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最初にお知らせがあります。 来週から、ミニシリーズ、「脳と体」と称して、関連したエピソードを連続でお届けしたいと思います。
例えば、体の特定の臓器の病気を考える時に、 それはその臓器の問題だと考えがちです。
でも、精神的なストレスによって病気が悪化することがあったりするように、 脳から体へは様々な影響があります。
そしてその逆、体の状態が脳の機能に影響を及ぼすこともあります。 最近、こういった脳と体の相互作用について、
興味深い研究が次々と発表されていたので、 これらをこのシリーズでは紹介していきたいと思っています。
さて、先週のクエスチョンタイムでは、化石についての研究からの出題がありました。
それと関連して、今週は生きた化石についての過去のエピソードをお届けします。
良ければお聞きください。 あの、生きた化石と呼ばれる生き物がいますよね。
有名なのはシーラカンスなんですけど、もともとシーラカンスの化石っていうのが見つかっていて、
約4億年前から6500万年前までの地層から見つかっていたんです。
この6500万年前っていうのが、恐竜が絶滅したタイミングで、
これ以降の地層からはシーラカンスは見つからないので、シーラカンスもここで絶滅したんだろうって考えられていたんです。
でも1938年に南アフリカ沖で生きて泳いでいるのが発見されて、世界中に衝撃を与えたんです。
現在は絶滅危惧種の指定を受けているんですけれども、それでも何億年も前に生まれた生物が、その形を変えずに存在し続けているわけなんです。
他にもカブトガニとかチョウザメのように形をほとんど変えずに存在している生き物がいて、生きた化石と呼ばれます。
その何億年っていう時間を形を変えていないっていうのは不思議なことなんですね。
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例えば我々人、ホモサピエンスの歴史は30万年程度と言われていて、それですらすごく長い時間なわけなんですけれども、何億年っていうのはそれとは桁の違う果てしない時間なわけです。
哺乳類自体、数億年前にはいなかったんですね。
恐竜を含めてその時代に生きていた生物っていうのはいなくなって、そこから進化した別の生き物が今は生きているわけです。
そのごく稀な例外である生きた化石っていうのは、そういう永遠とも思えるような長い時間をそのままで存在し続けていて、まるで時間を止めて進化を止めているように見えるわけです。
でも単にずっと昔の祖先と形、形態が似ているだけで、体の中はちゃんと変化している可能性もあるわけです。
だから進化が遅くなっているかどうかはわからないんですね。
今日はこの点を検証した研究を紹介します。
ホットサイエンティストへようこそ、佐藤です。
今日紹介するのは、イエール大学のチェース・ブラウンステインラニオの研究で、2024年3月にエボリューションに掲載されたものです。
今回の論文の主役になるのが、ガーと呼ばれる北アメリカに生息する淡水魚です。
見た目としてはワニを想像してもらって、その手足がヒレになっているという感じで、大きいものだと体長3mにもなります。
このガーも生きた化石で、古いのは1億年くらい前から化石が見つかっています。
原生の種、現在も生きている種が7種あるとされています。
この7種は大きく分けると2つに分類されて、アトラクトステウス族とレピソステウス族です。
恐竜の時代、その白亜紀とかその後の時代に生きた種というのがいるわけなんですけれども、そういう古い種でもこれら2つの族に分類されるものがいるんですね。
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だから恐竜の時代からほとんど形を変えずにガーという生き物が存在し続けているということになります。
この論文では進化の速度を調べていくわけなんですけれども、具体的にはDNAの変化していく速度を調べているので、少しDNAと進化について話していきます。
その生き物の遺伝情報、ゲノムというのは非常に長いDNAなわけです。
4種類の単位となるような小さなDNA分子があって、それがたくさんつながって長い文字列となって情報を持った大きなDNA分子ができるんです。
でもDNAそのものが生命機能に働いているわけではなくて、DNAの情報を元に様々なタンパク質が作られて、タンパク質が生き物の体を働かせているんです。
だから生命の機能そのものであるタンパク質の情報がDNAに書き込まれているというわけなんです。
DNAというのは親から声が伝わるわけなんですけれども、DNAは完全に安定というわけではないんですね。
時々変異といってDNAの配列が変わるんです。
DNAはタンパク質の情報を持っているわけですから、DNAが変わるとタンパク質が変わることがあって、その結果生き物の性質が変わる。それが進化なんです。
進化というと性質が良くなっているというイメージがあると思うんですけれども、DNAの変異はランダムに起きるので、良いこともあれば悪いこともあるんですね。
でも生きるのにとって都合の良い性質というのは残っていくというのが進化論の考え方です。
さっき様々なタンパク質といったんですけれども、ものすごく長いDNAの中にタンパク質の情報を持っている部分がバラバラに何万個もあって、それぞれからいろんなタンパク質ができてくるんですね。
そういうふうに一つのタンパク質の情報をコードしている部分のことを一つの遺伝子と呼びます。
動物のゲノム、DNAにはかなり無駄が多くて、遺伝子と遺伝子の間の部分とか、タンパク質の情報を持っていないDNAの領域というのがかなり多いんです。
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人だとDNAのうちタンパク質をコードしているのは数%程度で、残りのかなりの部分というのは無駄なものだと考えられているんです。
そういった無駄な部分は変異が入っても生存にほとんど影響がないので、世代とともにどんどんDNAが変化していきます。
でもタンパク質をコードしている部分に変な変異が入ると、生きていけなくなってしまうこともあるので、制約があってタンパク質をコードしている部分はゆっくりと変化していくし、
