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あの、種とは何でしょうか。
犬と猫は違う種、人とチンパンジーは違う種なんですけど、何をもって違う種というのかっていうところです。
種の分け方っていうのは一つではないんですね。
でも一番馴染みがあるのは、交配可能かどうかで分けるっていうやり方だと思います。
これを生物学的種概念と言うんですけど、自然条件下で交配して子孫を残せる生物集団を一つの種とみなすっていう考え方です。
見た目が全然違う犬の品種っていうのがいろいろいるわけなんですけど、大半の組み合わせでは雑種の子供が生まれてきます。
さらには狼と犬でも子供が生まれるので、様々な品種の犬に狼まで含めて一つの種っていうことになります。
でも犬と猫の子供は生まれないから犬と猫は別の種っていうことになるわけです。
だから基本的には別の種の個体同士が交配して子供が生まれることはないんですね。
でも生まれてくる例外的な組み合わせっていうのがあるんです。
有名なのはロバとウマの子供でラバっていうのがいるんですね。
こういうのをハイブリッドって言います。
あとはライオンとトラのハイブリッドのライガーっていうのも知られています。
でもこういったハイブリッドは不燃で子供が産めないことがほとんどなんです。
なのでロバとウマの遺伝子がずっと混じり続けるっていう状態にはならなくて、ロバとウマは別の種っていうことになります。
というわけで別の種のオスとメスからは基本的には子供は生まれないんですね。
で稀にハイブリッドが生まれることはあるんだけど、ハイブリッドは子供を産むことがほとんどないわけです。
当たり前なんですけど猫が犬を産んだりすることはないわけなんです。
トンビが鷹を産むっていう表現がありますけど、でもこれはありえないことのたとえとしてあるわけで、
一つの種の動物の母親から別の種の生き物が生まれることはありえないわけです。
もしそんなことがあれば種の定義はもちろんなんですが、種っていう概念から考え直さないといけなくなるような一大事っていうことになります。
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今日はそんな事例、一匹の母親が2つの違う種の子供を産むっていう発見の話をしていきます。
ホットサイエンティストへようこそ、サトシです。
今日紹介するのはモンペリエ大学のヤニック・ジュベラによる研究で、2025年9月のNatureに発表されたものです。
この研究グループはヨーロッパに生息するメッソル族というグループのアリを調査していました。
メッソル族のアリはヨーロッパから中東にかけて広く分布するアリで、多くのアリと同じようにコロニー、集団で生活しているんですけど、
子供を産むのは女王アリだけで、子供を産まないメスの働きアリがたくさんいて、さらに女王アリと交尾するオスがいるっていうことになります。
で、野生の個体をたくさん採取してきて、そのDNAの配列を解析したんですけれども、そうしたら5種類の種がいるっていうことでした。
その特定の種の個体はみんな同じようなDNAを持っているので、DNAの配列を解析すれば、この種の個体だっていうふうにわかるわけです。
でも一つの種、メッソルイベリクスでは少し奇妙な結果だったんです。
この種ではハイブリッドの個体がかなりの数存在するっていうことがわかったんです。
具体的には先ほどの5種類の種の一つ、メッソルストラクターっていうアリとのハイブリッドだったんです。
ですからイベリクスっていうアリとストラクターっていうアリの2種がいて、ストラクターはストラクターだけの集団でコロニーを作ってるんですけど、
イベリクスのコロニーには普通のイベリクスの個体の他に、イベリクスとストラクターのハイブリッドのアリがいたっていうことなんですね。
具体的に実験としてはゲノムDNAを詳しく調べるっていうことをしています。
そうしたらイベリクスアリの女王アリとかオスのアリは普通にイベリクスのDNAだけを持ってるっていうことがわかったんですけど、
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イベリクスの働きアリはイベリクスのDNAとストラクターのDNAを半分ずつ持ってるっていうことがわかったんです。
だからイベリクスの働きアリはイベリクスとストラクターのハイブリッドだって考えることができたわけです。
アリの世界では働きアリがハイブリッドであることが稀にあるみたいで、他にも働きアリが全部ハイブリッドである種がいくつか報告されています。
先ほどのロバとウマの話で、ハイブリッドは子供が産めないっていう話だったんですけど、働きアリは役割として繁殖には参加しないですから、
ハイブリッドの働きアリが子供は産めなくてもそれで大丈夫っていうことになります。
さらにアリでは繁殖を行う女王のメスと働きアリのメスは形態的にも行動的にも違うんですよね。
多くのアリでは同じ遺伝情報、DNAを使って形態と行動の違う2種のアリを生み出しているんです。
でも働きアリがハイブリッド、女王アリは普通に1種からのDNAを持つっていう形であれば、
女王と働きアリが違う遺伝子のセットを持っているっていうことになって、これが役割の違う2種のアリを生み出すのに役立ってるっていうふうに理解されています。
で、こういうタイプのアリでは女王アリは2種類のオスと交尾するっていうことになるわけですね。
イベリクスの女王は女王になるメスを産むときには普通にイベリクスのオスと交尾するわけなんですが、
働きアリを産むときには別の種、ストラクターのオスと交尾するっていうことになります。
というわけで、イベリクスアリは働きアリがハイブリッドであるっていう点で少し変わってるっていうことはわかったんですね。
でも働きアリがハイブリッドであるアリっていうのは他にもいるので、そこまでおかしな話ではないっていうことになります。
でも、研究者らはこの説明に大きな矛盾があることに気づきます。
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イベリクスとストラクターの生息域を見るとあまり一致していないんです。
