せつけようというですね、
危険行動に出てしまう人物で、
このヒンネルが5月29日に不安が溜まったのか、
銃を忍ばせて、夜明け前ですが町に繰り出していく。
ゴンベルツという、これは精神病院の院長ですね。
ゲオルグ・ローゼンベルク精神病院というのが作中に出てくる重要な舞台になるんですけども、
この院長さんで、このゴンベルツの簡単に説明するのがちょっと難しいこれなんですけど、
いろんなことを企んでいるような院長さんで、
何か悪い人なんじゃないかというですね、
特にここが悪いとかっていうのは書かれてないんですけど、
なんか影があるんじゃないかと思わせる。
他にも何名か登場人物っていうのはいるんですけど、
この5月の夜明けに向かってこうした人物たちが絡み合っていくという、
ざっくり言うけど、そういう小説ですね。
今三枝さんが言ってくれた通り、そういう5月29日に向けて動く小説なんですけど、
小説のストーリー自体は、一応5月29日から始まって、
さっき話したとおり、登場人物の過去、
例えばミリアとテオドールがどうやって出会って、
どうやって結婚して、どうやって別れたかとか、
描かれたりとかして、
この辺りテオドールやべえなっていうところもあるんですけど、
ちょっとストーリーを少しだけお話させてもらうと、
時間軸がたくさんいろいろある中展開されていって、
なんで過去のことが急に分かったりとか、
現在のことが急に展開したりするので、
この辺りの構成が本当すごいですね。
どう読まれるかをかなり意識して作ってる、構成を練ってるなという感じがします。
主人公のミリアは、死に至る病に侵されていて、
もう余命がない状態ですね。
5月29日に向かっています。
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なんでなんか結構気の毒な女性なのかなとかちょっと思ってたら、
どんどん、やばいこの人狂ってんなって見えてくるような感じになってますね。
もう一人のテオドールが結構描かれるんですけど、
このテオドールはミリアに一目惚れして、
この時も10歳以上年下で、
自分の病院に患者としてきたミリアに一目惚れしてアプローチして結婚すると。
もうこの辺り結構狂ってるんですけど。
でも結局ミリアの精神病っていうのは治らずというか、
なかなか自分で面倒見ることはできないので、
結果的にちょっと有名なゲオルグ・ローゼンベルク精神病院にミリアを入れることになると。
そこでミリアは同じく精神病を患っていたエルヌスと出会い、
恋に落ちたのかな?
ちょっと惹かれあったのかちょっとわかんないですけど、
その辺は本格描かれたらいいんですけど、恋中になると。
ミリアとエルヌスとはその精神病院の中で行為をしてしまうんですね。
行為というかセックスをしてしまうと。
で、その結果ミリアは妊娠してしまい、
テオドールはその後ミリアに離婚を突きつけて別れるんですけど、
テオドールはですね、生まれてきた息子カーフっていう名前なんですけど、
自分の息子として引き取って育てます。
この辺りの流れもどう捉えていいかわからなかったんですけど、
育てることを決定しますね。
で、ミリアとエルヌスとはその後退院しますが、
もうその後は接点を持つことなく生きていました。
彼ら二人はですね、心のどこかに精神病院のことがあり続けているという状況ですね。
この後ヒルネルク、これは戦争が終わって戻ってきた兵士なんですけど、
拳銃を持っていてちょっと危険な人物なんですが、
彼を世話している女っていうのがいて、ハンネっていう娼婦がいます。
で、この女性が29日ですね、ミリアの元夫テオドールと出会って一夜を共にするという流れになっております。
で、この人たちが29日、運命の夜を過ごすというのがこの小説の大きなストーリーになってますね。
やっぱり人間関係のところすごいですよね、繋がってるか。
そうね、これ整理するとすごいよね。
そうだね。
これをよくサラサラと書いてるよって思う。
うんうん。
すごい。
この人とこの人が繋がってしまうのかっていうのが、
読んでるとだんだんわかってくるんですけど、
それがあんまりいい気持ちに出らないんですよね。
なんかね、本当に負の連鎖を感じるっていうか。
そうですね、負の連鎖ですね。
そうですね。
この小説で気になったところというのもいくつか挙げていけたらと思うんですけども、
まず僕の方から、そもそもなんですけど、
このテオドールがなぜミリアと結婚したのかというところは、
ちょっと読んでて気になりましたね。
テオドールっていうのが、最初はお医者さんなんですけど、
ミリアとは医者と患者の立場であって、
当時18歳のミリアは統合症の少女ということで、
そういう状況だったんですけど、
