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今日は最初に、今後のスケジュールについてご連絡があります。
まず一つは、12月14日20時から、ライブ配信、公開収録を行う予定でいます。
また前回と同じように、旧TwitterXのSpaceという機能を使って、なあちゃんとちょっとテーマを持って話をしていこうと思っています。
それから、12月から1月初旬の配信なんですけれども、少しイレギュラーになる予定でいます。
新作のオリジナルエピソードは少なめで、お便り回や再放送を混ぜながらという形になります。
さらに年末年始に関しては、1週か2週休みにして、その期間に新作のストックを作ろうと思っています。
その後に再開という予定で考えています。
本業の都合もあって、状況次第なんですけれども、通常エピソードは結構お待たせするという形になってしまいます。
また休みの直前には改めてご連絡いたします。
ではこの後、今日の本編が始まります。ぜひお聞きください。
てんかんとバルプロ酸の影響
あの、転換っていう病気がありますよね。
これは脳の神経細胞が突然異常に興奮する病気なんです。
で、それが脳全体で起きることを全般発作って言うんですけど、そうすると意識を失って体が激しく痙攣します。
発作は自然に収まることも多いんですが、突然意識を失うとどんな事故になるかわからないし、それがいつ起きるかわからない中で生活をするのは困難を伴うわけです。
さらに発作が長時間続いて治療しないと止まらないこともあって、このような状態は命に関わります。
幸いなことに転換発作を予防する薬があるんですけど、予防のためですから転換の患者はこれを服用し続けることになります。
何種類かあるんですが、どれも神経の活動を少し弱くする作用のある薬で、全般発作の場合よく使用されるのがバルプロ酸というものです。
この薬は発作を予防する効果が高く、多くの転換患者で発作の頻度を大幅に減らして、比較的安全に生活することを可能にしています。
しかしバルプロ酸には重大な副作用があります。
それが胎児への悪影響なんです。
妊娠中に母親にバルプロ酸が投与されると、胎盤を超えて胎児に到達して、心臓や脳、脊髄の発達などに異常が起きることがあります。
必ずそうなるというものではなくて、リスクがバルプロ酸を投与しなかった場合の2倍から3倍になるとされています。
ですからバルプロ酸から他の発作予防薬に変えたり、薬物の量を減らしたりして、なるべくリスクを減らして妊娠・出産に臨むということが行われます。
しかし発作の起きやすさに個人差があって、人によっては多量のバルプロ酸がないと発作が抑えられないこともあります。
そして母親の発作は、胎児の発達に対して悪影響があるので、発作は抑える必要があるんです。
一応、養産のサプリメントが脳や脊髄の障害のリスクを下げると言われていて推奨されています。
しかしこれは転換でない人でもリスクを少し下げるもので、転換患者でリスクを少しでも減らすために推奨されているわけであって、バルプロ酸の悪影響を抑制する方法っていうのは見つかっていません。
オルガノイドを用いた研究
今日はオルガノイドっていう培養した臓器のモデルを用いることで、バルプロ酸の持つ発達への悪影響を抑制する薬物を見つけた研究を紹介します。
ホットサイエンティストへようこそ。サトシです。
今日紹介するのはクイーンズランド大学のジョバンニ・ピエトロ・グランデラによる研究で、2024年9月のモレキュラー再開アトリーに発表されたものです。
バルプロ酸によって影響を受ける体の部位ですが、心臓や脳脊髄の他に顔の形状であったり抹消神経があります。
胎児の発生の初期ではこれらの組織で共通して関わっている細胞っていうのがあって、神経底細胞と呼ばれるものです。
この神経底の底は包みっていう字なんです。
発生の初期には神経幹っていう最終的に脳とか脊髄になる場所があるんですけど、そこでこの神経底細胞はできます。
その後に他の場所に移動していって、抹消神経の細胞であったり筋肉細胞であったりに変化して、その場所で働く細胞になります。
ちなみにこういうふうに細胞の特性が変わって、別の種類の細胞に変化することを分化と言います。
この論文では、バルプロ酸と神経底細胞には何か関係があるのではないかと考えて、神経底細胞に対するバルプロ酸の影響を見るところから研究を始めました。
ですから、人の神経幹にバルプロ酸を振りかけるっていう実験がしたいわけですが、当然そんなことはできないわけです。
それでオルガノイドと呼ばれるものを用いました。
細胞を培養して小さな組織をシャーレに作ることが可能になっていて、このような培養組織はオルガノイドと呼ばれます。
すでに小さな脊髄のようなものを作る方法が開発されていたので、それを用いることにしました。
具体的にはまず人のiPS細胞を作ります。
これは人間の細胞にいくつかの遺伝子を導入して、受精卵に近いようなどんな細胞にでも分化できる状態に戻したものです。
この細胞を段階を踏んで分化させていくと、小さな脊髄のようなものができるという形ですので、この発達の過程を観察するということになります。
さらに、この細胞に人工的な遺伝子を組み込んでおいて、最初は光らないんだけど、神経底細胞に分化すると赤く光るようにしておきます。
この神経底細胞がさらに分化して、もう神経底細胞としての性質がなくなると、緑に光るようにしておきました。
これによって神経底細胞の動きと分化が追跡できます。
ちなみに詳しい人向けに話しておくと、これは神経底細胞だけで働く遺伝子の発現をさせることで行っています。
というわけで、このような準備をして実験に取り掛かったわけです。
まず最初に確認されたのが、この脊髄のオルガノイドには赤く光る細胞があるということで、神経底細胞が確かにいることが確認されました。
