システムとは「たくさんの要素が影響し合いながら、ひとまとまりになっているもの」
組織を考えるメディア、オーガナイズ。このポッドキャストは、エールの篠田さんと山田で、組織を考える、捉え直す上で、我々が面白いと思った視点や観点をシェアしていこうという番組です。
では、篠田さん、今回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今回もですね、いつもながら直前に、今日は何をしゃべろうかと、わちゃわちゃ相談をしていましたが、今までこのシリーズ、散々、組織ってシステム的に捉えられるよね、みたいなことを結構、我々は前提でしゃべってきてしまっているんですが、
あんまりそれをちゃんとしゃべっていないぞということを、はたと気づいたので、ちょっとその辺の視点、システム的にってどういうこと?っていうのを、篠田さんから簡単にご紹介いただけるといいかなと思っています。
はい、ありがとうございます。
システムって何って、一般的にはいろんな意味がついて回る言葉なんですけど、ここではシステム思考、システムと考えるの思考。
これでもしウェブ検索していただいたら、大体出てくるような、この概念であるということで、を出発点に話すといいかなと思っています。
そういう意味で、組織やシステムだからって、少なくとも私はずっと言ってきたので、何かっていうと、「たくさんの要素がお互いに影響し合いながら、でもそのたくさんの要素で結局ひとまとまりになっているもの」。
っていうものをシステムと呼びますと。例えば、交通システムって言われるものってそうですよね。
公共交通システムって、電車がありバスがあり、その周辺には当然乗る人だけじゃなくて、オペレーションする人、それを動かすための情報の動きっていうのもひとつシステムだし、
よく社会システムって言ったりする概念もあるけど、これも政治の制度とかから、日常的な地域のコミュニティのあり方から、地域のライフスタイル、生活文化みたいなものが全部絡み合って、地域社会って成り立っているよねっていうことを、社会システムって言ったりするじゃないですか。
そういう感じでひとまとまりなんだけど、要素がめっちゃいっぱいあって、しかもそれらがお互いに影響し合っているやつがシステム。そう考えるとまず組織ってシステムだよねって言えるのかなって。
なんか組織って言葉を語るときに、人の個人の集まりとしてみますっていうのもある面すごく正しいと思うんですけど、僕らが組織って特にここで語っているときがあって、制度とか文化とか、手触りのあるものじゃないものを含めて、いろんな抽象度でも要素ってありますよねみたいなこととかを含めると、まさに交通システムみたいな。
信号機もあれば、例えば道路交通法という法律もあれば、いろんなものありますよね、全部含めてシステムですよねっていうのは、同じような構造として捉えられますよねってことですよね。
はい、そうですそうです。で、そのなんでいちいちわざわざ組織はシステムですよねとか、そのシステム思考っていう領域があるかっていうと、私たちの直感とかシンプルな思考だと、その課題をそこから派生するシステムが引き起こす課題を捉えたり、より良い解決策を見出すのがむずいから。
で、その目の前の事象にパッと反応しちゃうじゃないですか。例えば交通システムって、渋滞ムカつくみたいになって、道広げればいいじゃんみたいな、パッて思うんだけど、私も別に交通システムの研究者ではないから、本当にこれ読みかじった情報でしかないんですが、基本道広げてもずっと渋滞は続くんですって。
道が広がると、いくつか複雑な要素があって、結局もっと車が流入しちゃう。人が流入しちゃう。だから、多くの場合、道を広げるっていうことは渋滞の解決策に必ずしもならないらしい。
そういうふうに、単純に目の前で起きた課題に対して、シンプルな1個だけの要素を変えることで対策をする。でも、他の要素が実は周りでめっちゃ作用しちゃってて、狙った効果と違う現象が起きちゃう。というのが、システム的に動いている中での特徴なんですよね。
組織を語る時に難しいのは、自分もその一部であるということ
あともう1個、これ本当に複雑で難しいのは、例えばさっきの渋滞の話って、私が渋滞にハマったから渋滞むかつくってなる。すなわち私もシステムの一部なんですよ。利用者として。
