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2024-04-25 24:36

e63 糖と脂肪の魅惑;シーズンフィナーレ

アイスクリームとかチョコレートのような糖と脂肪の組合せの食品を渇望する理由にせまる研究を紹介します。


今回でシーズン最終回となります。これまで、お聞きいただきありがとうございました。シーズン2でお会いしましょう。


https://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(23)00466-7

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どうですか、みなさん。アイスクリームとかチョコレートって好きですか?
まあ、みんなが甘いものが好きなわけではないですが、好きだっていう人は多いと思います。僕はチョコレートが好きです。
で、これらの食べ物っていうのは、砂糖がたくさん含まれていて甘いだけではなくて、脂肪分も多いんですよね。
例えば、普通のチョコレートは30%が脂肪で、糖はさらに多いんです。
以前、そんなキャッチコピーのCMがあったと思うんですけど、美味しいものっていうのは、炭水化物、つまり糖と脂肪がたくさん含まれていて、そういうものは食べすぎてしまうんですよね。
甘いものは苦手っていう人でも、ポテトチップスとかラーメン、好きな人は多いと思うんです。
で、これらも炭水化物と脂肪がたくさんなんです。
で、そういうカロリーの高いものを人間っていうか動物が好むっていうのは、効率よくエネルギーを蓄えることになるので、利にかなっているわけです。
でも、現代社会ではこういうカロリーの高い食品が簡単に手に入るので、糖と脂肪を好むことが世界中で肥満の問題を引き起こしているわけです。
で、肥満っていうのは十分にカロリーをとっているのに、さらに食べすぎてしまうことで起きるわけですけれども、甘くて脂っこい食べ物は特に食べすぎを起こしやすいということが知られているんです。
だからこそそういう食品は売れるんで生産されているわけです。
ちなみにこういう食べ物、甘くて脂っこい食べ物っていうのは自然界にはあまり存在しないんだそうです。
で、なんでそういう食品を好むかなんですけど、糖とか脂肪の味とか食感を口で感じて美味しいと感じるからっていうのはその通りなんですが、これは話の一部でしかないんです。
その砂糖であれば食べるとその甘い味を美味しいと感じます。
で、砂糖が口の中に入ると舌にある甘み需要帯に結合して、その刺激が脳に伝わるので甘いと感じるわけです。
で、この舌からの刺激があるから甘いものを好むっていうことが動物実験によって示されているし、実際に甘いものを一口食べると美味しいのでさらに食べたいと感じるっていうのもわかると思います。
03:16
甘いんだけどカロリーのない人工甘味料っていうものがあるんですよね。
有名なものとしてはアスパルテイムなんかがありますし、最近よく使われているのがアセスルファムKというやつでコーラゼロなんかに入っているんです。
で、こういった甘味料も甘くて美味しいと感じるわけです。
でもマウスを用いた研究で驚くべきことが明らかになっています。
舌の甘味需要帯が機能しない動物でも砂糖を好むっていうことが示されたんです。
つまり甘みを感じていなくてもしばらく砂糖を含む水を飲んでいるとその水を好むようになったということなんです。
ということは舌で味として甘みを認識するのとは別のやり方で砂糖が認識されているっていうことです。
さらに別の研究では人工甘味料と砂糖の違いを明らかにしています。
砂糖を溶かした水と人工甘味料を溶かした水を並べて置いておくんですね。
そうするとマウスは最初はどちらも同じくらい好んで飲んでいるんです。
でもしばらくすると砂糖の方を好むようになるっていうことが示されています。
この結果からも単に甘み以外にも何か砂糖には好む理由があるっていうことが考えられます。
だから口ではないどこか別の場所で砂糖が認識されていてそれが脳に伝わって行動が変わるっていうことなんですが
口から物を食べさせるんではなくて管を刺して直接消化管に食品を入れるっていう実験を行って腸で砂糖が認識されているっていうことが明らかになっています。
さらに2022年に行われた研究では脂肪についても口だけではなくて腸でも認識されていてそれが脳に伝わってこれが脂肪を欲する理由であるっていうことも明らかになっています。
06:09
これは結構驚きだと思うんですけど、実際にカロリーがある食べ物が腸の中に入っているかどうかを検出するシステムが体に備わっていると理解することができるわけです。
じゃあどのようにして腸から脳に情報が伝わっているのかなんですけれども、最近よく言われているのが腸脳相関あるいは腸脳軸というもので、腸から脳に主に瞑想神経を通じて情報が伝わるというものです。
瞑想神経というのは聞いたことがある人もいると思います。これはいろんな臓器と脳をつなぐ神経細胞の束なんですね。
体をリラックスさせる副交換神経というのは瞑想神経の一部であって、脳から情報を伝えて、例えば心臓の働きをゆっくりにしたり消化管の働きを活発にしたりするものなんです。