いよいよバルプロ酸をふりかけてみるわけです。
その結果ですが、バルプロ酸を入れたときには神経底細胞が大幅に減っていました。
これでバルプロ酸が神経底細胞に何か影響を及ぼすことが明らかになったわけです。
次に神経底細胞にどのような変化が起きていたのかを調べていきます。
まずバルプロ酸によって神経底細胞が特定の細胞種に分化してしまっていることを突き止めました。
神経底細胞はいろいろな種類の細胞に分化することができて、それがいろいろな器官を作るのに大事だという話だったわけですが、
バルプロ酸があると、まだ神経底細胞であるべきタイミングで特定の一種類の細胞に分化してしまって、本来作られるべき他の細胞ができなくなっているのでは?ということでした。
では、なんでそんなことになるのかという点を調べるために、バルプロ酸を入れたときに神経底細胞で働く遺伝子に変化がないかを調べました。
すべての遺伝子を網羅的に調べる解析を行っているんですが、その結果、細胞の老化に関係ある遺伝子の発現が増加していることがわかりました。
ということは、バルプロ酸によって細胞が老化している可能性があります。
その細胞の老化と細胞の分化には関係があることが知られているので、バルプロ酸によって細胞が老化することが神経底細胞の分化の異常を引き起こしているのではないかと考えられます。
そうであれば、バルプロ酸による細胞の老化を食い止めることができれば、異常が元に戻るはずです。
細胞の老化とラパマイシンの可能性
ここでヒッシャラはラパマイシンという免疫抑制薬あるいは抗がん薬としても使われる薬に注目します。
この薬はモデル生物では寿命を延ばすという研究があって、細胞の老化を抑制する働きがあることが知られているからです。
ですから、この薬を使えば細胞の老化を止めてバルプロ酸による異常を減らせるのではないかという考えです。
そこで培養した脊髄にバルプロ酸を加えて、さらにラパマイシンにさらすという実験を行いました。
バルプロ酸の影響とラパマイシン
その結果ですが、まずバルプロ酸を入れると神経底細胞が減るということだったんですけど、そこにラパマイシンを入れるとそれが元に戻ったということです。
さらに細胞の老化の指標になる特定のタンパク質の発現なども調べているんですけど、細胞の老化も抑制されているようだということでした。
というわけで、人の細胞から作ったミニ臓器オルガノイドでは、ラパマイシンを使うとバルプロ酸による悪影響を元に戻すことができるということが示されたわけです。
さらにこの研究では動物でも検証を行っています。
ゼブラフィッシュという魚がいて、モデル生物として様々な研究に用いられています。
転換薬のバルプロ酸がゼブラフィッシュでも異常をもたらすということがすでにわかっていて、顔の形の異常などが見られるということです。
この研究では発達中のゼブラフィッシュにバルプロ酸を投与して解析したところ、神経底細胞に相当する細胞が減少するということが明らかになりました。
さらにバルプロ酸プラスラパマイシンを投与すると、何の薬剤も加えてない時のように神経底細胞がたくさんになったということです。
なので培養した脊髄の時と同じようにバルプロ酸は神経底細胞に異常をもたらすけど、ラパマイシンでそれが抑制できるということがわかったわけです。
というわけで以上の結果をまとめると、まず転換予防薬のバルプロ酸は発達中に神経底細胞に異常、特に細胞の老化をもたらし、その結果分化がおかしくなるということがわかりました。
さらにラパマイシンという薬によってバルプロ酸による悪影響が減るということが明らかになったわけです。
で当然この結果を受けてラパマイシンとバルプロ酸を併用すれば、転換患者で起こるバルプロ酸による胎児への悪影響を抑えられるのではと思うわけで、論文でもその可能性が触れられていました。
オルガノイドを用いた研究
でもラパマイシンは免疫抑制薬であり抗がん薬であって様々な副作用を持つ薬なんです。
まして胎児ですから薬の影響に最も慎重になる必要があります。なのでラパマイシン自体よりはもっと安全なものの開発が必要になるかもしれません。
それにまだマウスでの実験も行われていないですから、まだまだやることはたくさんある段階であると言えます。
今回の論文ではオルガノイドと呼ばれる培養したミニ臓器を使って研究を行っていました。
通常のバイオ細胞では今回注目した神経底細胞のような周りの環境を受けて移動したり分化したりする細胞の解析を行うのが難しいんですが、
そのような環境を作ることでバルプロさんのこの細胞への影響を明らかにすることができたわけです。
ラパマイシン自体が対策になるかはわからないんですが、今までわかっていなかったバルプロさんのターゲットを明らかにして、
一つ標的とできる場所を明らかにしたという点で、将来の応用につながる可能性のある研究です。
そしてそのような発見のために、ツールとしてのオルガノイドの有用性が発揮された研究でした。
最後に少し補足があります。
転換予防薬によるリスクなんですけど、最初の説明でもあったようにリスクが高い多量のバルプロさんでも3倍程度だとされています。
だから健康で何の薬も使ってない人でも少しだけ胎児に障害が見られる可能性があるんだけれども、それがバルプロさんによって3倍になるという意味です。
バルプロさんの量を減らせばリスクは減りますし、転換予防薬の中にはリスクが使っていない場合と変わらないと報告されているものもあります。
なので医師の指示の下、薬を調整することが大事だというわけです。
その転換の人はみんな子供を諦めないといけないっていう誤解が世の中にはあるそうなので、そうではないっていうことを付け加えておきます。
じゃあ今日はこの辺で終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。