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S3E21 感情は体でも作られる
2025-11-06 18:56

S3E21 感情は体でも作られる

感情はどこから来るのか、脳だけで作られるのか、という長年の疑問に答える研究を2つ紹介します。

前半は2023年の再放送、後半は新作です。

https://www.nature.com/articles/s41586-023-05748-8

https://www.nature.com/articles/s42255-025-01264-3


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今日は、感情はどこから来るのか、脳だけで作られるのか、っていうテーマのエピソードになるんですが、
前半は過去のエピソードの再放送で、2023年の論文を紹介しています。
さらに、後半は新作で、同じテーマの別の論文が2025年になってから発表されていたので、それについて話しています。
では、この後本編が始まります。ぜひお聞きください。
あの、悲しくて泣いてしまうことってありますよね。
でも、なんか逆も聞いたことないですか?
だから、悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいんだっていう、まあそういうやつです。
つまり、物を考えている脳から感情が来るんではなくて、その体の方から感情が来るっていう、まあそういう話もあるわけなんですよ。
釣り橋効果ってあるじゃないですか。
有名な実験で、すごく高いところにかかっている釣り橋を男女で歩かせるんですね。
そうすると、怖くてドキドキするんだけど、でもこのドキドキしているのを恋してドキドキしているんだと認識して、恋心が生まれるっていう、まあそういうのがあるんです。
だから、体で起こっていることが感情を生み出すっていう、つまり心臓の方から脳へ伝わって感情が生まれるみたいのがあるんじゃないかって考えられているわけなんです。
で、このドキドキするのでいくとですね、不安な時ってドキドキするわけなんですよ。
だからこれも脳の方から心臓へっていうのがあるわけなんだけど、でも逆にドキドキしているから不安になるっていうのもあるんじゃないかと考えられているんだけど、これに関しても結論が出ていないわけなんです。
今回はですね、光遺伝学っていう割と新しい技術で厳密な実験をすることによって、この古くからある問題を明らかにしたっていう、そういう論文があって、その話をしていこうと思うんです。
この研究はですね、マウスを使って調べた研究で、最近ネイチャーに載っていた論文なんですね。不安な時にドキドキするっていうのはよくわかるんですよ。脳からですね、心臓を調節する機能があるんですね。交換神経っていうやつです。
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交換神経自体は抹消にある神経なんですけれども、脳の方からそれをコントロールするようにできているわけなんですよ。逆にですね、ドキドキすると不安感が増えるのかっていうのはよくわかっていないんです。
それを調べようと思ったら、人工的に心臓をドキドキさせて、つまり心拍数を上げて、その結果不安が増えているかどうかっていうのを調べてやればいいっていうことになるわけなんです。
でもこういうのって、簡単そうに見えて意外と難しくてですね、マウスであってもそう簡単にできないんですね。
心拍数を上げる薬っていうのは色々あるんです。でも薬っていうのは色んな場所に作用して、こういうタイプの薬って脳の中でも作用するんですよ。
だからそういう薬を与えて心臓をドキドキさせて不安になったとしても、それが直接脳の中にも作用しているっていう可能性を否定できないっていうところなんです。
この論文では、心臓だけをコントロールするシステムっていうのを作り上げているんです。
そのために利用したのが光遺伝学と呼ばれる手法です。
光に反応して細胞を活動させるタンパク質っていうのがあるんですね。
目で物が見えるわけなんだけれども、それっていうのは目の中に入ってくる光に細胞の中にあるタンパク質が反応しているからなんですよ。
だからそういうタイプのタンパク質を使ってやれば、光でもって細胞を活動させることができるわけなんです。
遺伝子操作でもって、そういうタンパク質を体の中の細胞で作らせるっていうのが光遺伝学っていう手法なんですね。
ここでは遺伝子操作をして、こういうタンパク質を心臓の筋肉だけで作らせているんです。
さらにですね、その心臓の近くにライトを埋め込んだんですよ。
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光るタイミングをコントロールできるようなライトを埋め込んでやることによって、好きなタイミングでライトをオンにしてやって、
そのライトがオンになったときに心臓の筋肉が活動するっていう、そういう仕組みをマウスの体の中に作ったんです。
これを使えば好きな周期で心臓をドキドキさせることができて、しかも薬を使った場合みたいに他の場所に作用することがないっていう、そういうシステムになります。
これを使って実験してみたんですね。
マウスが不安に感じているときにはこんな行動をするっていうのがわかっていて、それでもって不安のレベルを測ることができるんですね。
安全な場所とちょっと危ない場所っていうのを準備しておくと、不安を感じているマウスっていうのはより安全な場所を好むようになるんです。
そういう行動実験をした結果でもって不安のレベルっていうのを評価することができるわけなんです。
実験の結果なんですけれども、まず4割ぐらい普段よりも心拍数を上げてやったんですね。
その状態で行動実験をすると、明らかに不安のレベルが上がっているっていう結果になりました。
他にもたくさん実験をして、こういうふうに不安のレベルが上がっているっていうのを確認したんです。
だからこの結果から、少なくともマウスでは心拍数を上げてやれば不安が増えるっていうことがわかったんです。
つまり純粋に身体の方、心臓の方から感情が作られるっていうことが明らかになったわけなんです。
誰でも少しはそうだと思うんですけれども、人前で話す時とか、試験の時なんかに心臓がすごくドキドキしたり、手が震えたりするっていうのがあるわけなんです。
