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S3E17 美味しいチョコレート
2025-10-09 19:20

S3E17 美味しいチョコレート

チョコレートはカカオ豆の自然発酵から作られます。風味豊かなチョコレートと平凡なチョコレートの違いを明らかにして、人工的な発酵で美味しいチョコレートを作った研究の話です。

https://www.nature.com/articles/s41564-025-02077-6


感想

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今日はちょっと、チョコレートの話をしていきたいと思うんですね。
あの、僕はチョコレートはかなり好きなんです。
普段、あんまりそんなこと考えたりしないんですけど、
チョコレートもチーズやビールと同じで、発酵食品なんですね。
収穫されたカカオ豆は、何段階もの工程を経てチョコレートになるんですけど、
発酵を行うステップがあるんです。
で、この発酵がチョコレートの風味に大きな影響があって、
発酵してないカカオ豆を焙煎しても、
苦味と渋みが強いだけのものになってしまうそうです。
これに対して、十分発酵されたカカオ豆は、
苦味や渋みが柔らいで、複雑で奥深い風味が現れます。
具体的にどういう風にして発酵しているかなんですが、
収穫したカカオ豆を木箱に入れたりして、数日間寝かせます。
微生物がカカオ豆の糖分や酸を分解するんですね。
ここで生成される代謝産物が、
後の焙煎の工程でチョコレート特有の香りや風味を形成するわけです。
通常ビールやチーズなどの発酵食品では、
発酵を担う酵母や乳酸菌を人為的に加えています。
つまり発酵に適すると分かっている微生物を管理して使っているわけです。
しかしカカオ豆では発酵に関わる微生物は、
主に環境中から自然に付着したものになります。
農家が発酵を始める時に特定の菌を加えるようなことはほとんどなくて、
自然に微生物のコミュニティが形成されるんです。
このため発酵に働く微生物の種類やバランスは、
地域ごとに大きく異なります。
それで同じ品種のカカオでも発酵を行った環境や土地によって、
チョコレートの風味の違いが生まれるんです。
その結果、一部の地域では風味豊かで、
高価で取引されるチョコレートができるのに対して、
一部の地域では苦く渋い平凡なものになります。
ということは、カカオ豆の発酵に関わる微生物群を理解できれば、
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他の発酵食品のように産業プロセスとして発酵過程を最適化して、
どこでも優れたチョコレートが作れるはずです。
実際に様々な手法の解析が行われてきていますが、
発酵過程における微生物群がどのように形成され変化するのか、
そしてどの微生物が発酵に重要なのかについての理解は依然として限られていました。
今日はゲノム解析を駆使して、
風味の良いチョコレートを作る微生物の組み合わせを作り出した研究を紹介します。
ホットサイエンティストへようこそ、サトシです。
今日紹介するのは、ノッティンガム大学のデイビット・ゴポールちゃんらによる研究で、
2025年8月のネイチャーマイクロバイオロジーに発表されたものです。
この論文では、コロンビアの3つの地域の農園に注目して、
2シーズンにわたって詳細な調査を行いました。
サンタンデール、ウイラ、アンティオキアという3箇所なんですが、
サンタンデールとウイラは豊かな風味のチョコレートをもたらす産地として知られていて、
アンティオキアは比較的平凡なフレーバーとされる地域です。
重要な点として、これらの地域で栽培されるカカオ豆の品種はよく似ていて、
遺伝的には大きく違わないことを確認しています。
まず行ったこととして、発酵開始から完了までの約1週間、
毎日カカオ豆の温度を記録して、同時に豆やその周囲の部分からpHを測定して、
酸性度の推移を追跡しました。
分析の結果、温度の変化やpHの変化が産地ごとに少し違うということがわかりました。
特に風味の豊かなチョコレートを作るサンタンデールとウイラは比較的似ているんだけど、
平凡なチョコレートになるアンティオキアでは、他の2つと違っていたんです。
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例えばサンタンデールとウイラでは、温度は上昇していって1週間の時点でも高温が維持されるんですが、
アンティオキアでは4日ぐらいでピークを迎えて、その後は低下していきました。
同じ産地では、いつも同じように変化するので、産地が違えば変化の仕方が違うっていうことは、
このプロセスに関わっている微生物の働きに違いがありそうです。
また、風味の違う産地では、発酵中の温度やpHの変化が違うっていうことは、この違いは風味に関係がありそうです。
次に、発酵中のカカオ豆から何度もサンプルを採取して、その中に含まれるDNAの配列を解析することで、
サンプル内の微生物種の組成を明らかにして、さらにそれが時間とともにどう変化していくかを調べました。
様々な細菌とか酵母が発酵液中には存在するわけですが、まずその組成が時間とともに変化するっていうことが分かりました。
この微生物の組成の変化が、3つの産地で比較すると違うっていうことが分かりました。
サンタンデールとウイラはよく似ていて、例えば発酵の早い段階では酵母の仲間が増えて、
続いて乳酸菌、発酵の終盤では作酸を作る細菌が優勢になります。
でもアンティオキアは様相が違っていて、乳酸菌や作酸菌があまり増えませんでした。
次にこの菌の組成の違いがどのように香りに影響があるのかを調べました。
1つの産地から複数のサンプルを準備して、それぞれについてテイスティングの訓練を受けた人たちに風味を評価してもらいます。
風味豊かか平凡か、さらにどのような風味なのかが評価されます。
一般的な評判と同じで、サンタンデールとウイラは風味豊かと評価され、アンティオキアは平凡と評価されました。
次にそれぞれサンプルの菌の組成を調べて、風味と関係のある菌の種類を統計的に探します。