イベリクスはストラクターのオスがいないと働きアリを産むことができませんから、ストラクターが生息しているところでしかイベリクスは生息できないはずです。
ストラクターのオスがどこから来るかというと、普通に考えればストラクターの女王アリから生まれるはずですから、ストラクターのオスはストラクターの生息域にしかいないっていうのが普通の考えです。
でも、ストラクターのコロニーのいない地域、何百キロも離れた地域でもストラクターのオスは存在していて、イベリクスと交配してハイブリッドが生まれているっていう奇妙な状況が明らかになったんです。
だから、ストラクターのメスがいない場所にストラクターのオスがいるのはなぜだということです。
この明らかな矛盾を解き明かすために、研究者らはイベリクスのコロニーに存在するオスに注目しました。
まずイベリクスのコロニーですから、イベリクスのオスがいます。
当然、遺伝子解析をするとその個体はイベリクスのDNAを持っていました。
さらにやや見た目の違うオスがいて、これがストラクターのオスっていうことになります。
このオスがイベリクスの女王メスと交配して、ハイブリッドの働きありが生まれると考えられるわけです。
このストラクターのオスのDNAを解析したら驚くべきことがわかりました。
ストラクターの個体なのでストラクターのDNAを持っているわけなんですが、なんとミトコンドリアDNAだけはイベリクスのDNA配列だったんです。
ミトコンドリアDNAだけ別の生物のものなんていうのは通常ありえないことで、
普通にストラクターのコロニーにいるストラクターのオスはミトコンドリアDNAもストラクターのものなんですね。
でもイベリクスのコロニーにいるストラクターのオスのミトコンドリアDNAはイベリクスのものだったんです。
動物が持っているDNAは2箇所に保管されていて、それは核とミトコンドリアなんですね。
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核のDNAは父親と母親からやってくるんですが、ミトコンドリアDNAは母親だけからやってくるっていうのが教科書的な知識なんです。
ミトコンドリアは精子からは伝わらないで卵子だけから伝わるんです。
イベリクスのコロニーにいるストラクターのオスは核のDNAはストラクターのDNA、ミトコンドリアDNAはイベリクスのDNAだったっていうことですから、
生物学の常識からはありえない、奇妙なDNAを持った個体が生まれていたっていうことなんです。
これはどういうことなのかなんですが、研究者たちの説明はイベリクスの女王の卵子とストラクターのオスの精子からストラクターのオスが生まれるっていうものです。
ストラクターのオスがイベリクスのミトコンドリアDNAを持ってたっていうことは、イベリクスの卵子からできたって考えることができるんですね。
核のDNAは通常は半分は精子から半分は卵子からっていうふうに合わさってできるんですけど、このケースでは何らかの仕組みでイベリクスのDNAがなくなって、
精子から来るストラクターのDNAだけが残ることによって、核のDNAはストラクター、ミトコンドリアはイベリクスっていうストラクターのオスが生まれてくる、こんなふうに考えることができるということです。
ちょっとややこしかったんですが、イベリクスの卵子、ストラクターの精子からストラクターのオスができるっていう話なんです。
で、この時にイベリクスの卵子から核のDNAが除かれてるっていう説明なんです。
で、これによってイベリクスのメスがストラクターのオスを産むっていう生物学の常識を覆すことが起きているわけなんです。
この卵子の核からDNAが除かれるっていう現象なんですけど、同じ種のアリの精子と卵子の場合では起こるっていうことが報告されています。
その卵子のDNAがなくなって、精子のDNAだけから受精卵が作られることによって、父親のクローンのアリが生まれるっていうパターンがあるんですね。
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今回のイベリクスストラクターの場合では、別の種の卵子と精子でこれが起きてるっていう初めての報告ということになります。
今回の研究は種の概念を揺さぶるものと言えます。
今回わかったイベリクスのことを概念的にはどう理解できるかっていうところなんですが、進化的に考えるとイベリクスはストラクターを利用しているって考えることもできます。
人が馬とか牛を家畜化して利用しているのと同じ感じなんですが、それをゲノムレベルで自分の生活観に組み込んでいるっていうイメージです。
もしくはイベリクスとストラクターは一つであるっていう考え方もできます。
アリのコロニーは普通のものでも一匹一匹の個体っていうよりも全体が一つの大きな生物みたいに振る舞っていると考えることができるんですね。
子供を残さない働き有りまで含めて全体として生きているっていうイメージです。
ここではイベリクスとストラクターの二つの種で大きな一つの個体、超個体を形成しているっていう感じです。
こうした見方をすると、今回のこの研究は単に変なアリが見つかったっていうことだけではなくて、生物の個体とは何か、種とは何かっていう根本的な問題の常識を揺るがす発見であったと言えるわけです。
さて、種の定義なんですが、これはそもそも一つに決まっているものではありません。
交配ができるかどうかっていう生物学的種っていうのが一般的ですけれども、他の概念が使われることもあります。
例えば、DNAが似ている度合いでの分類とか、形態での分類、あるいは生態的とか遺伝的に交流があるかどうかを基準にした分類というのがあります。
こうした分類では、交配できるけど別の種なんていう場合もありますし、交配しない単細胞生物にも適応できたりします。
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だからそもそも種とは何であるかっていうのが簡単に定義できるものではないっていうのがあるんですね。
それでこのような使い分けがされているわけなんですけれども、今回の研究は種というものの理解をさらに複雑にするものだったわけです。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。