2023-03-16 08:24

ゴジラ③ 「ぬいぐるみ方式」は最高機密

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今でこそ、ゴジラはぬいぐるみに人間が入っていると、だれもが知っている。だが、日本で初めての怪獣映画として登場した当時、このことは、実は最高機密になっていた。ゴジラはあくまで本物の怪獣でなければならなかった‥

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00:01
戦後史開封 ゴジラ
第3話 ぬいぐるみ方式は最高機密
映画ゴジラ誕生の舞台裏を紹介します。
案内役は私、ナレーターの中川睦です。
今でこそ、ゴジラはぬいぐるみに人間が入っていると誰もが知っている。
だが、日本で初めての怪獣映画として登場した当時、このことは実は最高機密になっていた。
ゴジラはあくまで本物の怪獣でなければならなかった。
人間が入っていることは一切発表しちゃいけないという原明があった。
というのは中島春男、初代ゴジラ俳優である。
中島は昭和25年、21歳で東宝に入る。
当時は第三次東宝葬儀の後で自社作品はできないような状態。
新東宝など他社へ出稼ぎに行くという日々が続いていた。
ちなみに、この東宝葬儀は当時、アジア最大の労働葬儀と言われた。
撮影所を占拠した組合に対し、米軍の戦車や飛行機までもが出動。
来なかったのは軍艦だけと、後々語り伝えられた。
ゴジラが制作された昭和29年は、そんな騒動が一段落した頃のことである。
当時俳優部屋には180人の俳優がいたが、
海軍の横田恵出身の中島はアクションシーンの出演が多かった。
前年公開の映画、本代志郎監督の太平洋の和紙では、
日本で初めてヒダルマのシーンに挑戦した。
春坊、呼んでるよ、というんでスタッフルームに行ったら、
世界で初めての作品だと台本を渡された。
つぶらや英二さんから、参考にとアメリカのキングコングのプリントを渡されたけど、
これはコマ撮りが中心ですからね。
これでやると7年もかかる。
3、4ヶ月で仕上げないといけないから、春坊、頼むぞってね。
こうしてぬいぐるみ方式が決まったものの、どうやればいいのか検討もつかない。
少しでも参考になればと、上野動物園に通った。
当時は、5年前にインドから来たインドゾウのインディラが人気を集めていたくらいで、
03:04
まだ動物も少なく寂しい時だった。
クマの足の動きがヒントになった。
ぬいぐるみがまたひどくて、
100キロ近くはある。
精一杯首を回しても、実際はほとんど動かない。
最初、えっちらおっちら10メートルほど歩いたんですが、
もう一人、候補として呼ばれていた俳優は3メートルでダメでしたからね、と中島は言う。
死にそうになった経験は何度もある。
ゴジラが水中から現れるシーンでは、
小さなボンベを中に入れ、ゴムホースを加えて待機している時に、
水圧に負けてホースを口から離しても、誰も気づいてくれなかった。
空の大怪獣ラドンでラドンを演じた時は、
ワイヤーが滑車から外れて10メートルの高さから落下した。
若かったからやれたんだね。
だが、ゴジラを演じたことは今も誇りに思っている。
俺なんか人間の主役には絶対なれっこないけど、
とにかくゴジラは主役だからね。
ハリウッドから怪獣役をやってくれと誘いが来た時、
つぶら屋さんから、お前がいないと困る、と言われた。
今もアメリカからもファンレターが来るんですよ。
中島だけでなく、日本初の怪獣映画ゴジラは、
すべてのスタッフにとって未知への挑戦だった。
作曲家の伊福部明にとっての一番の苦労は、
ゴジラの鳴き声を表現することだった。
ノソノソ歩く大きくて強力な爬虫類だ、
というのでだいたい見当はついていたんだが、
そのうちに鳴くんだ、となってね。
だいたい爬虫類は鳴かないんだけど、
今度は鳴くんじゃなく吠えるんだ。
背中の鱗が光る、火を吐くんだ、とエスカレートしてきて、
こりゃ本当の怪獣だね、と大笑いしたことがある。
音響担当スタッフが、
ゴイサギの鳴き声が一番薄気味悪いからと、
伊福部の動物園に録音をしに行った。
だが、気味は悪くてもやっぱり鳥類の声にしか聞こえない。
獣の鳴き声だと、どうしても哺乳類に聞こえる。
何度も試行錯誤を繰り返した結果、
伊福部が考え出したのは、
コントラバスの弦を外して、
松柳を塗った革の手袋で弦を引っ張るという方法だった。
録音したものを機械で回転を変えたりして、
これは電線に触れて苦しい時の声、
これは威嚇する時の声などとやっていたわけです。
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逆に足音はろうせず見つけることができた。
スタッフが作った増幅機に僕が偶然ぶつかった時、
ガーンといい音がして、
これでいいと簡単に決まりました。
出演者にとっても戸惑いの連続だった。
三重県戸場で撮影された、
ゴジラ初登場のシーン。
山の稜線からゴジラが顔を出すという設定だが、
撮影ではもちろんゴジラは現れない。
目線を合わせなければいけないけど、
何も目標がない。
あ、あそこに雲があるから、
みんなで合わせようとなったが、
撮影中にちぎれてしまって、
あっち行きこっち行き、
映像を見たら、
みんな目線がバラバラなんですよ。
主役を演じた宝田明は笑いながら振り返る。
本当にこれでいいのだろうか。
みんなが半信半疑で始めた、
日本初の怪獣映画。
だが、ぬいぐるみの演技にしろ鳴き声にしろ、
その後のすべての怪獣物の
手本になっている。
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