常にシステムの課題って、ほとんどの場合、自分がコンサルでもなければ、うっかりするとコンサルだとしても、コンサルと関わった瞬間、自分がそのシステムの一部になっているっていう。自分の挙動がシステムに作用ちょっとはしちゃうよねっていう。これも捉えにくさと複雑さを上げてる。
だからシステムの理解の仕方とか対応の仕方っていうのを別個、何ていうの、おさえないと、うまく対処できないんだよね。
というのがここでのポイントかなと思いました。
特に自分がその一部であるっていうのって、組織を語る時って何かを変えれば組織が変わるとかって思ったりしがちなんですけど、ある面正しいけど、少なくともそれを企画設計する側としてそこにいる限り、自分もその対象となる一員でもあるっていうのは。
そうなんですよ。恐ろしいよね。
油断すると抜けますよね、それって。
そうなんですよ。
なんですかね、これって。
だからよく夜ご飯食べながらとか、なんとなく会社の悪口言ったりするじゃないですか。
それは別に世間話としては全然全く楽しいというか、若干悪口を交えながらやると楽しいしヘルシーな感じなんですけど、あくまで本当にそれを課題解決しようと思うと、それって結構無駄。
だってそこに自分も加担してるから、ひとごとのようにあいつが悪いとか、社長が替わればとか、やってるだけじゃダメなんですよね。
さらに今の話につなげるとすると、そういううちの会社ヤバくない?みたいな話をした時って、人によって言う観点すごい違ったりしません?
それがご飯食べてる時の話としては面白い。
うちの部なんてさ、自分の部署のヤバさ、別の所属の人は自分のところのヤバさ、人によっては社長がって言うし、人によっては最近の新人はって言うし、お客さんはとか、みんないろんなこと言うじゃないですか。
それなんですよ、結局要素がめちゃくちゃいっぱいあるんですよ。
そうなんですよね。
僕よく組織を外からご支援する仕事とかもそれなりにしてると、よく言うのは同じ組織を見れることは絶対にないってよく言うんですけど、100人の組織がいたとしたら絶対に自分以外の99人しか客観的には見えないじゃないですか。
僕以外の99人と、僕と篠田さん同じ会社で、篠田さんから見た自分以外の99人は違うじゃないですか、そもそも。
私の主観が違うからってことですか? 山田さんと。
100人いたときの山田を抜いた99人しか僕は見れないし、篠田さんは篠田を抜いた99人しか絶対に見れないじゃないですか。
原理的にそもそも無理ですって話もあるし、かつこだわりが2人とも違うから、僕はなんかやたら数字を気にしてみるけど、篠田さんは感情を気にしてみてるから、
見ただけでもその捉え方も違うし、絶対違うんですよっていうのって意外とみんな誤解していて、同じこと語ってるじゃん、客観的じゃんみたいなことをみんな気軽に言うんですけど、
そんなことないぞっていうところから始めるっていうのは、前提揃える上でいつも結構大事だなって思っているので、まさにシステムっていうことですね。
本当そうですね。
鳥の目・虫の目・魚の目
もうちょっと話飛ぶけど、その前提に立つと組織サーベイとか別に意味がないとは言わないけど、若干怪しいっていうか、それぞれが違うものを見ていて、
今職場はどうですか、五点法でつけてくださいって、捉えきれないですよね。
そうなんです。その前提で同じものを捉えてるわけではないし、みんな主観で違う意味でその尺度つけてるけど、ないよりは傾向見るには便利だよねっていうぐらいで見るにはすごく必要だし、
とはいえ僕と篠田さんが数字好きな僕と感情好きの篠田さんだとして、いや点数が4.3から4.0下がったじゃんっていうこと自体は同じものを一応見てるから、悪くなったねまではまず合意できるみたいなのが使い方としてはすごくいいものだと思うんですけど、
だからなんか0.3ポイント分がみたいなことが、なんかエビデンスであるみたいなことになった瞬間に若干変な匂いがし始めますよね。
ね、そうなんですよ。だからまずここまで言ってきたのは、組織とはシステムですってこれまで言ってきたことのシステムとはっていうのをちょっと解像度を今、上げてみたわけなんですよね。
じゃあ複雑怪奇なシステムを実際捉えようとしたり、より良い対策を考えようとするときに、どうしますかっていう道具立てを、システム思考っていう体系はたくさん考えて開発してあるんですよね。
