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2025-12-13 21:03

#85 陽を浴びて、夕方にかけて、一夜の3篇を味わう / 吉野弘『詩集 陽を浴びて』朗読解説その1

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今回は、吉野弘さんの『詩集 陽を浴びて』。

吉野さんは、日常の些細なことを詩にしてくれています。
こういう作品を読むと、日常をより丁寧に、より慈しんで過ごせる感覚になっていきます。

サマリー

吉野弘の詩集『陽を浴びて』では、冬の朝に通勤の待ち時間を通じて、日常の中での静かな感覚や生命の持続を探求しています。また、詩を通して感じる心の安らぎや日常の光景を捉えた表現の美しさが語られています。さらに、日常の中で感じる小さな感動や切なさが描かれています。特に、子供時代の無邪気さと大人になることの切なさが織り交ぜられた作品が印象的です。

詩集の紹介と日常の探求
こんにちは。
こんにちは。
じゃあ、今日もいきましょうか。
はい。
今日はどんな挨拶を?
今日はですね、
吉野弘さんの詩集で、
陽を浴びてっていう詩集があるんです。
陽を浴びて。
陽を浴びて。
ちょっとこの詩集、久しぶりに詩を扱うんですけど。
これでいけたらと思ってます。
最近、本当に10月から12月にかけて忙しくて、
ほとんど本を読める時間ちょっと取れてなくて、
なんですけど、寝る前にちょっとだけ本を読む習慣があるんで、
それで詩集だけはちょっと読みやすいじゃないですか。
詩集だけは読んでて、
それで今日、詩集にしようかなと思って。
いいですね。
忙しそうね。
そうなんです。
心がね、忙しないときに。
そうなんですよね。
大丈夫ですか。
ヘイスチョイス。
いいですよね。こういうときに詩ってやっぱいいなって。
本当に短いのにグッと入ってくるっていう感じがあって。
この本はこの間の土曜日に腰屋さんに行ったときに買った本でして。
僕も読んだばっかりですね。
吉野ひろしさん有名な方だから、
僕もちょっと腰屋さん行ったら行くたんびに、
単行本あったらコレクションにするかのごとく買って行ってるんですけど。
それで今回も一応買って改めて味わってたって感じでございます。
この詩集は30編ぐらいあるんですけど、
どうかな、今日10編かそれぐらい候補は見つけてきたんですけれども。
全部扱えなくてもいいですし扱ってもいいですしって感じで思ってます。
詩を通じて感じる心の安らぎ
順番などはお待たせしますので。
そうですね。
なんかね、吉野ひろしさん僕やっぱ改めて好きだなと思ってまして、
この文学ラジオでも以前石垣凛さん扱ったんですね。
石垣凛さんも吉野ひろしさんも、
なんかこう、僕やっぱ好きで、
なんか共通しているものがいくつかあると思ってて、
一つはビジネスパーソンなんですよね、お二方とも。
そうなんだ。
働きながら詩を書いている。
そう、なので、働いているところで感じるようなシーンとかが描かれたりしてるんですよ。
吉野さんとかだと、その通勤電車の中とか、
ホームの話めちゃくちゃ出てくるんですよ、この詩集。
へー。
そうそうそうっていう、
それはなんか僕もなんだろう、やっぱ働きながら詩を書いてるから、
そういう意味ですごくなんか親近感を感じるっていうのがあるっていうのが一つと、
もう一つは、だからね、詩の書き方って多分いろいろある気がしてるんですけども、
僕から見ると、吉野さんも石垣凛さんも、
本当に日常の素朴な光景を書いてたりするんですよ。
普通だったら見逃しそうなことを、
少し感情が揺れた、その詩の場面を言葉に移してるって感じがしてて、
僕も実は、そういう感じで書いてるんです、割と。
なので、なんかとてもそういう意味でも近しい感じがしているし、
こういう詩がいいよなって、自分もそう思ってるから自分もそう書いてるんですけれども、
