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S4E5 記憶力の低下が腸内細菌により伝わる
2026-07-16 20:52

S4E5 記憶力の低下が腸内細菌により伝わる

ミニシリーズ「脳と体」第1回


年をとると記憶力が低下していきます。今回紹介する研究では、若いマウスと老齢マウスを一緒に飼育すると、若いマウスの記憶力が低下することが示されました。そして、この現象には腸内細菌が関わっていました。

https://www.nature.com/articles/s41586-026-10191-6


感想

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その、ある程度以上の年齢の人だと、日々実感しているのではないかと思うんですが、
歳をとるにつれ、学習して記憶するっていう能力が落ちていくんですよね。 記憶の形成には、脳の中のカイバっていう領域が重要なんですが、
過励によりカイバでのこの働きが低下していくことが、動物実験などからわかっています。
ただ、この過励による記憶の衰えにも個人差があるんですよね。 いつまでもしっかりしている人もいれば、早い時期から認知能力の低下が目立つ人もいます。
このような個人差の一部は遺伝の影響であると考えられているんですが、環境の要因もあるとされているんです。
つまり、記憶力は、このようなペースで悪くなっていくっていう風に生まれた時から決まっているわけではなくて、
外部からの影響によってこのペースが変わり得るっていうことになります。 さて、
最近では脳の健康に重要な因子として腸内細菌が注目されています。 人間の腸には非常に多くの種類の菌が棲んでいて、
食べ物の消化を助けたり、腸の健康を守ったりしているんです。 さらに最近では腸内細菌の影響は腸だけではなくて、脳へも影響することがわかっています。
腸内細菌が作る物質や、腸で起こる免疫反応が全身に影響して、
気分とかストレス、さらには記憶や学習など、脳の働きにも腸内細菌が関係する可能性が示されています。
また、歳を取ると腸の中にいる菌の種類が変化することが知られています。
腸の中にいる菌をまとめて解析して、どのような菌がどれぐらいいるのかを調べることができるんですが、
若い個体と歳を取った個体では菌の組成が異なることがわかっているんです。 そうであれば、
脳機能の老化に腸内細菌の過励による変化が影響していてもおかしくないと考えることができます。
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今日はマウスを用いた膨大な実験によって、この点を調べた研究を紹介します。
ペンシルバニア大学のティモシー・コックスらによる研究で、2026年3月にネイチャーに発表されたものです。
この論文の仮説ですが、若い個体と老齢の個体の腸内細菌の違いが過励による記憶力の低下に関係しているというものになります。
これを調べるためには、例えば若い個体に老齢個体の腸内細菌を移して、この若い個体の記憶力がどうなっているかを調べてやればいいわけです。
まず最初の実験として、若い個体と老齢個体を一緒に飼育するということをやっています。
一緒に飼育すると、菌の移動があって、腸内の菌が似てくるということが知られています。
若いマウスと老齢マウスを一緒にいさせることで、老齢マウスの菌が若いマウスに移動するだろうって考えたわけなんですが、
実際に腸内細菌を解析すると、通常の若いマウスよりも老齢マウスと一緒にいた若いマウスの方が、老齢マウスと似た腸内細菌集団を持っているということが確認されました。
次に若いマウス、老齢マウス、そして老齢マウスと一緒に飼育した若いマウスの3種類について記憶力をテストしています。
ここでは2種類のテストを行っているんですね。
1つが新規物体認識テストというもので、見慣れたものよりも新しいものをよく調べるっていうマウスの性質を利用したテストになります。
まずマウスに1種類の物体を見せて、しばらく一緒に置いておくことで覚えさせます。
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この後、この物体ともう1つ別の新しい物体の置いてある部屋にこのマウスを入れます。
最初の物体を覚えていれば、新しい物体の方を長く調べることになります。
でも覚えていなければ、特に新しい方に興味を示すのではなくて、両方を調べることになるんです。
それぞれの物体をどれだけ調べたかを測定して、記憶の指標とします。
それからもう1つはバーンズ迷路と呼ばれるものなんですが、これは迷路の中に脱出できる場所があって、それを覚えていられるかを調べるというテストになります。
これら2つの試験を行うと、若いマウスは年をとったマウスよりも記憶のスコアが高いという結果になって、年をとると記憶力が落ちるというのがマウスでも再現されるんです。
老齢のマウスと一緒に飼育した若いマウスではどうだったのかというと、これらのマウスではスコアが悪く、老齢のマウスと同じようなスコアでした。
つまり老齢マウスと一緒にいると若いマウスの記憶力が悪くなるという結果だったわけです。
この時、若いマウスの全体的な健康状態は老齢マウスみたいに悪くはなってなかったんですね。
でも記憶は確かに悪くなっていたという結果だったんです。
でもこの結果だけからでは腸内細菌が関係あるかはわかりません。
次はいくつか、もっと直接腸内細菌の影響を調べる実験を行っています。
一つは腸内細菌を移植するという方法です。
このためにまず無菌環境で若いマウスを準備します。
菌がないところで育てば腸内細菌を持たないマウスができるわけですね。
次に老齢マウスの糞から腸内細菌を取ってきて、これを無菌マウスに飲ませます。
そうすると老齢マウスが持っている腸内細菌を持った若いマウスができるという形になります。
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比較の対象として若いマウスの腸内細菌を飲ませた無菌マウスというのも作って記憶力のテストをしているんですが、
老齢マウスの菌を持つマウスの方が記憶力が低いという結果だったんです。
だから老齢マウスの菌だけを若いマウスに入れれば記憶力が悪くなることが示されたということになります。
