先週のエピソードに関連して、食事と免疫に関するエピソードを番組アーカイブからお届けします(初回放送 2024年)。こちらでは、食べ物の好き嫌いと免疫系・アレルギーとの関係を明らかにした研究について話しています。さらに、この研究の続報となる論文が発表されていたので、こちらについても簡単に話します。
追記
問題が見つかったため、2026年9月6日に編集したものを再アップロードしました。
詳しくは、9月6日公開の「訂正 コルチゾールについて」をお聞きください。
2023年の論文他
https://www.nature.com/articles/d41586-023-02179-3
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06188-0
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06362-4
2025年の論文他
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adp0240
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adp0246
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adz6439
感想
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みなさんこんにちは。 先週は食事と免疫の関係について話をしました。
今回は当番組の過去回から、同じように食べ物と免疫について話したエピソードをお届けしたいと思います。
ここでは、アレルギーを持つ食品を食べるのを避ける仕組みを調べた2023年の研究について話をしています。
その後、2025年にはこの続報と呼べる論文が2つ発表されていたんです。
今回はアップデートとして、最後にこれらの論文について少し話をしたいと思います。
ぜひお聞きください。
結構前にとある知り合いが話していたことなんですけど、彼女の子供が卵を食べようとしないそうなんです。
嫌いだって言って、せいぜい一口食べるかどうかなんだそうです。
ある時、そんな好き嫌いをしててはいけないって言って食べさせたんですね。
そうしたらその後に気持ちが悪くなって全部吐いてしまったそうなんです。
彼女が言うにはきっとアレルギーがあったんだろうっていうことなんですね。
でも、親がその時までアレルギーだってことに気づいてないっていうことは、こんな風に吐いてしまうことが何度もあったわけではないと思うんです。
で、そうであればその本人、子供もアレルギーがあるってわかってないはずなんです。
でもそれを感覚的には嫌いな食べ物であるって認識してるんじゃないかってことなんですよね。
でもそんなことってできるんだろうかって不思議に思ったんです。
そのアレルギーを起こしているのは免疫系なんですよね。
だから原因物質であるアレルゲンも免疫細胞が検出しているわけなんです。
でも物が好きかどうかっていうのは脳の神経が決めていて、味とかは感覚神経が感知して、それが脳に伝わるわけです。
で、免疫系も脳神経系っていうのもどちらも脳を記憶するっていう特別な能力を持つシステムなんだけど、全く別のシステムなんです。
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だからアレルギーがあったとして、その吐いたりとかそういう反応が起きてない状態でその情報が脳に伝わるもんだろうかって思うんです。
ただ脳と免疫系っていうのはお互いが制御し合うっていう話があるんです。
例えば脳でできるコルチゾールっていうストレスホルモンは免疫反応を抑制するっていう働きがあるんですね。
逆に免疫系は感覚神経の一部を刺激して脳に影響を与えることができるっていうのもわかっているんです。
でもこんな風に免疫系や神経系の全体へ作用するっていう話ではなくて、特定のアレルギーに関する免疫の記憶が脳に作用して食べ物の好みを変えることがあるかどうかははっきりしてないんです。
もしそうであったとしてその仕組みが何なのかっていうのは全くわかってないわけです。
最近まさにこの点を調べた研究が発表されていたので、今日はその話をしていこうと思います。
今日紹介する研究は、2023年7月のネイチャーの同じ号に掲載された2つの論文で、イエール大学のエスターフロアシャイムらによるものと、ドイツがん研究センターのトーマス・プラムラによるものです。
アレルギーがあると、その対象の物質、アレルゲンが体に入ってきたときに、くしゃみとかかゆみとか応答したりするわけです。
こういった反応っていうのは、体の中からそのアレルゲンを除く反応なわけですね。
