1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #064 大樹を大切に育てた人
2026-03-07 10:14

#064 大樹を大切に育てた人

その人は二葉から大切に大切に育てたのです。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

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◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #小説 #モノエフ朗読
#家族 #夫婦 #幸せ
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サマリー

このラジオドラマは、長年連れ添った夫婦の会話を通して、世代間の価値観の違いや家族の絆、そして幸せの意味を問いかけます。夫は若い世代の根性のなさに不満を感じる一方、妻は子供たちの幸せを願う気持ちを語ります。娘夫婦との会話では、親への感謝と、自分たちが築いた幸せについて語られ、家族の温かい繋がりが描かれます。

卒業公演の帰り道、夫婦の会話
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、様々な人がいることをテーマにお送りいたします。
マナちゃんのビッグバンドの卒業公演の帰り道。
バス停に立っていると、大きな花束を持った女性が後ろに並んだ。
別れの季節だね。
ボソッとつぶやくと、あきえちゃんは不思議そうな顔で俺を見た。
時間ってのは不思議だね。
あきえちゃんとはもうずいぶん長く一緒にいる気がするし、ほんの一瞬だった気もする。
俺がそう言うと、あきえちゃんは言った。
もうすぐ60年になるわよ。
そんなに経つかい?
ええ、そうよ。
すごいね。
まあね。
俺は一瞬たりともあきえちゃんと一緒にいるのに、飽きたことがないよ。
俺がそう言うと、あきえちゃんは。
え?と一瞬考えて。
そういえば、私もだわ。と言った。
つくづくこの人と結婚できて、自分の人生は幸せだったと思う。
大学の同期の妹だった。
たまたま家に遊びに行ったときにあきえちゃんもいて、俺が一目惚れしてしまった。
あきえちゃんの兄貴に、「お前の妹に一目惚れした。」と言ったら、
あんな家畜な女のどこがいいんだと呆れられたが、
逆に他にもらい手が見つからないかもしれないと言って、
交際を申し込むことを許された。
あきえちゃんは最初兄の友人なんて嫌がっていたが、
何度か会っているうちに交際を承諾してくれた。
そのまま俺が24、あきえちゃんが22のときに結婚した。
あっという間だった。
病院での世代間の価値観の違い
亀井さん、こんにちは。
今日はいつものお薬ですかね?
はい、そうです。
じゃあいつも通り尿検査お願いしますね。
はいはい。
尿検査を提出し、待合室に戻った。
ったくよ。最近の若いやつは本当に何もわかってねえよ。
何言って何さ。
たまにこの病院で見かける人たちだった。
俺たちがどんだけ頑張って働いてきたと思っているんだ。
なのに最近は気に食わないとすぐ辞めやがる。
全く根性がない。
そうか。
それなのに嫁は仕事があるからってうちにちっとも寄りつかない。
まあな、わがままなやつは増えたよな。
亀井さんは亀井さんで、
今の人たちは偉いわよね。家事も育児も仕事もして、なんて言って嫁の見方をしやがる。
あいつが甘やかすのが悪いんだ。
自分勝手な言い分だな。
息子も大黒柱としての責任感がない。
稼ぐのが男の役割だろう。
そうだ、稼いでこそ一人前だ。
俺たちの方が給料も低かったし、仕事も大変だった。
それでも歯を食いしばって頑張ってきたんだ。
俺たちの方が偉い。
確かに俺たち頑張ったよな。
息子も年寄りばっかり優遇されてるって文句言いやがるけどよ。
俺たちが優遇されて当然だろう。
俺たちが頑張ってこの国を支えてきたんだ。
下の世代のことなんて知ったこっちゃない。
確かにな。
不思議な人がいたもんだ。
医師との会話と家族への思い
俺はずっと亜紀江ちゃんの幸せのためなら何でもできると思ってきた。
子供たちが生まれたからは子供たちの幸せのために頑張らなくちゃと思っていた。
孫ができてからはとにかくこの子たちの未来を祈ってきた。
だからこの人の言っていることがよくわからなかった。
亜紀江さん、どこか調子悪いんですか?
いえ、そんなことはないですけど。
診察室で大沢先生に突然そんなことを言われた。
それならいいんですけど、いつもとご様子が違う気がしたので。
いえね、さっき待合室で聞いた話が気になって。
どんな話だったんですか?
自分たちが優遇されるべき下の世代のことなんて知ったこっちゃないって。
そんなことを言った人がいたんですね。
俺はね、そんなふうに思ったことがなかったもんだから驚いたんです。
亜紀江さんはご家族と仲がいいですもんね。
いやいや、うちは普通ですよ。家族みんな気のいい連中ではありますけどね。
亜紀江さんの功績ですよ。ご家族大事になさってくださいね。
ありがとうございます。
父親の思い出と子育て
俺の父親は今思えば不思議な人だった。
休みの日は野球や映画館に連れて行ってくれたし、勉強もよく教えてくれた。
あの時代にそこまで積極的に子育てに関わったのは珍しかったと思う。
それでも父は、としみつは父さんの一番の友達だって言ってくれた。
だから当然俺も子供とよく出かけたし、いろんな話をした。
子供の授業参観に行きたいから休みたいと上司に言ったら呆れられた。
子供の授業参観なんて見たいに決まっているじゃないか。
なぜみんな授業参観に行きたがらないのか、逆にわからなかった。
娘夫婦との会話、幸せの形
お父さん、お茶飲む?
家に帰ると双葉が来ていた。
ああ、頼むよ。マナの仕事はどうなんだい?
3ヶ月間は研修みたい。覚えることいっぱいあるから大変だって。
今の子は大変よね。朝から晩まで働かなくちゃいけないなんて。
アキエちゃんがため息をつくように言った。
朝から晩までは昔からそうでしょ。
でも女の子がね、稼ぐ力をつけておいて損はないからね。
子供の苦労を見るのはつらいからね。
それは確かにそうね。私もマナについつらかったらすぐやめてもいいのよとか言っちゃう。
双葉ももうすっかり親だな。
やだ、お父さん何言ってるの。マナもうすぐ23よ。とっくの昔に親よ。
双葉はけらけらと笑った。
でも親になってよかったわ。お父さんとお母さんとようやく腹を割って話せるようになった気がする。
そうかい?
双葉が意外なことを言うもんだから驚いた。
結婚する前はお父さんとお母さんは何もわかってないって思っていたし、
それと同時にね、お父さんとお母さんみたいに幸せになれないんじゃないかって怖かった。
怖かった?何が?
お父さんとお母さんがあまりに仲が良すぎて幸せそうだったけど、
結婚してそんな風になれる人って少ないでしょ?
俺とアキエちゃんは顔を見合わせた。
そうかしら。
そう、だから私の人生はきっとお父さんとお母さんの幸せを超えられないんだってずっとずっと怖かった。
初めて聞いたわ、そんな話。
だって初めて話したんだもの。
だからね、私、ヨウジ君と結婚してマナができて、とってもとっても幸せで、
ああ、ようやく私、お父さんとお母さんと同じくらい幸せになれたんだって思った。
ヨウジ君に感謝だな。
それもそうだけど、お父さんとお母さんにも感謝。
そうかい?
だって私に幸せを教えてくれたのはお父さんとお母さんだもの。
双葉はそう言って笑った。
目尻のシワがアキエちゃんそっくりだった。
エンディング
ああ、俺はやっぱり家族全員に幸せに過ごしてほしい。
いかがでしたでしょうか?
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それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。
小島千尋でした。
10:14

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