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2025-10-15 04:52

【1230】2025/10/15 一声、二顔、三姿

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2025/10/15

サマリー

このエピソードでは、声の記憶が人の心に与える影響について話されています。「一声、二顔、三姿」という言葉が示すように、声はその人の心情や姿勢を表す重要な要素であることが強調されています。

声と思い出の記憶
おはようございます。 花火鑑賞士、気象予報士の鶴岡慶子です。
この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。 葬儀の現場で、おじいちゃんを見送るお孫さんが、長寿の中でこういうお話をしていました。
おじいちゃんの声は忘れない。 人は声から忘れていくと聞いたことがあるけれど、私はおじいちゃんの歌を何度も聞いているから大丈夫ということでした。
どうして声から忘れていくと言われるのかと言いますと、私たち人間の記憶は、視覚優位、 ビジュアルドミナンスという傾向があります。
心理学の実験でも、顔とか姿などの視覚的な情報の方が、長期記憶として残りやすいということがわかっています。
一方で、声というのは聴覚情報です。 聴覚情報は時間的に流れていくので、瞬間的な印象は強いのですが、形として残りにくいという特性があります。
なので、亡くなった人を思い出す時も、まず顔とか仕草を思い浮かべます。
ですが、声の記憶というのは、だんだんと曖昧になっていくという心理的な現象が起きてきます。
ということで、人は声から忘れていくと言われています。 言われてみると、人を思い出す時というのは、まず顔が思い浮かんで、
しばらくしてどんな声だったっけ?と考えることが多いのかもしれません。
では、音を記憶しておく、その記憶を伸ばすためにはどうしたらいいかというと、再生の力が必要です。
再び生きると書く再生の力です。 聴覚の記憶は、刺激を再び受けた時に強く呼び起こされるという特徴があります。
なので、録音とか音楽というのは、記憶を再生するスイッチになります。
例えば、懐かしい歌を聴きますと、その時の情景とか感情まで一瞬で戻ってくるということはありますよね。
そんなふうに聴覚の記憶というのは、再び呼び覚まされるということなんです。
音をもう一度聴いた時に、記憶が瞬時に蘇るという特性があります。
お孫さんがおじいちゃんの歌を聴いているから忘れないというのは、まさにこの再生の記憶を無意識のうちに感じ取っているからかもしれないです。
ここまでお話をしながら、そうですよね、言われてみれば声って形を持たないものですよね。
だから儚くもあり、でも残るととてもそれは強いものだと思います。
一声、二顔、三姿の重要性
思い出すのは芝居の世界で言われている言葉です。
一声、二顔、三姿。あるいは歌舞伎では、一声、二振、三男とも言います。
これは良い役者の条件を言っているんですけれども、良い役者の条件はまず声にあるという意味です。
顔の良さとか立ち振る舞いの美しさよりも、発声とかセリフの回し、声の響き、その美しい口跡こそが最も大切だって言っているんです。
これは日本だけの考え方じゃなくて、シェイクスピアのハムレットでも当時の舞台にはマイクも覚醒器もありませんでしたから、観客は芝居を見るではなく聞くと言っていたんです。
芝居と言っていました。
この一声、二顔、三姿という言葉ですが、人そのもののあり方にも重ねてみることもできると思います。
声はその人の心を表しますし、顔はその人の感情を映し出します。
さらに姿はその人の生き方を語るものだと思うんですね。
だから声が一番先にあるんだって思うんです。
声には心の温度が宿るっていうことでもあると思うんですけど、喜びも悲しみも安心も声を通して伝わるものですよね。
伝わってしまうものでもあります。
人は声から忘れていくのかもしれないんですけれども、でも心に届いた声っていうのは姿よりも深く刻まれていくものだろうと思います。
私もそんな声でありたいなと思いました。
この配信はアップルポッドキャスト他各種プラットフォームでお届けしています。
リッスンではこの配信のテキスト版を公開しています。
合わせてご覧ください。
それではまた明日。
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