テオドールは10歳ほど年が離れた年上のお医者さんという立場で、
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ミリアが魔性の女のような書かれ方をしていたので、
そこでテオドールがミリアに敷かれるっていうところまではわかるんですけど、
ただ、テオドールもお父さんが本当に国を代表する政治家であったりとかですね、
将来も有望な人だったと思うので、
女の子を好きになったという、結婚するに至るっていうところが、
ちょっと謎として残りましたね。
だいぶアクセル踏んでますよね、公演。
そうですよね。
この辺ももしかすると、テオドールの狂っているところの一つの現れなのかなって。
周りはちなみに全員反対してるんですよね、家族とか。
それでも結婚に踏み切るっていうのが。
結果として、このテオドール、ミリアと結婚しても、
その生活っていうのは成り立たなくて、
結構ね、あっさりと離婚してしまったんで。
まあ確かにあっさりと。
他の男性とできちゃったから、離婚するってだからわかるんですけど、
その時になんでその子供を引き取ったのかが、
すごいわからなかったそうですよ。
あの流れ。
そうですよね。
そこもいろんな選択肢が提示されていて。
でもそうか、ミリアが他の精神病院の中で子供を作っちゃったっていうことが、
外に漏れる方がその時は怖かったんですね。
かな?
あともう一つテオドールで気になったのは、
学者として恐怖の歴史っていうのを研究してるんですけども、
そこの研究にすごい執着していて、
本当にそこにエネルギーとかも全て費やして研究しているような感じなんですけども、
なぜそこまで恐怖の歴史にこだわって研究するのかっていうところも、
これも一つ気になったところですね。
作中でもテオドールが、ずっとその共生収容所の死体の写真を眺めている描写画だったりして、
最終的には恐怖の歴史に関して本5冊、とんでもないボリュームで出すんですけど、
それに対して膨大なデータというのを調べていたというのも説明されていて、
その辺すごく凶器を感じるような研究をしていたんだなというのも伺いしているんですけども、
ただ、テオドールが発表している恐怖の歴史の理論としては結構読んでいて、
面白いというか興味深いところがあって、
例えば説明しますと、人類にとって統計をとった上でなんですけど、
過去から現在までかなって、恐怖というのがもし状態化しているものだとしたら、
この状態化というのは恐怖が常にあり続けるということですね。
ゼロになるわけではなくて、ある一定の数値を。
恐怖というのは状態化しているものという、そういうものだとしたら希望は、
人類は失われるという理論があったりとか、
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あとは虐殺についてとか、結構研究しているんですけども、
このテオドールが言うには、歴史を動かすエンジンになるのは悪であると。
歴史が動いていくというところで、悪が動かしていると。
そこには倫理みたいなものは関係ないと。
本当に気高い行為という、良い行いというところは、歴史の上ではエンジンにはならなかったとかですね。
あとは結構これも作中で印象的だったんですけど、
テオドールが研究成果を本として発表するんですけど、
恐怖の歴史というのはまだ始まったばかりで、今後の数世紀も虐殺が起きると。
しかも本ではどこの人たちが被害者で、どこの人たちが虐殺者になるのか、
しかもその被害の数字とかも予言明いて本に書いていて、
具体的な被害数字とか、どこの誰が被害者か虐殺者になるかというのは小説では出てこないんですけど、
ただそういう内容のことをテオドールが出版した本に書いていると。
これが結構センセーショナルなことで、テオドールが有名になったし、
一方ですごい猛批判ですね。
こんな主観でこんなことを書くなというものすごいバッシングもあるという。
こんな宗教寺みたいな嘘800を出版するなとか言われますもんね。
そう、とんでもないのを言われるようで。
テオドールのところで面白かったのは、被害者と虐殺者のどちらになるにしても人は恐怖を感じるというのも、
そのテオドールが述べていて、この辺も読んでいて、考えさせられるところがあるなと思います。
面白いですよね、恐怖の歴史とか、恐怖の量みたいなのを測定というか、何ていうのかな、
示したりとかしたりしていて、この話はすごい面白いなと思いましたね。
そうですね、面白いです。
個人も他も同じで、個人も恐怖の量があると一定数になると死ぬというのが出ていて、
それで実は人がいつ死ぬかというのも、実は表すことができるけれども、