みたいなところが、なんかね、いいなぁと改めて思って感じたところなんです。
へー。
はい。なんで読んでいくと、なんかね、本当に光景が浮かんでくるような気がいたします。
へー。
じゃあ、いきましょうかね。
はい。
はい。
そうですね、ちょっと前から順番に読んでいこうかな、もう。
一番最初からこれ、詩の、詩集のタイトル、日を浴びてと同じ作品。
日を浴びてっていう作品があるので、それを読んでみますね。
はい。
はい。
日を浴びて、冬の朝、通勤時間帯を過ぎた郊外電車の駅、
人影まばらな長いホームの屋根のないところで、
柔らかな日を浴び、私は電車を待っていた、
ひととき、食と生とに関わりのない時間、
消費も生産もせず、何者かから軽く突き放されていた時間、
何者か、私を遥かな過去から今に送り出してきたもの、
無機質から生命への長い道のり、
生命の持続のための必要な営み、
信じがたいほど緻密でひたむきでひたすらであったはずの意思、
その意思の檻に習慣されたまま、
私はそのひととき、ひたむきでもなく、ひたすらでもなく、
食と生との区引きを思い、ぼんやり冬の日を浴びていた、
逸脱など許すはずのない意思が、
見てみぬふりをしているらしいほんのひととき、
ありあまる柔らかな光を、私は私自身に存分に振る舞っていた、
ホームで電車を待ちながら、という作品でございます。
めっちゃいいですね。
めっちゃいいですね。
衣装系が浮かんだ。
何者か、私を遥かな過去から、今に送り出してきたもの、
無機質から生命への長い道のり、
生命の持続のための必要な営み、
信じがたいほど緻密でひたむきでひたすらであったはずの意思、
その意思の折に習慣されたまま、
私はひととき、ひたむきでもなく、ひたすらでもなく、
食と生の茎を思い、ぼんやり冬の日を浴びていた、
逸脱など許すはずのない意思が、
見てみぬふりをしているらしいほんのひととき、
ありあまる柔らかな光を、私は私自身に存分に振る舞っていた、
ホームで電車を待ちながら。
ここいいですね。
めっちゃいいですね。
いいですね。
冬の太陽の光って本当にいいですよね。
そう。
角度と影と。
自分の体が冷たいから、
火の温かさでバーって温めてもらえるような感じがあって。
なんか、折り。
意思の折り。
そう。
それがシステムとか、社会とか、
ねばならぬ、どうすべき、みたいな、
人間生活の折り、みたいなところを感じつつも、
その駅のホームに、猫のようにひなたぼっこしているお人さん。
そうなんです。
なんか、命が祝福されているみたいな火の光を浴びながら、
なんかそれは等しくね。
猫も鳥もみんな等しく、
命を浴びて、火の光に祝福されているんだけど、
つい人間は、
カゴの中で、
人間生活を囚われちゃうんだけど。
なんかその、通勤ラッシュのちょっと落ち着いた時間みたいなところもまたね、
時間の、時間っていうレールからポンって外れたみたいな感覚も伝えそうだし。
うーん、
ねえ、普通、
そうなんだ、今、
いやこんな感じで、
味わえてる、どんどん味わいにくくなってますよね。やっぱスマホ見たりして、
動画見たりとか、普通に仕事のこと考えてとか、
それはそれで大事なことなんですけど、
なんだろうね、このふとこういう、ちょっと違う次元に降りてみてっていう、
こういうのが、詩人というか芸術家の営みだよなーって感じますね。
本当ですね。
いい。
じゃあちょっと次行きますか。
はい。
月夕方にかけてっていう作品になります。
はい。
夕方の切なさ
夕方にかけて。定期を持ってるとお金払わなくてもいいの?
ある日の夕方、TBSラジオの全国子供電話相談室に、小学1年生の男の子が質問している。
回答者の一人が定期券の仕組みを丁寧に説明し、子供に尋ねた。
定期って、ただで乗れる券だと思ってた?
うん、と子供。
やっぱりそうか。でも、今度はわかったね。
わかった。ありがとうございました。
