1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #063 汚いお金を払う人
2026-02-21 10:00

#063 汚いお金を払う人

妄想が現実を覆い隠してしまうことがあるようです。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

noteに本文を掲載中。
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◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #小説 #モノエフ朗読
#思い込み #カフェ #アラフォー
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サマリー

主人公の河童部長は、部下の大谷から結婚の報告を受け、自身も44歳でまだチャンスがあるのではないかと考える。偶然立ち寄ったカフェで、昔スナックで働いていた女性、りょうこと再会し、運命を感じる。しかし、りょうこの店で彼女が水商売で稼いだお金で店を開いたことを知り、その「汚いお金」について一方的に非難し始める。カフェの店員や客にまでその主張をしようとするが理解されず、警察を呼ばれてしまう。主人公はカフェの客たちが嫉妬してりょうこを自分から引き離そうとしたのだと思い込むが、店に戻る勇気はなかった。

結婚報告と新たな決意
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、さまざまな人がいることをテーマにお送りいたします。
川端部長、俺、結婚することになりました。
朝一番に、「大谷から折り入ってお話があります。」というチャットが来たときは、肝が冷えた。
退職したいという話かと思った。
そうか、そうか。それはめでたいな。具体的にはいつ頃?
3ヶ月後です。その前後でちょっとお休みいただいたりしちゃうかもしれないんですけど。
全然かまわないよ。新婚旅行もしっかり行けよ。
嫁さんに恨まれたら、たわったもんじゃないからな。
部長は独身じゃないですか。誰に恨まれるって言うんです?
お前の嫁さんだよ。あなたの上司のせいで新婚旅行行けなかったとか恨まれたくないからな。
お気遣い。ありがとうございます。
確かに俺は独身だ。別にチャンスがなかったわけではないが、気がついたらこの年だった。
大谷は確か40手前とかだったはずだ。
じゃあ、44歳の俺にもまだチャンスはあるんじゃないか?
偶然の再会と運命の確信
いらっしゃいませ。
外回り中、少し時間ができたので通りがかりのカフェに入った。
店内を歩いていると、カウンターの中にいた女と目があった。
あれ?りょうこちゃん?
俺がそう声をかけると、カウンターの中の女は驚いた表情をした。
あら、河童さん?りょうこちゃん、何してんの?こんなところで。
コーヒー屋さん。
りょうこは、俺が昔通っていたスナックで働いていた女だ。
歌がうまくて、よく酒を飲み、そして豪快に笑い、客から人気があった。
しかし、俺のグラスが開くとすぐに声をかけてきたり、コートを後ろから着せてくれたり、
わざわざ毎回外まで出て手を振ってくれたりと、どう考えても俺に気があった。
次はデートに誘ってやってもいいかと思っていたところ、急にいなくなったから、
事故にでもあったのかと思っていたが、こんなところにいたとは。
そうだ、これは運命かもしれない。俺の運命の女はりょうこだったに違いない。
いやー、びっくりしたよ。まさかこんなところで会えるなんて。
再訪と自己中心的な思い込み
俺は早速次の日、仕事のカレンダーを直近に変え、取引席からの帰り道にりょうこの店に寄った。
私もですよ。まだもみじには行かれているんですか?
それがさ、俺引っ越しちゃって行かなくなっちゃったんだよね。
それは寂しいですね。
そんなたわいもない会話をしていると、窓際の席から声が聞こえた。
すいません。注文お願いします。
はーい。
りょうこは他の客の注文を取りに行った。客は女が多いようだ。
カウンターの後ろには、カップやコーヒーを入れる道具がきれいに並んでいる。
こんなきれいな店を、まさか水商売をして稼いだ金で作ったとしたら、客の女たちは厳密してこなくなるだろう。