もしその食べ物のことを嫌いになって、避けるように行動が変化すれば、それもそのアレルゲンが体の中に入ってくるのを減らすことにつながるわけです。
免疫によって、そういう食べ物を避ける行動が起きることを示唆する研究っていうのもあるんですけど、まだはっきりしていなくて、その詳しいメカニズムはよくわかっていなかったんです。
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今回のこの2つの研究っていうのは、その点を検証しているんですね。
どちらもやっていた実験としては、オボアルブミンという卵の白身のタンパク質に対するアレルギーをマウスで引き起こすっていうものです。
免疫反応を強化するアジュバントっていうものがあるんですけれども、それと一緒に投与するとアレルギーを持ったような状態になるんです。
この状態でアレルギー、つまりオボアルブミンが好きかどうかを調べていったんです。
具体的には、ただの水とオボアルブミンを含む水を用意しておいて、それを選ばせたんです。
オボアルブミンをアジュバントと一緒に摂取したマウスでは、オボアルブミンを含む水を避けていたんです。
でもオボアルブミンのアレルギーになっていないマウスではそんなことはなかったんです。
だからやっぱりアレルギーを食品として避けるっていうことが確認されたんです。
この状態でオボアルブミンを無理やり飲ませるとアレルギー反応が確かに起きるんですね。
このアレルギーを避ける行動っていうのは、アレルギーによる炎症などの反応よりも先に起きるんです。
だからこのアレルギーを避ける行動っていうのは、体を守ることができる反応と言えるわけです。
こんなふうに避けるときに体の中で何が働いているのかっていうのを次に調べていったんです。
アレルギーの時に起きる反応があるんですけれども、
まず免疫が形成されるとき関差と呼ばれる現象があります。
ここではまずアレルゲンが細胞の中に取り込まれて、Lパーティー細胞という免疫細胞がB細胞というのを活性化します。
このB細胞っていうのは抗体を作る細胞なんですね。
このB細胞から抗体が放出されます。
マスト細胞と呼ばれる免疫細胞があって、これはその細胞の表面に抗体をくっつけるんですね。
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この状態になるとマスト細胞の表面に抗体があるので、そのアレルゲンに反応する細胞になるんです。
この後にアレルゲンが入ってくるとマスト細胞にアレルゲンがくっつくんですね。
その結果マスト細胞からいろいろな分子が放出されます。
それがヒスタミンみたいなアレルギー反応を起こす物質でくしゃみであったり炎症であったりが起きると、
そういうふうにして免疫系は働くわけです。
この過程に関わっているものと好きか嫌いかの変化について調べていきました。
まずマスト細胞が機能しないマウスを調べたんですね。
そうするとオボアルブミンを避けるっていう反応が見られなかったんです。
さらにIgEっていう抗体を作れないマウスでも調べてみたんですけれども、
このマウスでもオボアルブミンを避けることが見られませんでした。
というわけでこのアレルギーに対する感染の過程に関わるものっていうのは必要であるっていうことがわかったわけです。
次にマスト細胞から放出される分子のうちどれが重要かを調べていったんですね。
だからヒスタミンが作れないマウスとかを調べていったんです。
でもヒスタミンは関係ないっていうことがわかりました。
他にもいろいろ調べたんですけれども、ロイコトリエンという分子が関係あるっていうことがわかったんです。
ロイコトリエンっていうのは脂質メディエーターと呼ばれるタイプの分子で炎症とか器官死の収縮を引き起こすことが知られています。
だからきっとこのロイコトリエンが何らかの作用で脳まで影響を及ぼすというところまでわかったわけです。
ここまでがプラムラの研究によって明らかになったことです。
もう一方のフロアシャイムラによる研究でも、IgEやマスト細胞が行動の変化に関わっているっていうことを明らかにしているんですけれども、さらにいろいろ調べています。
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彼らが明らかにしたのは、アレルゲンが入ってくると脳の特定の領域が活動しているっていうことです。
それがいくつかの領域があるんですけれども、味覚を含めて感覚情報とか感情とかに関わる領域で、疾悲刺激の需要に関わるとされる場所です。
だからいかにも関わってそうな場所で神経の活動が起きているっていうことがわかったわけです。
さらにこのグループが明らかにしたのは、アレルゲンにさらされると腸でGDF15っていうホルモンが作られるっていうことです。
このGDF15っていうのが最近注目を集めているホルモンで、脳に作用して食欲を減らしたりとか吐き気を起こしたりするホルモンなんです。
