S3E7 睡眠と脳内の掃除
2025-06-26 17:13

S3E7 睡眠と脳内の掃除

サトシとアオイが会話形式で研究を紹介します。

脳の排出システムであるグリンパティックシステムの働く仕組みについてです。



論文

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867424013436?via%3Dihub

参考

https://www.nature.com/articles/d41586-025-00962-y


感想

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00:19
こんにちは、あおいさん。
こんにちは、さとしさん。
今日は、あおいさんと会話形式で研究紹介をしていきます。
じゃあ、あおいさん、お願いします。
はい。アルツハイマー病のような神経の病気は、脳の中の老廃物がうまく排除されないために起きるという考えがあるんですが、
今日は、脳内の排出システムについての研究を紹介しますね。
はいはい、お願いします。
体には血管とリンパ系の二つの循環炉があって、リンパ系は余分な水分や老廃物を回収してくれるんです。
血管は心臓がポンプになって栄養や酸素を運ぶ一方で、リンパ系は組織に染み出した水分やゴミをすくい上げる、もう一つのネットワークなんです。
身近な例でいうと、長時間立ちっぱなしで足がむくむのは、リンパ管の流れが滞ることで、組織に水分が溜まって起きると考えられています。
そうですね。他には、虫に刺されたりとか怪我したりした時に、その部分の異物とか炎症産物を回収するっていうのもリンパの働きですよね。
はい。リンパ系は、こうやって体中の老廃物や余分な水分を回収して、最終的には浄脈を通って心臓に流れていくんですけど、
この老廃物を回収する過程で、細菌や異物の除去もしているので、免疫にも重要なんですよね。
とても重要なので、だいたい体中をリンパ管が巡っているわけですが、脳には通常のリンパ管がないんです。
そうですね。しかも、脳と血管の間には血液・脳関門があって、物質の移動が制限されてますよね。
でも、脳はたくさんのエネルギーが消費される場所なので、老廃物も多そうですよね。
はい。なので、脳にはグリンパティックシステムという脳独自のリンパ機能のようなものが存在しています。
グリンパティックシステムは、10年ほど前に命名された比較的最近の発見なんですけど、
このシステムは血管の周りのスペースを使って脳の洗浄液とでも言うべき、脳を脊髄液を流して老廃物を排出しています。
このシステムがアルツハイマー病に関連するアミロイドβやタグタンパク質といった分子を排出することで病気を防いでいるというような研究があって、
もしグリンパティックシステムの流れが血管の硬さや脳損傷などで障害されてしまうと、アルツハイマー病の発症のリスクが増えるとされています。
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グリンパティックシステムは睡眠中、特にノンレム睡眠中に活発になって脳が1日の老廃物を排出するとされています。
睡眠不足だとこの排出がうまくいかないこと、さらに睡眠不足が神経変性疾患の発症の前に起こることがたびたび観察されていることから、近年、睡眠とグリンパティックシステムの関連が注目されています。
ただ、寝ている状態と起きている状態がグリンパティックシステムの流れに影響を及ぼす詳しい仕組みは謎だったんです。
寝ている状態を計測するというのは結構難しくて、マウスを使った実験ではマウスを固定していろいろな装置を掘り付けるわけですが、そうすると簡単に寝てくれなかったりするんですよね。
それで初期の研究では麻酔をかけて調べていたのですが、それだと自然な睡眠とは違うという問題があったんです。
そうですね。睡眠と麻酔って違うって言われていて、麻酔の間にはレム睡眠みたいな状態っていうのはほとんどないですし、ノンレム睡眠と麻酔っていうのもちょっと違うっていうことが知られてますよね。
麻酔では眠気が解消されないっていうのも言われていて、麻酔から覚めた後に改めて睡眠が必要らしいです。
そこで、マウスで自然な睡眠を記録できる装置を開発して、グリンパティックシステムがノンレム睡眠中にどのように機能するかを明らかにした研究が発表されたので、
今日はこの2025年2月のセルに掲載されたナタリ・ハウグルンドラの研究を紹介したいと思います。
ちなみにこれは最初にグリンパティックシステムを見つけたマイケンネザーガードのグループからの論文になります。