でも瞑想神経には臓器の方から脳に情報を伝えるという働きもあることがわかっています。
砂糖とか脂肪が腸の中にあるという情報についても、瞑想神経が伝えているということもわかっているんです。
というわけで、糖や脂肪が腸に入ると、瞑想神経がその情報を脳まで伝えて、何らかの形でその食品を好むようにしているというところまでわかっていました。
しかし、この情報伝達は単に腸の中にカロリーがあるということを伝えていて、糖でも脂肪でも瞑想神経の中の同じ神経細胞が働いているのか、
それとも糖と脂肪は別々の神経細胞を通って別のものとして伝わっているのかというのはわかっていませんでした。
それから、どうして甘くて脂肪の多い食べ物は食べ過ぎてしまうのかの答えも出ていなかったわけです。
今日はこの点を調べた研究を紹介します。
09:03
フォットサイエンティストへようこそ、こなやです。
今日紹介するのはフロリダ大学のモリー・マクドゥーグルラによる研究で、2024年1月にセルメタボリズムに掲載されたものです。
この研究では、腸に糖や脂肪が入った時に、瞑想神経あるいは脳の中でどのような変化が見られるのかをマウスを用いて調べています。
実験では胃に管を通して、糖としては砂糖、物質名としてはスクロースを入れる、もしくは脂肪としてはコーンオイルを直接入れるということをしています。
まず、神経が活動すると、その神経が光るように遺伝子改変したマウスを使って、砂糖もしくは脂肪が入ると、瞑想神経が活動するということを示していて、過去の研究が再現されています。
その時に活動している神経を詳しく調べていって、糖を入れた時に活動する神経と脂肪を入れた時に活動する神経があまりオーバーラップしていないということを示しています。
つまり、糖と脂肪では別の神経細胞が活動しているということを明らかにしました。
さらに、砂糖や脂肪が消化管のどこで認識されているかですけれども、十二指腸で検出されているということも明らかにしています。
この研究では、一つ興味深いことを示しています。
その口を経由しないで、直接消化管に糖とか脂肪を入れた状態で、糖や脂肪ではない別の味の液体を舐めさせるということをしています。
そうすると、その時舐めさせた味をマウスが好むようになるということを示しています。
だから、腸から今カロリーの高いものを食べているという情報が伝わって、その時に食べているものの味を好むようになるということなんですね。
だから、ひょっとしたら、砂糖とか脂肪の味を好むというのも、いつも腸の中で砂糖とか脂肪が検出されるのと一緒にその味を感じているので、それを学習してこれらの味を好むようになっているということが少なくとも部分的にはあるということなのかもしれません。
12:12
だから、砂糖とか脂肪の味を好むのは、カロリーがあるということを学習しているからなのかもしれないということです。
さらに、この研究では、フォス・トラップ法という手法を用いて、この新しい味を好むようになるという現象に、砂糖とか脂肪の情報を伝えている神経細胞が関わっているということを確認しています。
この方法はちょっとややこしいんですけれども、ここは聞き流していても、この後の話の理解には問題はないです。
フォス・トラップ法というのは、神経が活動するとフォスという特定の遺伝子が働くことを利用したシステムです。
だから、砂糖に反応する神経というのは、砂糖が腸に入ったときに活動を起こして、そこでフォスの遺伝子が働くようになるわけです。
遺伝子の改変をして、このフォスの場所に代わりにカスパーゼという細胞を殺す遺伝子を入れておきます。
そうすると、砂糖に反応する神経だけが、砂糖が腸に入ったときに死ぬということが起きるわけなんです。
先ほど話したように、普通のマウスでは、砂糖が腸に入ると、その時に味わっていた味を好むようになるんですけれども、
これをさっきのフォス・トラップの遺伝子改変をしたマウスで行うと、この味を好むようになりませんでした。
このマウスでは、砂糖に反応する瞑想神経の細胞が死んでいるということなんですね。
だから、この味を好むようになるためには、こういった神経が必要であるということが示されたわけです。
これを死亡についても行っていて、同様の結果が得られています。
というわけで、糖と死亡は、瞑想神経の中の別々の神経で脳まで情報を伝えていて、
それがその時に食べているものを欲するように仕向けているということまでわかったわけです。
次に、脳の中で何が起きているかも調べています。
15:03
瞑想神経の情報は、ドーパミンを作る酷質の神経細胞にまで伝わるということが知られていました。
ドーパミンというのは、報酬と関係があるので、ここを詳しく調べてみることにしたんです。
ドーパミンみたいな神経伝達物質は神経細胞で作られていて、
細胞の外へ放出されて別の細胞に作用することで、その効果を発揮します。
神経伝達物質の放出を検出する手法として、マイクロダイアリシスというのがあるんですけれども、
これを使ってドーパミンが放出されているかを調べていきました。
その結果なんですけれども、胃の中に砂糖を入れた時、あるいは脂肪を入れた時に、