で、いくつか3つぐらい言ってみると、1個はまずそのとにかく要素を出さないと出す必要があって、そのときにまさに今山田さんも言ってくれたみたいなお互い見てる視点が違うから、
自分普段の自分だと気がつかない要素がいっぱいある。まずこいつらも完璧には無理だけど、ある程度出したい。で、そのときにベタですけど、よく鳥の目とか虫の目って言ったりする。鳥の目っていうのを言ってみれば上空100メートルとか高いところっていうメタファーで、
自分の普段の視点よりもこう俯瞰するとか、あと範囲をグッと広げてみて、要素を洗い出す。逆に虫の目っていうのは、もうむしろその超具体の状況にある瞬間とかにぎゅーっとフォーカスして、そこで何が起きてるかを見る。
で、よくこの鳥の目虫の目っていうのに合わせて、何かね魚の目っていう言い方をするの、ときどき聴くんですけど、あれって何か横から見るっていうメタファーみたいで、要は時系列。で、そんな綺麗なこうバッチリデータ取らなくても、何となくトレンドとして最近渋滞増えてるよね。
なんか夏になるとみんな朝早く来るけど、冬になると遅刻増えるよねみたいな。なんかそういう時系列の傾向、ざっくり使う。この俯瞰したり範囲を広げる鳥の目、ぎゅーっと近づいて細かくある具体を見る虫の目、あとその時系列の動きを見ようとする魚の目。
何かあえて鳥の目って10個あげてみようとか言いながら要素をまずとにかく出すっていうのがこれが1個のツール。これだけでも、あ、その観点ありましたねっていうのが出てくるかなと思う。
事象→パターン→構造→メンタルモデル
で、ちょっと先に私のこの3つかなっていうのを言ってみて、そこに何か山田さんのものを足してもらったり広げてもらえたらと思うんですけど、こうやって要素を出すじゃないですか。で、次にシステム思考っていう手法でよくやるのが、それらの要素を何かこう、こうなったらこうなるよねとか、これがこのAという要素がBとCの要素に影響してるよねっていう繋いでいく因果関係とか影響関係を
繋いでいって何かこう可視化できる図にしていくっていうループ図って言ったりしますけど、要素を1個1個こう、まあ言ってみれば付箋に書いてその間を矢印で繋いでいくイメージです。そうすると要素によってはいろんな矢印がそこに集中している場合もあるし、あのお互いにこう2つ3つの要素の間がぐるぐる回ってお互いにどんどんどんどんどんどん強め合ってるよね。
逆に打ち消し合う関係よねっていうことが見えてくるようなんですよね。これループ図を書いてみてたくさんそうやって鳥の目・虫の目・魚の目で出した要素の繋がりを可視化しようとする。これによって例えばさっき言った、渋滞してるから道広げればいいじゃんって思ったけど、渋滞の原因が全然道幅と関係ない要素で起きてたりすることがここで分かると、道幅広げるじゃなくて、
道幅広げるじゃない、正しい打ち手が見える。これが2つ目で。3つ目は、私これ結構自分の思考パターンにこれが割と合ってるから好きなの。氷山モデルっていうやつ。氷山ってもう上に出てるのが1割で下が9割みたいな。
あのメタファーで表面的に見えてる事象がある。で、その下にあるものを3つに分けて、だから事象と合わせると4つなんですけど、表面に事象があります。で、2つ目にはそのパターン。実はこれ繰り返してるよねとか似た事象が他にもあるよねっていうパターンが2つ目。で、上から3つ目のレイヤーは構造ですね。それがこうパターンが繰り返し構造があります。
で、一番奥底にあって見えにくいんだけど影響力強いのがメンタルモデル。世の中をどう見てるかとか、これは良い、これは嫌だみたいな。
なんかこの4つのレイヤーを見ようとすると、なんかそれらが不一致で課題が起きてるとか、あるいはもしかしたらメンタルモデルはもう変えられないけど構造のとこちょっと変えることで上の起きる事象が変わるよねみたいな分析に使ったりしますね。
大きくこの要素出すループ図表。なんかこんな感じかなと思ってきました。
僕たまたまですね、『学習する組織』の著者でもあるピーター・センゲのワークショップ、ついこの間出たばっかりでして。生ピーター・センゲと触れ合う数日間。
3日間触れてきたんですけど、参加者250人とかいて、香港行って教育関係者多かったんですけど、そこで出てきたんですけど、1個だけ補足が最後の氷山モデルであって、