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その結果、2種類の酵母の動体が風味特性と強く関連していることがわかりました。
これがトルラスポラ族とサッカロマイセス族の酵母なんですが、これらはどちらも発酵でよく見られる酵母の仲間です。
サッカロマイセスはパン酵母とかビール酵母のグループで、トルラスポラ族もワイン醸造などで香りに影響を与えることが知られていて、これらの菌がカカオ発酵でも特有の咆哮成分を作り出している可能性があります。
さて、ここまでで農園の観察から豊かな風味には特定の微生物の集団が関わるということが示唆されました。
カカオ豆に自然に付着した菌は非常にたくさんの種類がいると考えられますが、発酵に重要なのは限られているはずです。
必要な菌を童貞して、それらだけを集めたものを人工的に作れば、どこでも豊かな風味のチョコレートが作り出せるはずです。
次に研究グループはこの課題に取り組みます。
先ほど2種類の酵母を紹介したわけですが、わかっているのは、だいたいこのグループに属するというところまでで、細かい種類まではまだ特定されていません。
そしてこの2種類だけでは、発酵全体を支えるには不十分であるとも考えられます。
これら酵母の生育を支える菌も必要でしょうし、他にも風味と相関のあった菌はありました。
そこでまず、発酵サンプルの中にいる菌をわかる分だけ全部童貞するということが行われました。
サンプルの中のDNAをコンピュータ上でつなぎ合わせて、菌のゲノム全体を再構成するという解析が行われて、55種類の菌がいたということがわかりました。
量が少ないと再構成できないので、他にも多数の種類の菌がいたと思われるんですが、主要なものは55種類だったということになります。
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次に、この55種の微生物の遺伝子を全部見てみて、それらの菌の働きでどんな材料からどんな物質を作り出せるのか、コンピュータ上で解析しました。
糖を分解してアルコールを作るもの、アルコールをさらに使って酸を作り出すもの、
あるいはチョコレートの香りの元となる分子を作るものというふうに、それぞれの微生物は違った酵素を持っていて、全体として発酵という大きな仕組みを支えています。
調べていくうちに、発酵に必要な特定の酵素を1種類の微生物だけが持っているわけではなく、複数の微生物に重複して備わっていることがわかりました。
つまり、55種類全部の菌がいなくても、一部の菌でこの集団が行っている機能すべてを行うことができるということになります。
そこで研究者たちは、最低限必要な菌は何種類なのかを計算しました。
その結果、最終的には、わずか9種類の微生物だけで、豊かな風味のチョコレートを作るために必要な発酵能力の大半を再現できることが予測されました。
ということは、この9種類の菌だけを取ってきて、人工的な微生物コミュニティを作ってカカオ豆にふりかければ、風味の優れたチョコレートが作れるはずです。
この研究では実際にそれもやっています。
この9種類の菌を混合したものをカカオ豆に摂取し、発酵させました。
まず、時間経過による温度上昇とかpHの推移が、自然発酵と同じように起きるということを確認しました。
さらに微生物群の移り変わりもおおむね、期待通りに起こりました。
肝心の風味はどうだったかですが、
9種類の菌で発酵させた豆のサンプルをテイスティングしたところ、複雑とされるサンタンデールやウイラさんのチョコレートに特有の風味がしっかり再生されていることが確認されました。
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一方でランダムに選んだ9種の菌の混合物とか、菌を加えなかった場合では風味の複雑さは得られませんでした。
ですからこの実験は、適切にデザインされた微生物コミュニティを使えば、高品質なチョコレートの風味を人工的に生み出せることを示しています。
さらに興味深い検証をしていて、この9種から1種ずつ減らしてどうなるかを調べるということもしています。
1種類が欠けても風味は大きく崩れないケースもあったので、今回選んだ9種でもまだ遺伝子の機能に重複があるということも示しています。
通常カカオ農園では、自然界に存在する菌の集団によって発酵が行われていて、産地ごとの菌の違いから風味の違いが生まれているということでした。
今回の研究では、人工的に作った微生物の集団を用いることで、風味豊かなチョコレートを生産する発酵を再現できることが示されたわけです。
このように、カカオの発酵のために人工的な菌の集団を作るという取り組みは以前にもあったのですが、
遺伝子解析・代謝経路解析によって必要となる菌の種類を予測し、期待通りの高い効果を持つ集団を見つけている点が、今回の研究の特筆すべき点です。
今回の研究は、ビールやチーズがそうであるように、製造過程を大幅に洗練するのに貢献する可能性があります。
さらには、代謝経路解析で新たな微生物の組み合わせを生み出すことによって、これまでにはなかった風味のチョコレートを作ることも可能になるかもしれないと、筆者らは述べていました。
実は今、チョコレートは危機に瀕しています。すでに異常気象によるシナウスになっていますし、最近発表された論文では、カカオの栽培に適した土地が地球温暖化により今後大幅に減少すると予測されていました。
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温暖化は個人で止めることはできないので、国の取り組み、世界全体での取り組みが重要です。
ですから、目先の経済対策ではなくて、環境政策を重視する正当に投票することが大切であるということを、チョコレートが好きな人にはもちろんですが、そうでない人にもお伝えしておきたいと思います。
じゃあ今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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