まず、この研究では脳のノルアドレナリンという物質に注目しています。
ノルアドレナリンは脳の正反角という小さな部分から出て、血管を収縮させる働きを持っています。
この血管の収縮と歯管、つまりギュッと縮められたりゆるくなったりする状態が繰り返されることで、
ポンプのように脳脊髄液の流れを促進して老廃物を排出させているというのがヒッシャラの仮説になります。
ノルアドレナリンって興奮とか覚醒に関わってますよね。
寝てる時もノルアドレナリンの放出って起きるんですか?
そうなんです。目が覚めている間はノルアドレナリンがたくさん出て、睡眠中は減るんです。
でも、脳の中でノンレム睡眠中には約0.02Hz、つまり50秒に1回くらいの非常にゆっくりとしたリズムで
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ノルアドレナリンが増えたり減ったりするということが報告されていたんです。
このリズムが心臓の鼓動のように血管をリズミカルに収縮させたり止管させたりして、
これが脳脊髄液を脳の奥まで押し込むという考えなんです。
研究チームはマウスを使って起きている時と寝ている時の脳の活動や脳脊髄液の量や動きを調べて
このリズムを詳しく調べたんですが、このためにこの研究ではフローファイバーフォトメトリーという手法を開発して
自由に動くマウスの脳でノルアドレナリンと血液、脳脊髄液の動きを同時に観察しています。
どういうことかというと、マウスの血小と脳脊髄液に蛍光で光る目印をつけて
リアルタイムで記録するのと同時に、ノルアドレナリンに反応して光るタンパク質も使ってノルアドレナリンの放出まで観察しています。
さらに電極を装着して脳波と筋肉の活動を記録することで、覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠中のどの状態だったかが分かるというような形なんです。
すごいですね。
その結果ですが、ノンレム睡眠中にはノルアドレナリンが増えるときに血管が縮んで脳脊髄液が流れるみたいな綺麗に連動した動きが観察されたんです。
もっとすごいのは、この研究では光電学という技術で正反角を人工的に操作してノルアドレナリンを増やすと血管が収縮して脳脊髄液がもっと流れたんです。
逆にノルアドレナリンを抑えると流れが滞りました。
さらに血管の収縮を人工的にコントロールするということもやっていて、血管を働かせると脳脊髄液が流れるということも示しています。
つまりノルアドレナリンが血管の運動をコントロールして脳脊髄液を流すスイッチであるということが実験で証明されたということになります。
なるほど。同時に観察することでノルアドレナリン・血管・グリンパティックシステムが同時に動いているということが分かって、
ノルアドレナリンもしくは血管を操作するとグリンパが動いていたから、ノルアドレナリン・血管・グリンパという順で制御されているということが示されたわけなんですね。
はい、その通りです。
また、ノルアドレナリンのリズムが活発なマウスほど、脳脊髄液の排出が効率よく進むことも発見しました。
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具体的には、ノンレム睡眠中に起こる微小覚醒、つまり少しだけ目が覚める瞬間がこのノルアドレナリンのリズムと連動しているのですが、この微小覚醒が多いマウスほど効率よく排出されていたのです。
これは、ノルアドレナリンが血管をリズミカルに動かして、脳脊髄液をしっかり流している証拠になります。
眠りが深い方がいいのかと思ったんですけど、単純にずっと寝てた方が、老廃物の排出が効率よく進むというわけではないんですね。
そうなんです。それが面白いことに、ただ長く寝るだけではなくて、このノルアドレナリンのリズムが大事なようなんです。
研究では、ノンレム睡眠の時間や深さよりも、ノルアドレナリンのリズムの頻度が脳脊髄液の排出の効率に直結していることを示していました。
ちょっと前なんですけど、脳脊髄液の排出は寝ている時には減るっていう、全く逆のことを言っている論文が出たと思うんですけど、今回の論文との関係はどんな感じなんですか?
それは、2024年のミアオラによるネイチャーニューロサイエンスの論文ですね。今回の論文の記者らは、ミアオラの研究には実験手法自体に問題があるという立場です。
ミアオラは、脳の中だけで標識された分子の動きを見ているのですが、今回の論文のグループは、標識分子が脳の外まで排出されていることも測定してきているという違いがあることを議論していました。
他にも、睡眠中にグリンパティックシステムがよく働くという研究があるので、こちらが正しいだろうと主張しています。
