さて、この無限上編の盛り上がり、もちろんいきなりポンと生まれたわけじゃないんですよね。
今回のヒットは、奇跡じゃなくて丁寧に、そして情熱を持って積み重ねられてきた結晶。
一夜でできたブームではなく、ちゃんと物語があるんです。
ということで、ちょっとだけ時間を巻き戻して、鬼滅の刃がどうやってここまでの社会現象になっていったのか、一緒にその奇跡をたどってみましょう。
鬼滅の刃の始まりは、2016年2月。週刊少年ジャンルでの漫画連載でした。
作者は後藤木暦春先生。大正時代を舞台に、家族を鬼に斬殺された心優しき少年、窯戸炭次郎が、唯一生き残ったものの鬼と化してしまった妹、根塚を人間に戻すため、鬼卒隊に入隊し、鬼と戦っていく物語です。
当時のジャンプは、今も続く巨大な作品たちが人気を発揮している中でのスタートでした。
大正時代という少年漫画としては少し珍しい舞台設定、そして家族を斬殺されるという非常にダークな導入部から始まります。
連載開始当初は、王道の少年漫画ながら地味めとの評価も一部であり、実は連載途中までは隠れた家族というポジションだったんです。
しかし、主人公窯戸炭次郎の絶望的な状況下でも失われない優しさや下向きさが従来のジャンプヒーローとは一線を隠す、静かながらも確かな輝きを放っていました。
初期は、爆発的な人気というよりは、その独自の世界観とキャラクターの魅力、そして物語が進むにつれて明らかになる家族愛や仲元の絆、さらには敵である鬼にも切ない背景があるというドラマ性が徐々に、そして確実に読者の心を掴んでいきました。
そして、この作品の運命を決定的に、そして劇的に変えたのが、2019年4月から放送されたテレビアニメ化です。そして、その制作を手掛けたのがアニメ制作会社UFOTABLEでした。この出会いはまさに運命的だったと言えるでしょう。
私もリアルタイムで見ていたのですが、正直ここまでやるかと毎週衝撃を受けていました。UFOTABLEは、原作後峠小代晴先生が描く繊細な感情の揺れや独特の空気感を損なうことなく、むしろ映像表現によってその魅力を120%引き出すことに成功したので。
その中でも、ファンの間では今なお伝説として語り継がれているのが、第19話「日の神」です。このエピソードは放送直後から神回としてSNSで爆発的な話題を呼びました。
UFOTABLEの手掛けるまるで劇場版のような圧倒的なクオリティの作画、主人公炭二郎の家族との絆を描く感動的な回想シーン、そしてその感情の高ぶりを最高潮に高める挿入歌「かまど炭二郎の歌」。これが見事に融合し、多くの視聴者の心をわしづかみにしたんです。
炎のような日の神神楽と、それまで彼が使っていた水の呼吸のエフェクトが融合するあの場面。あの回が放送された直後、ツイッターのトレンドに関連ワードがのきなみ上がり、世界中から作画力、CG演出、表現力など全てにおいて舌を巻くクオリティだったと絶賛されました。
この19話は単なる1話ではなく、それまで作品に触れてこなかった層、特に女性ファンなどを一気に引っ込む起爆剤となったので。
アニメ化によって、原作の良さが最大限に引き出され、一気に鬼滅ブームが加速。
アニメ放送前は120万部程度だったコミックスの累計発行部数が、放送後には一気に1000万部を超え、最終的にはシリーズ累計発行部数1億5000万部を突破するほどの社会減少へとつながっていきます。
マーケティング用語でキャズムという言葉があります。
キャズムというのは、簡単に言うとヒットする前に超えなきゃいけない大きな壁みたいなものなんですが、まさにアニメ化によって鬼滅の刃は一部の漫画アニメファンという初期市場から一般層まで浸透し、メインストリーム市場へと超えていくキャズム越えを果たしたので。
このアニメ化がなければ、後の社会減少はなかったと言っても過言ではありません。
そして、その人気を決定的な社会減少へと押し上げたのが、2020年10月に公開された劇場版鬼滅の刃 無限列車編です。