ただ今までの恐怖の量というのは人はカウントしてきていないから、
カウントさえいれば人がいつ死ぬかというのは数字を出せるみたいですけど、
実際はそんなことはできないとかですね、そんな理屈を言ってたりして。
テオドール自体も、自分の研究の方向性とか、
急にお父さんに、お父さん政治家で役に立たないことを認めないみたいな空気が出されて、
そのお父さんが気に入るように研究の方向性を変えたりとかするシーンとかあったりするんですけど、
テオドールの恐怖の歴史研究というのは、ちょっと納得させられるものが私は結構あって、
本当にこうなんじゃないかなとか思っちゃいましたね。
逆殺痴漢というのが書いてある、ああいう理論とちょっと通じるものがあって。
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文法とちょっと似てますね。ちょっと思い出しましたね。
そうですね。人類全体に当てはまる何かね、暴力であったり恐怖の部分であったりというところですね。
あとはこの小説の舞台の一つである精神病院ですね。
このギョールグ・ローゼンベルク精神病院というのが一体何だったのかっていうのは結構気になりますね。
自分を忘れることで病気を回復させるみたいな、それを徹底したのかな、ようなことが書かれているんですけど、
結局そこを出た人たちがこの精神病院の影響を受けちゃってるんでしょうね。
結構印象的なシーンが、この院長のゴンペルツって人を精神病院を退院した。
この小説は卒業みたいなことで表現されてましたけど、エルヌストが訪れて行って、
その時に言うんですよね。あなたのやり方は間違ってるみたいなことを言いますよね。
それでちょっとなんか言いまかすじゃないけど、まあ否定して出てくるところがあって、
結構そのところがなんか自分は気持ちが良かったというか、なんかこの小説の中でも読んでて数少ない、なんかこうポジティブに盛り上がったシーンだと思ったりしましたね。
このでも精神病院というのがこうちょっとみんなの中に残っていってるっていうのがあるんでしょうね。
ここで一応タイトルの由来のエルサレムの話をちょっとしたいんですけど、
このエルサレムっていうのは役者後書きに書かれてたんですけれども、旧約聖書の一節でちょっと読ませてもらうと、
エルサレムよ、もしも私があなたを忘れるなら、私の右手は悩めるが良いという言葉があるみたいで、
これはなんか迫害を受けて異教に拡散したユダヤ人たちが心の拠り所としたエルサレムというのを歌っているそうです。
このエルサレムをゲオルグローゼンベルク精神病院に変えた句がですね、まあこの小説の中に出てきて、
ミリアもエルヌストも退院してもなおこの精神病院に付きまとわれているという状況っていうのがあるみたいですね。
なのでちょっとこのエルサレムっていうのを使っているみたいなんですけど。
精神病院では他とちょっと違うところとして、入院している患者さん、強靭と見られているような人たちのそれぞれの行動を止めさせるような治療法ではなくて、
倫理的な治療というのが重要視されていたという精神病院なんですけども、
それで何をしていたかというと、患者さんが何を考えているのかというのを理解しようとしていたと。
よくこの院長のゴンベルツという人が患者に質問しているんですけど、今何を考えているんだねというのをしょっちゅう患者に聞くわけなんです。
そうして患者の頭の中身を理解しようとしているという。
ただこれって何を考えているのかというのは、本人じゃないとわからないことではあって、嘘をつくこともできるし、本当のことを言うこともできるんですけど、
ただこのゴンベルツが信じるしかないというかですね、本当のことを言ってもゴンベルツが信じなかったら嘘認定されますし、
27:05
その辺で結構患者からすると、このゴンベルツからの質問というかこの倫理的な治療というのは実は恐怖にもなっていたんじゃないかな。
それが後々精神病院に出た後も、何か自分の中でこのゴンベルツという存在が残っては怖いものとして残っているというか。
ただ、お出しさんが言われたように、このエルヌストという人物が、このゴンベルツという院長がどういう人物かというのを理解するシーンがあるんですけど、
このゴンベルツも結局は普通の人だったという、そういうのがわかってきたりまして。
そうですね、「あなたは年寄りだ。ただの年寄りなんです。」とかね。
結構ゴンベルツも表面的にはすごい綺麗なことを言ってたりするんですけど、精神病院のことを。
ただやっぱりちょっとお金が絡んできたりすると、急に汚い人物になったりとかしたりして。
精神病院という、何て言うんですかね。一つのモチーフとしてすごく怪しいもので、そこにすごい狂ったような出来事であったり、人たちがいるというふうなイメージはあるんですけど、