他には抗生物質を与えるという実験もしています。
老齢マウスと一緒にいた若いマウスは記憶が低下していたということだったんですが、
この若いマウスに抗生物質を与えて菌を減らすと記憶力が回復していたんです。
さらに老齢マウスに抗生物質を投与するという実験もしています。
そしたらなんと老齢マウスの記憶力がかなり良くなっていたんです。
他にもいくつか実験をしているんですが、これらの結果から老齢マウスの持つ腸内細菌によってマウスの記憶力が悪くなることが示されたということになります。
しかも記憶力の低下は過虐的なようで、菌の状態を変えれば回復できる可能性も示されたわけです。
ということは老齢マウスの腸内細菌の中には何か記憶力を低下させる菌がいると考えられます。
そしてその菌が若いマウスに移動することで記憶力が低下しているというわけです。
次にこれがどの菌なのかを童貞するための実験をしています。
このために2つの条件を満たす菌を探しました。
1つが年をとると増える。
さらに老齢マウスから若いマウスに移っているというものです。
年齢とか飼育条件の違うマウスの腸内細菌を網羅的に調べてそれぞれを比較することで候補を絞っていくことになります。
その結果最もこの条件に合う形で変化していたのがパラバクテロイデスゴールドステイニーという細菌でした。
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名前が長いのでここではPG菌と呼ぶことにします。
このPG菌が老齢マウスで増えていたということになるわけなんですが、この菌が実際に記憶に関係あるのかを次に調べています。
だからPG菌を増やして若い無菌マウスに定着させるような実験をしてみたわけです。
その結果なんですがこのマウスでは記憶力が低下していたんです。
腸内にはものすごくたくさんの種類の菌が存在していて、年齢によって量が変化する菌もたくさんあるわけなんですが、
このPG菌1種類をマウスに入れただけでも記憶力に変化が起きるということが示されたわけです。
他の菌も関係している可能性も残されていますが、少なくともPG菌には記憶力を悪くする作用があると言える結果です。
これで記憶力を悪くする菌が見つかったということになります。
でもここまではまだ論文のデータ全体の2割ぐらいで、ここから先はPG菌がどのようにして記憶力の悪化を起こしているのかを膨大な実験をして解き明かしています。
あんまりにもデータが多くて長くなるので、ここから先は結論だけを話していきます。
まず記憶には脳の中のカイバの神経細胞の活動が重要であることがすでにわかっているんですね。
で、腸と脳の関係ですが、腸と脳は瞑想神経っていう神経でつながっていて、腸の情報を脳に伝えることができます。
例えば腸に栄養を入れると瞑想神経が活動して、その情報が脳に伝わるんです。
この研究では、腸からの瞑想神経による刺激が脳での神経活動とか記憶力に重要であることを示しています。
つまり、腸の状態を脳に伝える経路が記憶には重要で、この経路がローレーマウスでは弱くなっていることも示しています。
じゃあPG菌はどのように記憶力を悪化させるのかっていうところなんですが、それも解き明かしています。
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まずPG菌は中作死亡酸と呼ばれる物質を増やします。
次にこの分子が免疫細胞の一部に作用します。
その結果、炎症を起こす物質が免疫細胞から放出されます。
この炎症性物質が瞑想神経に作用して、腸から脳への感覚情報の伝達を悪くします。
つまり、PG菌によって炎症反応が起きて、腸から脳への情報伝達が悪くなって、これが記憶が悪くなる理由であるっていう結果だったんです。
この菌は若いマウスでは少ないけど、老齢マウスでは多いわけですね。
腸の中でこのような菌の量が変化することが、老齢マウスでは記憶が悪くなる主要な理由であることを、この研究では示したということになります。
さまざまな脳の疾患では、脳の中での炎症が関係あることが知られていて、脳内の炎症は脳機能に悪影響を及ぼします。
でも、PG菌の作用については、炎症が起きていたのは腸などの抹消組織でした。
つまり脳の外の炎症も、脳機能に悪影響があることを示していると言えます。
今回の論文では、非常にたくさんの実験をして、PG菌がどのように最終的に記憶を低下させるのかまで、一通り実験的に示していて、目を見張るような研究だったわけです。
特に驚くのが、腸内細菌の記憶に対する影響が非常に大きい点です。
データからは、少なくともこの実験系では、過励による記憶の低下の大部分は菌の変化によって説明できるように見えるんです。
しかも菌の影響は過虐的なようで、菌を除けば回復していました。
一般的には、過励によって脳自体が変化していると考えられていて、それを支持する研究もたくさんあります。
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今後どのような理解になっていくのかはまだわかりませんが、今回の研究は、過励による記憶力の低下に対する新たな見方をもたらすものといえます。
まず、年をとるとPG菌のような菌が増えて記憶が悪くなるっていうことでしたから、今回マウスで見られた記憶の低下は、感染症に少し似たような細菌の伝播によるっていう見方も可能だと個人的には思いました。
実際に抗生物質を使ったり、PG菌の過励で起こる変化をブロックすると記憶が改善しているんです。
つまり感染症治療と同じようなやり方で、少なくともマウスでは記憶の低下を抑えることができているわけです。
じゃあ、記憶力のために抗生物質でも飲んでみようかと思ってみたりもするんですが、今回の結果は人工的な飼育家のマウスの話です。
人で記憶を低下させる細菌、人にとってのPG菌が存在するのかはまだわかりません。
それを突き止めるのが今後の課題の一つだと論文の筆者らも述べていました。
それに腸内細菌には脳機能を含めて健康にプラスになる様々な働きがあります。
なので、必要もないのに抗生物質を飲むのはやめておいた方がいいっていうことになります。
じゃあ今日はこれで終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。
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