花火とその歴史
おはようございます。花火鑑賞士、気象予報士の鶴岡慶子です。
この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。
今日も最後までお付き合いください。
今日は、まさに花火と天気のお話をします。
まずは、友人が広報誌に書いたコラムを紹介します。
タイトルは、「落とせば爆弾、打ち上げれば花火。」というものです。
村の夏を彩る中川どんちゃん祭りが、今年は8月23日土曜日に開催される。
祭りのクライマックスには、間近で打ち上げられる花火が夜空を染め上げ、その迫力は圧巻だ。
日本に煙火の技術が伝わったのは戦国時代。
織田信長が伊那谷を攻めた際、のろしを用いたという。
やがて徳川の太平の世となり、火薬は戦から神社の祭礼へと使い道を変えた。
長野県では、農民や町民が花火の製造を担い、奉納花火は人々の祈りと共に文化として根付いた。
今でも、煙火業者の数は全国一で、上伊那の花火は地域の信仰と風土に息づいている。
同じ火薬でも、落とせば爆弾、打ち上げれば花火になる。
戦のための火薬が、平和を願う花火となった今、
戦後80年の今年、世界中の花火が命を奪うのではなく、平和をことほぐ光となることを祈る。
と書いていました。
天気予報の重要性
このコラムを書くにあたって、花火の歴史についてものすごく調べたという人は、お手紙を添えてくれました。
本当まさにそうで、花火って火薬なんですよね。
使い方次第で、破壊にも感動にも変わるものなんです。
いつも公演でお話しする内容で、この配信の中でもずいぶん前です。
22回の配信ですから、2022年の6月25日の配信です。
タイトルは、花火干渉は平和だからこそできる、というタイトルで配信していますが、
ちょっと復習しますとね、どういう内容だったかっていうと、
大曲がりの花火って、1970年代から80年代にかけて、ドイツで打ち上げを行っているんですね。
全部で4回行われています。
で、まだベルリンに壁があったんですよ。
1987年の記者会見で、こういう名言を残しているんです。
ベルリンの地上には壁があるが、空には壁がない。
西の人にも、東の人にも楽しんでもらいたい。
そんな風に記者会見でお話があったんです。
で、この時、この花火を見た人っていうのは、壁の向こう側の東ベルリンを合わせると、
なんと150万人に上ったと言われているんです。
戦争によってできた壁の越えたところに、花火を楽しむたくさんの人たちがいたっていう、ぐっとくる話なんですね。
まさにこれが花火っていうことだなって、芸術の花火っていうことだなって、私はこの話が大好きで、
いつも講演の時にはお話ししている内容です。
この印象的なお話っていうのは、1987年なんですが、
その2年後の1989年の11月9日、ベルリンの壁は崩壊するんですね。
壁を挟んで両方の人が平和の花火を見た、その人たちがまさに壁を壊していくっていう、
そういうことにつながったんじゃないかと、私は信じているんです。
ただ本当に今、戦争があちこちで起きてますよね。
昨日はタイとカンボジアの国境近くで武力衝突があったというニュースを聞きました。
世界のあちこちで火薬の使われ方が負によっているなって思います。
これが本当に美しいなと思える、その方向に、正の方向に向いていくといいなって心から思います。
そして私がもう一つ関わっている天気予報もまた、戦時中には兵器と同じ扱いをされたことがあります。
太平洋戦争中には軍事機密扱いでした。
当時は天気の情報が敵国に軍事行動のヒントを与えるということで、
天気図の発行とか週間予報が中止されたんです。
全国的な発表は禁じられました。
なので、今日は晴れるのか雨が降るかすら言えない時代だったんですね。
もちろん観測とか予報は内部では行われていたんですが、国民に伝えることは制限されていたんです。
花火と天気、火薬と情報ということですが、どちらも力を持つ素材だなって思います。
人を楽しませるものにも、人を傷つけるものにもなり得る素材ということだと思うんですね。
なので私は、花火を伝える仕事と天気を伝える仕事をもっともっと前に進めなきゃいけないなって強く感じます。
どちらも人の命だったりとか心に触れることができる分野でもあるし、正確に、丁寧に、そして何よりも美しく伝えたいなって思います。
花火と天気、どちらも一瞬で消えてしまうものではありますが、記憶には深く刻まれるものだなって思うんですね。
そしてその向こう側には歴史とか戦争、平和というような大きなテーマが隠されているんですね。
そんな視点で夏の夜空だったり空模様を見てみると、世界が少し変わって見えるかもしれません。
この配信はApple Podcasts他各種プラットフォームでお届けしています。
それではまた明日。
