2025/05/21
サマリー
2025年5月20日に極端気象アトリビューションセンター(WAC)が立ち上がり、地球温暖化と極端な気象の関連性を科学的に分析する取り組みが始まっています。これらの分析結果が今後、政策や防災対策に活かされることが期待されています。
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おはようございます。花火鑑賞士・気象予報士の鶴岡慶子です。この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。毎朝更新している恋の日記です。今日も最後までお付き合いください。
極端気象アトリビューションセンターの設立
昨日、2025年5月20日ですね。極端気象アトリビューションセンターが立ち上がりました。ちょっと長い名前なんですよね。略してWACと呼ばれています。
何をするところかと言いますと、極端な気象、つまり記録的な豪雨とか猛暑、暴風とか異常気象と呼ばれる現象があったときに、この現象に地球温暖化がどのぐらい関係しているのかを科学的に分析するところなんです。
こういう分析をアトリビューションと言います。日本語で言いますと、記続分析と訳されるでしょうか。例えばある年に記録的な豪雨が起きたとしましょう。そのときに研究者たちっていうのは、スーパーコンピューターを使って2つの世界を仮想的に作るんですね。
1つは今の地球。もう1つは仮定した地球です。1つ目の今の地球っていうのは、温室、高架ガスが人間の活動によって増えている状態の、いわゆる今の状態の地球です。
もう1つの仮定した地球っていうのは、もしも人間が化石燃料を使っていなかったらと仮定した地球なんです。どういうことかっていうと、もし温暖化をしていなかったらという世界を仮定しています。
という具合に2つの世界を仮想的に作るんですね。この2つの地球を比べて、あの豪雨ってどれだけ起こりやすくなっていたかというのを計算するんです。
具体的には、プロバリティレシオといって確率比という数値で表されることもあります。例えば、50倍起こりやすくなっていたんだよというふうに表されるということですね。
もちろんこれはシンプルな足し算とか引き算で出せるものではなくて、ちょっと専門的な話になりますが、気象モデルと呼ばれる大規模なシミュレーションによって導き出されるものなんです。
気象モデルっていうのは何かっていうと、地球全体を細かい格子に分けて、大気の流れだったり気温だったり海水温、湿度とか雲の動きなんか、いわゆる物理量ですね。ありとあらゆる物理量を数式で再現していくものなんです。
こんなふうにアトリビューション研究というのは、地球がもう1個あったらというようなちょっとSFみたいな発想をスーパーコンピューターと物理法則で実現している分野です。
最近は世界中でこういう研究が進んでいます。この猛暑は人間の活動による温暖化がなかったら果たして起きていたのか、はたまた起こっていなかったのか、これを確率で出しているっていう分野なんですけど、
これまではイギリスの団体なんかがリードしてきた分野ではあったんですが、ついに日本でも日本の気候に合った形で専門チームが発足した。これが昨日のことだっていうことなんですね。
科学的分析の重要性
この専門チームがすごいのは、自然科学の視点だけではなくて、この情報を自治体とか企業、そして私たち一人一人がどう使えるかまで見据えているっていうところなんです。
私自身は気象予報士で、そして気象防災アドバイザーでもあるんですが、このニュースを聞いて本当に頼もしく感じています。
例えばおととし、去年の記録的な猛暑、本当暑かったですよね。今年もそれこそ昨日3ヶ月予報が出て、平年よりも気温が高めであろうという予測が出ました。
今年もどうやら暑くなりそうだということなんですが、その時に温暖化のせいだよねなんて言ってても、それがどのくらいの確率でどういう条件でそうなっているのかという問いには正確に答えられる人がいたかって言うとどうだったかなって思います。
もしかして関係があるかもねぐらいの感じだったんですよ。でもこれからは違うんですよね。数日以内に科学的な答えが出てくるんですよ。
そしてそれが政策とか防災対策にも活かされていくのかもしれないなって思います。これってすっごく画期的なことなんです。
この気象なんかおかしいよねと感じた時に戻れる場所というか頼れる場所があるってかなり心強いなって思います。
この後もWACの動きには注目していきたいなと思いますし、新しい分析結果が出た時にこれはちょっと面白い結果だぞという時にはこのポッドキャストの中でもご紹介していきます。
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それではまた明日。
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