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今日はですね、ガンに関する驚くような研究を一つ紹介したいんですね。
この研究なんですけれども、スタンフォード大学のエリン・チェンラによって行われた研究で、サイエンスに掲載された論文なんです。
この研究者たちは、皮膚にくっついている菌を研究していたんですけど、
その菌を少し遺伝的に改変して、動物の皮膚に擦り付けただけで、その動物のガンがなくなるという、そういう結果を示していて、
なんか夢のようなガン治療法ができるんじゃないかという、そういう可能性を示した研究なんです。
ちょっと素晴らしすぎて、にわかには信じがたいような内容で、ちょっと今日はこれを紹介していきたいと思うんです。
まず、論文の内容に入っていく前に、少しだけ免疫とガンの関係について話していきます。
免疫っていうと、まず抗体のことを思い浮かべると思うんですね。
抗体っていうのは、特定の分子と結合するわけです。
ワクチンを打つと、ウイルスの特定の分子に結合するような抗体ができて、その抗体がウイルスにくっついて、ウイルスの働きを抑制するっていう、そういう感じでワクチンっていうのは働くわけなんです。
でも抗体の他に、細胞性免疫っていうのがあるんですね。
これは、キラーT細胞なんて呼ばれる細胞があって、これが悪い細胞を殺すっていう、そういう仕組みなんです。
この場合も、特定の分子を認識するっていう形で働いているんです。
こういうキラーT細胞みたいな免疫細胞に、ガンを攻撃させてガンの治療を行うっていう考えがあって、これをガンの免疫療法って呼ぶんです。
ていうか、もともと体の中にこういう仕組みが備わっていて、細胞性免疫でもってガン細胞ができてきても増えるのを食い止めていたりするんですね。
でもそれがうまくいかなくなってガンになると、ガン細胞が増えるっていうことが起きるんです。
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ちょっと前に日本の本庄タスクという人がノーベル賞を受賞したんですね。
これはですね、まさに免疫細胞でガンを除去するっていう、そういうタイプの薬を開発したことによる受賞だったんです。
こういう薬っていうのは画期的なガン治療につながったわけなんですけれども、それでもやっぱり副作用がいろいろあったりするし、すべてのガンに効くわけではないんですね。
だからまださらにですね、免疫療法の開発っていうのは進められているんです。
それで今回紹介していく論文なんですけれども、この論文の著者たちっていうのはもともと皮膚に住んでいる細菌の研究をマウスを使って行っていたんです。
そのパッと見はわからないんですけれども、動物の皮膚にもですね、たくさんの細菌が住んでいて、動物との共生関係にあるんですね。
そういう皮膚に住んでいる細菌っていうのはマウスとか人間にとってメリットもあるっていうことなんです。
だから動物にとってはですね、そういう細菌を除去する必要はないんですけれども、動物の免疫系のターゲットにされている菌っていうのもあるんですね。
今回特に注目したのが、ヒョウヒブドウ球菌っていう菌なんです。
この研究はマウスで行われていて、マウスはこの菌を持っているんですけれども、人間もこの菌は持っているんです。
さっきキラーT細胞っていうのがいるっていうことを言ったんですけれども、一つのキラーT細胞っていうのは特定の分子を持っている細胞を標的にするんですね。
このヒョウヒブドウ球菌っていうのはキラーT細胞の標的になっているんです。
これってちょっと謎な話で、ヒョウヒブドウ球菌って別に人間とかマウスに悪さをしないので害がないんですよ。
それでもキラーT細胞がやっつける標的になってるっていうことなんですね。
さらに謎なのはですね、ヒョウヒブドウ球菌を標的にするキラーT細胞はあるんだけど、実際には攻撃されていないんです。
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普通は攻撃をされるとそこで炎症が起きたりするんですけど、この菌を狙ったキラーT細胞がうろうろしているのにもかかわらず何も起きていないんです。
これはおそらくですね、この菌が体の外、ヒョウヒのところにいるからっていうところなんですね。
何かしらの理由で皮膚に傷がついて、こういった菌が体の中に入ってきた場合だけ攻撃する、いつでもそういうふうに対応できるようにこういう仕組みがあるんだろうって、そういうふうに考えることができるというわけです。
この研究者たちが考えたのはですね、このブドウ球菌が体の中にいないんで攻撃されてないんだけど、もし体の中に何か標的になるものを作ってやれば攻撃するのかって、そう考えたんです。
ここからちょっとややこしくなっていくんですね。
今言ったようにキラーティー細胞はこの菌を標的にしてるんだけど、この菌は体にないんですよ。
じゃあこの菌の方をいじってやって、体の中にある悪者を標的にするキラーティー細胞を作ってやろうって考えたんです。
具体的にやったのはですね、このブドウ球菌を少し遺伝的に改変したんですね。
