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#073 娘と一緒に息子と話す人
2026-07-11 09:53

#073 娘と一緒に息子と話す人

どうか、味方でいてやって欲しい。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

noteに本文を掲載中。
https://note.com/child_skylark

◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #小説 #モノエフ朗読
#家族 #成人式 #焼鳥屋
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サマリー

このラジオドラマは、成人を迎えた息子タクシーと、病気を持つ娘アヤ、そして家族の絆を描いています。タクシーの成人式を祝う家族の姿や、彼がボランティア活動を始める決意、そして父との焼鳥屋での対話を通して、タクシーの成長と将来への希望が描かれます。特に、アヤへの深い愛情と、家族それぞれの立場からの思いやりが感動的に表現されています。

成人を迎えたタクシーと家族
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、さまざまな人がいることをテーマにお送りいたします。
アヤ、おはよう。
そう声をかけると、アヤはいつも通りじっとこちらを見ている。
今日は、お兄ちゃんの大事な日なんだ。
アヤも一緒にお祝いしような。
アヤはいつもと同じくりくりの目をこちらに向けている。
あらあらあら、立派な成人だこと。
ばあちゃん?
突然やってきたお袋を見て、タクシーはソファーから飛び起きた。
わざわざすみません、お母さん。
レイコがうやうやしくお袋に言う。
こっちこそ無理言ってごめんね、レイコさん。
でも、どうしてもタクシーの成人姿は見ておきたくて。
ねえ、アヤちゃん。
お袋はアヤに向かって話しかける。
アヤは朝と全く同じくりくりの目をこちらに向けている。
じゃあ、お父さん、みんなで写真撮りましょ。
レイコの一言を合図に撮影の準備を始める。
家族全員が写るには、ダイニングの机を動かさなくてはならない。
じゃあ、撮るわよ。
レイコはそう言い、急いでタクシーの左側に入った。
家族写真を撮ったのは久しぶりかもしれない。
もちろん、アヤも一緒だ。
アヤはお袋の手の中で、変わらずくりくりの目をしていた。
タクシー、あんたは親孝行だね。
立派に大人になって。
お袋が涙をこぼしながら言った。
タクシーはいい子。立派な子。
タクシーは少し困った顔をしている。
タクシーには申し訳なかったと、今でもずっと思っている。
じゃあ、行ってくるね。
土曜の朝早くだった。
タクシーが出かけようとしていた。
よすみの日に珍しいな。
うん、ボランティアを始めることにしたんだ。
ボランティア?何の?
病気の子どもたちのキャンプをしている団体のお手伝い。
病気?
そう、アヤみたいな子たちを受け入れてくれるキャンプがあるんだって。
大学の先生に紹介してもらったんだ。
タクシー、お前。
今日はまず、オリエンテイリング。
事務所で講習みたいなのを受けるんだ。
じゃあ、行ってくるね。
タクシーはそう言って、玄関を出て行った。
父と息子の焼鳥屋での対話
タクシー、出かけちゃったの?
ああ、もう出て行ったよ。
霊子は洗濯物を干していて、気がつかなかったようだ。
出かけるなんて聞いていないわ。どこへ行ったの?
ボランティアと言っていたけど。
ボランティア?あなた知ってたの?
俺も今聞いたんだよ。
ちょっとタクシーに連絡するわ。どこへ行って何時に帰るのか。
いいじゃないか。タクシーはもう大人なんだぞ。そっとしといてやれよ。
何かあったらどうするの?
大丈夫だよ。タクシーは健康な大人だ。いなくなったりしない。
でも、世の中何が起こるかわからないわ。
霊子はタクシーにメッセージを送ったようだ。
タクシーはいい子だからきっと律儀に返信をするだろう。
霊子の気持ちもわかる。
わかるが、俺たちの心の傷はタクシーにとっては関係のないことなんだ。
親父、おいしいお店教えてよ。
ある日、タクシーはいたずらっ子のようににかっと笑い、そう言った。
霊子は自分も行きたいとだだをこねたが、
たまには男二人で行かせてくれと説得し、駅前の焼き鳥屋に連れて行くことにした。
へえ、松永さん家のぼっちゃんももう成人ですか。
めでてえな。何だか親戚に祝い事があったみたいだ。
客商売のリップサービスかもしれないが、
それでもタクシーのことを喜ばれるのは、
自分のことよりなんだか嬉しかった。
えーっと、俺さ、焼酎飲んでみたい。
いきなり焼酎は早すぎるだろう。まずはショービールにしとけ。
そういうもんなの?
いきなり度数高いの行くと酔いが早いからな。
へえ。
てっきり大学でとっくに飲んでいるかと思ったが、
最近の若者は本当に素直でいい奴が多いみたいだ。
そんな純真無垢で社会に出た時大丈夫なのだろうか。
へい、ショービールと生酎ね。
これはうちからサービスです。大したもんじゃないけど。
大将はそう言って、ビールと唐揚げを差し出した。
大将、そんなのいいのに。
いいんですよ。大人になって親父と飲むなんて最高じゃないですか。
ありがとうございます。
じゃあ改めて、成人おめでとう。
そう言って乾杯すると、タクシーがおそろおそろビールを口に入れた。
にげえ。
はは、最初はそうだよな。
あや、お前の兄ちゃんは大人になった。
すごいよな。
でも、お前がすごくないわけじゃない。
お前は立派だった。立派に生きた。
親父はさ、なんで今の仕事しようと思ったの?
ん?自分で希望してなったわけじゃないかな。
そうなの?
もともと営業マンに憧れて営業やってたんだけど、
あやのことがあって人事に異動になったんだよ。
親父、営業だったの?
そう。休みがちでもなんとかするからって会社が気を使ってくれてさ。
最初はもう最前線から外されたみたいな気持ちもあったけど、
やっぱりみんなさ、いろんな事情を抱えながら働いているんだよ。
事情か。
だからさ、だんだん俺だから提案できることとかもあるのかなって思うようになったらさ、
楽しくなったし、やりがいを感じるようになったかな。
そうなんだ。
タクシーは?やりたいことがあるのか?
俺はね、今、社会福祉士か行政書士かって考えてる。
全然違うじゃないか。なんでまたその2つ?
社会福祉士は直接病気の人の役に立てる。
行政書士は病気の人のサポートをしているNPOとかの役に立てる。
あと俺、一応法学部だし。
タクシー、こんなこと言うのはあれだけど、
アヤのことは気にしなくていいんだぞ。
お前は自由だ。全然違うことをしていいんだ。
タクシーは一瞬驚いた顔をした。
親父と一緒だよ。俺にも俺だからできることがある気がしているんだ。
それならいいんだが。
お前が何を選んでも、父さんはタクシーの味方だ。
アヤ、お前の兄ちゃんは立派だ。
どうかお前も味方でいてやってくれ。
番組の締めくくり
いかがでしたでしょうか。
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それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。
小島千尋でした。
09:53

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