皆さんご存知の通り、この映画は歴史的な大ヒットとなりましたね。
国内工業収入は404.3億円という、長年トップに君臨していた千と千尋の神隠しを抜き、日本の歴代工業収入ランキング第一位という、まさに歴史的な記録を打ち立てました。
全世界でも累計517億円以上、動員は4135万人という、空前のムーブメントを巻き起こしたのです。
公開からわずか10日間で、工業収入100億円を突破するという、史上最速の記録も記憶に新しいですよね。
この未曾有のヒットの背景には、作品の力はもちろんのこと、当時の社会状況も大きく影響していました。
2020年、世界はコロナ禍の真っ只中にありました。
外出が制限され、ハリウッドの対策映画の公開も次々と延期され、多くのエンターテイメントが活動を自粛する中で、人々は心を燃やせる非日常的な感動体験を求めていました。
そこへ登場した無限列車編は、上映スクリーンをほぼ独占。
劇場によっては、1日に40回以上も上映されるという異例の事態となり、観客の熱量を一手に引き受けたのです。
自粛ムードの中で、映画館に行くという行為そのものが特別なイベントとなり、その体験をSNSで共有する人が後を絶たず、熱狂が熱狂を呼ぶサイクルが生まれました。
心を燃やせという縁柱・煉獄教授の言葉は、まるで先行きの見えない社会を生きる私たちへのメッセージのようにも響きました。
私は無限列車編も公開初日に見に行ったんですが、後半は映画館中のあちこちからすり泣く声が聞こえて、そこにいる人たちの感情の波に包まれているみたいでした。
彼の生き様と名台詞、「俺は俺の責務を全うする。」は多くの人の胸を打ち、公開後には様々な業界でパロディーに使われるなどをミーム化しましたよね。
この無限列車編の大ヒットによって、秘密の刃は単なるアニメファンの枠を超えた国民的コンテンツとなったのです。
無限列車編の歴史的成功の後も、秘密の刃の勢いは止まりませんでした。
テレビアニメシリーズでは、幽閣編、刀勝の里編、そして今回の映画の直前には、柱稽古編と常に高いクオリティで物語を提供し続けることで、ファンの熱量を維持し、物語への没入感を深めていきました。
特に最終決戦直前の柱稽古編をテレビシリーズで丁寧に描き、物語が最高潮に達する最終決戦、無限城での戦いを再び劇場という最高の舞台に持ってきた。
このメディアミックス戦略の見事さが、今回の無限城編の熱狂の強固な導題となっています。
原作は2020年5月に完結していましたから、この先のクライマックスを最高の映像で見たいという声が至る所で聞こえました。
制作側もファンの期待に応えるべく、結果として無限城編を劇場版3部作で描くというファンにとっては最高の形を選んでくれたんです。
無限列車編から実に5年ぶりの完全新作映画。
ファンはテレビシリーズを通じてキャラクターへの感情意味を深め、来るべき決戦への期待感を最大限に囲めた状態で劇場へと足を運ぶこととなる。
これは計算され尽くした壮大なエンターテイメントの設計図と言えるでしょう。
ではなぜ鬼滅の刃がこれほどまでに人々を惹きつけ、何度も推したいと思わせるのでしょうか。
その核心にある引力を5つの側面に分解して徹底的に深掘りしていきたいと思います。
ファンを惹きつける引力、その一つ目は物語とキャラクターです。
鬼滅の刃のヒットの最大の要因は、そのストーリーとキャラクターが持つ時代や世代、国境さえも超える普遍的な魅力にあり、物語の軸にあるのは家族愛、仲間との絆、理不尽な運命への抗いといった誰もが共感できる王道のテーマです。
しかし、ただ優しいだけの物語ではありません。
大切な人が容赦なく命を落とす非常な展開や、努力だけでは覆せない圧倒的な力の差がシビアな現実として描かれます。
この光と影のコントラストが物語に深みと緊張感を与え、読者や視聴者を強く引き込みます。
そして、キャラクター設定の素晴らしさ、特に主人公鎌田炭次郎の設定が秀逸です。
彼は他の少年漫画の主人公にありがちな、圧倒的な才能を持つ天才ではありません。
