2024-10-14 11:12

「メディアは死んでいた」 ⑤ メディアが死んだ日【戦後史開封特別編】

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北朝鮮による拉致事件に迫った阿部雅美の記事は黙殺された。
世間から忘れ去られたが、表に出るタイミングが突然訪れる。
昭和63年3月26日の参院予算委員会。日本政府が北朝鮮による日本人拉致事件を初めて認めたのだ。

【原作】 阿部雅美『メディアは死んでいた―検証 北朝鮮拉致報道』
【語り手】柳亭市好
【制作】 産経新聞社

■拉致事件を産経新聞が徹底取材した豊富な記事や写真はこちら(リンク)からご覧になれます。

「戦後史開封」は、戦後日本の政治史、外交史、エンタメ・服飾芸能史などの様々な出来事を再取材、現代の観点で再構成するドキュメンタリー番組。埋もれていた逸話、報道されていない事実にも光を当てて戦後日本を振り返ります。

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サマリー

1988年3月26日は、北朝鮮による日本人拉致事件が日本政府に初めて認められた日であり、メディアにとって異様な日とされています。政府が公式に疑惑を認めても、主要メディアはその報道を無視し、その結果、メディアが死んだ日と称されます。

拉致事件の認識
第5話 メディアが死んだ日
産経新聞社がお届けする音声ドキュメント 北朝鮮による日本人拉致事件
原作産経新聞出版 安倍政美著
メディアは死んでいた 検証北朝鮮拉致報道
2018年5月28日初版発行 製作産経新聞社
案内役は私、話科の劉邸一光です。 北朝鮮による拉致事件に迫った安倍の記事は黙殺された
世間から忘れ去られたが、表に出るタイミングが突然訪れた 昭和63年
1988年3月26日 参議院予算委員会
日本政府が北朝鮮による日本人拉致事件を初めて認めたのだ ただ
安倍はこの日をメディアが死んだ日と呼んでいる なぜなのか
昭和53年以来の一連の安倍区行方不明事犯
おそらくは北朝鮮による 拉致の疑いが十分濃厚でございます
解明が大変困難ではございますけれども 事態の重要性に鑑み
今後とも真相究明のために全力を尽くしていかなければならないと考えておりますし 本人はもちろんでございますが
ご家族の皆様方に深いご同情を申し上げる次第であります 1988年3月26日
竹下昇内閣の梶山勢力国家公安委員長はそれまでの質疑を締めくくるように答えた いわゆる梶山答弁と呼ばれる重要な発言である
拉致について一度も公式に言及してこなかった政府 警察が初めて北朝鮮による日本人拉致疑惑の存在を認めたからだ
それまで拉致については言ってみればゼロ回答だったのだから 一歩踏み込んだというレベルの話ではなかった
国会で政府が北朝鮮の国名をはっきりと挙げて 人権侵害主権侵害の国家犯罪が十分濃厚と
答える これは尋常なことではない
誰でもトップニュースと思うだろう しかしこの答弁が
テレビニュースに流れることはついになかった 新聞は産経がわずか29行
日経が12行 それぞれ夕刊の中綿などに見落としそうになる小さいべた生地を載せただけだった
産経の見出しはアベック拉致事件北朝鮮の犯行濃厚 日経は
不明の産組男女北朝鮮拉致が濃厚 梶山自治省両者が加盟する通信者配信の原稿かと思ったが読み比べるとそれぞれ自社記事のよう
だ 朝日読売毎日には一行もなかった
マスメディアの拉致事件への無関心はここに極まっ まるで申し合わせでもしたかのように足並みを揃えて無視したのだった
記事の扱いが小さいとか遅いというのではない 報じなかったのかメディアが死んだ日という意味合いがお分かりいただけるだろうか
関係者によるとあの日予算委員会の記者席ではいつも通り 報道各社の記者たちが何人も傍聴していたそうだが
この時の答弁映像はニュース映像の宝庫であるはずの nhk にも残っていないと聞く 歴史的な国会答弁の映像が日本のどこにも存在しない
メディアの無視
不思議なことだ 現在 nhk は拉致報道に相当熱心だが長い間
拉致を無視し続けたように思う 個々の記者が揃って無関心だったわけではなかったことは後に nhk の研修会に招かれて
プロデューサーや記者たちと話す機会があって知ったが正規が変わるまでの20年間 まともな拉致疑惑報道を見た記憶がない
nhk だけを責める気はもうとうない 民放各社も同じだった政府が国会で北朝鮮による日本人拉致疑惑の存在を初めて認めた
となれば他紙もテレビもそれなりの報道をせざるを得ないはずだった 記者の常識からすれば政府警察に確証がなければ
梶山答弁にはならない梶山答弁は政府が初めて拉致疑惑を認めた 画期的なものだった梶山答弁の無視
長くメディアの世界の隅で働いてきたが これほどまでに異様な経験はこの一度きりだ
一体何があったのか各社の記者がなぜ原稿にしなかったのか あるいは原稿は書いたが本社サイドで没にしたのか
いや突然あの質疑を聞いても拉致についての相当な予備知識関心がなければ一体何のことなのかわけがわからず原稿にできなかったのではないか
答弁の重大さに気づかなかったのではないか そんな冷めた見方もあるが
メディアが死んだ日の真相は 今もってわからない
報道しなかったという事実が報じられるはずもなく 梶山答弁は事実上幻
つまり存在しなかったことになってしまった 拉致についての政府の次の公式アクションは平成9年
1997年 横田恵美さんの拉致疑惑発覚後
国会で公表された 拉致被害者の認定まで待たなければならない
この間 9年間も経過した
取り返しのつかない空白が生じた 恥も晒す
私自身梶山答弁を報じた産経有感掲載のベタ記事に気づかなかった 記事を各部署を離れて市面のレイアウトを担当する
整理部で仕事をしていた時期ではあったがそれは言い訳にならない 翌日だったか翌翌日だったか
同僚記者に教えられて知った時点で大きく紙面展開することを社内で強く主張すべき だった
育児のない記者だったことを恥じる 誤報挙報等マスメディアに目察され
自分が取材したと親しい人にさえ言えずに来た あの記事を政府警察が国会の場で丸ごと追認したというのに
何もできなかった しなかった情けない話だこれは音声ドキュメント北朝鮮による日本人拉致事件のシリーズ第5話です
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この作品は元産経新聞社会部記者 安倍政美による著書メディアは死んでいたを再構成したものです
第6話 横田恵さん前編
一人の少女の拉致事件が政府世論を大きく変えるきっかけとなります では次回
あなたは拉致を いつ知りましたか
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