信長、本能寺にて非業の死
今晩は、今夜もまた、おやすみ歴史ラジオの時間がやってきました。 ベッドに入って、一番リラックスできる姿勢で聞いてね。
前回は、絶対絶命のピンチだった金ヶ崎の軒口から、秀吉が奇跡の生還を果たし、信長と涙の再会を果たすまでをお届けしました。
信長のかけがえのないパートナーとなった秀吉は、さらに大きな仕事を任されるようになります。
そして、中国地方を攻略するための総大将として、毛利氏という巨大な敵と激しい戦いを繰り広げていました。
そんな秀吉の下に、ある日の夜、一本の緊急の連絡が届きます。
それは、秀吉の人生を、そして日本の歴史をひっくり返す、あまりにも衝撃的な大事件の知らせでした。
1582年6月2日、京都の本能寺にて、主君である織田信長が、部下の明智光秀に襲われて命を落とした。
本能寺の編です。
この知らせを聞いた瞬間、秀吉は目の前が真っ暗になり、その場に崩れ落ちて声を上げて泣いたといいます。
自分の才能を最初に見出し、育ててくれた父親のような存在だった信長が、もうこの世にはいない。
秀吉の悲しみと同様は、はかり知れないものでした。
黒田官兵衛の進言と中国大返し
しかし、秀吉の傍には、黒田寛兵衛という天才的な軍師がいました。
寛兵衛は泣き崩れる秀吉の耳元で、静かにこう囁いたのです。
秀吉様、これこそが、あなたが天下を囮になる最大の功績でございます。
この言葉に、秀吉ははっと我れに返ります。
悲しんでいる暇はない。今すぐに明智光秀を打ち倒し、信長様の仇を取らなければならない、と固く決意したのです。
しかし、当時の秀吉は、今の岡山県にある日中高松城を、川の水をせき止めて湖のようにしてしまう水攻めという戦術で包囲している真っ最中でした。
目の前には毛利家の大軍が控えており、京都まではおよそ200kmも離れています。
重い武具を持った大軍であれば、移動に2週間はかかる絶望的な距離でした。
もし信長の死が毛利側に知れ渡れば、大炉をたたれ、逆にはさみ打ちにされて全滅してしまいます。
ここで秀吉は、冷静でかつ大胆な外交手腕を見せつけます。
秀吉は信長の死を徹底的に秘密にしました。
そして、毛利側の死者に対し、わざと堂々とした態度でこう迫ったのです。
これ以上戦いを長引かせれば、やがて信長様の本体がここに到着し、毛利は滅びることになる。
その前に、講和を結ばないか、と。
ただし、秀吉はただ引き下がるのではなく、城に籠る兵たちの命を救う代わりに、
城主である清水宗治の切腹のみを条件とする、という約束を提示しました。
毛利側は、信長が賢在であると信じ込んでいるため、この条件を破格の慈悲として受け入れ、すぐに講和のサインを交わしたのです。
城主の清水宗治が故郷で見事な最後を遂げ、戦いが正式に終わったその瞬間、秀吉の顔から笑みが消えました。
よし、全軍、今すぐ京都へ引き返すぞ。
これこそが、日本の歴史上で最も有名な大移動、中国大返しです。
200kmの道のりを、2万人を超える大軍が猛スピードで駆け抜ける。
これは並大抵のことではありません。
そこで秀吉は、移動するルートにある自分のお城や村に対して、事前に完璧な手配を済ませていました。
道沿いに数え切れないほどの、おにぎりや汁物、新しい茅野馬、そして夜道を照らすための松明を大量に用意させたのです。
兵士たちは走りながらおにぎりを口に放り込み、夜も松明の光に導かれながら、一睡もせずに走り続けました。
この驚異的な強行軍の結果、なんと秀吉の軍は、わずか数日というありえない速さで京都の目と鼻の先まで戻ってきてしまったのです。
山崎の戦いと秀吉の台頭
一方、信長を倒した明智光秀は、完全に計算が狂っていました。
秀吉が遥か遠くの中国地方からこれほどのスピードで戻ってくるとは、夢にも思っていなかったのです。
光秀が慌てて軍を整える中、秀吉はさらなる心理戦を仕掛けます。
秀吉は信長の息子である織田信長を自分の軍の総大将として担ぎ出しました。
これは秀吉個人の戦いではない、織田家による信長様の正当な仇打ちの戦いである、という大義名分を世に示したのです。
これにより、どちらの味方をすべきか迷っていた大名たちは、次々と秀吉の味方につきました。
そして京都の山崎という場所で運命の決戦が始まります。
勝敗を分けたのは、戦場全体を見下ろすことができる重要な拠点、天皇山の争奪戦でした。
秀吉は光秀の軍が山に浮尽するよりも一瞬早く、決死の部隊を突入させて天皇山を占拠することに成功します。
上から見下ろされる形になった光秀の軍は、精神的にも完全に追い詰められ、秀吉軍の凄まじい勢いに押されて総崩れとなりました。
信長が亡くなってから、わずか11日後のことです。
誰もが予想しなかったスピードと戦略であだ打ちを果たした秀吉は、この瞬間、織田家の中で誰も無視できない、事実上の最高権力者へと上り詰めたのです。
織田家の覇権争いへ
しかし、偉大な太陽を失った日本には、まだ大きな嵐が待っていました。
織田家の覇権をめぐる、最後のライバルとの戦いが幕を開けます。
それでは第3話のお話はここまで。ゆっくり目を閉じて、最後の第4話を楽しみにしていてね。おやすみなさい。