心優しく真面目で、時には自分の弱さに打ちのめされそうになりながらも、必死に努力を重ねて成長していく。
その姿は、私たちに応援したいという気持ちを強く抱かせるんですよね。
さらに、この作品の懐の深さは示しているのが、敵である鬼の描き方です。
彼らは単なる邪悪な存在として描かれるのではなく、その多くが人間だった頃の悲しい過去や、満たされなかった思いを抱えています。
炭治郎は、そんな鬼たちの境遇にさえ同情し、慈しみの心を見せる。
この正義対悪みたいな単純な構図じゃ終わらない、この物語の奥行きがあるからこそ、アニメや漫画を普段見ない人たちの心にも届いたんだろうなと思います。
世代もジャンルの壁もすっと越えてくる感じですよね。
今回の映画のタイトルにもなっている赤座もその筆頭ですよね。
敵役すら押せる構造が、作品世界に圧倒的な奥行きを与えています。
私の父は、もう60代後半で、普段アニメとか全然見るタイプの人じゃないんですけど、鬼滅だけはアニメも映画も見てるらしくて、そんな層にまで刺さるのはすごいなぁと思いましたね。
そして、推し勝つという視点から見逃せないのが、キャラクターの多様性です。
特に鬼殺隊の最強剣士である9人の柱は、それぞれが異なる信念、性格、背景を持ち、非常に個性的です。
ファンは、この多様なキャラクターの中から、必ず自分の価値観や観点に響く推しを見つけることができる。
この誰もが自分の推しを見つけられるという構造が、ファン層の拡大と劣強的なコミュニティ形成の基盤となっているのだと思います。
続いて、ファンを打ち付ける引力2つ目は、体験型アニメーションです。
鬼滅の刃を語る上で、製作会社U4テーブルの存在は絶対に欠かせません。
彼らの仕事は、単に作画がすごいという言葉では片付けられません。
映像と共に作品の魅力を増幅させているのが、音楽と声の力です。
まず、主題歌の力。
りささんが歌うテレビシリーズの主題歌が、アニメーションの中で一番人気の作品です。
これらの楽曲は、単なるタイアップソングに留まらず、作品の世界観と完全に一体化し、それ自体が社会現象となりました。
グレンゲは、家族を奪われても前に進むタンジローの決意を。
ホムラーは家族を奪われても前に進むタンジローの決意を。
そして、今回の劇場版第一章では、エメさんの太陽が昇らない世界と、
りささんの残酷な夜に輝け!という豪華ダブル主題歌で最も人気の作品です。
この作品の中で、私たちの心に深く響きました。
そして、今回の劇場版第一章では、エメさんの太陽が昇らない世界と、
今回の劇場版第一章では、エメさんの太陽が昇らない世界と、
りささんの残酷な夜に輝け!という豪華ダブル主題歌で採用されました。
りささんのコメントで、「ついに無限上へ。総力戦で挑む彼らのように、私もエメちゃんと共にこの戦いに向かいます。」と話していて、
楽曲に込めた思いが伝わってきます。
劇場音楽も忘れてはいけません。
カジューラユキさんとシーナゴーさんという豪華なコンビが手掛ける音楽は単なるBGMではありません。
実は私はカジューラユキさんの曲が大好きで、作曲やアレンジにものすごく影響を受けているんです。
ソードアウトオンラインとかも有名ですよね。
カジューラさんの手掛けたサントラとかもたくさん持ってるんですが、
鬼滅の劇場版がカジューラさんだとしてもうめちゃくちゃ嬉しかったのを覚えてます。
切ない感じや戦いのシーンの曲のストリングやピアノのバックで小さくなっているリズム的なピコピコした音が入ってたりして、
シーケンスやアルペジエーターっていうんですけど、この融合が本当に絶妙なんですよね。
曲を作る時にいつも参考にしてます。
アニメ制作人と作曲家が物語のどの部分を切り取り、
どんな感情を乗せるかを考え抜いて作られているからこそ、
私たちの心に深く響くのだと思います。
特に19話で流れたかまど炭治郎の歌のように、
ここぞという場面で特別な楽曲が使われることで、