一番上に事象があって、その次にパターンがあって、もう1個奥に構造があって、一番下メンタルモデルですねって言ってて、このメンタルモデルのところをなんか2つに分けて語っていて、
メンタルモデルとアーティファクト、人工物みたいなことのはどっちもあるねって言ってたんですね。この捉え方確かにって思ったのは、今回のワークショップはあんまりワークショップの中では人工物側を扱ってなかったんですけど、
基本メイン、メンタルモデルだったんですけど、人工物、アーティファクトも厳密な定義とかがあるわけでは全然なく、人が作った何かみたいなことってアーティファクトだよねみたいなことで、
例えばですけど、組織に話戻ってくるんだとしたら、制度どうやって作ってるかみたいなことって、構造とも言えるけども、人工物としてもっと奥にあるもので、
その制度があるものが結果メンタルモデルに影響するし、メンタルモデルがあることによって結局制度もそれに基づいて作られてるじゃんみたいなものの、構造もさらにこうあえて2つに分けて語ってたんですね。
確かにこの2つ、人為的に作られた何かと、人が持ってるメンタルモデルの根底のその2つの行き来によって、もう1個上の構造が作られますよねっていう説明が2つになってたんですよ。
そこそこ前からこの表現の仕方もうしてるらしくて、へえーっていうのを僕も知ったばっかりだったんですけど。
おー、これは良いことを教わった。もうちょっとそれは理解を深めたいやつや。ありがとうございます。アーティファクトね。
大事なのは「自分もシステムの一部・どこまでも主観」
アーティファクトって言って、参加者からも質問出てて、アーティファクトって何のこと言ってるんですか? 定義は?どこまで含まれるんですか?とか、構造と何が違うんですか?みたいなことが当然出るんですけど、
ピーターがそこで言ってたのは、あんまりそこは大事じゃないんだと。結局、別にどれが明確に構造でどれがパターンかっていう定義の厳密さが大事なんではなくて、
こういう全体の氷山モデルというモデルで捉えられますよねっていう中の1つのガイドとして、アーティファクトとメンタルモデルって一番根底があるよねっていう提案だから、
これは人工物なんですか?構造なんですか?っていう問いの深掘りにそんなに意味はなくて、モデルで捉えた時に事象をどう説明できるっていうか、だよね、そのためにうまく使うんだよ、みたいな言い方をしてたと僕は理解をしていて。
そこめっちゃ納得ですね。何に納得したかっていうと、システム思考って一見、要素をたくさん出しましょうとか、割と論理的に見えるから、正解を求めたくもなるんだけど、私もこれを学んだり、自分が実践で使う、私のように使おうとしてみて、めっちゃ大事なのは一番初めの自分もシステムの一部である。どこまで行っても主観であるっていう。
ここなんですよね。だから、仮に私と山田さんがシステム思考の使い手として技量が全く一緒だったとしても、私がこの状況をどうシステム的に捉えて答えを出すかと、山田さんのシステムの要素の出し方、構造の見立て方、答えの出し方って違うんですよ。
違っちゃう。極端に言うと、組織っていうものの振る舞いに関して、私がもっと、もし知識や経験が少なかったら、信じられないってことばっかりで、いちいちシステム的に考えたくなっちゃうんだけど、ある程度習熟したら、まぁそこまでは分かってますわっていう感じ。
わざわざシステム思考みたいなことを通さなくても、私の中では割とストレートな因果関係として捉えられちゃうみたいな差が起きますよね。だから、戻ると今の厳密な定義じゃなくていいんだっていうピーター・センゲさんの話は、その自分の感覚とすごい紐づいて、基本はやっぱり実は主観であるっていうことに立脚してるっていうのはめっちゃ大事だなって思う。
そうですね。これだけでも延々いけそうな感じもするんですが、一旦、僕ら多分好きなテーマですからね。一旦ここまででなんとなく僕らがシステムって語られるような話をいただいたとおりで、次回もうちょっとじゃあ例えば具体で見たらねっていうので、具体の側からこの話をもう一回見れればいいかなという感じだと思います。
ではまた次回続きを。
次回よろしくお願いします。ありがとうございました。