生き物の性質を変えるという点でも進化上意味のある変異であるということになります。
こういうふうにタンパク質の情報をコードする部分をエクソンと言うんですけれども、この論文ではエクソンの部分の配列が時間とともにどう変化していったかを、
ガーなど生きた化石と通常の生物について調べていってます。
進化しにくくなっているかどうかというのを調べようと思っているわけですから、生きた化石とそうでない生物について、時間あたりにどれだけDNAの変化が起きるかを調べればいいわけです。
もし進化が遅いのであれば変異がゆっくりと蓄積しているはずです。
専門ではないので大雑把な説明なんですけれども、それをどういうふうにしていったかというのをちょっと説明していきます。
ゲノム計画なのでDNA情報というのはすでにかなり明らかになっているんですね。
禁煙の種についてDNA情報を比較していきます。
例えばガーであれば、原子の7種のエクソンのDNAを並べておくわけですね。
そうするとそれなりに似ているので、比較することによって共通祖先がどのような配列を持っていて、そこからどれだけDNAの変異が起きたか計算できるんだそうです。
でもこの段階では時間の情報がないんですね。
これらの種が共通祖先からいつ分かれて、今の例えば7種類に分かれていったかという枝分かれを化石などの形態の情報から解析した研究が過去にいろいろな生物について行われていて、この情報を使っていきます。
だからこの系統関係の枝分かれのタイミングの情報とDNAの変異の情報を合わせることによって、時間あたりにどれだけDNAの変異が起きたかを計算できるということなんです。
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これをいろいろな動物のグループについてやって、動物ごとにDNAの変化の速度というのを求めていきました。
これで求められる数字の単位ですけれども、DNA1カ所について100万年で何回変異を起こすかというものです。
結果なんですけれども、哺乳類の平均が0.02回ということでした。
だから5000万年すればすべての場所が平均1回変わるということで、もう跡形もなくDNAが変わってしまうということだと思います。
両生類の場合は変化がもう少しゆっくりで0.007だったということです。
だから哺乳類の3分の1ですね。
じゃあ生きた化石がどうだったかというと、シーラカンスが0.0005で、他の多くの生きた化石もそれぐらいだったということです。
これが哺乳類の40分の1なんです。
だからやっぱり普通の生物よりもDNAの変化が遅いという結果でした。
でもガーだけはさらに特別で、0.0009、哺乳類の200分の1以下という最もDNAの変化が遅いということが分かりました。
さらにガーについては面白いことが分かりました。
ガーには7個の種がいて、大きく2種類の俗に分類されると言ったんですけれども、生息地が少し重なっていて、そういった地域では俗の違う2種類のガーの雑種が生まれているということが今回の研究で詳しく調べてみて分かったんです。
この2つの俗というのは、約1億年前に分かれたと言われているんですね。
そんなずっと前に祖先から分かれた別の生き物が交配して、しかもその雑種の個体に生殖能力があるということだったんです。
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これは驚くべきことで、哺乳類に置き換えると全ての哺乳類同士で交配できるということなんです。
だから人と象から子供が生まれるというぐらいのタイムスケールのことなんです。
だからこのガーの交配というのは、これまで報告されている中で最も時間的に離れた種の間で生殖能力の子が生まれた例だということです。
ただ、種の定義というのは基本的には交配できるかどうかなので、こうやって生殖できる子供が生まれているということは本当に別の種なんだろうかと個人的には思ってしまいます。
でも1億年前に別れたということであれば、それがまだ交配可能ということは、やっぱり遺伝的な変化がゆっくりだということを表していると言えると思います。
というわけで、今回の研究では生きた化石と言われる生物、中でもガーはDNAの変化がゆっくりで、進化自体が遅いということが明らかになりました。
だからこういった生物では、その形態が何か特別、例えば生存に特に有利な完璧な形でもうそこから変わらないというわけではなくて、そもそも変化がゆっくりだということが示唆されたわけです。
なぜガーでは変異が少ないのかについては、この研究では調べていないのでわからないんですけれども、可能性として述べられていたのは、変異が入った時に修復する能力が高いのではないかということでした。
それからもう一つ付け加えたいことがあります。ガーみたいな生きる化石っていうのは、同じ系統に種が少ないんですね。
ガーの仲間っていうのは1億年くらい前の時点の共通祖先から生まれた種が今は7種しかいないわけです。
でも他の、例えば哺乳類では、そこからたくさんの種が生まれて絶滅したものもたくさんいるし、生き残っているものもたくさんいるんです。
さっき話したように、ガーではずっと前に分かれた種がまだ交配可能であるように、種っていうのが分かれるのがすごくゆっくりなわけで、その系統の中の種が少ないっていうのは当然なわけです。
これに対してDNAがある程度変異しやすければ、どんどん新しい種が生まれて、多様性が生まれるっていうことです。
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DNAの変異は、生きている時に体の中で起きればガンの原因になることがありますし、子供に伝われば遺伝的な病気の原因になることもあるわけです。
だから遺伝子変異はあんまり多くないほうがいいんですね。
でも全く起きなければ、進化自体が止まるわけです。
進化の基本的な考えでは、適応っていう意味では新しいものが生まれて、多様性があったほうがそのうちのどれかが生き残るためには有利だとされます。
なのである程度の変異があったほうがいいということだと理解できると思うんですけど、現実にはガーも生き残っているわけで、進化についてはまだわからないことがたくさんあるのかもしれません。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。