そのシーンは忘れがたい記憶として刻まれます。
そして、なんといってもキャラクターに命を吹き込む声優陣の魂の演技も素晴らしいですよね。
主人公かまど炭治郎役の花江夏樹さんをはじめ、
禰豆子役の鬼戸あかりさん、
善逸役の下野ひろさん、
猪木県役の松岡よしつぶさんといったメインキャストはもちろん、
脇を固める声優陣も驚くほど豪華です。
無限城編では柱の面々や上限の鬼たちが総登場するため、
新級キャストが大活躍。
水柱富岡儀雄役の桜井孝博さん、
虫柱古町忍役の早見沙織さん、
童馬役の宮野守さん、
香沙役の石田明さんなど早々たる夫人で、
彼らの熱演はキャラクターの喜び、悲しみ、怒りといった感情に生々しいリアリティを与えます。
声優さんたちの演技そのものが一つの独立した推し活の対象になっているといえるでしょう。
本を引き付ける引力四つ目は、
ビジネスの視点から見て非常に画期的だったテレビアニメの琉球戦略です。
従来のアニメ放送は、特定のテレビ局が放送権を独占するのが一般的でした。
しかし鬼滅の刃は、全国21の放送局と複数の配信プラットフォームで
ほぼ同時に展開するという型破りの戦略を取りました。
この、いつでも、どこでも、誰でも見られる状況を、
いつでも、どこでも、誰でも見られる状態を作り出したことが、
SNS自体において絶大な効果を発揮しました。
地方による放送のタイムラグがないため、
日本中の視聴者が同じタイミングで、同じ話数を見て感想を共有できます。
これが、Xで毎週のようにトレンド入りする状況を生み出し、
口コミの爆発的な拡散を後押ししたのです。
これは、コンテンツの価値を最大化するための画期的な手法でした。
そして、最後の5つ目の引力は、SNSとの完璧な連携です。
公式グループアカウントは、情報解禁のタイミングや、
ティザービジュアル、予告映像の出し方が非常に巧みで、
常にファンの期待感を煽り続けます。
しかし、それ以上に重要なのは、ファンによる自発的な情報発信、
つまりユーザーによるコンテンツの活発化です。
ファンは鬼滅の刃といったハッシュタグをつけて、
感想や考察、ファンアート、コスプレ写真などを投稿します。
特にネタバレに入るの一つ、
ハッシュタグ鬼滅映画感想絵のようなタグで、
イラストや漫画形式で感動を共有するファンも多く、
タイムラインは鬼滅一触になりました。
その熱量の高い投稿が、また新たなファンの興味を引き、
作品へと誘導する。
この本気からの発信と、ファンによる発信が相互に作用し合うことが
できるようになって、熱狂が雪玉式に増幅しているグループが生まれています。
SNSは鬼滅の刃にとって、まさに最強の熱狂増幅装置として機能していますよね。
さて、ここからは、おしかつというこの研究所ならではの切り口で、
鬼滅の刃がファンとコンテンツの関係性をどう変えたのか、
そしてそこにどんなビジネスのヒントが隠されているのかを分析していきたいと思います。
鬼滅の刃の特筆すべき点の一つは、
そのコラボレーションの広さと巧みさです。
これは単なるグッズ販売に留まりません。
作品がアニメや漫画の世界から生み出して、
私たちの日常のあらゆる場面にいる存在になることを意味します。
例えばコンビニ。
ローソンでは、対象商品を購入すると限定のクリアファイルがもらえるキャンペーンが
定期的に開催され、ファンを楽しませています。
ファミリーマートとのコラボでは、
炭治郎の羽織柄を模したロールケーキや
無限コロジャガといったユニークな商品が発売されたり、
浅草の店舗を富士の花の家紋の家風にラッピングしたりと、
ファンの心をくすぐる企画が満載です。
飲食系では、開店寿司チェーンの倉寿司、
家族で楽しめるコラボメニューや、
お皿5枚で挑戦できるビックロポンの限定グッズは毎回大人気で、
フリマアプリで高値で取引されることも珍しくありません。
アパレルブランドのユニクロは、
誰もが気軽に普段使いできるTシャツUTを販売し、