実際に、責任著者のネザーガードは、ネイチャーニューロサイエンスにミアオラの論文の問題点を指摘するコメントも送っていて、それが掲載されています。
へー、なるほど、そんな感じなんですね。
はい。それから、この研究では、睡眠薬の影響について興味深い発見をしています。
はい。
つまり、ゾルピデムは、寝付きは良くするけど、排出には逆効果だということがわかったのです。
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睡眠薬は、一般的には、レム睡眠を減らして、ノンレム睡眠を増やすという形になると思うんですけど、それでも脳脊髄液の排出は減るんですね。
そうなんです。ゾルピデムは、ノンレム睡眠の質を下げてしまうようなんですよね。
自然の睡眠では、ノルアドレナリンのリズムが血管を動かして、脳脊髄液の排出が進んでいくわけですが、ゾルピデムはそれを抑えてしまいます。
実は、ゾルピデムは、人でも記憶や認知機能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていて、この研究でその理由の一端が見えたとも言えそうです。
じゃあ、ゾルピデムは、自然な睡眠には重要な要素があるんだけど、それを変えてしまう可能性があるということなんですね。
はい。この研究は、質の良いノンレム睡眠が脳の健康に重要である可能性を示しています。
ノルアドレナリンがリズミカルに働いて、血管がポンプのように働くことでグリンパティックシステムが働くわけですが、
それによってアルツハイマー病などの原因となる老廃物の排出が進むと考えられて、逆に血管が硬くなったり、睡眠の質が落ちたりしてしまうと老廃物が滞って、脳の病気のリスクも上がる可能性が論じられていました。
そういうふうに言うと、睡眠薬を今飲んでいる人は不安になると思うので、一応言っておきますけど、まだ一個論文が出ただけの段階なわけで、そういう可能性が示されただけということなんですよね。
実際に人で影響があるというのも示されたわけではないので、不眠で困っている人が突然使うのをやめるようなことはしない方がいいと思います。
特に睡眠薬は常用していたのを突然やめると有害作用が出ることがあるので、やめるのにも主治医との相談が必要なんですね。
ゾルピデムなんですけど、非ベンゾー・ジアゼピン系というタイプの睡眠薬で、それよりも前から使われてきた睡眠薬と比べると副作用は基本的には少ないという形です。
それから最近ではオレキシン需要帯気候薬とかメラトニン作動薬みたいな、より副作用が少なくて、より自然な睡眠をもたらすとされるタイプのものがよく使われるようになってきてますから、そちらを使っている人も多いかもしれません。
いずれにしてもですね、ポッドキャストもそうなんですけど、ネット上の健康情報っていうのは信頼できるかよくわからないような情報にあふれているので、確認をせずにそれをもとに行動を変えるっていうのは危険なのでやめたほうがいいと思います。
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もちろん、実際に見てもらっているお医者さんに相談したほうが正しい情報が得られる可能性が遥かに高いっていうのがあります。
そうですね。ネット上の情報は注意が必要ですね。今回の研究についてだと、脳脊髄液の移動は見ていますが、老廃物自体の移動は見ていないので、老廃物の影響が変わっているかはまだわからない段階です。
人の脳でも、ノンレム睡眠中に似たリズムの動きがあるという報告はありますが、今後、人での研究が進むともっとはっきりするのではないかなと思います。
それに、不眠は日常生活に大きな影響をもたらす深刻な問題なので、たとえ副作用があったとしても使う必要がある場合があります。
でも、その判断するには、まず意図しない副作用を理解する必要があって、今回の研究はそれに気づかせてくれる研究でもありました。
また、今回の研究で活用された光遺伝学やファイバフォトメトリーのような先進技術を活用したアプローチは、脳の働きをリアルタイムで解明する大きな可能性を示しているので、脳の機能や神経疾患の治療法の開発に新たなヒントをくれる研究だったのではないかなと思います。
はい。睡眠の大切さの新しい一面がわかる論文だったかなと思います。
じゃあ今日はこんなところで終わりにしましょうか。
はい。今日も最後までお聞きいただきありがとうございました。
ありがとうございました。
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