1. ポッドサイエンティスト:ライフサイエンス
  2. S3E25 女性の脳では眠ってい..
S3E25 女性の脳では眠っていた遺伝子が老化により働きだす (+季節の挨拶)
2025-12-18 24:43

S3E25 女性の脳では眠っていた遺伝子が老化により働きだす (+季節の挨拶)

なぜメスの方が老化に強いのか?メスだけが持つ不活性化したX染色体が、老化によりどう変化するのかを調べた研究です。

https://www.science.org/doi/full/10.1126/sciadv.ads8169

.

関連過去回

https://open.spotify.com/episode/6L9wYGyHlQ0pPTxjQ5sD2D?si=4BlqM-4FQzKd1zpX1kFSsA

https://open.spotify.com/episode/7wAOlhlGXByNrotCFRrqFA?si=313d1ef9778545ef

.

この後、数週間お休みです。よいお年をお迎えください。

このエピソードの最後になぁちゃん、アオイさんからのメッセージがあります。

.

さらに、3人の雑談をポッドキャスト外で公開しています。良ければお聞きください。

https://note.com/podscientist


感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

00:00
今日のエピソードなんですが、以前公開したS3E9〈なぜ男女に身長差があるのか?〉
それからS3E24〈なぜ女性の方が長生きなのか?〉と内容的に関係があります。
これらのエピソードを聞いてないと理解できないというわけではなくて、独立はしているんですが、今回のエピソードの理解が深まりますので、もしまだでしたらお勧めいたします。
では、この後今日の本編が始まります。ぜひお聞きください。
人間を含めて哺乳類では一般的にメスの方が寿命が長いことが知られています。その理由についてはいくつかの仮説があるんですね。
その一つが異形配偶子性仮説というもので、オスとメスでは持っている性染色体が違うからだっていうものになります。
人間を含め生き物では遺伝情報はすべてDNAっていう分子に書き込まれています。
DNAは長い糸のような形をしていて、それが整理されて束ねられたものが染色体です。
人間の場合はこの染色体が全部で46本あって、そのうち44本は乗染色体と呼ばれています。
乗染色体ではほぼ同じものが2本ずつペアになっていて、父親と母親から1本ずつ受け継ぎます。
残りの2本は性染色体と呼ばれ、ここだけが少し特別です。
性染色体にはXとYの2種類があって、組み合わせによって性別が決まります。
Xが2本の場合はメスになって、XとYが1本ずつだとオスになります。
つまり体の性を決めるのは性染色体XとYっていうことになるんですね。
乗染色体の方はオスでもメスでも同じなんですが、この性染色体だけが性別で違うわけです。
ですから、寿命の違いもこれに関係があるはずです。
この異型配偶姿勢仮説では、メスはXXと同じ染色体を2本持つから寿命が長いと説明しています。
03:09
何らかの理由で片方のX染色体の遺伝子に良くない変異が入ったりして、遺伝子がうまく働かなくなってももう一つ同じ遺伝子を持っているから、それがバックアップとして働いてくれるので生きていられる。
でもオスの場合はXが1本しかないから、遺伝子の異常の影響が大きいのではないかっていう考えです。
この説明には説得力があるんですね。
その理由として、鳥類ではメスがZW、オスがZZっていう風にメスの方が異なった性染色体を持っているんですが、鳥ではオスの方が寿命が長くこの仮説に一致しているんです。
ただ、この仮説に対して素朴な疑問があるんですね。
それは何かというと、X染色体不活性化との関係です。
そのメスでは2本あるX染色体のうち、片方が働かないようになってるんです。
オスではX染色体が1本、メスでは2本ですから、何にもなければメスの方がX染色体上の遺伝子の働きが2倍になってしまいます。
このアンバランスを調節する仕組みがあって、メスの細胞では片方のX染色体の遺伝子が働かないようになっているんです。
この2本あるうちどちらが不活性化されるのかについてはランダムに決まっていて、細胞ごとに違うんです。
X染色体上にイグジストっていう遺伝子があって、この遺伝子が片方だけで働くことによってそのX染色体が不活性化されます。
ですからメスの細胞では働いているX染色体と働いてないX染色体があるわけなんですね。
この働いてない方のことをXIと呼びます。
こんな風になってるわけなんですが、それでもメスの方はX染色体が2本あるから長生きっていうのはどういうことなんでしょうか。
06:02
片方が働いてないんであれば1本しかX染色体を持ってないオスと同じではっていうことになってしまいます。
で、これはランダムに片方がっていうのがポイントになります。
異常な遺伝子が片方のX染色体上にあった場合に、半分の細胞では異常な遺伝子が、半分の細胞では正常な遺伝子が働くっていうことになるんですね。
そうするとメスでは少なくとも臓器の半分の細胞は大丈夫っていうことになります。
それでオスよりも遺伝子の異常に強い、こういうふうに説明されます。
しかし最近、2本目のX染色体が別の仕組みでメスを老化から守っているっていう研究があったので、今日はこれを紹介します。