その治療としてですね、プロプラノロールっていう薬が使われることがあるんですね。
この薬っていうのは交換神経の働きを弱めるような作用があって、心臓のドキドキをゆっくりにするっていう作用があるんです。
この薬を使うと不安も減ることが多いんですよ。
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でもこれって何でかよくわかってなくて、ドキドキが減るから不安が減るのか、それとも脳へ直接の作用があって減るのかっていうのがよくわかってなかったんだけれども、
今回の結果を考えると少なくとも一部は心臓のドキドキするのが減って不安が減るっていう、その可能性が考えられるっていうことになるわけなんです。
ここまでお届けした話は体で起きていることが不安を作り出すっていう内容でした。
最近また別の論文で抹消の組織が不安をもたらすっていうものがありましたので、今日はアップデートとしてそちらについても話していきたいと思います。
戦うか逃げるかみたいな強いストレスを感じたときに交換神経が活性化します。
これによって心拍数が上がり血圧が上昇し、全身にエネルギーが行き渡るようになります。
このときに不安も生じるわけですね。
不安っていうのは単なる厄介な症状ではなくて、不安を感じることで危険を回避する行動を取るので、進化の過程で備わった大切な反応でもあるわけです。
交換神経が活動するとノルアドレナリンとかアドレナリンが放出されて、これが心拍数や血圧の上昇を起こすんですが、
一つ不思議な点があります。
血中にアドレナリンを投与してもマウスは不安行動を示すんです。
血液と脳の間には血液脳関門という構造があって、血中に投与されたアドレナリンは脳には入っていけません。
でも、末症の血管にアドレナリンを投与すると不安になるということで、これは謎だったわけです。
先ほどの研究は一つの答えになるわけなんですが、全く別のアプローチでこの点を調べた研究が発表されていて、
2025年4月、タウンセンドラによるネイチャーメタボリズムの論文です。
この研究チームは死亡組織に注目しています。
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交換神経が働いてアドレナリンが放出されると、死亡組織にも刺激が伝わって、貯蔵された死亡の分解が起こります。
それがエネルギー源として供給されるんです。
これもストレスに対する応答の一つなんですね。
でも、死亡組織はそれだけではなくて、多くのホルモンを分泌する内分泌機関としての顔も持っています。
そこでこの研究では、マウスにアドレナリンを投与して、死亡組織でどの遺伝子が働き始めるのかを網羅的に解析しています。
その結果、最も強く誘導されていたのがホルモンの一つのGDF15というものでした。
GDF15は普段は血液中にはごくわずかしか存在しないんですが、病気とかストレスの時に急上昇することが知られています。
ですから、すでにストレス応答に関係があるということが分かっているホルモンなわけですね。
そしてGDF15の受容体は脳の中でも脳幹の限られた部分にしか存在しません。
脳幹の一部には血液脳幹紋が緩い場所があって、血液中のホルモンを直接感知できる、いってみれば脳にとっての窓口のような場所があるんです。
GDF15の受容体はここにありますから、GDF15は血液から脳へ直接シグナルを送ることができるわけです。
脂肪組織からのGDF15の放出なんですが、脂肪細胞そのものではなくて脂肪組織の中にあるマクロファージという免疫細胞から起きていることをこの研究では示しています。
アドレナリンが脂肪細胞に作用すると脂肪が分解されて、いろいろな種類の脂肪が細胞の外へ分泌されます。
その一つのパルミ鎮酸がマクロファージを刺激してGDF15を分泌させて、その結果血中のGDF15の濃度が上がるということでした。
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実際、脂肪の分解に関わる酵素を働かなくしたマウスでは血中のGDF15の上昇は見られなかったということです。
このように分泌されたGDF15は血流に乗って脳幹に届いて、情報が脳内に入ります。
さらに、扁桃体や子床下部といった不安に関わる脳領域が活性化されるということと、マウスは不安行動を示すようになるということを示しています。
例えば、アドレナリンを投与した後に不安のレベルを測定する行動試験をしているのですが、通常のマウスはアドレナリン投与後に不安が上昇します。
でも、GDF15の受容体を働かなくしたマウスでは不安の上昇が見られませんでした。
ですから、この結果は、死亡からのGDF15のシグナルが脳に伝わって、不安行動が生み出されるということを示しているわけです。
一つ注目すべき点として、急性ストレスではGDF15が上昇するのに対して、慢性的なストレスではそうはならないことを示しています。
つまり、ストレスがかかった直後にGDF15が死亡組織で増えて、それが脳に伝わって不安が生じるんだけど、慢性的なストレスでずっとこれが置きっぱなしになったりはしないということでした。
交換神経の活動によって心拍数が上昇するんですが、先ほどの研究ではそれによって不安が上昇するということを示していました。
また、この新しい研究では、交換神経は死亡組織を刺激するわけですが、それがGDF15というホルモンの働きで脳まで情報が伝わって、それで不安が生じるという結果だったわけです。
どちらの効果が大きいのか、2つの研究の結果は完全に整合性があるのか、など疑問は残るんですが、不安というのは脳の中だけで作られるものではなくて、脳の外、慢性の組織の影響も大きいことが示されたわけです。
また、不安障害は非常に多い疾患です。
今回の研究は、不安治療のターゲットは必ず脳でないといけないわけではなくて、死亡組織など慢性の組織をターゲットにした不安治療薬も開発できる可能性を示していて、今後の研究も注目されます。
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今日はこの辺で終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。
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