女は水商売をしている女が嫌いなはずだ。だから、りょうこを幸せにしてやれるのは、心優しい俺だけなのだ。
河童部長、どうしたんですか?最近ご機嫌ですね。
会社の休憩室で大種にコーヒーをおごってやったら、急にそんなことを言い出した。
何言ってんだ。コーヒーはしょっちゅうおごってやってるだろ?
いや、それはそうなんですけど、雰囲気というか、なんか声が弾んでるというか、そんな気がするんですけど。
わかるか?
いやー、俺も大種に続いちゃうかもなー。
えっ、マジっすか?河童部長だったら気も利くし、お客さんからの信頼も熱いし、お嫁さんになる人は幸せ者ですね。
そうだそうだ、俺との結婚は幸せに違いない。
そうだ、今夜早速リョーコをデートに誘ってみよう。
一方的な要求と関係の破綻
調べたところ、あのお店はSNSをやっていた。
DMで、「リョーコちゃん、今度二人でゆっくり話そう。リュウジより。」と送った。
プロポーズはどんなところがいいかな?公園の噴水前とかどうだろうか?
そうだ、婚約指輪も買わなくちゃ。婚約指輪っていくらくらいが相場なんだろうか?
2万円くらいか?
お店が忙しいからごめんなさい。来てくれれば会えるから、よかったらまた来てくださいね。
リョーコの返事は思ったのとは少し違った。
まったく、リョーコは仕事と俺どっちが大事だと思っているんだ。
これは少し分からせてやる必要があるな。
俺はお前の秘密を知っているんだぞ。そんな邪剣にしていいのか?
そうメッセージを送った後、返事は来なくなった。
カフェでの対立と現実逃避
いらっしゃいませー。
リョーコ!
次の週末、俺は直接リョーコに話をつけに店まで来た。
もしかして、DMの…
バイトの女が俺を見て驚いている。
お前、せっかく気を使ってやったのに、邪剣にしやがって。
いいか?この女はな、スナックで働いてたんだぞ。
俺がずっと通っていたスナックで、何年も何年も働いていたんだぞ。
そんな汚い金で、この店を開いた恥ずかしい女なんだ。
店中の人間に、俺はリョーコの真実を伝えなくてはならない。
みんなリョーコに騙されているに違いない。
え?だから?
バイトの女が、キョトンとした表情をしている。
だ、だから?こんな店、何の価値もないんだ。
ごめんなさい、ちょっと意味がわからないです。
バカな女だな。
スナックで稼いだお金が汚いお金ってことは、
あなたがスナックで払ったお金が汚いってことですか?
は?え、だってそうですよね。
どの瞬間にそのお金は汚れるんですか?
あなたからスナックに支払われるときですか?
そ、そんなのスナックが受け取るときだよ。
汚れるってわかってるのにどうして払うんですか?
そ、それは料金だから。
正当な料金なら別に汚れてなくないですか?
水商売で稼いだお金なんて汚れてるに決まってるだろ?
え?じゃああなたはなんで水商売に行くんですか?
なんなんだこの女は。
これだからバカの相手は疲れる。
も、もしもし?警察ですか?
カフェで暴れてる男の人がいます。早く来てください。
け、警察?
この間のDMも弁護士と警察に相談してあるからよろしくね。
店内を見渡すと客たちは全員、
俺を敵であるかのような目で見ている。
お、覚えてろよ!
俺は慌てて店から飛び出した。
こんなはずでは!こんなはずでは!こんなはずでは!
自己正当化と現実からの逃避
昨年期に続き今期も過去最高域を達成することができました。
特に河童部長のチームは素晴らしかった。
チーム別売上げでダントツだ。今期も期待しているよ。
会社の決起集会で社長がそう言った。
周りを見渡すと社員たちが俺に向かって拍手をしている。
そうだ、本来俺はこうやって人から褒められ感謝されるべき人間なのだ。
あそこの店の客たちが俺に嫉妬して、
リョーコを俺から引き離そうとしたのだ。
そう思いながらも、もう一度あの店に行く勇気はなかった。
いかがでしたでしょうか。
感想はぜひ、ハッシュタグプリズム劇場をつけて各SNSにご投稿ください。
それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。小島千尋でした。
10:00

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