いずれも脳の中でドーパミンの放出が上昇するということが明らかになったんです。
だから消化管の砂糖や脂肪が脳の中で報酬に関わる活動を引き起こすということがわかったんです。
砂糖も脂肪もドーパミン神経を働かせているんですけれども、
砂糖と脂肪では脳の中で別の神経細胞を活動させているということも明らかにしています。
だから最終的にドーパミンの放出が増えるんだけれども、そこまでの経路が調査されていけないということがわかりました。
そこまでの経路が腸からずっと砂糖と脂肪では異なるというわけです。
これを考えると一つ想像できることがあるんですね。
砂糖の神経回路と脂肪の神経回路が別なわけですから、
2つを同時にオンにしてやると単独の時よりもたくさんの神経の活動が起きて、その結果より強くその時の食品を好むようになるのではないかということです。
それでこの研究では、砂糖と脂肪を同時に与えるとどうなるかというのを調べていっています。
だから3種類の液体を与えています。
1つは砂糖単独ですね。
2つ目は同じだけのカロリーの入った脂肪単独です。
それに加えて3つ目はトータルとして同じカロリーになるように、それぞれ半分の砂糖と脂肪両方を混ぜて入れた液体を与えるということを行いました。
18:11
その結果なんですけれども、砂糖も脂肪も好まれるので、砂糖単独でも脂肪単独でもその時の液体を飲んでいたわけです。
でもカロリーは同じなんですけれども、両方が入っていた場合の方が1種類よりもたくさん液体を飲んでいた、より強く好んでいたんです。
これはマウスに砂糖や脂肪の溶けたものを飲ませても、胃に直接入れて飲むのは別の液体という風にしても、同じ結果で砂糖と脂肪同時の方が単独よりも好まれるという結果だったんです。
さらにこの時の脳の中のドーパミンの放出というのもマイクロダイアリシスで調べていて、2種類同時の時は1種類よりもドーパミンの放出が増えているということも明らかにしています。
だから以上の結果をまとめると、砂糖も脂肪も報酬として重要で好まれるわけなんですけれども、これらは体の中、腸の中で別々の神経に作用しているということがわかったわけです。
それが別々の経路で脳の中まで伝わって、ドーパミンの放出を引き起こすわけです。
そういうふうに別々の経路なので、同時に両方がやってくると、砂糖2倍とか脂肪2倍よりもさらに強い報酬になるということなんです。
もちろんこれはマウスの実験なわけで、人でそうなのかというのは確認が必要なわけなんですけれども、これがチョコレートとかアイスクリームあるいはドーナツみたいな甘くて脂っこいものは食べ過ぎてしまうということの理由かもしれないということを示唆する研究だったわけです。
ちなみに腸の中での砂糖の検出なんですけれども、別の論文では砂糖が分解してできたグルコースが検出されているということを示しています。
グルコースというのは砂糖からだけではなくて、米とか小麦に含まれる澱粉が消化してもできるんです。
21:02
だからラーメンとかポテトチップスみたいな甘くはないんだけど、炭水化物とか脂肪がたっぷりな食品というのも同じように両方の経路を刺激するはずなので、こういった食品を食べ過ぎてしまうというのも今回の研究の結果で説明できるかもしれないなと個人的には思ってしまいます。
今日はご報告があります。今回のエピソードをもって当番組のシーズン1を終了ということにします。これまで皆さんどうもありがとうございました。
番組に何点かマイナーチェンジをして、次回からはシーズン2として再始動ということになります。
ちょっと間が空く可能性もあるので、まだの方は各アプリで番組をフォロー・サブスクライブしておいてもらえると嬉しいです。
さて、海外ドラマなんかではシーズン最終回になんか盛り上がることが起きて、その結末を次のシーズンの最初の回まで引っ張るっていうクリフハンガーがよくやられるわけです。
あんまりドラマチックなことはできないですけど、次回予告をちょっとやってみますね。
じゃあ質問なんですけど、人の顔を見るときにどこを見ますか?
例えば誰かと向かい合って話をするときに目を見て話しますか?それとも鼻とか口を見て話しますか?
一般的に人の目を見て話す方が信頼感があるとか、コミュニケーションがうまくいくとか言われていると思うんです。
でも僕は口を見てるんですね。
どこを見るかについては人によって違っていて、しかもなかなか変えられないということなんです。
このどこを見るかの個人差っていうのは文化的なものであったり、個人の性格、心理的な影響で決まっていると考えられています。
だから自信がない人、不安が強い人っていうのは目を見られないとかそういうのです。
でも最近、顔のどこを見るのかは心理的なことは関係ないし、そもそも顔のパーツとも関係ない、もっとシンプルな理由があるっていうことを示す研究が発表されました。
24:02
次のエピソードではこの研究を紹介します。
では今日はこれで終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。
シーズン2でお会いしましょう。
24:36

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