それで、そのガン細胞が持っている分子を作るようにしたんです。
その菌の遺伝子を改変するっていうのは割と簡単にできるんです。
メラノーマっていうすごく毒性の強いガンがあるんですけれども、このメラノーマが持っている分子をブドウ球菌の中で作るようにしたんです。
そしたら何が起こるっていうふうに考えたかというと、
この動物の免疫系っていうのはこの菌を認識して標的とするキラー細胞を作るんだけど、
この菌の中にメラノーマの分子があれば、そのメラノーマの分子を標的にしたキラーティー細胞ができてくるだろうっていう、そういうアイデアなんです。
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そういうキラーティー細胞ができてくれば、勝手にメラノーマっていうガン細胞のことを攻撃してくれるんじゃないかっていう、そういうことなんです。
実際にこういうふうに遺伝子改変をした菌をマウスの体になすりつけたんですね。
この菌は皮膚に住むのに適した菌ですから、マウスの表皮に定着したんです。
この状態でガン細胞であるメラノーマをマウスに入れたんです。
普通はこういうふうにメラノーマを入れると、このガン細胞がどんどん増えていって体中に転移していくんです。
実際に比較の実験として、遺伝子改変していない普通の表皮ブドウ球菌を塗ったマウスにメラノーマを入れるっていう実験もしていて、
この場合はメラノーマがどんどん増えていったんです。
遺伝子改変をした菌をすりつけたマウスの場合はどうだったかというと、ガンの増殖が抑えられていたんです。
だから実際にメラノーマを標的とするキラーティ細胞ができて、それがメラノーマを攻撃していたからメラノーマが増えていかなかったという結果だったんです。
この実験の意味するところなんですけれども、そんなふうにちょっと遺伝子改変をした菌を皮膚にすりつけるだけでガンの予防ができてしまうということなんですね。
じゃあですね、もうすでに体の中にできているガンに対しても効果があるのかっていうのも知りたいところなので、それも実験して検証したんです。
だからもうすでにメラノーマを入れてガンが肺なんかに転移している状態のマウスにこの菌をすりつけてみたんですね。
そしたらその場合も効果があってガンが小さくなっていたり、場合によっては全くいなくなったりしていたんです。
治療っていうのは患者の負担の大きいものが多いんですね。
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手術であったり放射線治療であったり、副作用のかなり強い抗がん薬が使われることが多いんです。
割と最近の抗がん薬であれば副作用が少ないっていうものもあるんですけれども、そういうものって開発したり作ったり投与するのが大変なものっていうのも多いんです。
なんだけど今回の論文でやってることっていうのはちょっと特別な菌を皮膚にすりつけるっていうことだけなんですよ。
それで体の中にすでにあるガンに対して大きな効果が見られているんです。
だから嘘みたいに素晴らしい話なんですよね。
さらにこの論文で示していたのは、すでにある免疫療法の薬と併用することによってもっと強い効果が得られていて、ほとんどのマウスでガンが完全になくなっていたということなんです。
だから人間でもこんな画期的な治療法につながるんではないかっていう期待を持たせてくれる仕事なんです。
でももちろんこれはマウスの仕事なので、マウスでうまくいっていてもそれが人で必ずしもうまくいくということではないんですよね。
指摘されていた課題が2つあります。
その、表皮、ブドウ、球筋でマウスでうまくいってたんだけど、人でもこの筋でいいのかっていう問題があります。
それから筋を改変するんだけど、その時にどんな分子を標的にするのかっていうのが、なかなか選ぶのが難しいところであるっていう点です。
それ以外にも実現のためには超えなきゃいけないハードルがたくさんあるわけなんだけれども、実現した時のメリットっていうのは測り知れないものであると言えると思います。
今回の研究グループっていうのは、もともと体の表面にある筋の研究をしていたんだけれども、それをガンの治療に使ってみようっていう着想の優れた研究で興味深かったので、今日は紹介してみました。
今日は一つお知らせがあります。私は本業では大学の教員をしているんですけれども、ちょっとそれについてです。
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12月の3日から5日にかけて日本分子生物学会というのがパシフィコ横浜で開催されるんですね。
その真ん中の日、4日の朝に自分の研究で発表をするんです。
この番組を聞いている人の中には研究者の方もいるようですので、もしこの学科に参加される方で興味がある方がいれば、ご連絡をいただければと思います。
あるいは研究者の方であれば、研究者情報から簡単に見つけられると思うので、発表の後にいても話しかけていただければと思います。
というわけでお知らせでした。今日はこの辺で失礼したいと思います。最後までありがとうございました。