ホットサイエンティストへようこそ、ハトシです。
今日紹介するのはカリフォルニア大学サンフランシスコ校のマーガレット・ガデック・ラニオル研究で、
2025年5月のサイエンスアドバンシーズに発表されたものです。
この論文では不活性化されたX染色体の遺伝子の働きを調べています。
その教科書的には2本あるX染色体のうち1本は不活性化されているとされているわけなんですが、
完全に不活性化されているわけではなくて、弱いながらも少しは働いているっていうことが以前から知られていたんです。
DNAからはその配列情報を基にRNAっていう分子が作られるんですが、これが遺伝子が働いている、発現しているっていうことになります。
働いている方のX染色体にある遺伝子からはたくさんRNAが作られていて、
不活性化したXIからはあんまりRNAができてこないんだけど、それでも少しは作られているっていうことになります。
今回の研究ではこの現象についてもっと詳しく調べています。
X染色体上のすべての遺伝子について、若い時、歳をとった時とタイミングを変えて調べてみているんですね。
09:09
でもって、男性と女性では女性の方が歳をとっても脳の働きがちゃんとしていることが多いので、特に脳の細胞について調べることにしました。
で、働いているX染色体、不活性化しているX染色体、どちらの遺伝子が働いているかを見ていきたいわけなんですが、
2本あるX染色体のうち、どちらの遺伝子が働いているのかを分けて調べるのは難しいんですね。
まず、2本のX染色体のDNAの配列はほとんど一緒なので、作られたRNAの配列を解析しても、どちらの染色体から作られたのかよくわからないんです。
さらに、2本のうちどちらが不活性化するのかは細胞ごとにランダムなので、細胞をたくさん集めて解析すると混じった状態になってしまうので、不活性化したXからの遺伝子発現の量を割り出すことができないんです。
それで、マウスを使ってこのような解析が可能な実験系を作りました。 そのために今回は2種類のマウスを使っています。
マスムスキュラスとマスキャスタニウスの2種類なんですが、 これらは完全に別の種ではなくて、アッシュといった感じで交配して子供を産むことができます。
でも、系統的にはかなり離れてますから、この2種類のマウスではX染色体の配列が少しずつ違っているんです。
なので、どちらのXから作られたRNAなのかを配列を解析して区別することができるんですね。 でも、これだけでは不十分です。
普通に交配させると、どちらのXが不活性化するのかは、やっぱりランダムになってしまうわけです。
そこで研究者たちは、マスムスキュラスのX染色体にあるイグジストという遺伝子を壊しました。
イグジストはX染色体が不活性化するスイッチの役割を果たす遺伝子なんですね。
なので、これが壊れていると、そのX染色体は不活性化できないんです。 必ず働いているXとして残ることになります。
12:07
そうするとどうなるかなんですが、もう一つの方、イグジストを壊してない方のX染色体が必ず不活性化されるんです。
それで、マスキャスタニウス由来のXが不活性化するということになります。
ですから、こういうふうにして作ったマウスでは、全ての細胞でマスムスキュラスのXが働いている、マスキャスタニウスのXがいつも不活性化されている、XIになるっていう、そういう状態に揃うということになります。
それで今話したように、2種のXには配列の違いがあるので、RNAの配列を調べれば、このRNAはマスムスキュラス由来の活性Xから来たもの、こちらはキャスタニウス由来の不活性X、XIから来たものっていうのを見分けることができます。
この仕組みによって研究者たちは、特にXIからの発言が、それぞれ個別の遺伝子でどうなっているのか、そして老化で変わるのかっていうのを、脳の中のカイバという記憶に重要な領域で調べていったんです。
では結果です。まずX染色体からの遺伝子発言が、働いているX、あるいは不活性X、どちらから来ているかを調べたんですが、92%が活性X、8%が不活性X、XIからでした。
ですので確かにXIからの遺伝子発言は少ないんですが、完全に不活性化しているわけではなくて、漏れ出しがあって、8%ぐらいはXIからであったということになります。
これは以前の研究でも示唆されていたので、今回の研究で確認されたということになります。
さらにこの研究では年を取るとどうなるかを調べています。
若いマウスと比べて、年を取ったマウスでは、約100個の遺伝子についてXIからの発言が増加していることがわかりました。
特に19個の遺伝子については、若い時にはXIの遺伝子は全く働いていなかったのに、年を取ると働き出すということがわかったんです。
ですから老化をすると、X不活性化による抑制が弱くなっているということなんですね。
15:08
X染色体不活性化の度合いが過励によって変化するなんて考えられていなかったので、これまでの常識を覆す発見ということになります。
この結果によって、XIの遺伝子の発言に変化があるということが示されたわけですが、
可能性として考えられるのは、このように老化によってXIからの遺伝子の働きが増えることが、メスが老化に強い理由の一つではないかということです。
それをはっきり示すデータをこの論文で示すというところまではできていないんですが、一つその可能性を匂わせる実験を行っています。
100個ぐらいの遺伝子の発言が増えていたっていうことなんですが、その中で一番増えていたのがPLP-1っていう遺伝子でした。