ファンがオシャレに推しをアピールする機会を提供。
航空会社のANAは、キャラクターが描かれた特別デザイン機
鬼滅の刃JETを就航させ、機内ではキャラクターによるアナウンスや、
映画に登場した遊弄イベントをイメージした機内食まで提供するという徹底ぶりでした。
また、今回の映画の公開に合わせて、
ペイペイの送金機能でも鬼滅の刃のデザインが使われるようになりましたし、
他にもナムコのゲームセンターやスポティファイまでその範囲は多岐にわたります。
この日常ジャック戦略によって、
ファンは常に推しを身近に感じられる幸福な状況が生まれます。
マーケティング戦略としても、各コラボ先が持つ顧客層と作品の伴奏を巧みに重ね合わせ、
新たなファンを獲得し、既存ファンのエンゲージメントを高めることに成功しているのです。
ファンの好きという気持ちは、何か形あるものや特別な体験を通じてより強化のものになります。
鬼滅の刃はこの点においても非常に匠です。
アクリルスタンドやクリアファイルといった定番グッズから、
キャラクターをイメージしたアパレルやアクセサリーまで、
そのグッズ展開は驚くほど達したようです。
これらはファンのコレクション欲を満たすだけでなく、
ファン同士が誰を好きと語り合うきっかけになるコミュニケーションツールとしても機能します。
劇場版で配布される週替わりの入場者特典もファンを借り立てました。
コレクター魂に火がつき、全種類集まるまで通うというファンも少なくありませんでしたね。
さらに重要なのが、UFOテーブルが自ら運営するコラボカフェやダイニングの存在で、
これらはただ食事をする場所ではなく、作品の世界観にしたり、限定グッズを手に入れられる聖地として機能しています。
ファンはそこで作品への愛を共有し、特別な時間を過ごす。
この体験の場の提供がファンエンゲージメントを格段に高めているので、
ファンを飽きさせないための継続的なイベント展開も見事です。
映画の公開前には、豪華声優陣が登壇する大規模な舞台挨拶や、
全国各地で開催される展示会、さらには地方のイベントにも積極的に登壇し、ファンとの交流を続けています。
この継続的な活動が、作品への関心を途切れさせず、ファンとキャラクターとの絆をより強いものにしているのです。
そして、テレビシリーズの放送がない期間の繋ぎとして非常に巧みだったのが、ワールドツアー上映です。
これは、前期のクライマックスと次期の第一話をセットで劇場公開するという手法。
これにより、ファンはテレビ放送への期待感を最高に高めた状態で新シリーズを迎えることができ、
制作側は劇場興行収入も得られる、まさに一石二鳥の戦略といえます。
ここまで見てきたように、鬼滅の刃の成功は、制作側が一方的に優れたコンテンツを提供するだけでは成り立ちません。
ファンの熱狂的な口コミ、愛のこもった二次創作、そして作品を支える応援消費、
これら全ての熱狂が一体となって、この巨大な社会現象が作り上げられています。
ファンはもはや単なるコンテンツの消費者ではありません。
このお祭りのような現象を共に作り上げ、世界中にその熱を広げる、いわば共犯者であり、物語の主役の一人なのです。
この物語構造そのものが、推し活の真理と完璧にリンクしています。
鬼にされた妹を人間に戻すという炭治郎の切実な願いは、ファンにとって応援すべき最大のミッションとなります。
ファンは物語をただ傍観するのではなく、炭治郎の旅路に感情引入し、彼の成長や勝利をまるで自分のことのように喜ぶ。
そして、この感情はいつしか作品そのものの成功を応援する気持ちへと転換されていきます。
映画のチケットを買い、グッズを手にすることは単なる消費行動ではなく、炭治郎たちの戦いを後押しする推し活の一部になっているのだと思います。
この関係性こそが鬼滅の刃が示した最も革命的な点であり、現代のコンテンツビジネスにおける最強の戦略なのではないでしょうか。
さて、あっという間でしたが、そろそろまとめの時間です。