聞いていて、私は笑い、少し涙が出る。
何でも質問し、何でも答えてもらった幼年児の明るい日々が、今は遥かに私から遠い。
誰にも質問しない多くのことが私にはあり、どうにもなることではないから、
鼻歌を歌いながら台所に行き、やおら、ビールの線を抜く、夕方かけての週刊の中で、という作品です。
いいとこ入れとりますね。
いいですね。終わり方も良い。
良い。
最後の2年読んでみますね。
聞いていて、私は笑い、少し涙が出る。
何でも質問し、何でも答えてもらった幼年児の明るい日々が、今は遥かに私から遠い。
誰にも質問し、何でも答えてもらった幼年児の明るい日々が、今は遥かに私から遠い。
誰にも質問しない多くのことが私にはあり、どうにもなることではないから、鼻歌を歌いながら台所に行き、やおら、ビールの線を抜く、夕方かけての週刊なので、
何て言うのかな、魔法が溶けていく感じっていうか、この切なさみたいな。
子供の頃は全てが魔法みたいだったから、それこそ定期、もうこれさえあれば無料でどこでも行けるみたいなフリーパス感。
願ったらサンタがそれを持ってきてくれるとか、現実というか、仕組みを知る前の無敵な時代、一個一個こうやって終わっていくみたいな、大人になっていくときの、いろんなことをあきらめていく感じ。
切なさみたいな。物をビールで流し込むみたいな。なんかめっちゃいいですね。
いいですね。またこの対比としてビールを持ってくるっていうのがね、いいですね。
でもこれ行為だけを書いてるだけだから、ここにポジティブもネガティブもなくて、余白が読者に何を感じてもらうか任せられていて、でもなんかいいなって思いますよね。
みんなそれぞれにノックされる、心の扉をノックされるようなね、感覚が湧き起こりますよね。
少し涙が出るけども、鼻歌歌いながら台所行くんですね。
ね。TBSラジオに。
いいじゃないですか。
一夜の寓意
いいですね、めっちゃ。なんか隣の人のあれを聞いてるみたい。
そうなんすよね。
すごく身近。
そうなんすよね。
遠い話じゃなくて、ほんとにすごく身近で、音感がすごくいいですね。
こうやって発信してくれると、より味わえますね。こういうのたくさん日常の中にあるんですけど。
じゃあちょっと次、一夜っていう作品なんですけど、これ僕、この詩集の中で一番好きな作品なんですよね。
ちょっと読んでみますね。
一夜、一夜、ある本をその著者が読んでいた。つまらん。顔を上げて著者がうめいた。顔には虚しさと老いの苦渋があった。
彼の守護霊が名目して、ひっそりと部屋の一所に端座していた。
著者は斧が無能を抜刀しそうになりかけて、それができなかった。
守護霊が押し留めていたのだ。という作品でございます。
すごいな。
なんか泣きそう、これ。
すごい。
あれすごいな。
じゅんさんのこれが一番好きっていうお世話を聞いてみたいです。
なんか吉野さんの世界観がすごい出てた作品だと思ってて。
守護霊が出てくるっていうのが、この世で完結しないっていう世界観を持ってる。
で、自分が自分の無能を抜刀しそうになりかけてしなかった、できなかった。
それは守護霊が押し留めていたのだっていう世界観が、ああいいなと思って。
これこう書いてくれないと、自分で思い留まったとかそういうふうに勘違いしたいそうなんだけれども。
多分そういう時もあるんだろうけども、自分の気づいてないところで、
やっぱり多くのものに見守ってもらって、助けてもらって生きてるんだなぁ、みたいなことが感じられる。
しかもそれが守護霊っていうのがまたわかるなぁって思っちゃうよね、僕は。
なんかすごい無言のリスペクトをすごい感じますよね。
感じますね。
抜刀しそうになってしまうんだけど、すごい多次元で立体感というか奥行き感というかすごいありますね。
いいですね、これ。
21:03

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