オボアルブミンに対するアレルギーを持っているマウスはオボアルブミンを避けるわけなんですけれども、
GDF15の作用を抑制するとオボアルブミンを嫌う行動が見られなくなったという結果だったんです。
だからアレルゲンの疾悲にGDF15も必要であるっていうことがわかったわけです。
というわけでアレルゲンに対する免疫が形成されると、次にアレルゲンが入ってきて腸で吸収された時に2つのことが起きるんです。
まず1つがアレルゲンがマスト細胞に作用してロイコトリエンが放出されて、それが何らかの形で脳に作用するっていうことですね。
もう1つはGDF15が腸で作られて、それも脳に作用するということのようです。
その結果この特定のアレルゲンを好まなくなって避けるっていう行動を取るようになるということなんです。
だからアレルゲンを少量食べると、その炎症みたいなアレルギー反応が起きる前に脳への指令が出て食べないようにすることによって体を守るっていう仕組みがあるっていうことが今回の研究で明らかになったんです。
今回の研究っていうのはマウスで行われたものなんですよね。
おそらく人っていうのはマウスよりも複雑な学習をしていると思われるので、このマスト細胞とかGDF15によるものであるかはわからないっていうところがあるわけです。
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でも食品の好みに免疫も関わっているかもしれないなんていうことを明らかにした面白い研究だったわけです。
今聞いていただいたエピソードで話している論文は2023年のものだったんですけれども、2025年にこの話に関連する続報がサイエンスに2本同時に発表されていました。
少しこの内容について話したいと思います。
先ほどの研究ではアレルギーを持ったマウスがその食品を避けるためにはマスト細胞から作られるロイコトリエンという物質が重要だという話だったわけです。
このロイコトリエンが食物によるアレルギー反応、アナフィラキシーと呼ばれる急激に起こる強い免疫反応にも重要であるということが新しい研究では明らかになったんです。
アナフィラキシーにマスト細胞が重要だということ自体は以前から知られていました。
アレルギンがIgEという抗体を介してマスト細胞を活性化すると、ヒスタミンをはじめとする様々な物質が放出されます。
これによって血管が広がったり、気管死が収縮したりして、重い場合には全身性のアナフィラキシーが起こることがわかっていました。
ただ、意外によくわかってなかったのが食物アレルギーの場合です。
食べ物として口から入ってきたアレルギンが腸で最初にどのような反応を引き起こして、それがどうやって全身のアナフィラキシーにつながるのか、この部分に関してはあまり詳しくわかっていなかったんです。
2025年の一つ目の研究では、腸にいるマスト細胞を詳しく調べています。
この腸のマスト細胞は、他の場所のマスト細胞と少し性質が違っていて、ヒスタミンはあまり作らず、ロイコトリエンを作る能力が高いことがわかったんです。
そして、このロイコトリエンの合成を薬で阻害したりすると、食物を口から与えたときのアナフィラキシーが弱くなったんです。
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ですから、腸のマスト細胞からのロイコトリエンがアナフィラキシーに関わっているということがわかりました。
同時に発表されたもう一つの研究では、さらに面白いことがわかりました。
このロイコトリエンは、アレルギー反応を起こすだけではなくて、食物に含まれるアレルゲンを腸から体内に取り込みやすくする働きもあったんです。
つまり、アレルゲンによってマスト細胞が刺激されるとロイコトリエンが作られて、それによってさらにアレルゲンが吸収されやすくなり、より強いアレルギー反応につながる可能性があるということなんです。
これら2つの研究は、食品によるアナフィラキシーが起こる仕組みを一段明らかにしたという点で重要な研究なんですが、
2023年の研究で明らかになっていた、アレルギーのある食べ物を避けるという行動に関連していたロイコトリエンが、アナフィラキシーの仕組みにも重要であるということを明らかにしているわけです。
もちろんマウスの研究ではあるんですが、食べ物を避けるという行動と、体の中で起こるアレルギー反応という別々の現象に、途中までは同じ細胞、同じ分子が働いている可能性を示した、そんな続報になります。
では、今日はこれで終わりにしたいと思います。最後までありがとうございました。
次回はクイズコーナークエスチョンタイムの予定です。ではまた来週お会いしましょう。
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