それでPLP-1に注目したんですね。
PLP-1は脳の神経細胞を取り囲むミエリンっていう構造を作る因子で、神経の信号を早く正確に伝えるのに重要だと考えられています。
年をとるとXIからの働きが増えるっていうことは、年をとるとXが一つしかないオスよりもXとXIのあるメスからの発言が多くなるっていうことなんですけど、
この差がメスの方が老化に強いのに関わっているんではないかって考えたんですね。
つまり、メスではPLP-1が年をとると増えるので、それで脳の機能の衰えがゆっくりなんではないかっていうことです。
もしそうであれば、PLP-1を人工的に増やしてやれば脳の働きが若返るっていうことになります。
そこで、オスのマウス、メスのマウス両方にPLP-1を人工的に発言させるっていう実験を行いました。
ウイルスを使って遺伝子を導入して発言させるんですけれども、そのようなマウスに記憶のテストを行っています。
その結果ですが、オスでもメスでもPLP-1遺伝子を導入すると、年をとった時の記憶テストの成績が上昇していました。
18:06
ですから、PLP-1遺伝子の働きが老齢マウスの記憶をオス・メス問わず改善するっていうことがわかったわけです。
実験はここまでなので、本当に老化に対する精査をこの遺伝子が生み出しているのか検証できているとは言い難いんですね。
XIからの発言を止めるっていう実験が本当は必要になるんですけど、それをやるのはなかなか難しいっていうところだと思うんです。
それでも、XIから漏れ出す遺伝子の中には、老化による記憶の衰えを和らげることのできるものがあるって、そういうことは示していると言えます。
それから、年をとるとPLP-1がメスで増えるのはマウスだけではないっていうことも明らかにしています。
人の死後の脳を調べるっていうこともこの研究ではやっていて、男性よりも女性の方がPLP-1の発言が多いっていう結果でした。
というわけで、若い頃にはX染色体の不活性化によって抑制されていた遺伝子が、メスでは老化によって発言が増えるっていうことを示していて、これがメスの方が老化に強い理由ではないのかっていうのがこの論文の考えになります。
さて、この論文では触れられてなくて、私の考えっていうことになるんですが、この発言は異型配偶死性仮説と関係があると思います。
この仮説では、片方のXに変異があったときに、一本しかXを持たないオスでは異常が見られやすいんだけど、XXであるメスではもう片方が補うのでメスの方が長生きであるっていう考えでした。
で、X染色体の不活性化というのも起きてはいるんですが、半分の細胞は正常になるというわけなので、臓器全体では機能が失われることがないっていう形なんですね。
ただ、これだと生まれたときから持っている変異には対応できるんですが、生きている間にできた変異には対応できないはずなんです。
これは以前から知られていたんですが、不活性化されているX染色体からも遺伝子の発言が少ないにしても見られるっていうことを今回の研究では確認しています。
21:13
ですから2本目のX染色体が少しは遺伝子の働きを保証できているはずなんですね。
さらに今回の研究では年を取ると不活性化されているX染色体からの漏れ出しが増えるっていうことを示しています。
そうであれば、メスでは老化すると2本目のX染色体から機能を補う働きが増えているっていうことになります。
なので特に老化によって増える新しくできた変異に対してもメスの方では対応できるっていうことになって、これもメスが老化に強い仕組みなのかもしれません。
さて今回が今年最後のエピソードになります。
皆さん今年もお聞きいただきありがとうございました。
2、3週間の冬休みの後また来年再開っていうことを考えています。
それからなあちゃんとあおいさんからもメッセージをもらっているのでこの後流したいと思います。
それでは皆さん良いお年をお迎えください。
ではまた次回お会いしましょう。
みなさん今年も1年ありがとうございました。
おかげさまで当初はお年を取ることができませんでしたが、
今年もいろんなことをさせていただきまして、
しかも今年は他のポッドキャスターさんとのコラボなんかもさせていただいたので、
私にとってもすごい見識とか出会いとかがあって非常に楽しい1年だったなと思います。
来年も皆様に楽しい配信をお届けできるように精進していきたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。良いお年を。
今年も1年ポッドサイエンティストをお聞きいただきありがとうございました。
この番組で紹介されてきた論文はどれも途中経過を積み重ねた結果だと思っています。
仮説があって検証して時にはそれが否定されたりまた更新されていたりするっていう
いつも未完成でその点が私たちの1年の過ごし方とも少し似ているような気がしています。
うまくいった日も私もありましたし、思うようにいかなかった日もありましたし、
どちらもその時点では成果がなかったとしても1年を通してみれば
データとして意味があるものになったんじゃないかなと思っています。
24:00
来年も良いお年をお過ごしください。ありがとうございました。
答えよりプロセスを一緒に楽しめる場として存在できればいいなと思っております。
今年も1年ありがとうございました。皆様良いお年をお過ごしください。
今年1年。もう一回いきます。
24:43

コメント

スクロール