ただ、そこの本当に支配しているゴンベルツという人は、結構普通の人だったなというのは思いました。
ゴンベルツ、結構器がちっちゃいなとは思いましたし、テオドールと一緒で。
テオドールもすごいことしてるけど、結局器がちっちゃいし。ゴンベルツも精神病院の園長やってるけど、結局器がちっちゃいところがあって。
なんかこの辺り、すごく人間味が出てて、人物描写としてはいいなと。まあ好きにはならないですけどね、どちらも。
そうですよね。いやでもね、本当に不脳連鎖を生み出している一つの要因かなと思うんですけど、巨大な存在ってあってね、実は器のちょっと小さいような人がその中心にいたっていうのも、これもちょっと虚しいところが感じますね。
じゃあちょっと、なかなかこれ語りづらい小説でいろいろ話してきましたが、まあちょっとでもこんな小説なんだってのが伝わればいいなと思っております。
じゃあ最後、感想とどんな人に読んでもらいたいか話して終わりたいと思います。
まずですね、何度も言いますけど、この小説すごいのは構成だと思ってます。
もう、なんか最後ネタバラになっちゃうんで何も言えないんですけど、最後とんでもない状況になり、で、なんかその因果がわかっているのは読者だけっていう状況、想像することができるのは読者だけっていう状況がすごくいいなと思いました。
もうなんていうか、それに関しては感動っていうわけじゃなくて、なんだろうな、でもカタルシスのようなものはあって鳥肌は落ちましたね。
あまりうまく表現できないんですけど、運命という言葉でしかなんか表現できなくてなんか悔しいんですけど、あの特殊なカタルシスがあってすごい小説でかなりびっくりしましたね。
で、万人受けする小説ではないなと思ってます。
でも、かといってこういう人に会うっていうのはなかなかうまく言えないんですけど、話すことを試みると、好きではない話ではあるので、なんか結構そういうダークさが好きで、かつ展開があんまり予想できなかったりとか、構成がうまい小説が好きな人とかにはハマるとは思います。
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なんか読み終わった時、「うわ!」っていう言葉しか出てこなくて、もうちょっとなんか語彙少なくなっちゃったなと思っておりますが、なんかちょっとでも伝わればいいなと思っております。
僕もすごくダークな小説で、その暗い部分であったりヤバい部分っていうところが満ち溢れていて、それでね、ほんと1日で一気に読めてしまいました。
これをなんかすごいしか見表せないかもしれないんですけど、なんか読んだら感じるものがあるんじゃないかなと思っています。
ただ決して気持ちのいい小説ではないなとは思っています。
本書が王国シリーズという4部作の3作目みたいなので、このタバレスという作が描こうとしている王国って一体何なんだろうというのがすごく気になりました。
他の作品も読んでみたい。この小説自体、暗い話ではあるんですけど、決して怖い話とかではないと思うので、未知の暗闇を除くような感じで、興味があったら怖がらずに試して読んでもらえたらなと思っています。
なんかあれでしたね、今までで話すのが私は一番難しい本でした。たぶん。
そうですね、なんかね。
今回が53回になるんで、50冊近く紹介してきたと思うんですけど、今までで一番難しかったなと思いましたね。
確かに構成の魅力とかはあるんですけど、じゃあここがいいとかここがおすすめみたいなのを簡単に説明できるものではなかったですかね。
確かに感じるものは強くあるんで、なんかうまく言えなくて悔しいなと思っております。
じゃあちょっと次回を休憶して終わりましょうか。
次回なんですけれども、村上春樹さんの短編集、女のいない男たちを紹介したいと思っています。
これは8月20日映画が公開されました。ドライブマイカーが収録されておりますので、今のところ映画を見てからちょっと紹介する予定です。
まだ15日段階では公開されたり見てないんですけど、ちょっと楽しみにしています。
番組の完成はリクエスト。またこのラジオを聞いて紹介された本を読みました。
読み返しましたなどございましたら、ハッシュタグ黒とぶ猫たちをつけて教えていただけると嬉しいです。
ツイッターやインスタの投稿などでお待ちしております。
番組情報欄にメッセージフォームも今載せておりますので、そちらからいただいても大丈夫でございます。
積極的に拡散共有していただけると助かります。
それではまた来週。
ありがとうございました。
32:28

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